孤独な蝶は仮面を被る

緋影 ナヅキ

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第107話

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 あれから縛った推定加害者達は、遅れてやってきた風紀委員達によって1人残らず運ばれて行った。
 連日の疲労と寝不足のせいか、縛る際に手加減があまり出来なかったが…まぁ、いいだろう。


 で、一応今回の被害者である柳瀬クン。
 彼は風紀が到着した頃には我に返っていて、以前よりかは大人しかったが相変わらず何やらぎゃあぎゃあ騒いでいた。

 迷惑そうに顔を顰めつつ、仕事を遂行する為に風紀委員達彼らが柳瀬クンを強制連行していったが。
 

 あんなのも相手しないといけないのか…大変そうだ。
 
 そう、心の底から同情しつつ、俺は何故か湧き出てくる謎の衝動を内側に押し留めていた。ソレの正体が一体何なのかは分からないが、何となく出したら終わる気がした。


 因みに書記も委員長も各々の理由でそれに付いて行った為、ほぼ関係の無い俺は1人行動に戻った。



 閑話休題。



「…さぁって、どこ周ろっかなぁ~」 
 
 パンッと、ひとつ手を叩いて気分を切り替える。

 いつまでも旧体育館倉庫裏こんなトコに居るのもあれだし、あまり人がいなさそうな場所馬鹿共ホイホイ場に移動するか。
 ついでに、赤色のリュック俺のを持った教師を探すとしよう。

 残り時間を確認しつつ、次からの動きを脳内シュミレーションする。……よし、これで大丈夫そうだ。

 
 地面に向けていた酷く重い頭を上げ、廃れたコンクリート壁に背を向ける。視線の先には、暗闇に慣れ過ぎた俺にとって眩しすぎる程の光が溢れた世界があった。


「……うんうん、それできぃ~まりッ!」

 ニパッと軽薄な笑みを浮かべ、満足そうに軽く頷く。
 それからぐるりと周囲を見渡し…終わる前に、とある一点に茶色の瞳を向けて動きを止めた。
 


 ニッ…と、どこか歪に口角を上げる。


 
 ふんッふふ~ん♪と、ご満悦そうにテキトウな鼻歌を零し、狙い定めたその一点へと迷いなく歩いていく。


 一方、見つかった事に気付いていないのであろう隠れたモノは、光に反射する紅葉色を緑の隙間から覗かせていた。
 己へ近付いてくる音への恐怖心を耐えるかのように、ただ息を殺す。

 それが実に惨めで憐れで愚かで愛らしく、ついつい出てしまいそうになる嗤い声の代わりに、より口角を引き上げた。



 あぁ…すっごく愉しい。
 


「…見ィつけたぁ」 

 首を丸めて縮こまり、必死に低木の影に隠れていたモノを上から見下ろす。己が声をかけた途端に、その小さな肩がビクついたのを愉快に感じながら、そのモノを呼ぶ。


「こんなトコでなぁにしてるの~、永瀬お兄さんオニーサン?」

 自身を形容する肩書きのうちの一つが、今度はよく知る声によって発せられたという事実に驚き、永瀬兄─本名永瀬ながせかえで─は、反射でその可愛らしい顔を上げた。

 赤く色付いた目と驚愕の感情を、隠すことなく。

 

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