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第114話
しおりを挟むざわついてた場が一気に静まり返る。
天使が通り過ぎるどころか、神が降臨したかのようだった。いやそれじゃ逆にうるさくなるか。
「ぇ…会長様じゃないの…??」
「会計様…?」
「マリモが水無月様とデート……?」
「え、とりあえず毬藻処していい??」
「許可したい」
ポツポツと言葉が場を満たしていき、元以上のざわめきが起こる。微妙に聞こえたものから察するに、怒りや不満よりも疑念の方が多いようだ。
「えぇ~っと、俺を指名くれんの~?」
「もちろんだぞ!!!」
良かった、ついに耳までおかしくなったのかと思った。どうやら本当にデート相手は俺がイイらしい。
……うん、なんで??
10年ぶりぐらいに頭が痛い感覚を味わいながら、この状況に陥れた毬藻を視界におさめた。
見るからにカツラなモジャモジャ頭と瓶底メガネに遮られ、相変わらずその瞳を見る事は叶わない。
唯一口元が笑みを描いているのはわかるが、ソレが本意かどうかは判断し辛く、俺を指名したその真意が読めない。
「だってオレたちが遊んでるとき、真琴いっつも生徒会室にこもってるだろ!!龍雅たちはお前とかかわるなって言うけど、オレは優しいからみんなびょーどーにするんだ!!!」
「─ほう?お主が優しいと?」
会場内に、あの胡散臭い享楽主義センパイの声が通った。
普段は誰よりも近くて遠い場所から面倒事を眺め笑っているヤツが声を上げたことに対し、ヤツのことをよく知っている人達はヤバい事が起こるとざわめく。
「なんだお前!!?」
「ふむ、ウワサに聞く以上に凄い童だな」
「そうだオレはスゴいんだぞ!!お前いい奴だな!!名前教えろよ!!!」
「彼奴があんな顔にもなるはずだ」
「おい!!オレを無視しちゃいけないんだぞ!!!教えろよ!!!」
見る人が見れば、いかにもヤバそうな笑顔を浮かべたヤツの周囲にいた人間は、関わりたくないと言わんばかりに離れていく。最終的には、ヤツを中心とした半径3メートルぐらいのキレイな円形が出来上がっていた。
閉会式がめちゃくちゃだが、これ誰が収集するんだ。会長達でも委員長でも顧問達でも、とにかく俺以外なら誰でもいい。
この混沌としてしまった場を纏めてくれ。
「──のう、会計殿」
「…え?」
そんな些細な願い虚しく、マゼンタ色を鈍く光らせた愉快犯は俺へと矛を向けた。…教えろ教えろと喚く毬藻をまるっとスルーしたまま。
「(そういえば、何でこの人の声こんなハッキリ聞こえんだろ。つか、アイツらは何故一言も発さない?)」
激しく嫌な予感を感じながら、現実逃避をするようにそんなどうでもいいことを思った。
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