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第4章 真の軍師
2人を阻む檻
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「お姉ちゃんにさ、聞きたい事があるの」
劉飛麗の拘束されている檻の前で、瀬崎宵は予てからの疑問を口にした。
「何?」
「この竹簡、お姉ちゃんにずっと管理をお願いしてたけど、中を見た事はある?」
言いながら宵は腰の帯に提げた巾着袋から祖父の竹簡を取り出した。
竹簡の文字は書かれたのではない。浮かび上がったのだ。その事は李聞と共にその現象を確認したので分かっている。
ただ、劉飛麗が関わっていない事だけはどうしても確かめたかった。
「あ……ごめんなさい。見ました」
劉飛麗は『宵』という文字の書かれた竹簡から視線を逸らし申し訳なさそうに答えた。
「別に中を見るくらい構わないんだけど、これって元々何も書かれてなかったんだよね。それがいつの間にか文字が書かれててさ……お姉ちゃんが書いたんじゃないよね?」
宵がその竹簡を開いて中を見せると、劉飛麗は目を丸くした。
「ううん。書いてはいないよ。あたしは一番初めに宵ちゃんからそれを渡された時にこっそり中を見ただけ。その時は確かに何も書かれてなかった」
「そう……だよね。それだけ確認したかったんだ」
「そう……」
「あ、あとね。この機会にもう1つ話しておかなきゃならない事があるの」
「うん」
劉飛麗は小さく頷いて宵の瞳を見つめる。
「信じて貰えないと思うけど、その……私ね、この世界の人間じゃないの」
馬鹿げた事を言っているというのは自覚している。しかし、劉飛麗が自分の秘密を告白してくれた以上、自分がいつまでも隠し事をしているのは良くないと思った。だから宵は、自分の秘密を、信頼する劉飛麗へと打ち明けた。
「……」
劉飛麗の反応を待ってみたが反応がない。
続けて宵が言う。
「私、別の世界からこの世界に迷い込んだみたいなんだよね。ははは……信じてくれないよね」
それでも劉飛麗は顔色さえ変えず、ただ宵を見ているだけだった。
そして──
「知ってたよ」
劉飛麗の答えは宵の予想外のものだった。
知ってた? 何故? 知ってたのなら何故今まで知らないふりをしていたのか。
「知ってた……って、どういう事? 誰かから聞いたの?」
宵が異世界から来た事を知っているのは李聞と鍾桂だけ。ただ、2人が劉飛麗に話を漏らすとは考えられない。
では何故知っているのか……。
「あたしが宵ちゃんに初めて出会った時、あれは荒陽の廖班将軍の御屋敷だったね」
「うん。そうだね」
「あの時、鍾桂様に紹介されてあたしは宵ちゃんと巡り会った。でもその直後、李聞様も現れて3人で話があるからと、あたしは部屋を追い出された。その時、あたしは廊下で待機してたんだけど……聞こえてしまったの。宵ちゃんが異世界から来たんだって話が」
「え……じゃあ、お姉ちゃんは私と出会った時から私の秘密知ってたって事じゃない。それなら、何で知らないふりをしてたの??」
「うん……ごめんね。それはちゃんと謝っておかないといけないわね」
「知らないふりをした事を? それは別に怒ってないよ」
「それもそうだけど、あたしが知らないふりをした理由の方よ。あたし、性格悪いから……」
劉飛麗はそう言って俯いた。
「え……どういう事??」
「あたしね、宵ちゃんが異世界から来たって知って閃いたの。あたし達の世界とは全然違う世界。もしかしたら、宵ちゃんの世界には死者を蘇らせる技術があるんじゃないかって」
「え……それって……」
「そう。もし出来るのなら、麗姫ちゃんと母上にもう一度逢いたかった。だからあたしは宵ちゃんとずっと一緒に居られるよう動いた。宵ちゃんが元の世界に戻る時にあたしも一緒にその世界に行こうと思ってね」
「……そう……だったんだ……」
「教えて宵ちゃん。貴女のいた世界には死者を蘇らせる技術は──」
「ありません。ありませんよ、そんなの」
間髪入れず宵は頭を振った。
「もし死んだ人を生き返らせる事が出来るなら、私はとっくにおじいちゃんを……」
その言葉は最後までは言わず、開いた竹簡をぎゅっと握り締め、宵は俯き唇をかみ締めた。
その様子を劉飛麗は悲しげな表情で見つめた。
「やっぱり……そうよね。死んだ人間を蘇らせるなんて、そんな事、どこの世界でも出来る筈ないのよね……。本当は、途中で気が付いてたの。死者を蘇らせられるなら、宵ちゃんがその竹簡を御祖父様の『形見』として大事に持ってる筈がない事を」
「それなら、どうして今まで私と一緒に居てくれたの? 私の世界でも死者を蘇らせる技術がないって気付いたなら、私みたいなへなちょこに仕える価値なんてなかったじゃない」
「それは、宵ちゃんと一緒にいるうちに、宵ちゃんの事を本当の妹のように感じている自分に気が付いたからよ。宵ちゃんがあたしの事を姉のように慕ってくれる事も、本当は嬉しかった。でも、その気持ちを抱く事は、麗姫ちゃんを忘れる事だって……そう感じてしまって、素直に宵ちゃんを受け入れられなかった。あたしの妹は麗姫ちゃんであって宵ちゃんじゃない……でも、宵ちゃんと離れるのは……嫌だった」
「だから頑なに下女として私に付き従ってくれたんだね」
「ええ。下女として一線を引き続け、宵ちゃんが元の世界へ帰るその瞬間までは一緒にいようと決めていたの……」
宵は黙って頷く。
「月を見上げた夜に思ったわ。麗姫ちゃんも母上も戻らないんだ。死んだ人間はもう何があっても生き返らない、戻って来ない。過去ばかり引きずってないで、今を生きなきゃいけないんだって……それなのに」
「お姉ちゃん……」
「あたし、廖班への憎しみだけはどうしても捨てきれなかった。あたしが馬鹿なせいで……こんな事になってしまって……せっかく、宵ちゃんと義姉妹になれたのに……ごめんね……ごめんね」
涙を零す劉飛麗。宵は竹簡を膝の上に置き、檻の柵を握った。
「もう謝らないで。初めは私を利用するつもりだったとしても、今こうして義姉妹になれたじゃない。家族になれたじゃない。だから、もういいよ」
2人はお互い手を伸ばした。檻の中から伸びてきた綺麗な劉飛麗の手。それを宵は指と指を絡ませてしっかりと握り返した。
抱き締めたい。いつものように劉飛麗を抱き締めたい。しかし、目の前の檻はそれを許さない。その檻は、劉飛麗が罪人である事を嫌でも思い出させる。
「もう一度、お姉ちゃんをギュッてしたいから……だからちゃんと罪を償って、そこから出て来てね」
「あたしもよ、宵ちゃん。必ず、宵ちゃんのもとに戻るわ。……でもね」
劉飛麗は悲しげな笑みを浮かべた。
「もし、あたしが戻る前に、宵ちゃんが元の世界に帰れるようになったら、迷わず帰りなさいよ」
「え……」
“帰りなさい”
その発言に、宵は突き放されたような感覚を覚え絶句する。
「あたしの刑期は短くはないでしょう。あたしが罪を償っている間に、宵ちゃんが元の世界に帰れるようになる事の方が早いかもしれない。だってその竹簡に書かれた文字。元の世界に帰る鍵なんでしょ?」
「まだ……分かんないけど」
「自然に文字が浮かび上がってきた。そうなんでしょ? きっとその文章が完成した時、宵ちゃんは元の世界に帰れる。元の世界にはご両親や友人もいる。宵ちゃんにとっての幸せは、あたしといる事じゃなくて、元の世界で待つ人達と一緒にいる事じゃないの?」
「決められないよ……どっちも大事だから。こっちで出会った人達も、私にとっては大切な人達……」
「じゃあ、帰らないの?」
「……」
宵は答えられなかった。
元の世界に戻ると決めた筈なのに、その決意が揺らいだ。
劉飛麗はもちろん、李聞や鍾桂もかけがえのない存在。そして、他にも宵が世話になった人は大勢いる。
だが元の世界には父と母、厳島光世や貴船桜史や司馬教授、大切な人は2つの世界に存在している。
この世界を去るという事はこの世界の人々と永遠の別れをするという事。
逆に元の世界に戻らないという事は、元の世界の人々と永遠の別れをするという事。
その選択は、時を重ねる毎に辛くなる。
「もう少し……考えさせて」
「最後に決めるのは宵ちゃんだけど、あたしの望みは宵ちゃんが元の世界に戻る事よ」
「うん」
「もう行きなさい。貴女には今やるべき事があるでしょ?」
「うん」
宵は立ち上がると劉飛麗に背を向けた。
「あ、宵ちゃん」
呼び止められ、宵は振り向く。
「部屋に戻ったら、あたしの荷物が入ってる行李を開けてみて」
「行李を……? 分かった」
「またね」
「うん、また」
劉飛麗に別れを告げると、宵は部屋を後にした。
愛しい姉を救う事。
元の世界とこの世界を自由に行き来する事。
それらは宵の得意な兵法ではどうにもならない。
部屋の外に出た。夜風が涼しい。宵の黒髪をふわりと揺らし、頬を優しく撫でる。
空を見上げると、雲の隙間から綺麗な月が顔を覗かせていた。
宵はしばらくの間、1人美しい月を眺めた。
そして、「よし」と呟くと、宵は李聞のいる幕舎へと向かった。
朧国を倒す為の新たな策を伝える為に。
劉飛麗の拘束されている檻の前で、瀬崎宵は予てからの疑問を口にした。
「何?」
「この竹簡、お姉ちゃんにずっと管理をお願いしてたけど、中を見た事はある?」
言いながら宵は腰の帯に提げた巾着袋から祖父の竹簡を取り出した。
竹簡の文字は書かれたのではない。浮かび上がったのだ。その事は李聞と共にその現象を確認したので分かっている。
ただ、劉飛麗が関わっていない事だけはどうしても確かめたかった。
「あ……ごめんなさい。見ました」
劉飛麗は『宵』という文字の書かれた竹簡から視線を逸らし申し訳なさそうに答えた。
「別に中を見るくらい構わないんだけど、これって元々何も書かれてなかったんだよね。それがいつの間にか文字が書かれててさ……お姉ちゃんが書いたんじゃないよね?」
宵がその竹簡を開いて中を見せると、劉飛麗は目を丸くした。
「ううん。書いてはいないよ。あたしは一番初めに宵ちゃんからそれを渡された時にこっそり中を見ただけ。その時は確かに何も書かれてなかった」
「そう……だよね。それだけ確認したかったんだ」
「そう……」
「あ、あとね。この機会にもう1つ話しておかなきゃならない事があるの」
「うん」
劉飛麗は小さく頷いて宵の瞳を見つめる。
「信じて貰えないと思うけど、その……私ね、この世界の人間じゃないの」
馬鹿げた事を言っているというのは自覚している。しかし、劉飛麗が自分の秘密を告白してくれた以上、自分がいつまでも隠し事をしているのは良くないと思った。だから宵は、自分の秘密を、信頼する劉飛麗へと打ち明けた。
「……」
劉飛麗の反応を待ってみたが反応がない。
続けて宵が言う。
「私、別の世界からこの世界に迷い込んだみたいなんだよね。ははは……信じてくれないよね」
それでも劉飛麗は顔色さえ変えず、ただ宵を見ているだけだった。
そして──
「知ってたよ」
劉飛麗の答えは宵の予想外のものだった。
知ってた? 何故? 知ってたのなら何故今まで知らないふりをしていたのか。
「知ってた……って、どういう事? 誰かから聞いたの?」
宵が異世界から来た事を知っているのは李聞と鍾桂だけ。ただ、2人が劉飛麗に話を漏らすとは考えられない。
では何故知っているのか……。
「あたしが宵ちゃんに初めて出会った時、あれは荒陽の廖班将軍の御屋敷だったね」
「うん。そうだね」
「あの時、鍾桂様に紹介されてあたしは宵ちゃんと巡り会った。でもその直後、李聞様も現れて3人で話があるからと、あたしは部屋を追い出された。その時、あたしは廊下で待機してたんだけど……聞こえてしまったの。宵ちゃんが異世界から来たんだって話が」
「え……じゃあ、お姉ちゃんは私と出会った時から私の秘密知ってたって事じゃない。それなら、何で知らないふりをしてたの??」
「うん……ごめんね。それはちゃんと謝っておかないといけないわね」
「知らないふりをした事を? それは別に怒ってないよ」
「それもそうだけど、あたしが知らないふりをした理由の方よ。あたし、性格悪いから……」
劉飛麗はそう言って俯いた。
「え……どういう事??」
「あたしね、宵ちゃんが異世界から来たって知って閃いたの。あたし達の世界とは全然違う世界。もしかしたら、宵ちゃんの世界には死者を蘇らせる技術があるんじゃないかって」
「え……それって……」
「そう。もし出来るのなら、麗姫ちゃんと母上にもう一度逢いたかった。だからあたしは宵ちゃんとずっと一緒に居られるよう動いた。宵ちゃんが元の世界に戻る時にあたしも一緒にその世界に行こうと思ってね」
「……そう……だったんだ……」
「教えて宵ちゃん。貴女のいた世界には死者を蘇らせる技術は──」
「ありません。ありませんよ、そんなの」
間髪入れず宵は頭を振った。
「もし死んだ人を生き返らせる事が出来るなら、私はとっくにおじいちゃんを……」
その言葉は最後までは言わず、開いた竹簡をぎゅっと握り締め、宵は俯き唇をかみ締めた。
その様子を劉飛麗は悲しげな表情で見つめた。
「やっぱり……そうよね。死んだ人間を蘇らせるなんて、そんな事、どこの世界でも出来る筈ないのよね……。本当は、途中で気が付いてたの。死者を蘇らせられるなら、宵ちゃんがその竹簡を御祖父様の『形見』として大事に持ってる筈がない事を」
「それなら、どうして今まで私と一緒に居てくれたの? 私の世界でも死者を蘇らせる技術がないって気付いたなら、私みたいなへなちょこに仕える価値なんてなかったじゃない」
「それは、宵ちゃんと一緒にいるうちに、宵ちゃんの事を本当の妹のように感じている自分に気が付いたからよ。宵ちゃんがあたしの事を姉のように慕ってくれる事も、本当は嬉しかった。でも、その気持ちを抱く事は、麗姫ちゃんを忘れる事だって……そう感じてしまって、素直に宵ちゃんを受け入れられなかった。あたしの妹は麗姫ちゃんであって宵ちゃんじゃない……でも、宵ちゃんと離れるのは……嫌だった」
「だから頑なに下女として私に付き従ってくれたんだね」
「ええ。下女として一線を引き続け、宵ちゃんが元の世界へ帰るその瞬間までは一緒にいようと決めていたの……」
宵は黙って頷く。
「月を見上げた夜に思ったわ。麗姫ちゃんも母上も戻らないんだ。死んだ人間はもう何があっても生き返らない、戻って来ない。過去ばかり引きずってないで、今を生きなきゃいけないんだって……それなのに」
「お姉ちゃん……」
「あたし、廖班への憎しみだけはどうしても捨てきれなかった。あたしが馬鹿なせいで……こんな事になってしまって……せっかく、宵ちゃんと義姉妹になれたのに……ごめんね……ごめんね」
涙を零す劉飛麗。宵は竹簡を膝の上に置き、檻の柵を握った。
「もう謝らないで。初めは私を利用するつもりだったとしても、今こうして義姉妹になれたじゃない。家族になれたじゃない。だから、もういいよ」
2人はお互い手を伸ばした。檻の中から伸びてきた綺麗な劉飛麗の手。それを宵は指と指を絡ませてしっかりと握り返した。
抱き締めたい。いつものように劉飛麗を抱き締めたい。しかし、目の前の檻はそれを許さない。その檻は、劉飛麗が罪人である事を嫌でも思い出させる。
「もう一度、お姉ちゃんをギュッてしたいから……だからちゃんと罪を償って、そこから出て来てね」
「あたしもよ、宵ちゃん。必ず、宵ちゃんのもとに戻るわ。……でもね」
劉飛麗は悲しげな笑みを浮かべた。
「もし、あたしが戻る前に、宵ちゃんが元の世界に帰れるようになったら、迷わず帰りなさいよ」
「え……」
“帰りなさい”
その発言に、宵は突き放されたような感覚を覚え絶句する。
「あたしの刑期は短くはないでしょう。あたしが罪を償っている間に、宵ちゃんが元の世界に帰れるようになる事の方が早いかもしれない。だってその竹簡に書かれた文字。元の世界に帰る鍵なんでしょ?」
「まだ……分かんないけど」
「自然に文字が浮かび上がってきた。そうなんでしょ? きっとその文章が完成した時、宵ちゃんは元の世界に帰れる。元の世界にはご両親や友人もいる。宵ちゃんにとっての幸せは、あたしといる事じゃなくて、元の世界で待つ人達と一緒にいる事じゃないの?」
「決められないよ……どっちも大事だから。こっちで出会った人達も、私にとっては大切な人達……」
「じゃあ、帰らないの?」
「……」
宵は答えられなかった。
元の世界に戻ると決めた筈なのに、その決意が揺らいだ。
劉飛麗はもちろん、李聞や鍾桂もかけがえのない存在。そして、他にも宵が世話になった人は大勢いる。
だが元の世界には父と母、厳島光世や貴船桜史や司馬教授、大切な人は2つの世界に存在している。
この世界を去るという事はこの世界の人々と永遠の別れをするという事。
逆に元の世界に戻らないという事は、元の世界の人々と永遠の別れをするという事。
その選択は、時を重ねる毎に辛くなる。
「もう少し……考えさせて」
「最後に決めるのは宵ちゃんだけど、あたしの望みは宵ちゃんが元の世界に戻る事よ」
「うん」
「もう行きなさい。貴女には今やるべき事があるでしょ?」
「うん」
宵は立ち上がると劉飛麗に背を向けた。
「あ、宵ちゃん」
呼び止められ、宵は振り向く。
「部屋に戻ったら、あたしの荷物が入ってる行李を開けてみて」
「行李を……? 分かった」
「またね」
「うん、また」
劉飛麗に別れを告げると、宵は部屋を後にした。
愛しい姉を救う事。
元の世界とこの世界を自由に行き来する事。
それらは宵の得意な兵法ではどうにもならない。
部屋の外に出た。夜風が涼しい。宵の黒髪をふわりと揺らし、頬を優しく撫でる。
空を見上げると、雲の隙間から綺麗な月が顔を覗かせていた。
宵はしばらくの間、1人美しい月を眺めた。
そして、「よし」と呟くと、宵は李聞のいる幕舎へと向かった。
朧国を倒す為の新たな策を伝える為に。
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