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学園戦争の章《起》
第96話~交戦~
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さっきの角笛は御影の部屋の方から聴こえていた。そこへ千里をみすみす連れて行くわけにはいかない。
茉里は馬を駆けさせながら後ろに乗せた千里に悟られないように自然に大講堂の方へと向かった。
「茉里さん。角笛の音は向こうからしましたよ? 何故こちらへ行くのです?」
流石に千里も馬鹿ではない。少しでもおかしな事をするとすぐに分かってしまう。
その時、また角笛がなった。今度は御影の部屋とは逆の西の方だ。そこに誰がいるかは知らないがそこへも千里を連れて行かない方がいいだろう。
「また、角笛ですね。今度は丸っきり反対側から」
茉里は千里に気取られないように話題を変えた。
「実はですね、鏡子さんからあなたを連れて来いと言われましたの。先程の集会にいらっしゃらなかったから心配なさっていましたわ。だから角笛の事はほかの方々にお任せして、まずは大講堂に参りましょう」
茉里は事実だけ伝えてみた。
「あら、それはご迷惑をおかけ致しました。では、まずは鏡子さんに謝罪をしなければ」
千里も鏡子の名を出すと素直に従うところがあった。茉里はそのまま鏡子の待つ大講堂へと馬を駆けさせた。駆けながら自分はこのまま反逆者とバレずに弓特に残ってしまうのか。それとも鏡子に千里を引き渡した後に1人でこっそりカンナ達に合流するのか。その事で頭がいっぱいだった。
後ろに乗っている千里は大講堂へ向かう間一言も喋らなかった。それが返って不気味に感じた。
リリアは燈と詩歩が陽動で吹いた角笛の音がした方へ馬を駆けさせた。
誰にも見つからぬように森の中を選んで駆けた。すると、辺りに気配を感じた。突然、6騎の何者かがリリアと並走するように駆けてきた。その者達は皆黒い布で顔を隠しており誰だか判別が出来ない。
学園の闇の者。以前、斑鳩がそんな組織があっても不思議ではないと言っていたのを思い出した。斑鳩に付いていた監視は鵜籠の部下であったし、カンナが斑鳩を地下牢に助けに行った時に交戦した男達は総帥直属の暗殺部隊だったと聞いた。だが、リリアはまだ反逆者と認識されていないはずだ。
「序列9位、茜リリアだな?」
隣を駆けていた男が話しかけてきた。
「はい。あなた達は?」
「我々は総帥の命を受けて反逆者討伐に馳せ参じた者だ。質問に答えろ。茜リリア。火箸燈と祝詩歩は何故誰もいない場所で角笛を吹いた?」
リリアははっとしたが顔は真っ直ぐ前を向いたまま動揺を隠した。
「誰もいない場所で?」
「そうだ。我々は総帥の命により、茜リリア、火箸燈、祝詩歩の3人を監視するように命じられていた。すると、火箸燈と祝詩歩を監視していた者達からそのような報告が入ったのだ。これは、どういう事だ?」
冷や汗が止まらなくなった。
リリアが何も答えず駆け続けているとまた男が口を開いた。
「質問を変えよう。お前は何故、反逆者である斑鳩爽と澄川カンナと接触していた?」
バレている。全て見られていた。カンナもいたのにこいつらは氣を感知されなかったのか。リリアは掛け声を上げると馬の腹を蹴った。
それを見たリリアの両側を走る男達は刀を抜き交互に斬りかかってきた。
リリアはその刃を巧みに躱しながら、背中の睡臥蒼剣を抜いた。
「騎馬戦は得意じゃないんだけど」
6人。森の中を駆けながらだが、やるしかない。リリアは覚悟を決めた。
燈と詩歩は既に数人の黒い布を顔に巻いた男達に取り囲まれていた。
9人。生徒や師範ではない。皆、刀を抜いて立ったままこちらの様子を窺っている。
角笛を吹いたらすぐに現れた。おそらく最初から見張られていたに違いない。
「おい! お前ら! たったの9人であたしらに勝てると思ってんのか!?」
燈が男達を挑発した。
「9人か。だがそのうちお前自身が呼んだ学園の生徒達も続々と集まって来るぞ」
燈は舌打ちをした。確かに、すぐにここを離れないと角笛で呼んだ連中が集まって来てしまう。
燈も詩歩も刀を抜いた。
「だったらお前らを瞬殺してここから離脱する! 行くぞ! 詩歩!!」
「うん!」
燈と詩歩が走り出す。男達もそれに呼応して走り出す。
燈の戒紅灼が男の刀ごと身体を両断した。詩歩の紫水は一気に4人を刀ごと吹き飛ばし、背後から斬りかかった男を振り返ることなく串刺しにした。
「序列13位と28位だろ!? なんなんだこの強さ!?」
男達が狼狽える中、あっという間に9人全員を2人で斬り殺した。
「けっ! 大した事ねぇ連中だぜ。さ、詩歩行こう……」
燈が言いかけて固まってしまったのを見て、詩歩は燈の視線の先を見た。
「貴様らも反逆者か。太刀川よ。重黒木の事は言えんな」
「身内の不祥事は身内で片付けるとするか」
そこには、馬に乗ってこちらを見ている剣特師範の袖岡と、太刀川がいた。
「袖岡師範……太刀川師範……」
燈と詩歩は動く事が出来なかった。
部屋が囲まれていた。
カンナ達を見送ってからすぐに黒い布を顔に巻いた男達が現れた。その数、およそ30人。逢山と扶桑の身柄は男達に回収された。つかさと光希はその光景に唖然としていた。
「生徒達がちょこちょこ来るだけかと思ってたのに、あいつら何者よ!?」
つかさがブラインドを下げて外の様子を見て嘆いた。隣りで同じように見ている光希は言葉さえ失っているようだ。
「総帥直属の暗殺部隊ね。それにしても凄い数ね」
まりかはベッドに座ったまま眼を青く光らせて神眼でブラインドが下りたままの窓を見ている。
「ま、まぁ、私はあんな数なんて比じゃない程の蔡王の部隊と闘ってきたんだから、余裕よ」
「甘いわよつかさちゃん。総帥直属の暗殺部隊は蔡王の寄せ集めの兵隊達とは訳が違うわ。そうね、強さで言うと、序列20位くらいのものかしらね。それが30人。そのうちどんどん増えるでしょうけどね」
まりかはつかさの希望を打ち砕いた。
「序列20位と同等……水音と同じくらいの強さ」
光希が息を飲んだ。
「安心しなさい。私がいるんだから。あんな奴ら、左手だけで十分よ」
まりかはベッドから立ち上がり、机に置かれていた愛用の刀を左手で掴み、親指で鍔を持ち上げ一気に引き抜いた。
「ん?」
まりかは何かに気付いたようにまた外を見た。窓にはブラインドが下がっているが、神眼でそれさえ透視して外が見えるようだ。
「どうしたんですか? 畦地さん」
「あれは、槍特の子かしら? 男達の後ろの方から馬でこっちに向かって来るわ」
つかさは急いでブラインドの隙間から外を見た。
赤いロングの髪の女の子が見えた。
「綾星!?」
天津風綾星。そして、その他の槍特の見知った面々も一緒に駆けてきていた。
「お友達が多いのね。つかさちゃん」
綾星は1人、黒い男達の前へ出ると大きな声で呼び掛けてきた。
「反逆者の皆さん!! 降伏しませんかぁー? この状況で勝てるわけないですよー? 今ならーまだ許してもらえるかもしれませんよー」
綾星の気の抜けたような喋り方は今の雰囲気に相応しくなく、つかさは少し不快に思った。
「何あの子。ムカつくわね。すぐに殺して来てあげる」
まりかが外へ出ようとしたのでつかさはまりかの腕を掴んだ。
「待ってください。あの子は、綾星は私の友達なんです。ほかの槍特の人達も」
「何よこの期に及んで。だったらあなたは向こう側に行きなさいよ! 一緒に私が殺してあげるわ」
まりかはつかさの言葉に苛立ち睨み付けてきた。
「一度だけ、槍特の皆に話をさせてください。説得してみます」
「馬鹿じゃないの? 無駄よ。そんなの。そんな事してる間にもっと厄介な連中が来るわよ」
「お願いします!」
つかさは頭を下げた。まりかはそれを見て溜息をつきまたベッドに座り込んだ。
「勝手にすれば? 一度だけだからね」
「ありがとうございます!」
つかさはまた頭を下げると部屋から飛び出し、壁を身軽に上ると豪天棒を持ち屋根の上に立った。
男達も綾星も皆つかさに注目した。
「つかささん!?」
「槍特の皆! 聞いて! この学園は賊の青幻と繋がっていたのよ!!」
「つかささん、何を言い出すんですか?」
つかさは続けた。
「この学園、いえ、割天風総帥は青幻と手を組み、青幻の勢力拡大に力を貸し、ゆくゆくは青幻の作る武術国家を乗っ取る事が目的。私達はそれに利用されていたのよ!! ここで今迄犠牲になった生徒達も全ては総帥の野望の為に死んでいったのよ。そんな嘘偽りだらけの学園で今迄と同じような生活が出来る? 私は、いえ、私達は出来ない! あなた達も利用されているの! 今ここで、私達と共に戦い、学園を倒そう! そして私達の手で新しい学園を作ろうよ!」
つかさの演説に黒い男達は黙っていたが、後方に控えていた槍特の生徒達は動揺していた。
「つかささん。その話、誰が信じるんですか? 総帥に拾ってもらった恩を仇で返すつもりですか?」
綾星は少しも表情を変えずにつかさに言った。
「綾星! 私はあなたと闘いたくない! 私の事を信じて! 友達でしょ?」
「友達? ……そう、そうですよ。友達だったんです、だけどあなたは」
綾星は馬の腹を蹴り真っ直ぐ御影の部屋へ突っ込んできた。そして、馬上で立ち上がりそのまま物凄い跳躍でつかさの真上に飛び上がり、その勢いを利用して槍を思いっ切り振り下ろした。
「澄川カンナを選んだじゃないですかぁぁぁぁ!!!」
つかさの豪天棒が綾星の槍を止めた。
そのままつかさと綾星は棒と槍の打ち合いになった。
「綾星!! あなたも友達よ! でも、カンナも友達なの!」
「うるさい!! 1年も一緒にいない女に私達の6年間の友情が負けたなんて許せないわよ!!!」
綾星の目は狂気に支配されていた。一番闘いたくなかった。傷付けたくなかった。普通に闘えば勝てる。でも────
「さて、光希ちゃん。どうする? つかさちゃんの説得は失敗みたいだけど」
まりかは天井を青い眼で見上げながら光希に言った。
「まだ、失敗したわけじゃないです」
「失敗よ。こんなの。来るわよ」
まりかが言うと、窓や扉を蹴り破り、黒い男達が一斉になだれ込んで来た。
負傷した序列5位と序列34位のたった2人の戦い。
槍特の生徒達は何故かその場で固まったまま動こうとはしなかった。
茉里は馬を駆けさせながら後ろに乗せた千里に悟られないように自然に大講堂の方へと向かった。
「茉里さん。角笛の音は向こうからしましたよ? 何故こちらへ行くのです?」
流石に千里も馬鹿ではない。少しでもおかしな事をするとすぐに分かってしまう。
その時、また角笛がなった。今度は御影の部屋とは逆の西の方だ。そこに誰がいるかは知らないがそこへも千里を連れて行かない方がいいだろう。
「また、角笛ですね。今度は丸っきり反対側から」
茉里は千里に気取られないように話題を変えた。
「実はですね、鏡子さんからあなたを連れて来いと言われましたの。先程の集会にいらっしゃらなかったから心配なさっていましたわ。だから角笛の事はほかの方々にお任せして、まずは大講堂に参りましょう」
茉里は事実だけ伝えてみた。
「あら、それはご迷惑をおかけ致しました。では、まずは鏡子さんに謝罪をしなければ」
千里も鏡子の名を出すと素直に従うところがあった。茉里はそのまま鏡子の待つ大講堂へと馬を駆けさせた。駆けながら自分はこのまま反逆者とバレずに弓特に残ってしまうのか。それとも鏡子に千里を引き渡した後に1人でこっそりカンナ達に合流するのか。その事で頭がいっぱいだった。
後ろに乗っている千里は大講堂へ向かう間一言も喋らなかった。それが返って不気味に感じた。
リリアは燈と詩歩が陽動で吹いた角笛の音がした方へ馬を駆けさせた。
誰にも見つからぬように森の中を選んで駆けた。すると、辺りに気配を感じた。突然、6騎の何者かがリリアと並走するように駆けてきた。その者達は皆黒い布で顔を隠しており誰だか判別が出来ない。
学園の闇の者。以前、斑鳩がそんな組織があっても不思議ではないと言っていたのを思い出した。斑鳩に付いていた監視は鵜籠の部下であったし、カンナが斑鳩を地下牢に助けに行った時に交戦した男達は総帥直属の暗殺部隊だったと聞いた。だが、リリアはまだ反逆者と認識されていないはずだ。
「序列9位、茜リリアだな?」
隣を駆けていた男が話しかけてきた。
「はい。あなた達は?」
「我々は総帥の命を受けて反逆者討伐に馳せ参じた者だ。質問に答えろ。茜リリア。火箸燈と祝詩歩は何故誰もいない場所で角笛を吹いた?」
リリアははっとしたが顔は真っ直ぐ前を向いたまま動揺を隠した。
「誰もいない場所で?」
「そうだ。我々は総帥の命により、茜リリア、火箸燈、祝詩歩の3人を監視するように命じられていた。すると、火箸燈と祝詩歩を監視していた者達からそのような報告が入ったのだ。これは、どういう事だ?」
冷や汗が止まらなくなった。
リリアが何も答えず駆け続けているとまた男が口を開いた。
「質問を変えよう。お前は何故、反逆者である斑鳩爽と澄川カンナと接触していた?」
バレている。全て見られていた。カンナもいたのにこいつらは氣を感知されなかったのか。リリアは掛け声を上げると馬の腹を蹴った。
それを見たリリアの両側を走る男達は刀を抜き交互に斬りかかってきた。
リリアはその刃を巧みに躱しながら、背中の睡臥蒼剣を抜いた。
「騎馬戦は得意じゃないんだけど」
6人。森の中を駆けながらだが、やるしかない。リリアは覚悟を決めた。
燈と詩歩は既に数人の黒い布を顔に巻いた男達に取り囲まれていた。
9人。生徒や師範ではない。皆、刀を抜いて立ったままこちらの様子を窺っている。
角笛を吹いたらすぐに現れた。おそらく最初から見張られていたに違いない。
「おい! お前ら! たったの9人であたしらに勝てると思ってんのか!?」
燈が男達を挑発した。
「9人か。だがそのうちお前自身が呼んだ学園の生徒達も続々と集まって来るぞ」
燈は舌打ちをした。確かに、すぐにここを離れないと角笛で呼んだ連中が集まって来てしまう。
燈も詩歩も刀を抜いた。
「だったらお前らを瞬殺してここから離脱する! 行くぞ! 詩歩!!」
「うん!」
燈と詩歩が走り出す。男達もそれに呼応して走り出す。
燈の戒紅灼が男の刀ごと身体を両断した。詩歩の紫水は一気に4人を刀ごと吹き飛ばし、背後から斬りかかった男を振り返ることなく串刺しにした。
「序列13位と28位だろ!? なんなんだこの強さ!?」
男達が狼狽える中、あっという間に9人全員を2人で斬り殺した。
「けっ! 大した事ねぇ連中だぜ。さ、詩歩行こう……」
燈が言いかけて固まってしまったのを見て、詩歩は燈の視線の先を見た。
「貴様らも反逆者か。太刀川よ。重黒木の事は言えんな」
「身内の不祥事は身内で片付けるとするか」
そこには、馬に乗ってこちらを見ている剣特師範の袖岡と、太刀川がいた。
「袖岡師範……太刀川師範……」
燈と詩歩は動く事が出来なかった。
部屋が囲まれていた。
カンナ達を見送ってからすぐに黒い布を顔に巻いた男達が現れた。その数、およそ30人。逢山と扶桑の身柄は男達に回収された。つかさと光希はその光景に唖然としていた。
「生徒達がちょこちょこ来るだけかと思ってたのに、あいつら何者よ!?」
つかさがブラインドを下げて外の様子を見て嘆いた。隣りで同じように見ている光希は言葉さえ失っているようだ。
「総帥直属の暗殺部隊ね。それにしても凄い数ね」
まりかはベッドに座ったまま眼を青く光らせて神眼でブラインドが下りたままの窓を見ている。
「ま、まぁ、私はあんな数なんて比じゃない程の蔡王の部隊と闘ってきたんだから、余裕よ」
「甘いわよつかさちゃん。総帥直属の暗殺部隊は蔡王の寄せ集めの兵隊達とは訳が違うわ。そうね、強さで言うと、序列20位くらいのものかしらね。それが30人。そのうちどんどん増えるでしょうけどね」
まりかはつかさの希望を打ち砕いた。
「序列20位と同等……水音と同じくらいの強さ」
光希が息を飲んだ。
「安心しなさい。私がいるんだから。あんな奴ら、左手だけで十分よ」
まりかはベッドから立ち上がり、机に置かれていた愛用の刀を左手で掴み、親指で鍔を持ち上げ一気に引き抜いた。
「ん?」
まりかは何かに気付いたようにまた外を見た。窓にはブラインドが下がっているが、神眼でそれさえ透視して外が見えるようだ。
「どうしたんですか? 畦地さん」
「あれは、槍特の子かしら? 男達の後ろの方から馬でこっちに向かって来るわ」
つかさは急いでブラインドの隙間から外を見た。
赤いロングの髪の女の子が見えた。
「綾星!?」
天津風綾星。そして、その他の槍特の見知った面々も一緒に駆けてきていた。
「お友達が多いのね。つかさちゃん」
綾星は1人、黒い男達の前へ出ると大きな声で呼び掛けてきた。
「反逆者の皆さん!! 降伏しませんかぁー? この状況で勝てるわけないですよー? 今ならーまだ許してもらえるかもしれませんよー」
綾星の気の抜けたような喋り方は今の雰囲気に相応しくなく、つかさは少し不快に思った。
「何あの子。ムカつくわね。すぐに殺して来てあげる」
まりかが外へ出ようとしたのでつかさはまりかの腕を掴んだ。
「待ってください。あの子は、綾星は私の友達なんです。ほかの槍特の人達も」
「何よこの期に及んで。だったらあなたは向こう側に行きなさいよ! 一緒に私が殺してあげるわ」
まりかはつかさの言葉に苛立ち睨み付けてきた。
「一度だけ、槍特の皆に話をさせてください。説得してみます」
「馬鹿じゃないの? 無駄よ。そんなの。そんな事してる間にもっと厄介な連中が来るわよ」
「お願いします!」
つかさは頭を下げた。まりかはそれを見て溜息をつきまたベッドに座り込んだ。
「勝手にすれば? 一度だけだからね」
「ありがとうございます!」
つかさはまた頭を下げると部屋から飛び出し、壁を身軽に上ると豪天棒を持ち屋根の上に立った。
男達も綾星も皆つかさに注目した。
「つかささん!?」
「槍特の皆! 聞いて! この学園は賊の青幻と繋がっていたのよ!!」
「つかささん、何を言い出すんですか?」
つかさは続けた。
「この学園、いえ、割天風総帥は青幻と手を組み、青幻の勢力拡大に力を貸し、ゆくゆくは青幻の作る武術国家を乗っ取る事が目的。私達はそれに利用されていたのよ!! ここで今迄犠牲になった生徒達も全ては総帥の野望の為に死んでいったのよ。そんな嘘偽りだらけの学園で今迄と同じような生活が出来る? 私は、いえ、私達は出来ない! あなた達も利用されているの! 今ここで、私達と共に戦い、学園を倒そう! そして私達の手で新しい学園を作ろうよ!」
つかさの演説に黒い男達は黙っていたが、後方に控えていた槍特の生徒達は動揺していた。
「つかささん。その話、誰が信じるんですか? 総帥に拾ってもらった恩を仇で返すつもりですか?」
綾星は少しも表情を変えずにつかさに言った。
「綾星! 私はあなたと闘いたくない! 私の事を信じて! 友達でしょ?」
「友達? ……そう、そうですよ。友達だったんです、だけどあなたは」
綾星は馬の腹を蹴り真っ直ぐ御影の部屋へ突っ込んできた。そして、馬上で立ち上がりそのまま物凄い跳躍でつかさの真上に飛び上がり、その勢いを利用して槍を思いっ切り振り下ろした。
「澄川カンナを選んだじゃないですかぁぁぁぁ!!!」
つかさの豪天棒が綾星の槍を止めた。
そのままつかさと綾星は棒と槍の打ち合いになった。
「綾星!! あなたも友達よ! でも、カンナも友達なの!」
「うるさい!! 1年も一緒にいない女に私達の6年間の友情が負けたなんて許せないわよ!!!」
綾星の目は狂気に支配されていた。一番闘いたくなかった。傷付けたくなかった。普通に闘えば勝てる。でも────
「さて、光希ちゃん。どうする? つかさちゃんの説得は失敗みたいだけど」
まりかは天井を青い眼で見上げながら光希に言った。
「まだ、失敗したわけじゃないです」
「失敗よ。こんなの。来るわよ」
まりかが言うと、窓や扉を蹴り破り、黒い男達が一斉になだれ込んで来た。
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