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4話 しかし、ここで『秋土一鳴』……と出会っていなければどうなっていたのでしょう
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「うわ~!そういう事かァ~!」
「!?」
俺と目が合った瞬間、その女は頭を抱えたしゃがみ込んだ。
「え、何?」
青みがかかったウルフカットをくしゃくしゃにしながら、その女は俺の方をチラチラと見ては視線をそらしを繰り返す。
「な~んで一人目でこんな天敵を引き当てちゃうかなぁ~……」
「……」
さっきまで俺を殺そうとしていた相手が、急に動きを止めた。まさに絶好のチャンスでしかないのだが……俺に出来る事は、ここから逃げる事かなんとか奴の本を奪う事。
しかしこの女、入り口に座り込んでいるため逃げるのは無理。本を奪おうにしても肉弾戦しか俺はできない。
「……」
ので、ただ見つめる事しか出来ませんでした。
「キミ!」
「!」
女は顔を上げると、両手を合わせて頼み込むような表情で言った。
「お願い!降参するから殺さないで!!」
「……は?」
「無理を承知で!」
……さっぱり意味が分からなかった。
「いや、別にそれはいいっていうか、こっちも望んでる事なんだけど……急になんで?俺何もしてないよな?」
「やった!見逃してくれるの!?」
「あぁ……あ、ちょっと待った!」
意味が分からないのはそうだが、せっかく起きたんだから活かさないのはもったいない。
「条件がある」
「なんでも!死ぬ事以外ならなんでもする!」
「……俺の仲間になってくれ」
急に現れて急に攻撃してきて急に降参してきた最高に頭のおかしい女だが……戦闘能力は本物だ。そのはずだ。
ここでこいつを手に入れることができれば──────希望が見えてくる。
「な、仲間?」
「そう。この主人公争奪戦においての俺の協力者になってほしい」
「でも主人公になれるのって一人なんじゃなかったっけ?最後の二人になったら死ねって事すか……!?」
「いや、俺の目的は主人公になる事じゃない」
「へ????」
「今の主人公を守る。それができればいいんだ」
ー ー ー ー ー ー ー
「な~るほどね。参加者11人が死んで、次の主人公が決まると君のお友達は死んじゃう訳で、それを防ぎたいって事か」
「そうだ」
俺はこの女……秋土一鳴の本の最後のページにしっかりとチェックを入れる。
継続☑
「しかしキミも大変だね。あたしなんて『霊能力者』とか大層な題名なのに、『イケメン』とはねぇ……くふふ」
「笑いごとじゃないんだよ……」
「あぁごめんごめん。ここに来たのがあたしで良かったね、キミ」
「……そのことだけど、なんで秋土は俺に相性が悪いんだ?」
「あぁ~……」
秋土は人差し指をくるくると回しながら、説明を始めた。
「霊っていうのはね、生命力に弱いんだよ。子孫を残そうとする力とか、生きている人間として優れているほど、霊は恐れる。憧れる」
既に死んだ存在故に、そういったものに執着してしまうのだろうか。
「キミは特にそう。めっちゃくちゃ顔が良いから女の霊でも男の霊でもすーぐメロメロになっちゃう。あとキミさ、もしかして……」
「……ん?」
くるくると回していた人差し指は、俺の……下腹部の方向へと向かって行った。
そして、耳元で囁くように言った。
「チ●ポでかい?」
「…………」
……霊の攻撃より、ゾッとした。
「何言ってんの、お前……」
「ちょ、ちょっとドン引きすんなよ!で?どうなの?当たってる?」
「……この情報は蓮ただ一人しか知らないはずだ。なぜ分かった……?」
「そこまで仲良いとちょっとキモイね。言ったでしょ、生命を残す力が強いほどって。だから凄腕の霊能力者はチ●ポでかい人が多いのよね~」
「本当に知りたくなかった情報ありがとう」
ケラケラと笑う秋土を横に、俺はホッと息をつく。
……本当に、危なかった。来たのが秋土でよかった。イケメンでよかった。
「でも、これからどうしようか…………」
「……行人クンさ」
秋土は天井を見上げながら、呟いた。
「なんでそこまでしてそのお友達の事助けようとするの?キミが参加しても救えないかもしれないし、キミまで死んじゃうかもしれないんだよ?」
「……なんでって」
俺はまっすぐと秋土を見つめて言った。
「友達だからだよ。俺にとってアイツは全てだ。恋愛も、名声も、金もいらない。……それよりも大切な友情があるんだよ」
「……」
秋土は目をまん丸にしながら、驚いたような表情をしていた。
「びっくり。こんなイケメンなのにそんな考えを持ってるなんて」
「こんなイケメンだからこそ、かもな」
あいつは俺の容姿を羨む事はあっても、それが理由で俺への接し方は変わらなかった。変わらない、替えの利かない、大切な友達。
「というわけで、だ」
「うひぃっ!?」
自分の顔を秋土の顔にグイっと寄せる。
秋土はまぁまぁ可愛い方だと思うが、俺は数多の女に言い寄られた男。この程度では狼狽えない、躊躇わない。
「協力、頼むぞ」
「その顔で頼み込むのは卑怯じゃないかなぁ~……ねぇ、二葉ちゃん……」
こうして強力な味方、秋土一鳴を手に入れたわけだが……運が良かったとしか言いようがない。
───────あの本の題名を、『イケメン』という文字を見た瞬間、死んだと思った。…………でも、これはもしかしたらいけるかもしれない。
俺の勝利まで、残り10冊。
樹愁町の外れ。
『それ』は目を覚ました。
「調整、調整。日本語はこれであっているでしょうか」
深い森林の海のなか、クレーターが咲く。突如飛来してきた鉄塊の周囲には赤く燃え盛る炎。
「おや」
『それ』は近くに倒れている、黒焦げの生物を発見した。
「人間?人間!こんにちは。私は」
そして同時に、その命が既に絶えている事を確認した。
「これは!おぉ、なんという悲劇でしょうか。着陸時に殺してしまったようです。申し訳ありません。埋葬をしてあげましょう」
『それ』は黒焦げの学生に歩み寄り…………そして思い立った。
「いえ、それは『もったいない』だと考えられます。殺したのであれば、命を有効活用します。それが地球人です」
『それ』はその男子生徒を拾い上げ────────。
「『いただきます』」
着用した。
「個体名。個体名は、はい。なるほど」
学ランの裏側に書いてあった文字を、『それ』は認識した。
「私は榊渉です」
数分後、榊渉を名乗るその生命体は一冊の焦げ茶色の本を発見する。
「!?」
俺と目が合った瞬間、その女は頭を抱えたしゃがみ込んだ。
「え、何?」
青みがかかったウルフカットをくしゃくしゃにしながら、その女は俺の方をチラチラと見ては視線をそらしを繰り返す。
「な~んで一人目でこんな天敵を引き当てちゃうかなぁ~……」
「……」
さっきまで俺を殺そうとしていた相手が、急に動きを止めた。まさに絶好のチャンスでしかないのだが……俺に出来る事は、ここから逃げる事かなんとか奴の本を奪う事。
しかしこの女、入り口に座り込んでいるため逃げるのは無理。本を奪おうにしても肉弾戦しか俺はできない。
「……」
ので、ただ見つめる事しか出来ませんでした。
「キミ!」
「!」
女は顔を上げると、両手を合わせて頼み込むような表情で言った。
「お願い!降参するから殺さないで!!」
「……は?」
「無理を承知で!」
……さっぱり意味が分からなかった。
「いや、別にそれはいいっていうか、こっちも望んでる事なんだけど……急になんで?俺何もしてないよな?」
「やった!見逃してくれるの!?」
「あぁ……あ、ちょっと待った!」
意味が分からないのはそうだが、せっかく起きたんだから活かさないのはもったいない。
「条件がある」
「なんでも!死ぬ事以外ならなんでもする!」
「……俺の仲間になってくれ」
急に現れて急に攻撃してきて急に降参してきた最高に頭のおかしい女だが……戦闘能力は本物だ。そのはずだ。
ここでこいつを手に入れることができれば──────希望が見えてくる。
「な、仲間?」
「そう。この主人公争奪戦においての俺の協力者になってほしい」
「でも主人公になれるのって一人なんじゃなかったっけ?最後の二人になったら死ねって事すか……!?」
「いや、俺の目的は主人公になる事じゃない」
「へ????」
「今の主人公を守る。それができればいいんだ」
ー ー ー ー ー ー ー
「な~るほどね。参加者11人が死んで、次の主人公が決まると君のお友達は死んじゃう訳で、それを防ぎたいって事か」
「そうだ」
俺はこの女……秋土一鳴の本の最後のページにしっかりとチェックを入れる。
継続☑
「しかしキミも大変だね。あたしなんて『霊能力者』とか大層な題名なのに、『イケメン』とはねぇ……くふふ」
「笑いごとじゃないんだよ……」
「あぁごめんごめん。ここに来たのがあたしで良かったね、キミ」
「……そのことだけど、なんで秋土は俺に相性が悪いんだ?」
「あぁ~……」
秋土は人差し指をくるくると回しながら、説明を始めた。
「霊っていうのはね、生命力に弱いんだよ。子孫を残そうとする力とか、生きている人間として優れているほど、霊は恐れる。憧れる」
既に死んだ存在故に、そういったものに執着してしまうのだろうか。
「キミは特にそう。めっちゃくちゃ顔が良いから女の霊でも男の霊でもすーぐメロメロになっちゃう。あとキミさ、もしかして……」
「……ん?」
くるくると回していた人差し指は、俺の……下腹部の方向へと向かって行った。
そして、耳元で囁くように言った。
「チ●ポでかい?」
「…………」
……霊の攻撃より、ゾッとした。
「何言ってんの、お前……」
「ちょ、ちょっとドン引きすんなよ!で?どうなの?当たってる?」
「……この情報は蓮ただ一人しか知らないはずだ。なぜ分かった……?」
「そこまで仲良いとちょっとキモイね。言ったでしょ、生命を残す力が強いほどって。だから凄腕の霊能力者はチ●ポでかい人が多いのよね~」
「本当に知りたくなかった情報ありがとう」
ケラケラと笑う秋土を横に、俺はホッと息をつく。
……本当に、危なかった。来たのが秋土でよかった。イケメンでよかった。
「でも、これからどうしようか…………」
「……行人クンさ」
秋土は天井を見上げながら、呟いた。
「なんでそこまでしてそのお友達の事助けようとするの?キミが参加しても救えないかもしれないし、キミまで死んじゃうかもしれないんだよ?」
「……なんでって」
俺はまっすぐと秋土を見つめて言った。
「友達だからだよ。俺にとってアイツは全てだ。恋愛も、名声も、金もいらない。……それよりも大切な友情があるんだよ」
「……」
秋土は目をまん丸にしながら、驚いたような表情をしていた。
「びっくり。こんなイケメンなのにそんな考えを持ってるなんて」
「こんなイケメンだからこそ、かもな」
あいつは俺の容姿を羨む事はあっても、それが理由で俺への接し方は変わらなかった。変わらない、替えの利かない、大切な友達。
「というわけで、だ」
「うひぃっ!?」
自分の顔を秋土の顔にグイっと寄せる。
秋土はまぁまぁ可愛い方だと思うが、俺は数多の女に言い寄られた男。この程度では狼狽えない、躊躇わない。
「協力、頼むぞ」
「その顔で頼み込むのは卑怯じゃないかなぁ~……ねぇ、二葉ちゃん……」
こうして強力な味方、秋土一鳴を手に入れたわけだが……運が良かったとしか言いようがない。
───────あの本の題名を、『イケメン』という文字を見た瞬間、死んだと思った。…………でも、これはもしかしたらいけるかもしれない。
俺の勝利まで、残り10冊。
樹愁町の外れ。
『それ』は目を覚ました。
「調整、調整。日本語はこれであっているでしょうか」
深い森林の海のなか、クレーターが咲く。突如飛来してきた鉄塊の周囲には赤く燃え盛る炎。
「おや」
『それ』は近くに倒れている、黒焦げの生物を発見した。
「人間?人間!こんにちは。私は」
そして同時に、その命が既に絶えている事を確認した。
「これは!おぉ、なんという悲劇でしょうか。着陸時に殺してしまったようです。申し訳ありません。埋葬をしてあげましょう」
『それ』は黒焦げの学生に歩み寄り…………そして思い立った。
「いえ、それは『もったいない』だと考えられます。殺したのであれば、命を有効活用します。それが地球人です」
『それ』はその男子生徒を拾い上げ────────。
「『いただきます』」
着用した。
「個体名。個体名は、はい。なるほど」
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