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第二章 『盗賊団のアジト』
第4話 主
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チョロチョロとした滝の音が夜の森の中に響き渡っている。
そんな中、俺の耳に感じられるのはティナがわずかに漏らす吐息の音だった。
今、ティナは片膝を地面につけた俺の目の前に立ち、俺の額に自分の額をくっつけていた。
ティナの体は緊張から小刻みに震えている。
「ビビッてんじゃねえ。このくらいで。取って食ったりしねえよ」
「わ、分かってますよ。恥ずかしいから喋らないで下さい。何で……バレットさんはそんな平然としていられるんですか。ちょっと釈然としません」
「はぁ? 俺だって嫌に決まってんじゃねえか。俺が天使のおまえとひっついていたいと思うか? ねえよ。髪の毛一本だってな」
「もう……私だって嫌ですよ」
「何で運営本部はこんなまどろっこしい上に馬鹿馬鹿しい方法を採ったんだ」
「それは……こんなに近付いてもバレットさんが私を傷つけないか、そして修復術の力を持つに値する人物かどうかを試すためだと思います」
「チッ。相変わらず居丈高な奴らだぜ。気に食わねえ」
つい数秒前まで熱くなっていた額はもうすっかり元の温度に戻っていて、この馬鹿馬鹿しい儀式めいた作業が滞りなく終わったことを示していた。
「そろそろいいんじゃねえのか」
「は、はい」
俺がそう促すとティナはホッと安堵したように表情を緩めて俺の額から顔を離そうとする。
その時、ちょうどティナの後方からパメラが戻って来た。
「あの崖上の滝口。裏はまったくのハリボテでござった……ハッ」
俺たちの様子を見たパメラはその目をこれ以上ないくらいに見開き、全身を硬直させてその場で足を止めた。
その顔が見る見るうちに赤く染まり、口元を震わせながらパメラはサッと俺たちから目を逸らす。
「か、かたじけない。拙者、覗くつもりはなかったでござるよ。その……見てしまったでござる」
その言葉を聞いたティナは飛び上がって驚き、慌てて振り返る。
その耳は真っ赤に染まっていた。
「パ、パメラさん? こ、これは……ち、違いますから」
「いえ、恥じることはござらん。ティナ殿とバレット殿は良い仲でござったか。拙者、気遣いが足らず申し訳ござらん」
「だ、だから違いますって。こ、これはあるプログラムの施術のために、額と額をくっつけ合わせていただけです」
「何の何の。ごまかさなくともいいのでござるよ。少々驚いたでござるが、天使と悪魔が夫婦となることもあるのでござろう? かの天使長イザベラ殿と魔王ドレイク殿も種族を超えた愛で結ばれ、夫婦となったという話でござるし」
「そ、それはそうですけど、それとこれとは全然違いますよ。天使と悪魔とかいう以前に、私とバレットさんが……そんなことあるわけないですから」
「いやいやティナ殿は見た目にそぐわず、どこか良妻めいた貫禄を感じさせるでござるよ。バレット殿が何やかんや言いながらティナ殿の言葉に耳を貸すのは、そういうわけでござったか」
「ですから~」
ティナは紅潮した顔でしどろもどろになりながら俺に助けを求めてきた。
「バレットさんも何とか言って下さい」
俺は内心でため息をついた。
馬鹿馬鹿しくて何も言う気にならねえ。
ここは敵のアジトの目の前だぞ。
「おまえら。くだらねえ話をしている場合か。時と場合を考えろ。今からたった3人で敵のアジトに殴り込みをかけるんだ。相手が盗賊風情だと思ってナメてると返り討ちにあうぞ」
くそっ。
なんで俺がこんな小娘どもに説教しなきゃならねえんだ。
何だかムカついてきたぞ。
俺は目を白黒させるパメラを無視し、有無を言わせぬ口調でティナに作戦開始を告げる。
「ティナ。巨大樹から滝つぼに変わっちまったが、俺たちのやることは変わらねえ。さっさと始めるぞ」
俺の言葉にティナはハッとしてアイテム・ストックから保護色マントを取り出した。
それは以前にティナが使っていたアイテムで、それを羽織ると周囲の景色に溶け込み、完全ではないが姿を消すことが出来る。
近くでじっと見ればバレてしまうが、少し離れた場所からなら敵の目をごまかすことが出来る可能性は十分にある。
短時間であればなおさらだ。
ティナは保護色マントをかぶると滝つぼの10メートルほど上まで上昇した。
こうして見ると確かに時折、風にはためく保護色マントの下にティナの体が見え隠れする。
もし敵の見張りが注意して目を凝らしていたとしたら、その存在に気付くことは決して難しくないだろう。
俺はアイテム・ストックから分銅付きのロープやら何やらを取り出し、急な事態に備える。
隣では今だ落ち着かない表情でパメラが俺を見ていた。
チッ。
「おいパメラ。いつまで呆けてやがる」
「バレット殿。先ほどの儀式とらやは……」
「まだそんなこと言ってやがるのか。俺があのチビと睦み合うと思うか? あるわけねえだろ」
「そ、そうでござるな……取り乱してしまって、お恥ずかしい限りでござる」
「フンッ。説明は後だ。というか説明なんてするつもりはねえよ。どうせ後で分かることだ」
俺の言葉にようやく頷くとパメラは滝つぼの上空に目をやる。
そこでは今まさにティナが修復術をこの滝つぼ全体に施そうとしていた。
だが、そこで俺はわずかに水面が震えるのを見た。
次の瞬間、ザバッと大きな水音が上がる。
そして水中から巨大な黒い影が飛び出してきやがった。
それは巨大な蛇のような怪物で背中側が黒く、腹側は白い。
そして細長い胴を持つそれは、明らかに上空10メートルにいるティナを狙っている。
ティナの奴は保護色マントで姿を隠しているにもかかわらずだ。
弾かれたようにパメラが絶叫した。
「ティナ殿!」
「ひああああっ!」
保護色マントで姿を隠したティナは咄嗟に身をよじったようでこれを間一髪でかわす。
しかしその身から翻る保護色マントは、水面から垂直ジャンプを見せたそのデカブツに喰い破られちまった。
「きゃあっ!」
姿を見せたティナは空中をキリキリ舞いしながら水面に落下していく。
「チッ!」
俺は即座に木の枝から飛び上がりながら握っていた分銅付きロープを落下してくるティナに向けて放り投げる。
錘の付いたロープはティナの体に巻きつき、俺はそれを思い切り引っ張った。
「フンッ」
体重の軽いティナを軽々と引き寄せた俺は、その体を受け止めた。
そしてティナを喰い損ねたデカブツは、大きな跳躍から落下して、そのまま再び大きな飛沫を上げて、水の中へと飛び込んで行った。
ティナは俺の腕から離れて目を丸くしながら波立つ水面を見下ろす。
「あ、危なかった。あ、ありがとうございます」
「おまえのチッコイ体じゃ、あいつも餌には物足りねえだろう」
そう言って俺は滝つぼに目をやる。
白く泡立った水面に黒く長い影が蠢いている。
「あ、あれって……」
「ウナギだ」
そう。
一瞬の出来事だったが俺はハッキリと見た。
滝つぼから飛び出してきたそいつは巨大なウナギだった。
その大きさは異常で、長い胴周りは俺よりも太い。
まるで大蛇だ。
この滝つぼの主ってやつか。
「あいつがアジトの見張り役ってわけか。そこらの堕天使どもより遥かに強力な用心棒だぜ」
水面から一瞬にして10メートルの高さまで跳ね上がったさっきの勢いから見ると、滝つぼの上に出た途端にパクリとやられそうだぜ。
アジトの出入口は断崖絶壁にあるため、後方から回り込もうにもどうしても滝つぼの上に出る必要があるな。
「この滝つぼを正常化するにしてもあの邪魔者を排除してからだな」
そう言う俺にティナは頷き、その隣にはパメラが並び立つ。
「とはいえ、ウナギが水の中にいる間は攻撃出来ぬでござるな。ウナギが飛び上がってから着水するまでの間に攻撃を仕掛ける必要があるのでござるが……」
「おいティナ。水面の上に出て囮役をやれ。おまえがウナギに食われている間に俺とパメラが攻撃する」
「笑えない冗談やめて下さい! 大蛇の時と同じじゃないですか!」
「チッ。そんなに顔を引きつらせてビクビクしていやがると、大蛇の時みてえに絡み付かれて引きずり込まれるぜ」
そう言うと俺は小娘どもに告げた。
「俺が先陣を切る。おまえらはここで待機して状況に応じて動け」
「承知した」
そこで俺はアイテム・ストックから森トカゲの干し肉を取り出し、そいつを滝つぼの上に放り投げた。
それは水面に落ちてプカリと浮かんだ。
途端に再び水の中からウナギが跳ね上がり、干し肉に食らいついた。
さっき石コロを投げ込んだ時は一切反応がなかったが、姿の見えないティナやこの森トカゲの干し肉には反応しやがる
こいつは食える獲物かどうか判別する頭があるようだな。
勢い余って滝つぼの上空まで巨大なウナギは跳ね上がり、俺は目を見張ってその姿に注目した。
その長い体は全長10メートル近くはあるだろう。
だというのに、水面から飛び出すその速度はまるで弓から放たれた矢のような速さだ。
全身がバネのような筋肉で覆われているからこそできる芸当だろう。
こいつに体に巻き付かれたら面倒だぞ。
華奢なティナなんかは全身の骨がへし折られるかもしれねえ。
こういう強敵をぶっ殺してみたいという衝動が俺の胸にウズウズと湧き上がる。
「行くぞ!」
そう言うと俺は飛び上がった巨大ウナギが水面に向かって落下していくのを見計らって、一気に滝つぼの上へと飛び出した。
勢いよく飛び上がった時とは違い、落ちてくる際にウナギに出来ることは少ない。
よし。
このタイミングなら間違いない。
魔刃脚で頭を斬り落としてやる!
「魔……ぐっ!」
右足の魔刃脚で巨大ウナギを斬り裂こうとした俺だが、左足に突然黒い縄状のものが巻き付き、俺は一気に水面に向かって引きずり下ろされた。
「うおあああああっ!」
そんな中、俺の耳に感じられるのはティナがわずかに漏らす吐息の音だった。
今、ティナは片膝を地面につけた俺の目の前に立ち、俺の額に自分の額をくっつけていた。
ティナの体は緊張から小刻みに震えている。
「ビビッてんじゃねえ。このくらいで。取って食ったりしねえよ」
「わ、分かってますよ。恥ずかしいから喋らないで下さい。何で……バレットさんはそんな平然としていられるんですか。ちょっと釈然としません」
「はぁ? 俺だって嫌に決まってんじゃねえか。俺が天使のおまえとひっついていたいと思うか? ねえよ。髪の毛一本だってな」
「もう……私だって嫌ですよ」
「何で運営本部はこんなまどろっこしい上に馬鹿馬鹿しい方法を採ったんだ」
「それは……こんなに近付いてもバレットさんが私を傷つけないか、そして修復術の力を持つに値する人物かどうかを試すためだと思います」
「チッ。相変わらず居丈高な奴らだぜ。気に食わねえ」
つい数秒前まで熱くなっていた額はもうすっかり元の温度に戻っていて、この馬鹿馬鹿しい儀式めいた作業が滞りなく終わったことを示していた。
「そろそろいいんじゃねえのか」
「は、はい」
俺がそう促すとティナはホッと安堵したように表情を緩めて俺の額から顔を離そうとする。
その時、ちょうどティナの後方からパメラが戻って来た。
「あの崖上の滝口。裏はまったくのハリボテでござった……ハッ」
俺たちの様子を見たパメラはその目をこれ以上ないくらいに見開き、全身を硬直させてその場で足を止めた。
その顔が見る見るうちに赤く染まり、口元を震わせながらパメラはサッと俺たちから目を逸らす。
「か、かたじけない。拙者、覗くつもりはなかったでござるよ。その……見てしまったでござる」
その言葉を聞いたティナは飛び上がって驚き、慌てて振り返る。
その耳は真っ赤に染まっていた。
「パ、パメラさん? こ、これは……ち、違いますから」
「いえ、恥じることはござらん。ティナ殿とバレット殿は良い仲でござったか。拙者、気遣いが足らず申し訳ござらん」
「だ、だから違いますって。こ、これはあるプログラムの施術のために、額と額をくっつけ合わせていただけです」
「何の何の。ごまかさなくともいいのでござるよ。少々驚いたでござるが、天使と悪魔が夫婦となることもあるのでござろう? かの天使長イザベラ殿と魔王ドレイク殿も種族を超えた愛で結ばれ、夫婦となったという話でござるし」
「そ、それはそうですけど、それとこれとは全然違いますよ。天使と悪魔とかいう以前に、私とバレットさんが……そんなことあるわけないですから」
「いやいやティナ殿は見た目にそぐわず、どこか良妻めいた貫禄を感じさせるでござるよ。バレット殿が何やかんや言いながらティナ殿の言葉に耳を貸すのは、そういうわけでござったか」
「ですから~」
ティナは紅潮した顔でしどろもどろになりながら俺に助けを求めてきた。
「バレットさんも何とか言って下さい」
俺は内心でため息をついた。
馬鹿馬鹿しくて何も言う気にならねえ。
ここは敵のアジトの目の前だぞ。
「おまえら。くだらねえ話をしている場合か。時と場合を考えろ。今からたった3人で敵のアジトに殴り込みをかけるんだ。相手が盗賊風情だと思ってナメてると返り討ちにあうぞ」
くそっ。
なんで俺がこんな小娘どもに説教しなきゃならねえんだ。
何だかムカついてきたぞ。
俺は目を白黒させるパメラを無視し、有無を言わせぬ口調でティナに作戦開始を告げる。
「ティナ。巨大樹から滝つぼに変わっちまったが、俺たちのやることは変わらねえ。さっさと始めるぞ」
俺の言葉にティナはハッとしてアイテム・ストックから保護色マントを取り出した。
それは以前にティナが使っていたアイテムで、それを羽織ると周囲の景色に溶け込み、完全ではないが姿を消すことが出来る。
近くでじっと見ればバレてしまうが、少し離れた場所からなら敵の目をごまかすことが出来る可能性は十分にある。
短時間であればなおさらだ。
ティナは保護色マントをかぶると滝つぼの10メートルほど上まで上昇した。
こうして見ると確かに時折、風にはためく保護色マントの下にティナの体が見え隠れする。
もし敵の見張りが注意して目を凝らしていたとしたら、その存在に気付くことは決して難しくないだろう。
俺はアイテム・ストックから分銅付きのロープやら何やらを取り出し、急な事態に備える。
隣では今だ落ち着かない表情でパメラが俺を見ていた。
チッ。
「おいパメラ。いつまで呆けてやがる」
「バレット殿。先ほどの儀式とらやは……」
「まだそんなこと言ってやがるのか。俺があのチビと睦み合うと思うか? あるわけねえだろ」
「そ、そうでござるな……取り乱してしまって、お恥ずかしい限りでござる」
「フンッ。説明は後だ。というか説明なんてするつもりはねえよ。どうせ後で分かることだ」
俺の言葉にようやく頷くとパメラは滝つぼの上空に目をやる。
そこでは今まさにティナが修復術をこの滝つぼ全体に施そうとしていた。
だが、そこで俺はわずかに水面が震えるのを見た。
次の瞬間、ザバッと大きな水音が上がる。
そして水中から巨大な黒い影が飛び出してきやがった。
それは巨大な蛇のような怪物で背中側が黒く、腹側は白い。
そして細長い胴を持つそれは、明らかに上空10メートルにいるティナを狙っている。
ティナの奴は保護色マントで姿を隠しているにもかかわらずだ。
弾かれたようにパメラが絶叫した。
「ティナ殿!」
「ひああああっ!」
保護色マントで姿を隠したティナは咄嗟に身をよじったようでこれを間一髪でかわす。
しかしその身から翻る保護色マントは、水面から垂直ジャンプを見せたそのデカブツに喰い破られちまった。
「きゃあっ!」
姿を見せたティナは空中をキリキリ舞いしながら水面に落下していく。
「チッ!」
俺は即座に木の枝から飛び上がりながら握っていた分銅付きロープを落下してくるティナに向けて放り投げる。
錘の付いたロープはティナの体に巻きつき、俺はそれを思い切り引っ張った。
「フンッ」
体重の軽いティナを軽々と引き寄せた俺は、その体を受け止めた。
そしてティナを喰い損ねたデカブツは、大きな跳躍から落下して、そのまま再び大きな飛沫を上げて、水の中へと飛び込んで行った。
ティナは俺の腕から離れて目を丸くしながら波立つ水面を見下ろす。
「あ、危なかった。あ、ありがとうございます」
「おまえのチッコイ体じゃ、あいつも餌には物足りねえだろう」
そう言って俺は滝つぼに目をやる。
白く泡立った水面に黒く長い影が蠢いている。
「あ、あれって……」
「ウナギだ」
そう。
一瞬の出来事だったが俺はハッキリと見た。
滝つぼから飛び出してきたそいつは巨大なウナギだった。
その大きさは異常で、長い胴周りは俺よりも太い。
まるで大蛇だ。
この滝つぼの主ってやつか。
「あいつがアジトの見張り役ってわけか。そこらの堕天使どもより遥かに強力な用心棒だぜ」
水面から一瞬にして10メートルの高さまで跳ね上がったさっきの勢いから見ると、滝つぼの上に出た途端にパクリとやられそうだぜ。
アジトの出入口は断崖絶壁にあるため、後方から回り込もうにもどうしても滝つぼの上に出る必要があるな。
「この滝つぼを正常化するにしてもあの邪魔者を排除してからだな」
そう言う俺にティナは頷き、その隣にはパメラが並び立つ。
「とはいえ、ウナギが水の中にいる間は攻撃出来ぬでござるな。ウナギが飛び上がってから着水するまでの間に攻撃を仕掛ける必要があるのでござるが……」
「おいティナ。水面の上に出て囮役をやれ。おまえがウナギに食われている間に俺とパメラが攻撃する」
「笑えない冗談やめて下さい! 大蛇の時と同じじゃないですか!」
「チッ。そんなに顔を引きつらせてビクビクしていやがると、大蛇の時みてえに絡み付かれて引きずり込まれるぜ」
そう言うと俺は小娘どもに告げた。
「俺が先陣を切る。おまえらはここで待機して状況に応じて動け」
「承知した」
そこで俺はアイテム・ストックから森トカゲの干し肉を取り出し、そいつを滝つぼの上に放り投げた。
それは水面に落ちてプカリと浮かんだ。
途端に再び水の中からウナギが跳ね上がり、干し肉に食らいついた。
さっき石コロを投げ込んだ時は一切反応がなかったが、姿の見えないティナやこの森トカゲの干し肉には反応しやがる
こいつは食える獲物かどうか判別する頭があるようだな。
勢い余って滝つぼの上空まで巨大なウナギは跳ね上がり、俺は目を見張ってその姿に注目した。
その長い体は全長10メートル近くはあるだろう。
だというのに、水面から飛び出すその速度はまるで弓から放たれた矢のような速さだ。
全身がバネのような筋肉で覆われているからこそできる芸当だろう。
こいつに体に巻き付かれたら面倒だぞ。
華奢なティナなんかは全身の骨がへし折られるかもしれねえ。
こういう強敵をぶっ殺してみたいという衝動が俺の胸にウズウズと湧き上がる。
「行くぞ!」
そう言うと俺は飛び上がった巨大ウナギが水面に向かって落下していくのを見計らって、一気に滝つぼの上へと飛び出した。
勢いよく飛び上がった時とは違い、落ちてくる際にウナギに出来ることは少ない。
よし。
このタイミングなら間違いない。
魔刃脚で頭を斬り落としてやる!
「魔……ぐっ!」
右足の魔刃脚で巨大ウナギを斬り裂こうとした俺だが、左足に突然黒い縄状のものが巻き付き、俺は一気に水面に向かって引きずり下ろされた。
「うおあああああっ!」
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