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第二章 天国の丘
第16話 投獄! 反逆者アルフレッド一行
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天界からの物資を受け取るという天使たちの作戦は完全に失敗に終わった。
悪魔たちの襲撃を懸命に食い止めた天使たちだったけれど、唐突に現れた巨大竜によって戦況は一変してしまったんだ。
巨大竜が口から吐き出す熱波によって多くの天使が命を落とし、そして十台あった物資運搬の荷馬車は……闇の魔女ミランダによって破壊され失われたという。
僕とジェネットとアリアナは天使たちによって天樹の塔へと連行された。
昨夜、盛大な宴で歓待されたその場所に僕ら3人は再び腰を下ろしていた。
昨夜と違い、客人の身分ではなく容疑者として強固な鎖で拘束されながら。
「以上の容疑にてミランダ、ジェネット、アリアナ、アルフレッドの4名を告発する」
ライアン主任の冷然とした声が鳴り響き、遠巻きに僕らを見ている天使たちの視線は昨日とは打って変わっていた。
動揺、戸惑い、失望、憤怒、そうしたマイナスの感情が彼らの間に渦巻いているのがよく分かる。
今、僕ら4人にはいくつかの嫌疑がかけられていた。
ミランダが天界からの物資を破壊し、ジェネットとアリアナは天使の命を奪い、僕はそれに加担したという容疑だ。
さらにミランダには護衛の天使や荷馬車の天馬を殺害した疑いもかけられている。
だけど当のミランダはこの場所にいなかった。
あの森林での戦いで森の中へと降下して以降、僕らは彼女の姿を見ていない。
だからミランダが荷馬車を攻撃して物資を破壊したというのが本当なのか、彼女の口からは何も聞けていないんだ。
現在、彼女は行方不明ということで天使たちが捜索を続けている。
ミランダ……。
僕は複雑な気持ちだった。
行方不明事件のこともあるから彼女の無事を確認したかったけれど、天使たちに見つかったら僕らのように拘束されてこの場所へ引き立てられるかもしれない。
いや、ミランダのことだから、おとなしく拘束なんてされずに天使たちに抵抗して、さらに罪を重ねることに……ううっ。
ありえるから怖い。
でもいくらミランダが闇の魔女といっても、何の理由もなく天使たちの物資を攻撃するなんてことは僕には考えられなかった。
何かそうせざるを得ない理由があったはずなんだ
僕がそんなことを考えて落ち着きなく身じろぎをしているの見て、隣に座るジェネットが優しく諭してくれた。
「アル様。落ち着いて下さい。今は我慢ですよ」
さすがにジェネットは取り乱すことなく整然としているけれど、アリアナは不安げに表情を曇らせている。
あの時、天使に化けた悪魔たちを取り押さえた現場で、多くの天使たちに囲まれた僕らは懸命に誤解を解こうとした。
だけど疑いを晴らすことは出来ず、僕らは拘束されることとなった。
絶対に誤解なのに……。
僕は辛抱できずにライアン主任に再度訴えようとした。
だけどライアン主任もそんな僕の気配を察し、機先を制するように言う。
「アルフレッド殿。今はおとなしくしているほうが良い。私とてあなた方を頭から疑っているわけではない。公正な裁判で無罪を勝ち取ってもらいたいところだ。ただ今は状況が悪い」
「状況?」
「そうだ。聞けばあの巨大竜はあなた方の世界の住人らしいな」
ライアン主任の言葉に僕は頷いた。
巨大竜と化していたのは僕らと同じゲーム世界から来た竜人ノアだったんだ。
巨大竜から元の姿に戻った彼女は、どこからともなく現れた女の悪魔に連れ去られていった。
「ぼ、僕らも彼女があんな姿になっていることは知りませんでした」
「ふむ。あなた方にも言い分はあるだろう。だが我が同胞たちは不満を募らせている。あなた方のゲームの住人がこの天国の丘のゲームバランスを大きく狂わせてしまったことを。あの巨大竜の規格外の大きさ。そしてダメージ判定までもが限定されている特殊仕様。あれではゲームにならん」
ライアン主任の言いたいことは僕にも分かる。
ノアがどんな経緯で巨大竜となって悪魔たちに与したのか分からないけれど、あれではゲームにならない。
そしてそのノアと同じゲームからやって来た僕らに対する天使たちの感情が明らか悪化しているこの状況で、さらに彼らの反感を買うような態度を取るべきではない。
ライアン主任はそう言っているんだ。
「案ずることはない。裁判といってもあなた方の身を害するようなことはない。仮に有罪判決が出たとしても、追放処分となってこのゲームから追い出されるのが関の山だろう。よくも悪くもあなた方はしょせん部外者だからな」
そう言うとライアン主任はジェネットに目を向けた。
「ジェネット殿も神妙に収監されていただけるか?」
終始口を閉ざしていたジェネットは整然と頷く。
「仕方がないですね。私たちは無実を証明する材料に乏しいですから」
「左様か。あなたが理性的で助かる」
ライアン主任はそう言うと、僕らを牢に移送するよう部下たちに指示を出した。
ちなみに天使長のイザベラさんはこの場にいない。
今回の戦いによって多くの天使たちが命を落としてしまったため、瞑想室という部屋にこもって天使たちの復活作業にかかりきりだということだ。
イザベラさんが瞑想室に入っている間は何人たりとも彼女に接触することは出来ないという。
だけど僕はホッとしていた。
イザベラさんが容疑者となった僕らに対してどんな眼差しを向けてくるのか、考えるだけで少し怖かったからだ。
とにかくこういう状況なので、ライアン主任が主導してこの場を仕切っていた。
こうして僕らは牢に収監されることになってしまったんだ。
僕もジェネットもアリアナも武器はもちろん、すべてのアイテムを没収され、魔力や法力などの力が使えなくなるよう特殊な拘束具を首にはめられた上で、1人ずつ別々の牢屋に入れられることになった。
キャメロン少年から貸与されたEライフルも当然のように没収されているんだけど、事前に確認した銃のマニュアルによって僕は知っていた。
Eライフルには回帰機能があり、どこか離れた場所にあっても所有者として登録された僕の手に呼び寄せることが出来るらしい。
便利な機能だけど、それでも今それを使うわけにはいかない。
そんなことをすれば天使たちに保管されている僕のアイテム・ストックからEライフルが消え、すぐに異変に気付かれてしまうからだ。
不本意ながら囚人の身なので、武器を取ればそれは反逆と見なされ、余計に厳しい処分を受けることとなるだろう。
同じように収監されているジェネットやアリアナにも当然ながら余波が及ぶ。
成す術なく僕はため息をついた。
「今はおとなしくしてるしかないか。はぁ……まさかここで牢に入ることになるなんて」
そう呟くと僕は1人、牢の中に座り込んで膝を抱えた。
うぅ。
ついに僕も前科一犯か。
いや、弱気になっている場合じゃない。
やっていないものはやっていないんだ。
悪魔が偽装していたはずのあの2人の天使を捕まえたのだって、天使たちの物資を守るためなんだし。
「どう考えてもおかしいよな」
結果としてあの2人が認識コードによって天使だと証明されたのだとしたら、あのとき僕らが聞いた2人の会話は何だったんだろう。
取り押さえただけで突然死んじゃうのもおかしいし。
そして悪魔が天使に化けるために使った小さな筒状のアイテムはいつの間にか無くなっていた。
証拠隠滅のために消去されたんだろうか。
念のために今、あの2人の行動ログを解析してもらっているけれど、望みは薄いかもしれない。
ここまで証拠がないと、僕らが作り話をしていると疑われても仕方がない。
だけど……色々と出来過ぎている。
僕らをこういう状態に陥れるための罠としか思えない。
まさか……天使たちが?
そうは思いたくないけれど、疑念は頭の中から離れない。
ジェネットはとうにその疑念を抱いているはずだ。
それでも彼女が落ち着いて収監されたのは何か考えがあるからなんだろう。
くそぉ。
もっとジェネットたちと話し合う時間が欲しかったけれど、森の中からずっと縛られていたし天使たちの監視があったから、ロクに話も出来なかったことが悔やまれる。
この状況から僕に出来ることはない。
座して裁きを待つか、ジェネットが行動を起こしてくれるのを祈るほかない。
「はぁ。ミランダは今どうしてるのかな」
僕は溜息をつくと、行方の分からないミランダに思いを馳せた。
ミランダがこの場にいたら、間違いなく大暴れしていただろうなぁ。
そんなことを思いながら僕は自分が収監されている牢屋を見た。
天樹の塔特有の作り方で、壁も床も天井も、そして僕を閉じ込めるための格子でさえも木で作られている。
そんな格子の外には見張りの若い天使が1人立っていて、格子をじっと見つめる僕を見咎めて言った。
「無駄だぞ。木製だと思って甘く見るなよ。天樹で作られた牢は絶対に破れない」
「そんなこと考えてませんよ」
僕は力なくそう言うと目を閉じた。
まあ、このままだと追放処分だけど、それは元の世界に戻れるってことだ。
ジェネットの言っていた行方不明事件は未解決のままになるけど、それも仕方ないかな。
そんなことを考えながら僕が牢の中で悶々と過ごしていると、ふと気が付いた時には見張りの天使が別の人に交代していた。
あれ?
いつの間に?
どのくらい時間が経ったんだろう。
僕、寝ちゃってたのかな。
その新たな見張りの天使はさっきの若い見張りとは違い、年老いた老天使だった。
僕に背を向けて一切の声に耳を貸さなかった若い天使と違い、格子の間から老天使は僕にジロジロと無遠慮な視線を向けてくる。
ちょ、ちょっと気持ち悪いな。
「な、何でしょうか?」
「どうだ? 囚人になった気分は」
老天使はニンマリと笑顔を見せると、そんなことを聞いてきた。
「は? ど、どうだと言われても……見ての通り落ち込んでますよ」
「天使たちのために戦ったのに何でこんな扱いを受けなきゃならないんだ。ってところか。天使に失望したか?」
老天使はそう言うとヒョッヒョッヒョと不気味な笑い声を上げた。
た、確かにそう思っていたけれど、何でいきなりそんなことを言ってくるんだ?
このおじいさんは。
「あの……からかってるなら、やめてくれませんか」
「天使だからと言って博愛主義者ばかりではない。自分の価値観を脅かす者を排除したがるところは人間や悪魔と何ら変わりないさ」
そう言うと老天使は格子の隙間から何かを投げ入れてきた。
「な、何を……」
床に落ちたそれは何か液体の入った小さなスポイト型の容器と、手のひらサイズほどの一枚の白い板だった。
「差し入れだ。その薬はお前が前にも使ったことのあるやつだぞ。砂漠都市ジェルスレイムでな。板のほうは触れば分かる」
老天使の言葉に僕は思わず目を丸くした。
え?
こ、この人、何でそんな事情を……あれ?
そこで僕は雷に打たれたように立ち上がった。
目の前にいる人物は……。
「あっ! も、もしかして……神様?」
神様。
それは僕らのゲームの運営会社で顧問役をしている偉い人であり、ジェネットを生み出した人物だった。
「ご明答。久しぶりだな。アルフレッド」
老天使の姿をした神様はそう言うと口髭を指でつまみながらニヤリと笑った。
悪魔たちの襲撃を懸命に食い止めた天使たちだったけれど、唐突に現れた巨大竜によって戦況は一変してしまったんだ。
巨大竜が口から吐き出す熱波によって多くの天使が命を落とし、そして十台あった物資運搬の荷馬車は……闇の魔女ミランダによって破壊され失われたという。
僕とジェネットとアリアナは天使たちによって天樹の塔へと連行された。
昨夜、盛大な宴で歓待されたその場所に僕ら3人は再び腰を下ろしていた。
昨夜と違い、客人の身分ではなく容疑者として強固な鎖で拘束されながら。
「以上の容疑にてミランダ、ジェネット、アリアナ、アルフレッドの4名を告発する」
ライアン主任の冷然とした声が鳴り響き、遠巻きに僕らを見ている天使たちの視線は昨日とは打って変わっていた。
動揺、戸惑い、失望、憤怒、そうしたマイナスの感情が彼らの間に渦巻いているのがよく分かる。
今、僕ら4人にはいくつかの嫌疑がかけられていた。
ミランダが天界からの物資を破壊し、ジェネットとアリアナは天使の命を奪い、僕はそれに加担したという容疑だ。
さらにミランダには護衛の天使や荷馬車の天馬を殺害した疑いもかけられている。
だけど当のミランダはこの場所にいなかった。
あの森林での戦いで森の中へと降下して以降、僕らは彼女の姿を見ていない。
だからミランダが荷馬車を攻撃して物資を破壊したというのが本当なのか、彼女の口からは何も聞けていないんだ。
現在、彼女は行方不明ということで天使たちが捜索を続けている。
ミランダ……。
僕は複雑な気持ちだった。
行方不明事件のこともあるから彼女の無事を確認したかったけれど、天使たちに見つかったら僕らのように拘束されてこの場所へ引き立てられるかもしれない。
いや、ミランダのことだから、おとなしく拘束なんてされずに天使たちに抵抗して、さらに罪を重ねることに……ううっ。
ありえるから怖い。
でもいくらミランダが闇の魔女といっても、何の理由もなく天使たちの物資を攻撃するなんてことは僕には考えられなかった。
何かそうせざるを得ない理由があったはずなんだ
僕がそんなことを考えて落ち着きなく身じろぎをしているの見て、隣に座るジェネットが優しく諭してくれた。
「アル様。落ち着いて下さい。今は我慢ですよ」
さすがにジェネットは取り乱すことなく整然としているけれど、アリアナは不安げに表情を曇らせている。
あの時、天使に化けた悪魔たちを取り押さえた現場で、多くの天使たちに囲まれた僕らは懸命に誤解を解こうとした。
だけど疑いを晴らすことは出来ず、僕らは拘束されることとなった。
絶対に誤解なのに……。
僕は辛抱できずにライアン主任に再度訴えようとした。
だけどライアン主任もそんな僕の気配を察し、機先を制するように言う。
「アルフレッド殿。今はおとなしくしているほうが良い。私とてあなた方を頭から疑っているわけではない。公正な裁判で無罪を勝ち取ってもらいたいところだ。ただ今は状況が悪い」
「状況?」
「そうだ。聞けばあの巨大竜はあなた方の世界の住人らしいな」
ライアン主任の言葉に僕は頷いた。
巨大竜と化していたのは僕らと同じゲーム世界から来た竜人ノアだったんだ。
巨大竜から元の姿に戻った彼女は、どこからともなく現れた女の悪魔に連れ去られていった。
「ぼ、僕らも彼女があんな姿になっていることは知りませんでした」
「ふむ。あなた方にも言い分はあるだろう。だが我が同胞たちは不満を募らせている。あなた方のゲームの住人がこの天国の丘のゲームバランスを大きく狂わせてしまったことを。あの巨大竜の規格外の大きさ。そしてダメージ判定までもが限定されている特殊仕様。あれではゲームにならん」
ライアン主任の言いたいことは僕にも分かる。
ノアがどんな経緯で巨大竜となって悪魔たちに与したのか分からないけれど、あれではゲームにならない。
そしてそのノアと同じゲームからやって来た僕らに対する天使たちの感情が明らか悪化しているこの状況で、さらに彼らの反感を買うような態度を取るべきではない。
ライアン主任はそう言っているんだ。
「案ずることはない。裁判といってもあなた方の身を害するようなことはない。仮に有罪判決が出たとしても、追放処分となってこのゲームから追い出されるのが関の山だろう。よくも悪くもあなた方はしょせん部外者だからな」
そう言うとライアン主任はジェネットに目を向けた。
「ジェネット殿も神妙に収監されていただけるか?」
終始口を閉ざしていたジェネットは整然と頷く。
「仕方がないですね。私たちは無実を証明する材料に乏しいですから」
「左様か。あなたが理性的で助かる」
ライアン主任はそう言うと、僕らを牢に移送するよう部下たちに指示を出した。
ちなみに天使長のイザベラさんはこの場にいない。
今回の戦いによって多くの天使たちが命を落としてしまったため、瞑想室という部屋にこもって天使たちの復活作業にかかりきりだということだ。
イザベラさんが瞑想室に入っている間は何人たりとも彼女に接触することは出来ないという。
だけど僕はホッとしていた。
イザベラさんが容疑者となった僕らに対してどんな眼差しを向けてくるのか、考えるだけで少し怖かったからだ。
とにかくこういう状況なので、ライアン主任が主導してこの場を仕切っていた。
こうして僕らは牢に収監されることになってしまったんだ。
僕もジェネットもアリアナも武器はもちろん、すべてのアイテムを没収され、魔力や法力などの力が使えなくなるよう特殊な拘束具を首にはめられた上で、1人ずつ別々の牢屋に入れられることになった。
キャメロン少年から貸与されたEライフルも当然のように没収されているんだけど、事前に確認した銃のマニュアルによって僕は知っていた。
Eライフルには回帰機能があり、どこか離れた場所にあっても所有者として登録された僕の手に呼び寄せることが出来るらしい。
便利な機能だけど、それでも今それを使うわけにはいかない。
そんなことをすれば天使たちに保管されている僕のアイテム・ストックからEライフルが消え、すぐに異変に気付かれてしまうからだ。
不本意ながら囚人の身なので、武器を取ればそれは反逆と見なされ、余計に厳しい処分を受けることとなるだろう。
同じように収監されているジェネットやアリアナにも当然ながら余波が及ぶ。
成す術なく僕はため息をついた。
「今はおとなしくしてるしかないか。はぁ……まさかここで牢に入ることになるなんて」
そう呟くと僕は1人、牢の中に座り込んで膝を抱えた。
うぅ。
ついに僕も前科一犯か。
いや、弱気になっている場合じゃない。
やっていないものはやっていないんだ。
悪魔が偽装していたはずのあの2人の天使を捕まえたのだって、天使たちの物資を守るためなんだし。
「どう考えてもおかしいよな」
結果としてあの2人が認識コードによって天使だと証明されたのだとしたら、あのとき僕らが聞いた2人の会話は何だったんだろう。
取り押さえただけで突然死んじゃうのもおかしいし。
そして悪魔が天使に化けるために使った小さな筒状のアイテムはいつの間にか無くなっていた。
証拠隠滅のために消去されたんだろうか。
念のために今、あの2人の行動ログを解析してもらっているけれど、望みは薄いかもしれない。
ここまで証拠がないと、僕らが作り話をしていると疑われても仕方がない。
だけど……色々と出来過ぎている。
僕らをこういう状態に陥れるための罠としか思えない。
まさか……天使たちが?
そうは思いたくないけれど、疑念は頭の中から離れない。
ジェネットはとうにその疑念を抱いているはずだ。
それでも彼女が落ち着いて収監されたのは何か考えがあるからなんだろう。
くそぉ。
もっとジェネットたちと話し合う時間が欲しかったけれど、森の中からずっと縛られていたし天使たちの監視があったから、ロクに話も出来なかったことが悔やまれる。
この状況から僕に出来ることはない。
座して裁きを待つか、ジェネットが行動を起こしてくれるのを祈るほかない。
「はぁ。ミランダは今どうしてるのかな」
僕は溜息をつくと、行方の分からないミランダに思いを馳せた。
ミランダがこの場にいたら、間違いなく大暴れしていただろうなぁ。
そんなことを思いながら僕は自分が収監されている牢屋を見た。
天樹の塔特有の作り方で、壁も床も天井も、そして僕を閉じ込めるための格子でさえも木で作られている。
そんな格子の外には見張りの若い天使が1人立っていて、格子をじっと見つめる僕を見咎めて言った。
「無駄だぞ。木製だと思って甘く見るなよ。天樹で作られた牢は絶対に破れない」
「そんなこと考えてませんよ」
僕は力なくそう言うと目を閉じた。
まあ、このままだと追放処分だけど、それは元の世界に戻れるってことだ。
ジェネットの言っていた行方不明事件は未解決のままになるけど、それも仕方ないかな。
そんなことを考えながら僕が牢の中で悶々と過ごしていると、ふと気が付いた時には見張りの天使が別の人に交代していた。
あれ?
いつの間に?
どのくらい時間が経ったんだろう。
僕、寝ちゃってたのかな。
その新たな見張りの天使はさっきの若い見張りとは違い、年老いた老天使だった。
僕に背を向けて一切の声に耳を貸さなかった若い天使と違い、格子の間から老天使は僕にジロジロと無遠慮な視線を向けてくる。
ちょ、ちょっと気持ち悪いな。
「な、何でしょうか?」
「どうだ? 囚人になった気分は」
老天使はニンマリと笑顔を見せると、そんなことを聞いてきた。
「は? ど、どうだと言われても……見ての通り落ち込んでますよ」
「天使たちのために戦ったのに何でこんな扱いを受けなきゃならないんだ。ってところか。天使に失望したか?」
老天使はそう言うとヒョッヒョッヒョと不気味な笑い声を上げた。
た、確かにそう思っていたけれど、何でいきなりそんなことを言ってくるんだ?
このおじいさんは。
「あの……からかってるなら、やめてくれませんか」
「天使だからと言って博愛主義者ばかりではない。自分の価値観を脅かす者を排除したがるところは人間や悪魔と何ら変わりないさ」
そう言うと老天使は格子の隙間から何かを投げ入れてきた。
「な、何を……」
床に落ちたそれは何か液体の入った小さなスポイト型の容器と、手のひらサイズほどの一枚の白い板だった。
「差し入れだ。その薬はお前が前にも使ったことのあるやつだぞ。砂漠都市ジェルスレイムでな。板のほうは触れば分かる」
老天使の言葉に僕は思わず目を丸くした。
え?
こ、この人、何でそんな事情を……あれ?
そこで僕は雷に打たれたように立ち上がった。
目の前にいる人物は……。
「あっ! も、もしかして……神様?」
神様。
それは僕らのゲームの運営会社で顧問役をしている偉い人であり、ジェネットを生み出した人物だった。
「ご明答。久しぶりだな。アルフレッド」
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魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
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