甘×恋クレイジーズ

枕崎 純之助

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第三章 トロピカル・カタストロフィー

第2話 決戦前夜

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 恋華れんかが日本を訪れてから5日目の夜。
 総合病院の一件以来、3日ぶりに受け取った予言に恋華れんかは目を丸くした。

『明日、日本時間午後8時。ポルタス・レオニス(現地時間午後7時)』

 予言の示す予想外な場所に恋華れんかは思わずうなってしまう。

「まさか外国なんて……」

 日本国内での作戦行動を念頭に置いていた恋華れんかは意表を突かれて思考をめぐらせた。

「今からちょうど24時間後。ポルタス・レオニスって東南アジアよね。飛行機で何時間かかるんだっけ」

 それを調べるために取り出したケータイがふいに着信をげるメロディーをかなで始めた。
 聞き慣れたその音が恋華れんかに電話の主がだれであるのかを伝えている。

「イクリシア先生だわ」

 恋華れんかが電話に出ると相手は開口一番に問いを投げかけてくる。

『予言は受け取ったか?』
「はい。まさか海外とは思いませんでした」

 そう言う恋華れんかにイクリシアは快活な声でげる。

『今回は黒幕くろまくに手がとどくはずだ。カノンも情報の精査に相当入れ込んでたみたいだからな』

 氷上ひかみ身柄みがら予言士よげんしカノンのもとに送って数日、恋華れんかが思っていたよりも早く予言は訪れた。
 カノンの予言の的確さは恋華れんかもよく知っている。
 自分は彼女の予言を信じて行動するのみだ、と恋華れんかはいつでもそう思っていた。

「感謝します。必ず敵をつかまえてみせます」

 断固とした口調でそう言う恋華れんかにイクリシアは満足げな声でげる。

『明日の午前10時発の航空機を手配しておいた。現地までの飛行時間は7時間ほどだ。明日は朝イチで空港へ向かってくれ。それから現地に着いたらまずはジミー・マッケイガン神父を訪ねるんだ。彼が現地での案内役をしてくれる。それから神父には第3の霊具を預けておくから、現地でそれを受け取ってくれ。詳細しょうさいは後でメールで送っておく。じゃあな』

 そう言うとイクリシアからの電話は切れた。

「第3の霊具? 新型かしら……」

 そう言いながら恋華れんかは電話を置くと、即座に部屋を出てとなりの部屋のとびらをノックした。
 すぐにその部屋の住人たる甘太郎あまたろうが姿を現す。
 この数日間、体を休めることに専念したため甘太郎あまたろう恋華れんか同様に元の体調を取り戻していた。

「どうかしましたか?」

 リラックスした表情でそう言う甘太郎あまたろう恋華れんかは用件をげた。
 今度の作戦は都内某所ぼうしょへ向かうのとはワケが違う。
 空を飛び海を越えて異国へと向かうのだ。
 未成年の甘太郎あまたろうを連れて行くのは恋華れんかとしても躊躇ちゅうちょしてしまうところだ。

「アマタローくん。次の目的地は東南アジアなの。でも私との契約内容には外国への出張は明記されてなかったから……」
 
 ためらいがちにそう言う恋華れんかの言葉を手で制して甘太郎あまたろうは満面の笑みを浮かべた。

「いいですね。あ、俺パスポート持ってますから大丈夫ですよ」

 いやな顔一つせずおどろきもしない甘太郎あまたろう恋華れんか遠慮えんりょがちにたずねる。

「い、一緒に来てくれる?」
「もちろん。事件を解決するまでどこへでもお供しますよ。俺は恋華れんかさんのボディーガードなんだから」
 
 そう言って甘太郎あまたろうは笑った。
 その笑顔に恋華れんかはホッとむねで下ろす。

「ありがとう。頼りにしてる。アマタローくん」

 そう言って心からの感謝を込めて微笑ほほえ恋華れんかの顔は、普段よりも少しだけ大人っぽく見えた。
 その表情が思った以上にまぶしくて、甘太郎あまたろうは思わずドキッとしてしまう。

「じ、じゃあ明日の準備しないと」
「うん。明日は朝6時にノックするからね」

 そう言って二人はそれぞれの部屋で旅支度たびじたくを始めることとなった。
 気候もちょうどよく、夜の空気が心地よいおだやかな夜だった。
 だが、明日の夜は決して甘くない南国の熱気と倒すべき敵が二人を待ち構えているのだ。
 決戦の時を前にして、恋華れんか甘太郎あまたろうもその表情は緊張きんちょうの色を帯びて引きまっていた。
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