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第一章 魔道拳士アリアナ
第6話 ゾンビ穴をふさげ!
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廃城の中では冷気が渦巻き、その中心には戦う少女の姿があった。
アリアナが鋭く拳を振るうとゾンビは一瞬で凍り付いて砕け散る。
彼女は氷結拳でゾンビを次々と倒していた。
さらに彼女の中距離攻撃用スキルである氷刃槍がゾンビ穴周辺のゾンビたちを吹き飛ばしていく。
アリアナの猛攻でゾンビの数は一気に減っていたけど、相変わらずゾンビ穴からは続々とゾンビが湧き出ていた。
「ああもう! キリがない!」
アリアナはそう叫びながらもゾンビを倒す手を止めない。
確かにこのままじゃどうにもならない。
当初、アリアナはゾンビ穴を彼女の上位スキルである永久凍土で塞ぐつもりだった。
だけど永久凍土はキャラクターのいるマスには展開出来ないんだ。
彼女がスキルを発動させて穴を塞ぐまでのほんの数秒、穴からゾンビが出て来ない瞬間がどうしても必要だった。
どうしたらいい?
必死に戦うアリアナの背後で僕は懸命に頭を捻った。
ゾンビ穴を塞ぐには?
僕の頭の中に様々な可能性が浮かんでは消えていく。
そして僕は策とも呼べないような最低最悪の方法を思いついてしまった。
「……それしかないか。でも嫌だなぁ」
ああ。
嫌なことを思いついちゃったよ。
気が重いなぁ。
僕は自分の発案に重苦しいため息をつき、アリアナを取り巻くゾンビの輪が途切れたところを狙って彼女の元へ駆け寄った。
「アリアナ!」
「アル君?」
「今から僕が言うことを実行して」
僕が手短に自分の考えを話すとアリアナは信じられないという顔をする。
「あ、あなた。アタマおかしいんじゃないの?」
そうですね。
ひどい言われようだけど自分でもそう思うから反論できないよ。
「とにかく今、説明した通りにして。そうすれば数秒間は穴が塞がるから、その隙に永久凍土で穴を塞いで!」
僕はアリアナの返答を待たずに駆け出した。
向かう先は玉座だけど、前方には当然のようにゾンビの群れが待ち構えている。
だけどアリアナが最大出力で氷刃槍を繰り出すおかげで、ゾンビ穴周辺のゾンビたちは一時的に一掃された。
その間に僕は全速力で玉座前のゾンビ穴に駆け寄っていく。
うぅ。
本当は怖くてたまらない。
でも僕には他に出来ることなんてない。
だったらやることはひとつだ!
「うおあああああっ!」
僕は叫び声を上げ、無我夢中でゾンビ穴に飛び込んだ。
タイミングを合わせてアリアナが氷刃槍の放射をストップする。
ゾンビ穴はちょうど人1人分の大きさで、僕は頭までズボッと穴にはまった。
うまい具合にゾンビ穴が僕の体で塞がる。
僕は決死の思いで絶叫した。
「今だ! アリアナァ!」
その途端だった。
穴の奥底から突き上げるようにゾンビが現れ、僕の胴体や腕、足に噛みついた。
イダダダダっ!
痛い痛い痛い痛ぃぃぃっ!
腕やら足やら腰やら尻やらをゾンビに噛みつかれて僕は激痛に悶え苦しんだ。
「イッギヤァァァァァァァァァァァ!」
さっきも言ったけどライフゲージを持たない僕は死なないけど痛みは感じるんです!
ハムハムッ!
ハムハムッ!
イダダダダダダッ!
ハムハムッ!
痛すぎるっ!
ゾンビにハムハム咀嚼されて超絶イタい!
でも少しの我慢だ。
すぐにアリアナがこの穴を塞いでくれる。
ん?
でも塞がれた後、僕どうなっちゃうんだろう?
激痛に苛まれながらそんなことを考えた瞬間だった。
僕のいるゾンビ穴の四方が永久凍土に囲まれていく。
あれっ?
打ち合わせと違うぞ?
状況を飲み込めない僕をよそに永久凍土は上方に次々と積み上がり、まるで煙突のような状態になった。
そして積み上がりきった後に上から中を覗き込んできたのはアリアナだった。
さらに彼女は永久凍土の煙突内側の壁面に両手両足をつっかえ棒のようにして、中にいる僕の元へ降りてこようとしている。
「アル君! 今行くから!」
「アリアナ。何してるの? 早く穴を塞いで!」
そう言う僕の声を無視してアリアナはスルスルっと降りてくると僕に手を差し伸べてくれたんだ。
「私がそうやって穴を塞いだら、一体あなたはどうするつもりだったの?」
「そ、それは……」
「私、あなたをこんな場所に置き去りにするような非人道的プレイヤーにはなりたくないから」
アリアナはそう言ってくれた。
僕はそれがとても嬉しかったけど、彼女が気に病む必要なんてないんだ。
だって僕は……。
「アリアナは何も気にしなくていいんだよ。だって僕はNPCだから」
プレイヤーはNPCのことなんて気にする必要はないんだ。
僕はそう言ったけどアリアナは首を横に振る。
「そんな人間みたいなこと言うあなたを放っておけるわけないでしょ」
そう言うと彼女は僕の手を掴んで上まで一気に引き上げてくれた。
僕の体がゾンビ穴から抜け出た途端、穴からゾンビが湧き出してきた。
でも周囲を全部、永久凍土に囲まれているから、ゾンビは閉じ込められたまま身動きがとれない。
アリアナは僕を連れて永久凍土の煙突を登り切り、最後にてっぺんを永久凍土で蓋した。
これでゾンビ穴の真上には吹き出し口をふさがれた煙突が、さながら塔のようにそびえ立った。
ついにゾンビ穴を塞ぐことに成功し、アリアナは見事にミッションコンプリートしたんだ。
「やったぁ!」
「ミッション・クリアーだ!」
僕らは嬉しくて思わず嬌声を上げながらハイタッチを交わした。
「アリアナ。おめでとう。それに助けてくれてありがとう」
「無茶なことするから、こっちが腰抜かすかと思った。ビックリさせないでよ、もう。でも……こっちこそありがとう。アル君のおかげよ」
アリアナはそう言うと少し神妙な顔になって僕を見た。
んん?
何だろう。
アリアナは少しだけ考え込むようにしていたけど、やがて意を決したようにこう言った。
「アル君。私、あなたに謝らないといけないことがあるの」
アリアナが鋭く拳を振るうとゾンビは一瞬で凍り付いて砕け散る。
彼女は氷結拳でゾンビを次々と倒していた。
さらに彼女の中距離攻撃用スキルである氷刃槍がゾンビ穴周辺のゾンビたちを吹き飛ばしていく。
アリアナの猛攻でゾンビの数は一気に減っていたけど、相変わらずゾンビ穴からは続々とゾンビが湧き出ていた。
「ああもう! キリがない!」
アリアナはそう叫びながらもゾンビを倒す手を止めない。
確かにこのままじゃどうにもならない。
当初、アリアナはゾンビ穴を彼女の上位スキルである永久凍土で塞ぐつもりだった。
だけど永久凍土はキャラクターのいるマスには展開出来ないんだ。
彼女がスキルを発動させて穴を塞ぐまでのほんの数秒、穴からゾンビが出て来ない瞬間がどうしても必要だった。
どうしたらいい?
必死に戦うアリアナの背後で僕は懸命に頭を捻った。
ゾンビ穴を塞ぐには?
僕の頭の中に様々な可能性が浮かんでは消えていく。
そして僕は策とも呼べないような最低最悪の方法を思いついてしまった。
「……それしかないか。でも嫌だなぁ」
ああ。
嫌なことを思いついちゃったよ。
気が重いなぁ。
僕は自分の発案に重苦しいため息をつき、アリアナを取り巻くゾンビの輪が途切れたところを狙って彼女の元へ駆け寄った。
「アリアナ!」
「アル君?」
「今から僕が言うことを実行して」
僕が手短に自分の考えを話すとアリアナは信じられないという顔をする。
「あ、あなた。アタマおかしいんじゃないの?」
そうですね。
ひどい言われようだけど自分でもそう思うから反論できないよ。
「とにかく今、説明した通りにして。そうすれば数秒間は穴が塞がるから、その隙に永久凍土で穴を塞いで!」
僕はアリアナの返答を待たずに駆け出した。
向かう先は玉座だけど、前方には当然のようにゾンビの群れが待ち構えている。
だけどアリアナが最大出力で氷刃槍を繰り出すおかげで、ゾンビ穴周辺のゾンビたちは一時的に一掃された。
その間に僕は全速力で玉座前のゾンビ穴に駆け寄っていく。
うぅ。
本当は怖くてたまらない。
でも僕には他に出来ることなんてない。
だったらやることはひとつだ!
「うおあああああっ!」
僕は叫び声を上げ、無我夢中でゾンビ穴に飛び込んだ。
タイミングを合わせてアリアナが氷刃槍の放射をストップする。
ゾンビ穴はちょうど人1人分の大きさで、僕は頭までズボッと穴にはまった。
うまい具合にゾンビ穴が僕の体で塞がる。
僕は決死の思いで絶叫した。
「今だ! アリアナァ!」
その途端だった。
穴の奥底から突き上げるようにゾンビが現れ、僕の胴体や腕、足に噛みついた。
イダダダダっ!
痛い痛い痛い痛ぃぃぃっ!
腕やら足やら腰やら尻やらをゾンビに噛みつかれて僕は激痛に悶え苦しんだ。
「イッギヤァァァァァァァァァァァ!」
さっきも言ったけどライフゲージを持たない僕は死なないけど痛みは感じるんです!
ハムハムッ!
ハムハムッ!
イダダダダダダッ!
ハムハムッ!
痛すぎるっ!
ゾンビにハムハム咀嚼されて超絶イタい!
でも少しの我慢だ。
すぐにアリアナがこの穴を塞いでくれる。
ん?
でも塞がれた後、僕どうなっちゃうんだろう?
激痛に苛まれながらそんなことを考えた瞬間だった。
僕のいるゾンビ穴の四方が永久凍土に囲まれていく。
あれっ?
打ち合わせと違うぞ?
状況を飲み込めない僕をよそに永久凍土は上方に次々と積み上がり、まるで煙突のような状態になった。
そして積み上がりきった後に上から中を覗き込んできたのはアリアナだった。
さらに彼女は永久凍土の煙突内側の壁面に両手両足をつっかえ棒のようにして、中にいる僕の元へ降りてこようとしている。
「アル君! 今行くから!」
「アリアナ。何してるの? 早く穴を塞いで!」
そう言う僕の声を無視してアリアナはスルスルっと降りてくると僕に手を差し伸べてくれたんだ。
「私がそうやって穴を塞いだら、一体あなたはどうするつもりだったの?」
「そ、それは……」
「私、あなたをこんな場所に置き去りにするような非人道的プレイヤーにはなりたくないから」
アリアナはそう言ってくれた。
僕はそれがとても嬉しかったけど、彼女が気に病む必要なんてないんだ。
だって僕は……。
「アリアナは何も気にしなくていいんだよ。だって僕はNPCだから」
プレイヤーはNPCのことなんて気にする必要はないんだ。
僕はそう言ったけどアリアナは首を横に振る。
「そんな人間みたいなこと言うあなたを放っておけるわけないでしょ」
そう言うと彼女は僕の手を掴んで上まで一気に引き上げてくれた。
僕の体がゾンビ穴から抜け出た途端、穴からゾンビが湧き出してきた。
でも周囲を全部、永久凍土に囲まれているから、ゾンビは閉じ込められたまま身動きがとれない。
アリアナは僕を連れて永久凍土の煙突を登り切り、最後にてっぺんを永久凍土で蓋した。
これでゾンビ穴の真上には吹き出し口をふさがれた煙突が、さながら塔のようにそびえ立った。
ついにゾンビ穴を塞ぐことに成功し、アリアナは見事にミッションコンプリートしたんだ。
「やったぁ!」
「ミッション・クリアーだ!」
僕らは嬉しくて思わず嬌声を上げながらハイタッチを交わした。
「アリアナ。おめでとう。それに助けてくれてありがとう」
「無茶なことするから、こっちが腰抜かすかと思った。ビックリさせないでよ、もう。でも……こっちこそありがとう。アル君のおかげよ」
アリアナはそう言うと少し神妙な顔になって僕を見た。
んん?
何だろう。
アリアナは少しだけ考え込むようにしていたけど、やがて意を決したようにこう言った。
「アル君。私、あなたに謝らないといけないことがあるの」
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