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第一話 僕と主任

絶頂

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「はぁ……はぁ」
 大きく息を吸い込み、ぼんやりと自分の白濁が絡んだ主任の長い指を見つめた。
 主任は僕の白濁でべとべとな指のまま、履いたままだった自分のズボンを下着ごと引き下ろした。

 さっき絶頂に達したばかりだとは思えないほど上を向いた屹立が姿を現わして、俺は緊張で一気に視界がはっきりした。

「入れるぞ」
 先端を入口にあてがったのも一瞬で、一気に奥まで貫かれる。

「あっ……」
 初めは軽く揺れているだけだったのが、次第に動きは激しさを増す。その度に主任の息も上がっていくのが分かる。
 前屈みになっていた主任が僕の顔の横に腕をつき、一層奥まで突き上げる。

「あ、あぁ……」
「たまには気の利いたことを言ってみろよ」
 耳元で囁かれて背筋が震える。だけど囁かれたことではなくて、その内容のほうが問題だった。

「気の利いたっ……ことって……」
 与えられる刺激に耐えながら、少し体を起こした主任を見上げ尋ねる。

「そうだなっ……」
 主任は動きながらしばらく考え、

「もっと激しくして下さい、とか?」
 にやりと意地悪く笑い主任はゆっくりと動く。激しい動きのままだと言わせたい言葉を僕が言えないからだろう。

 分かってはいたけどなかなか言えない。そんな言葉屈辱的だった。

「ほら早く。もうすぐ夜警さんの巡回の時間だから戻らないと」
 どこまで意地の悪い人なんだ、この人は。
 下から見上げる僕の目は恐らく細くなって睨んでいるだろうと思われる。

 だけど主任には通じなかった。

「ほら」
「あっ……」
 与えられた突然の刺激に思わず声を上げる。
 一旦腰を引いたかと思えば、なんの予告もなく奥まで突き上げてくる。

「ほら、ほら」
 意地悪い笑みを崩さず、ほら、と言葉と同時に何度も何度も間隔を置いて短く突き上げる。その度に俺の口からは「あっ、あっ」と甘ったるい声が漏れる。
 刺激が短くて物足りない。頭では嫌がっていても、体が刺激を求めている。

 もっと激しくして欲しいと求めている。

「あ……もっと、激しく、して……下さいっ」
 もう自分の体じゃなくなったかのように、勝手に口が動いてしまっていた。
 主任は満足そうに口の端を歪めると、力強く僕の腰を掴む。主任の屹立が抜けそうなくらい腰を引き、一気に奥まで貫いた。

「あぁ……」
 生まれた摩擦が気持ち良くて、はぁ……と思わず溜息が出る。
 主任は先程とは比べ物にならないくらいに激しく僕の中を突いて責め立てる。

「あ、やぁ……やだっ」
「何が嫌なんだよ。自分から激しくしてくれって言ったんだろ」
 その言葉に僕は何も言い返すことが出来ない。

「もう、時間もないし、な、そろそろっ」
 気のせいだろうか、主任の声もどこか上擦ったものに聞こえて思わず主任を見上げた。
 でも主任は顔を見せずに、僕の顔の傍で腕をつき奥まで押し上げた。

「あぁ!」
 不意に、主任の先端が一番気持ちいいところを掠めた。

「……やっぱりここがいいんだな」
「あっ、やめ……」
 主任は新しいおもちゃを見つけた子どものように目を輝かせると、何度も同じところをついてきた。

「あぁ!」
 幾度も敏感なところを突かれ、声にならない悲鳴があがる。

 主任はそんな僕の様子を楽しそうに眺めると、なお一層動きを速めた。

「……っ! あ、もうっ、もうイク……」
「イけよ。嫌いな相手に抱かれて、イッちまえ」
 主任の嫌味にも真っ白になった頭ではなんの反論も浮かんでこなかった。

「あっ、あっ……!」
 我慢できずに欲望を吐き出してしまった。ぴちゃっと、主任と僕の腹の間に白濁が飛ぶ。

「はぁ……あっ」
余韻に浸る暇もなく更に攻め立てられ、僕の口からは再び嬌声が漏れる。

「……」
 主任も限界が近いのか、口数が少なくなっている。

 何回目か分からない突き上げの後。

「……っ」
 小さな呻き声が頭上で聞こえ、主任が前屈みになる。体の奥で熱いものが溢れるのを感じ取れた。

「はぁ、はぁ……」
 主任が俺の上に覆い被さって肩で息をしている間、僕も呼吸を整えながら頭上に見える天井を眺めていた。

 視界が滲むのを、気のせいにしながら。
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