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第二章 ~第二の砦~

第十二話 馬鹿

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 俺は両手を広げるように伸ばし、ベッドに寝転びながら魔王様の話を聞く。
 こんなにテンションが高いのは寿司のおかげなのか?

「で、何だよ」
「寿司を食べている時に、お前の動きを封じる魔法を空中に見えないよう放ったんだよ」
「ほうほう。あの、動かなくなったやつだな」

 確かに、あれは驚いた。急に動かなくなるもんだから。
 何だよ、魔王様。調子が悪かったんじゃないのか?

「だがな、俺は調子が悪かったはずだ。しかも、あの魔法は小さい炎の玉を飛ばすより、難しい魔法だぞ」
「本当か……?! つまり……力を取り戻したってことか?」
「それは、ちょっと違うな……」

 じゃあ、何だって言うんだ。
 急に調子が良くなったり、悪くなったりするのか?

「俺は、今日、あの安いパンではなく『高いお寿司』を食べた」
「そうだな。それが関係してるのか?」
「あれを食った瞬間に力が湧いてきた……と、いうか力が漲る感じがしたんだよ。だから、あの魔法が使えると思って、試してみたら実際に成功した」
「魔王様が美味しいって感じたり、高いものだったら、魔力は回復するってことか?」

 魔力、魔王様の力を保つには食べ物が関係してくるってことか。
 RPGの魔力回復アイテムみたいだな。つまり、砦を有利に攻略したければ、こいつに美味いものを食べさせろ。ってことだよな。
 益々、俺の金が危険になってきたぜ。

「そうなるのかもな……あんだけ安い物ばかり食べさせられたんだし……」
「悪かったな!」

 嫌味か! バイトもしてない、学生なんだから、金がたくさんあるわけないだろ!

「この際だから、謝っておくが、この前の砦に入る前や入った後。お前は体力が減るなー……と、思わなかった?」
「思った」
「それは……! 俺のせいだ! いやー……体力が減るのが早いし、魔力も無いしでなー! ははっ!」
「だからか……ふざけんな!!」
「おーっと、力が戻った状態の俺には勝てないぜぇ」
「体格差がある」

 どこまでも腹立つ魔王様だ!!

「ならば、かかってくるがいい!」
「言われな……ごめんなさい!」

 魔王様は小さい体格ながらに炎の玉を手の平に出し、こちらに身構えていた。
 危ねぇよ! 火事が起きたら、どうするんだ!

「ふはははは! 試し撃ちさせてくれー!」
「ちょ! 待てって! せめて場所を選……」

 時、既に遅し。
 小さい炎の玉は放射線を描くように部屋の本棚へ飛んでいった。
 さようなら。俺の漫画。

「……じゃねぇよ! 火事! 火事起きてるから!」

 漫画本に木製の本棚に火が移り燃え始める。
 やばいやばい。砦を守る前に自分の家を守らせろ!

「早く! 早く! 早く止めろよ!」

 慌てる。ただただ慌てる。落ち着いていられるわけがない。

「安心しろ。『ウォーター』」

 バシャッ

 火は浄化されるように一気に消えた。俺の漫画と本棚も浄化されるよう、綺麗に消えた。

「ふざけるな!! 漫画を返せ!」
「分かった。分かった。『ケア』」

 本と本棚は何事も無かったかのよう、元に戻った。

「ふぅ……危ないだろ!! 家がなくなったらどうすんだよ!!」
「悪い、悪い。そして、もう一つ大事な報告がある」
「絶対に今度からするなよ! で、何だ?」
「今ので魔力を使っ……」

 俺は魔王様の頭を思いっきり叩いた。
 魔王様が泣言を言いながら、ぐちぐち、文句を言ってくる。
 だが、俺は悪いと思わない。
 そんな魔王様に呆れた、俺は寝る準備をして目を瞑った。

 次の朝。
 眠くない! 気分が最高にいい。そんな俺は徒歩で学校に向かっていた。
 今日は魔王様の食料も買わなくていいからな!!

「ん、おはよ」
「胡桃(くるみ)、おはよう。具合の方は大丈夫か?」
「うん……! 大丈夫だよ」

 少し暗い顔をしたが、それを振り払うように笑顔で、そう言った。
 まぁ、気にしなくていいか。

 いつも通りのたわいのない話をして、学校に着く。

 準備を済ませ、あっという間に授業が始まる。一限、二限……と面白くもない授業を乗り越えると、飯の時間になった。
 認めてはいないが、友達の少ない俺は一人で飯を食べることもある。
 今日はそんな日だった。

「ふぁあぁ」

 飯を食べ終えてからはすることが無い。
 校内でスマホは使用出来るのだが、ソシャゲはしてないのでいじることも無い。

 今日は数少ない友達も休みだし、何をするか……。
 そう考えていると校内に一つのチャイムが鳴った。

 ピーンポーンパーンポーン

「桐生 壮一さん。桐生 壮一さん。直ちに、生徒会室まで来てください。テストの件に関して話があります。繰り返します。桐生――」

 それは生徒会長の声だった。
 自分で言うのも、なんだが、成績優秀者の俺はこうして何かと呼ばれることがある。
 生徒会長を受け継いで欲しい……。だ、とか、成績が優秀なんだから、学校のために……。とか、正直言って、面倒くさい。
 生徒会室と聞いて、先生がいないと思いきや、数人いることも多々あるし。
 俺は嫌々、席を立ち、生徒会室まで向かう。
 この時に周りから、される目は「凄い……」というよう軽く引いてるような目。
 羨ましがっているのか、妬ましいのか、厳つい目。
 そんなものだ。
 正直言って、キツいし、勘弁して欲しい。

 そんな事を考えていると、あっという間に生徒会室の前まで来ていた。

 俺は、そんな重苦しい扉に手をかけた。
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