33 / 112
一章
11a
息継ぎする間もなくキスをされて、眩暈がした。僅かに唇が離れたとき、「ナオ」と胸を押す。
「な、慰めるって……ええ、と…」
『それに触れられたところ、僕で上書きして』
「上書き……?」
戸惑いを見せれば、手を取られる。そのまま指がするりと絡み、銀色の睫毛がゆっくり上下して、赤い瞳が俺を映す。
『駄目…?同じところに触れるだけだよ』
小首を傾げ、ナオは言う。
懇願するような眼差しだ。浮気疑惑が漂っている手前、ナオを蔑ろに出来ない。このアンドロイドは俺の返答によって自己破壊に走るんだ。またそんな事をされたら……
俺は視線をうろうろと彷徨わせ、慎重に言葉を選んだ。
「…………………………さ、触るだけなら……」
『…いい?』
美しい顔にパァッと喜色が浮かぶ。
“触る触らない”で押し問答をしていても仕方ない。俺は「そのくらいなら別に……」と呟き、おずおずと首を縦に振った。
…いや、待てよ
この部屋には犬飼が眠ってる。触るだけとはいえ、犬飼に触れられた箇所は殆ど“そこ”だ。
いつ目を覚ますか分からないんだ。変なタイミングで目を覚まされたら絶対に気まずい。ここではない場所に移動したい。そう顔に書いて、ナオが着ている薄手のニットをちょんと引っ張った。
「いいけど、別の部屋に……」
するとナオは『2人きりになりたい?』と銀髪を揺らし、白皙の頬に桃色を滲ませる。
「え。う、うーん、まあ……」
口をモゴモゴとさせる。そういうことじゃないが、そういうことにしよう。すると、するりとバスローブの中に手を入れ込まれ、「わ…」と声を上げてよろめけば、そのままベッドに尻もちをついた。
『大丈夫。これに邪魔されない方法がある』
「……?」
“これ”と指差すのは犬飼だ。ナオはどうしても犬飼を名前で呼びたくないらしい。
『空間遮断をする』
「く、くうかんしゃだん…?」
『空中を飛び交う分子を調整して膜を張るんだ。膜の中は目の錯覚により外から見えないし、声も聞こえない』
「…なんだそれ………」
聞いたこともない技術だ。俺は目をパチクリさせた。
ナオは空中に指を滑らせた。手のひらから淡い光が帯び、その光はぐるりと俺たちを囲む。光はやがて透明な膜になる。シャボン玉の中に閉じ込められたような、そんな不思議な空間に包まれた。
『どう?これなら安心?』
まるで魔法だ。こんな技術があるのなら透明人間にもなれるじゃないか。
呆然としていると、ナオの手が背に回って、ぎゅっと抱きしめる。耳元で『ヒロもぎゅうして?』と甘い声が落ちた。俺はぎこちなく頷いて、それからゆるゆると、同じように手を回す。ナオの体内からピ…ピ…と微かな音が耳に触れる。人間でいうところの心音なのだろうか。俺の心臓と同じくらいの速さを刻んでいた。しばらく、抱きしめあった後、『大丈夫?』と顔を覗き込まれる。
ひんやりとした体に包まれて心地良い。何故だかナオの顔を見ていると安心した。
「……まあ、うん」
照れ臭くなって、小さい声で返す。ナオは『よかった』と、ふわりと微笑む。バスローブをゆっくりと肩から落として、背筋を辿るように指先を動かす。そんな触り方にゾクゾクと肌が粟立ち、ぎゅっと瞼を閉じた。
『ヒロ、どこを触られたか教えて?』
その声にパッと目を開ける。
「どこって……」
『どこ?』
問い詰めるような口調だった。甘い瞳に鋭さが生まれる。言い逃れはできない様子だ。観念して、両脚をそわそわと動かした。
そして下着のほうを人差し指で示す。
「…っ、こ…ここを…」
『ヒロ。それじゃ分からない。具体的に教えて』
「…へっ」
分かるだろ!?と叫びたくなる。しかし“分からない”と言われてしまえば、言い直すしかない。はくはくと口を動かして、ごくりと唾を飲む。覚悟を決めて、言葉にした。
「ぉ……おち…ペニス…を」
『…どんな風に触られた?』
「手で、擦られたり、先っぽを…―」
30を超えた男が何を言わされてるんだろう。羞恥心で死にそうだ。
言い終われば、ナオは真剣な表情で、頷く。
『ああ…ヒロ、可哀想に。気持ち悪かったでしょう?思い出させてごめんね』
「……」
『僕がすぐに上書きするから』
ナオの指先が、するりと、下着の上をなぞる。ビクッと体を揺らした。先程の口付けのせいか。下着は少しだけ張り詰めていた。その形を確かめるように、細くて長い指が動く。
『下着、おろすね』
「……あ、ちょっと」
待って、と言う前に唇を奪われる。ぬるりと侵入するナオのざらついた舌。それが俺の舌先に絡んで、擦り合わせるように、くちゅくちゅと愛撫する。ナオの口腔から分泌される甘い液体。それをごくりと嚥下すれば、体の奥が疼いた。
あなたにおすすめの小説
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って?
いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた
時
BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。
けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。
もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。
ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。
「俺と二人組にならない?」
その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。
執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。
約九万字、全三十話+αの物語です。
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
【花言葉】
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!
【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。
◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス