ヤンデレ系アンドロイドに愛された俺の話。

しろみ

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一章

11a



 息継ぎする間もなくキスをされて、眩暈がした。僅かに唇が離れたとき、「ナオ」と胸を押す。


「な、慰めるって……ええ、と…」
『それに触れられたところ、僕で上書きして』
「上書き……?」


 戸惑いを見せれば、手を取られる。そのまま指がするりと絡み、銀色の睫毛がゆっくり上下して、赤い瞳が俺を映す。


『駄目…?同じところに触れるだけだよ』


 小首を傾げ、ナオは言う。

 懇願するような眼差しだ。浮気疑惑が漂っている手前、ナオを蔑ろに出来ない。このアンドロイドは俺の返答によって自己破壊に走るんだ。またそんな事をされたら……

 俺は視線をうろうろと彷徨わせ、慎重に言葉を選んだ。


「…………………………さ、触るだけなら……」
『…いい?』

  
 美しい顔にパァッと喜色が浮かぶ。
 “触る触らない”で押し問答をしていても仕方ない。俺は「そのくらいなら別に……」と呟き、おずおずと首を縦に振った。
 …いや、待てよ

 この部屋には犬飼が眠ってる。触るだけとはいえ、犬飼に触れられた箇所は殆ど“そこ”だ。

 いつ目を覚ますか分からないんだ。変なタイミングで目を覚まされたら絶対に気まずい。ここではない場所に移動したい。そう顔に書いて、ナオが着ている薄手のニットをちょんと引っ張った。


「いいけど、別の部屋に……」


 するとナオは『2人きりになりたい?』と銀髪を揺らし、白皙の頬に桃色を滲ませる。


「え。う、うーん、まあ……」


 口をモゴモゴとさせる。そういうことじゃないが、そういうことにしよう。すると、するりとバスローブの中に手を入れ込まれ、「わ…」と声を上げてよろめけば、そのままベッドに尻もちをついた。


『大丈夫。これに邪魔されない方法がある』
「……?」


 “これ”と指差すのは犬飼だ。ナオはどうしても犬飼を名前で呼びたくないらしい。


『空間遮断をする』
「く、くうかんしゃだん…?」
『空中を飛び交う分子を調整して膜を張るんだ。膜の中は目の錯覚により外から見えないし、声も聞こえない』
「…なんだそれ………」


 聞いたこともない技術だ。俺は目をパチクリさせた。

 ナオは空中に指を滑らせた。手のひらから淡い光が帯び、その光はぐるりと俺たちを囲む。光はやがて透明な膜になる。シャボン玉の中に閉じ込められたような、そんな不思議な空間に包まれた。


『どう?これなら安心?』


 まるで魔法だ。こんな技術があるのなら透明人間にもなれるじゃないか。

 呆然としていると、ナオの手が背に回って、ぎゅっと抱きしめる。耳元で『ヒロもぎゅうして?』と甘い声が落ちた。俺はぎこちなく頷いて、それからゆるゆると、同じように手を回す。ナオの体内からピ…ピ…と微かな音が耳に触れる。人間でいうところの心音なのだろうか。俺の心臓と同じくらいの速さを刻んでいた。しばらく、抱きしめあった後、『大丈夫?』と顔を覗き込まれる。

 ひんやりとした体に包まれて心地良い。何故だかナオの顔を見ていると安心した。


「……まあ、うん」


 照れ臭くなって、小さい声で返す。ナオは『よかった』と、ふわりと微笑む。バスローブをゆっくりと肩から落として、背筋を辿るように指先を動かす。そんな触り方にゾクゾクと肌が粟立ち、ぎゅっと瞼を閉じた。


『ヒロ、どこを触られたか教えて?』


 その声にパッと目を開ける。


「どこって……」
『どこ?』


 問い詰めるような口調だった。甘い瞳に鋭さが生まれる。言い逃れはできない様子だ。観念して、両脚をそわそわと動かした。
そして下着のほうを人差し指で示す。


「…っ、こ…ここを…」
『ヒロ。それじゃ分からない。具体的に教えて』
「…へっ」


 分かるだろ!?と叫びたくなる。しかし“分からない”と言われてしまえば、言い直すしかない。はくはくと口を動かして、ごくりと唾を飲む。覚悟を決めて、言葉にした。


「ぉ……おち…ペニス…を」
『…どんな風に触られた?』
「手で、擦られたり、先っぽを…―」


 30を超えた男が何を言わされてるんだろう。羞恥心で死にそうだ。

 言い終われば、ナオは真剣な表情で、頷く。


『ああ…ヒロ、可哀想に。気持ち悪かったでしょう?思い出させてごめんね』
「……」
『僕がすぐに上書きするから』


 ナオの指先が、するりと、下着の上をなぞる。ビクッと体を揺らした。先程の口付けのせいか。下着は少しだけ張り詰めていた。その形を確かめるように、細くて長い指が動く。


『下着、おろすね』
「……あ、ちょっと」


 待って、と言う前に唇を奪われる。ぬるりと侵入するナオのざらついた舌。それが俺の舌先に絡んで、擦り合わせるように、くちゅくちゅと愛撫する。ナオの口腔から分泌される甘い液体。それをごくりと嚥下すれば、体の奥が疼いた。
  
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