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しおりを挟むコンクリートの地面に寝転がれば、ギラついた陽光が目に刺さる。煩わしい。眉を寄せて、目を閉じた。
『遼。お前は父さんの希望なんだ』
『あの方に失礼のないようにね。お父さんの邪魔しちゃ駄目よ』
小学生になったとき、俺の両親はそう言った。学校に行くとき、必ず言われる言葉。『いってらっしゃい』よりも、そっちのほうが頻繁に言われてた気がする。
『遼のおかげで、久我病院長にうちの機器を採用して貰えた。遼のおかげだぞ! 院長の息子と仲良くしてるみたいだな! よくやった!』
『まあ! さすがだわ、遼!』
家族の思い出といえば、こんな会話だ。俺の父は医療機器メーカーに勤める営業マンで、母は大学病院に勤務する看護師。2人は“久我病院長”という人間を酷く崇拝していた。俺にはよく分からないが、2人が働く世界において、“久我病院長”はそのヒエラルキーのトップに君臨しているらしい。
父は言った。『病院は城、院長は王みたいなもんなんだよ』と。その瞬間ぞわっと鳥肌が立ったことを今でも覚えてる。
「……――ぅ?」
でも家族が穏やかに暮らせて、平穏な日常が送れるのなら何でもいい。今の俺の幸せは、こうやって、昼休みに、学校の屋上でだらだら寝ることだ。
柔らかい風に乗って、髪が靡く。ああ前髪そろそろ切らなきゃなと思ったときだった。
「……遼、見つけた」
ストローを咥え、イヤホンから流れる音楽に合わせて上機嫌に鼻歌を歌っていると、突然、瞼の裏に影ができる。ぱっと目を開けば、キラッキラした金髪が目に入った。驚きのあまり、飲みかけのコーヒー牛乳のパックをぐしゃりと潰してしまい、口から茶色の液体が溢れ出す。
「…う、わ…ぁっ……」
「ふふっ…、ここにいたんだ。探したよ」
くすりと笑われて、顔を上げれば、西洋人形のように整った顔をした美男子が、ニコニコと微笑み、俺を見下ろす。
「い…きなり、顔、近づけんなって」
咄嗟に目を逸らす。
「どうして?…ああ。ズボン、汚れちゃったね。僕が拭いてあげるよ」
「は……いい―――…って、ぎゃっ」
コーヒー牛乳で湿った部分にハンカチを当てられる。濡れているのはヘソの下の…更に下の部分。サッと、青褪めた。
「……憂吾、変な触り方すんな…っ…」
「変なってどんな?」
「…ちょ…ぅ…ぁ……」
「遼のえっち。どうして勃ってきてるの?ムラムラしちゃった?僕は汚れを拭いてるだけだよ?」
「ぅ…ひゃ…ぁあ…っ…ちょ」
背後から手を回され、ズボンのチャックを下ろされる。人目はないとはいえ何やってんだコイツ!?「や、やめろ!」と、声を荒げようとすると、唇の前にすっと人差し指が当てられる。
「あんまり可愛い声を出したらダメ。ここは死角だけど、あっちにいる女子に聞こえちゃうよ?」
くすくすと耳元で笑い声が聞こえる。
ハッとして顔を歪めた。
…こんの性悪……、最初からこれが目的か。背後から密着した状態のまま、男は喋り続ける。
「……萌ちゃん…だっけ?昨日から付き合い始めたんだってね」
「…ぅ…あ」
「また僕に内緒で女の子を誘惑したんだね。悪い子」
「ひ……っぁ…ぁ…ぁ」
「このまま移動して、見せつけちゃおうか?――…遼は、僕のだって」
「…い……まじ……で…ゃめ……ぁ」
ぬちぬち、と先端から汁が溢れて、卑猥な音が響き渡る。歪んだ視界には自身の陰茎が露わになっていて、奴の手の中でどくどくと震えている。耳元で「気持ち良いね?」と囁かれた。ぶるりと背筋に変な感覚が走る。「やめろ、やめろ」と首を横に何度も振るが、奴はくすくすと笑うだけ。
「あ…っ……ぁ…―――ッッ」
「ふふっ、ぴゅっぴゅっ。ほら見て?遼の小さいおちんちんが頑張って精液を出してるよ。可愛い。遼はイクのが本当に早いね。そんな所も可愛いよ。僕の手でしごかれるの、大好きだもんね」
「…はっ、あ…ぅ…」
「ヨダレ垂らしてビクビクしちゃって…。可愛い可愛い僕の遼。こんな可愛いのに、女の子なんて抱けるの?」
頭の中が真っ白になって、このまま意識が飛びそうになる。こめかみにキスをされ、奥歯を噛み締めた。くそ。くそ。くそ。
ギロリと視線を尖らせた。
「お前……お…怒ってんのかよ」
そう言うと、直ぐに「ううん」と返される。
「怒ってないよ。いつも言ってるじゃん。誰と付き合おうが、どうでもいい。僕の元に帰ってきてくれるならね」
「…っ…なんだよ、それ」
「女と遊びたいなら遊べばいい。遼の浮気にも慣れっこだよ」
「浮気っ…て………」
「ただの性処理機に、いちいち嫉妬してたらキリがないからね」
そう言って、こいつは笑った。やたらキラキラした金髪をさらりと靡かせ、俺を抱き締め、唇を奪う。
「正妻の余裕、だよ?」
唇が離れれば、綺麗な目が三日月に歪んだ。
「………」
あの人そっくりの顔で、そんな事言うなよ…。「離せよ」と言って、その場を去った。
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