要らねえチート物語

汐乃タツヤ

文字の大きさ
15 / 50
第一章

第13話 三浦のポリシーと聖也の意地

しおりを挟む
 悪魔が相手なだけに、さすがに三浦も警戒しながら後ずさりをしている。
 
「くっ、悪魔を呼び出してしまうなんて……。こんなことなら塩だけじゃなくって、聖水も用意しておけばよかった……」

 やろうとすれば聖水まで用意できたのか!? いや、今気にするべきなのはそっちじゃない。
 
 相手は悪魔なんだし、こうして契約を呼び掛けていても、いきなり俺達に襲い掛かってくることだって十分ありえる。

 俺は用心しながら三浦をかばうように前に出て、悪魔の様子をうかがう。

「まあ、そう身構えるな。別に貴様らに危害を加えるつもりは無い。興味があるのはこの俺と契約して願いを叶える気があるかどうかだけだ。その気が無いならすぐに帰るさ。時間の無駄だからな。で、どうするんだ?」
 
 契約……かあ……。
 
 どうしよう。この悪魔と契約して、俺の持っている能力を消すように頼めば、能力に振り回されることも無くなるんだろうか。
 
 ……待てよ。今まではこの能力を扱いきれないって思ってたけど、能力を完全に操れるように願ったらどうだ? それが叶えば、能力を暴発させる心配も無くなるどころか、能力を上手く使って、美味しい思いをできるようになるかもしれない。
 
 3つまで願いを叶えるって言ってるんだし、願いを2つで止めておけば魂を取られはしないよな。……このチャンスを逃したら次はないだろうから、ここは悪魔と契約してみるのも――。

「……ねえ、もしかして願いを2つまで叶えるだけなら、魂を取られないし、悪魔と契約してみようって考えなかった?」

 静かだが、明らかに怒気を含んだ三浦の声が俺の背後から聞こえてきた。思わずビクッとして振り返ると、三浦が今まで見たことも無い鋭い目つきで俺を見据えていた。

 ちょっ!! 悪魔よりも今の三浦の方がメチャクチャ怖え!!

「いや、その……契約すれば、この能力に振り回される心配が無くなるかなって……」

 三浦の反応が恐ろしくて、契約すれば能力で美味しい思いもできるかなと考えたとは言い出せなかった。
 言葉を選んで発言したつもりだったが、三浦の目つきがますます鋭くなっていく。

「あのねえ!! 悪魔と契約するって生半可な気持ちでやっていいものじゃないの!! 願いが叶うならどんな代償を払ったっていい、破滅したって構わないって、人生を投げ捨てるくらいの覚悟を持って臨むものなの!! 安易な気持ちで契約したら、あっという間に3つ目の願いまで使って魂を奪われるよ!! それにね!! 何の代償も無しに2つの願いを叶えるだけで終わるなんてムシのいい話があるわけないじゃない!!」

「そ、そうだったんだ……。ゴメン、俺、全然分かってなかった……」

 三浦の剣幕けんまくに完全に押されて、俺の口から反射的に謝罪の言葉がこぼれ出る。それから急いで悪魔の方に向き直った。

「そんなわけなんで、契約は結構です……」
「チッ、しけた人間め。それなら俺は帰るぞ」
 
 俺が契約を拒否すると、悪魔が舌打ちして魔法陣に潜りこみ、宣言通りにあっさりと帰っていった。

 悪魔がいなくなった後に恐る恐る後ろを振り返って三浦の顔を見てみると、先ほどまでの険しさが無くなり、いつもの表情に戻っていた。

 三浦が激怒するとあんな感じになるなんて思いもしなかった。今度からは怒らせないようにしよう……。

「……さっきまでの私に驚いた? でもね、クラスメイトが破滅の道に踏み込もうとしてたんだもの。私だって必死に止めるわよ」

 あそこまで怒ったのが恥ずかしいのか、三浦が少し顔を赤くしながらポツリと言った。

「いや……そうだよな。ゴメン、迷惑をかけた」

 何か今日は今まで知らなかった三浦の一面を色々と知った気がする。
 そう考えていると、周りが少し明るくなった。
 何だと思って後ろを見てみると、魔法陣がまた光りだしていた。

 まだ召喚が続くのかよ! ソシャゲの10連ガチャやってんじゃねえんだぞ!!

 元々セレスを呼び出すのが目的だったのに、この魔法陣が天使どころか悪魔までランダムに呼び出す危なっかしいシロモノだと分かったため、俺は召喚への期待感よりも不安の方が強くなっていた。

 どうしよう。もうこの魔法陣を止めた方がいいんじゃないだろうか。
 俺が悩んでいると、魔法陣から光だけでなく黒い霧のようなものが漏れ出してきた。

 ちょっと待て。さっきまでの召喚じゃあんなのは出てこなかったぞ?
 ……何か嫌な予感がする。

「三浦、魔法陣から離れよう。変な霧が出てるし、今度の召喚はさっきよりもヤバイ感じがする」
「う、うん。そうだね」
 
 三浦も不安を感じていたのか俺の言葉に同意する。
 俺と三浦が魔法陣から距離を取ると、いきなり魔法陣から更に強い光が発せられ、余りのまぶしさに目を閉じる。

「キシャアアアアアア!!!」

 少ししてから、妙な叫びが聞こえてくる。目を開けると、おぞましい化け物が魔法陣の上に陣取っていた。

 全長5メートルはあるであろう灰色のドロドロした身体に、無数のムチのような触手を持ち、三日月のように大きく開かれた口からは鋭い牙がむき出しになり、ギラギラと赤く光った両目で俺達をにらみつけている。

「何か明らかにヤバイのが来たああああ!!!!」
 
 とてつもない化け物を目の当たりにして、そんな叫びが俺の口から出てきた。

「な、何これ……。異形いぎょうの怪物……?」
 
 三浦の方を見ると、ぼうぜんとした表情で化け物を見たまま立ち尽くしている。
 無理もない。まさか魔法陣からこんな奴まで出てくるなんて俺も思ってもいなかった。
 一体どうすれば……。

 いや、落ち着け。こんな時こそ無駄に威力が高い必殺技の出番だろ!!
 事態に意識が追い付いていないからって、俺まで固まっている場合じゃない。
 あの化け物が何かしでかす前に、必殺技をぶっ放して始末しないと。

「キュォォォォォォ…………」
 
 俺が動こうとする前に、化け物が今までとは違い、静かに奇妙な声をあげた。
 それと共に周りの空気がユラユラと揺らいでいく。

「あ……れ……?」

 急激に意識が朦朧もうろうとしてきた。同時に視界まで暗くなっていく。
 平衡感覚へいこうかんかくも無くなってまともに立っていられなくなり、俺は地面に膝をついた

 あの化け物があげている声のせいか? でも俺は身体がとてつもなく丈夫になっていたはずじゃ……。

 化け物が声をあげながら、ジリジリとこっちへにじり寄ってくるのがボンヤリと見える。 このまま、動けない俺達をじっくりと食べるつもりなのだろうか。

 その時、俺のすぐ近くでドサッという音がかすかに聞こえてくる。
 まさかと思い、自由が利かなくなり始めた身体を無理やり動かし、音がした方に顔を向けると、それは三浦が意識を失ってうつぶせに倒れた音だった。
 三浦が手放した杖がカラコロと音を立てて転がる。

 ――俺が倒れたら、三浦は確実に化け物に殺される。
 薄れつつある意識の中でも、この事実はハッキリと認識できた。

 ――冗談じゃない。こんな事態になったのも、元をただせば俺の能力が原因なんだ。そのせいで三浦を死なせてたまるか!!
 細かいことなんかもう気にしていられない。
 この化け物は何が何でも絶対に殺す。

 視界はほとんど真っ暗になり、化け物もわずかにしか見えないが、それで充分だった。
 途切れそうになる意識を必死に繋ぎとめながら、両手に力を込める。

「燃え尽きろおおおおお!!!」

 俺が両手を突き出して叫ぶと、化け物の足元から巨大な柱を連想させる程の強大な光が、まるで視界の闇を払うかの様に、空に向かって撃ち出されるのが見えた。

「ギャアァァァァァ……!!!」
 
 光に包まれた化け物が、悲鳴をあげながら燃え尽きていく。

 頼むからそのまま消えてくれ。
 天まで伸びる光の柱を見つめながら、俺はそう願わずにはいられなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。 貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。 元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。 これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。 ※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑) ※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。 ※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...