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エリオの過去
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夜。
キャンピング馬車の外では、虫の声がしている。
リアナはベッドに座り、
ロイとリィは足元で丸くなっていた。
「エリオ」
名前を呼ぶと、
青年はいつも通り一歩下がった位置で立つ。
「はい、リアナ様」
「エリオってさ」
少しだけ、言葉を選ぶ。
「……前は、誰のゴーレムだったの?」
一瞬、沈黙。
でも、拒否はなかった。
「お話ししても、問題ありません」
エリオは静かに語り始めた。
⸻
「私は、神代の魔道具です」
その言葉は、淡々としていた。
「戦争の時代、
人が人を守るために作られました」
「戦争……」
「はい。
多くの魔道具が壊れ、
多くの命が失われました」
エリオは、自分の胸に手を当てる。
「私の役目は、
主を守り、
主の魔力を安定させ、
主が壊れないようにすること」
「……」
「しかし、最後の主は」
少し、間が空いた。
「人でした」
「……うん」
「優しい方でした。
私を“道具”ではなく、
“人のように”扱いました」
リアナは、黙って聞く。
⸻
失われた役目
「その方は、
戦争の終わりに命を落としました」
「……」
「私は破壊されませんでした。
守ることに特化していたため」
エリオは、微かに目を伏せる。
「主を失った私は、
役目を失いました」
「それって……」
「空白です」
その一言が、重かった。
⸻
長い眠り
「その後、私は封印され、
長い時間、眠っていました」
「どれくらい?」
「正確には分かりません。
数百年、あるいは千年」
ロイが、そっとエリオを見上げる。
「目覚めたとき、
世界は変わっていました」
「戦争は?」
「終わっていました」
「……」
「きっと私のようなゴーレムはもう現在にはおりません。戦争が終わり必要がなくなったからゴーレムを作る技術も無くなったのでしょう。」
⸻
再起動
「私が再起動したのは、
リアナ様がこの世界に来た時です」
リアナは目を瞬いた。
「私?」
「はい。
強い魔力と、
明確な意思」
エリオは、リアナを見る。
「そして、
誰かを守る準備ができている心」
リアナは、思わず笑った。
「私、守られる側だと思ってた」
「同時です」
エリオは迷いなく言った。
「リアナ様は、
守られ、
そして守る方です」
⸻
今の役目
「だから、私はここにいます」
「……それって」
リアナは、少し考えてから言う。
「また、道具として使われるのが嫌とか、ないの?」
エリオは、ほんの一瞬だけ黙った。
「あります」
正直だった。
「しかし」
その目は、穏やかだった。
「リアナ様は、
命令よりも“選択”を与えてくれます」
「それが、私には必要でした」
リアナは、息を吐いた。
⸻
その夜
「ねえ、エリオ」
「はい」
「これからはさ」
少し照れくさそうに言う。
「役目だけじゃなくて、
一緒に暮らすってことでいい?」
エリオは、初めて少しだけ目を見開いた。
「……よろしいのですか」
「嫌なら断っていいよ」
「断りません」
即答だった。
「それは、私の意思です」
ロイがリアナの膝に頭を乗せ、
リィが反対側で尻尾を揺らす。
エリオは、少しだけ距離を縮めて立った。
キャンピング馬車の中。
役目で生まれた存在が、
居場所を得た夜。
リアナは、静かに思った。
「……ここ、いいな」
スローライフは、
こうして少しずつ、
人を増やしていく。
キャンピング馬車の外では、虫の声がしている。
リアナはベッドに座り、
ロイとリィは足元で丸くなっていた。
「エリオ」
名前を呼ぶと、
青年はいつも通り一歩下がった位置で立つ。
「はい、リアナ様」
「エリオってさ」
少しだけ、言葉を選ぶ。
「……前は、誰のゴーレムだったの?」
一瞬、沈黙。
でも、拒否はなかった。
「お話ししても、問題ありません」
エリオは静かに語り始めた。
⸻
「私は、神代の魔道具です」
その言葉は、淡々としていた。
「戦争の時代、
人が人を守るために作られました」
「戦争……」
「はい。
多くの魔道具が壊れ、
多くの命が失われました」
エリオは、自分の胸に手を当てる。
「私の役目は、
主を守り、
主の魔力を安定させ、
主が壊れないようにすること」
「……」
「しかし、最後の主は」
少し、間が空いた。
「人でした」
「……うん」
「優しい方でした。
私を“道具”ではなく、
“人のように”扱いました」
リアナは、黙って聞く。
⸻
失われた役目
「その方は、
戦争の終わりに命を落としました」
「……」
「私は破壊されませんでした。
守ることに特化していたため」
エリオは、微かに目を伏せる。
「主を失った私は、
役目を失いました」
「それって……」
「空白です」
その一言が、重かった。
⸻
長い眠り
「その後、私は封印され、
長い時間、眠っていました」
「どれくらい?」
「正確には分かりません。
数百年、あるいは千年」
ロイが、そっとエリオを見上げる。
「目覚めたとき、
世界は変わっていました」
「戦争は?」
「終わっていました」
「……」
「きっと私のようなゴーレムはもう現在にはおりません。戦争が終わり必要がなくなったからゴーレムを作る技術も無くなったのでしょう。」
⸻
再起動
「私が再起動したのは、
リアナ様がこの世界に来た時です」
リアナは目を瞬いた。
「私?」
「はい。
強い魔力と、
明確な意思」
エリオは、リアナを見る。
「そして、
誰かを守る準備ができている心」
リアナは、思わず笑った。
「私、守られる側だと思ってた」
「同時です」
エリオは迷いなく言った。
「リアナ様は、
守られ、
そして守る方です」
⸻
今の役目
「だから、私はここにいます」
「……それって」
リアナは、少し考えてから言う。
「また、道具として使われるのが嫌とか、ないの?」
エリオは、ほんの一瞬だけ黙った。
「あります」
正直だった。
「しかし」
その目は、穏やかだった。
「リアナ様は、
命令よりも“選択”を与えてくれます」
「それが、私には必要でした」
リアナは、息を吐いた。
⸻
その夜
「ねえ、エリオ」
「はい」
「これからはさ」
少し照れくさそうに言う。
「役目だけじゃなくて、
一緒に暮らすってことでいい?」
エリオは、初めて少しだけ目を見開いた。
「……よろしいのですか」
「嫌なら断っていいよ」
「断りません」
即答だった。
「それは、私の意思です」
ロイがリアナの膝に頭を乗せ、
リィが反対側で尻尾を揺らす。
エリオは、少しだけ距離を縮めて立った。
キャンピング馬車の中。
役目で生まれた存在が、
居場所を得た夜。
リアナは、静かに思った。
「……ここ、いいな」
スローライフは、
こうして少しずつ、
人を増やしていく。
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