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第2章
自由
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朝の光がカーテンの隙間から差し込んで、キッチンのテーブルを淡く照らしていた。
フライパンの上では、目玉焼きがじゅうっと音を立てている。
その音に混じって、背後から扉を開ける音が聞こえた。
「……星羅さん、ありがとうございます。とても楽しみです。」
隼人さんの声が、背中越しに届く。
手に持っていたヘラが、少しだけ止まった。
「……ふふ」
足音が近づき、隼人さんが私の隣に立つ。
ネクタイを結びかけた姿が視界の端に入った。
「星羅さん」
「うん」
「愛しています」
……え?
思わず振り向くと、隼人さんはほんの少しだけ笑っていた。
いつもの冷静で淡々とした表情のまま、それでも口角がわずかに上がっている。
「私も……愛しています」
少し照れながら返す。
「星羅さん、これからは一人で外出しても良いですよ。一緒に外の世界、楽しみたいから。俺と一緒にいる時間だけじゃなくて、星羅さんがやりたいこと、見たい景色、そういうのも知りたいです」
胸が一瞬、温かくなる。
でも、彼はそこで終わらなかった。
「……ただし」
声のトーンが、一段低く落ちた。
「もし、俺以外のことを考えたら……その時は、本当に監禁しますから」
ぞくり、と背筋が震える。
なぜか目が離せなかった。
隼人さんの瞳は、淡々とした色を保ちながらも、底の方で熱を孕んでいる。
その熱が、私の心臓を掴んで離さない。
「うん」
かすれた声で答えると、隼人の口元がわずかに緩んだ。
脅されてるはずなのに、怖いだけじゃない。
この声も、目も、全部自分だけに向けられている――
その事実が、どうしようもなく嬉しかった。
「いただきます」
そう言って、隼人さんは皿に盛られた目玉焼きを口に入れた。
それから、会社に行く準備を再開する。
結んだネクタイを整えながら、玄関へと向かう彼の背中を目で追った。
靴を履き終えた隼人さんが、ふいにこちらを振り返る。
そして、ゆっくりと歩み寄り、私の額に唇を落とした。
「行ってくる。……待っててくれる?」
「……うん。いってらっしゃい」
自然に笑顔がこぼれる。心からの笑顔だった。
隼人は満足そうに頷き、ドアを開けて外へ出て行く。
閉まる音が、部屋に静けさを戻した。
私はしばらくその場に立ち尽くし、胸に手を当てる。
鼓動が速い。怖さも、喜びも、ぐちゃぐちゃに混ざっている。
――自由、か。
窓辺に立ち、外を見下ろす。
車の走る音、人の話し声。
この世界にもっと触れたい気持ちと、彼の言葉が放つ鎖の重み。
それでも私は、はっきりわかっていた。
あの人を愛している。
そして、その愛がある限り――きっと、どこまで自由になっても、私は帰ってくる。
フライパンの上では、目玉焼きがじゅうっと音を立てている。
その音に混じって、背後から扉を開ける音が聞こえた。
「……星羅さん、ありがとうございます。とても楽しみです。」
隼人さんの声が、背中越しに届く。
手に持っていたヘラが、少しだけ止まった。
「……ふふ」
足音が近づき、隼人さんが私の隣に立つ。
ネクタイを結びかけた姿が視界の端に入った。
「星羅さん」
「うん」
「愛しています」
……え?
思わず振り向くと、隼人さんはほんの少しだけ笑っていた。
いつもの冷静で淡々とした表情のまま、それでも口角がわずかに上がっている。
「私も……愛しています」
少し照れながら返す。
「星羅さん、これからは一人で外出しても良いですよ。一緒に外の世界、楽しみたいから。俺と一緒にいる時間だけじゃなくて、星羅さんがやりたいこと、見たい景色、そういうのも知りたいです」
胸が一瞬、温かくなる。
でも、彼はそこで終わらなかった。
「……ただし」
声のトーンが、一段低く落ちた。
「もし、俺以外のことを考えたら……その時は、本当に監禁しますから」
ぞくり、と背筋が震える。
なぜか目が離せなかった。
隼人さんの瞳は、淡々とした色を保ちながらも、底の方で熱を孕んでいる。
その熱が、私の心臓を掴んで離さない。
「うん」
かすれた声で答えると、隼人の口元がわずかに緩んだ。
脅されてるはずなのに、怖いだけじゃない。
この声も、目も、全部自分だけに向けられている――
その事実が、どうしようもなく嬉しかった。
「いただきます」
そう言って、隼人さんは皿に盛られた目玉焼きを口に入れた。
それから、会社に行く準備を再開する。
結んだネクタイを整えながら、玄関へと向かう彼の背中を目で追った。
靴を履き終えた隼人さんが、ふいにこちらを振り返る。
そして、ゆっくりと歩み寄り、私の額に唇を落とした。
「行ってくる。……待っててくれる?」
「……うん。いってらっしゃい」
自然に笑顔がこぼれる。心からの笑顔だった。
隼人は満足そうに頷き、ドアを開けて外へ出て行く。
閉まる音が、部屋に静けさを戻した。
私はしばらくその場に立ち尽くし、胸に手を当てる。
鼓動が速い。怖さも、喜びも、ぐちゃぐちゃに混ざっている。
――自由、か。
窓辺に立ち、外を見下ろす。
車の走る音、人の話し声。
この世界にもっと触れたい気持ちと、彼の言葉が放つ鎖の重み。
それでも私は、はっきりわかっていた。
あの人を愛している。
そして、その愛がある限り――きっと、どこまで自由になっても、私は帰ってくる。
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