22 / 103
第四章 PHANTOM OF CRY
第五話 悲劇の魔王
しおりを挟む
寝台に横たわって、天井を見上げた。
わからない。
傍のテーブルの上には、勝手に持ち出した資料。
そして、岩永と村崎の写真の入ったパスケース。
「生理的に…」
嫌われている、と心底辛そうにしていた岩永。
なら、この写真はなに?
どこからどう見ても、お互いを愛しく思い合った笑顔。
本当は岩永の言葉は嘘だった?
別れたから?
でも、なら村崎はあの時なにを調べていた?
NOA壊滅事件じゃないのか?
あれは、岩永が原因じゃないのか?
そうなら、辻褄があわない。決定的なずれがある。
寝台から勢いよく起きあがった。
そのタイミングで部屋のインターフォンが鳴らされた。
吾妻は慌てて資料を寝台の下に隠すと、玄関に向かう。
扉を開けて、驚いた。
微かに、胸は悦んだ。
白倉がいた。思い詰めたような、顔で。
「…ちょっと、いい?」
控えめに、けれど必死に聞くから、頷いた。
部屋の中に招くと、白倉は俯き加減に入ってくる。
ソファを勧めると、一瞬躊躇うように吾妻を見上げた。
安心させるように肩を優しく叩くと、安心したように息を吐き、座る。
「ええと、なんか」
「いいから」
飲み物を出そうと思ったが、白倉は辞退した。
吾妻を見上げて、軽く笑う。からかうように。
「お前の部屋にそんなもんないだろ」
「…あ」
それもそうだ。カップなどは元々常備されていたが茶葉などはない。
吾妻は苦笑して、向かいの椅子に腰掛けた。
からかうような白倉の顔に確実にかかった陰が、気になってしかたない。
「…なに?」
用件を伺った吾妻に、白倉は俯き、ぽつりと言った。
「用事がなきゃ、来ちゃ駄目か?」
「…そんなことはない」
吾妻の声が掠れる。しまったと思った。
「そんなつもりじじゃない。ごめん。
だけど、ここずっと」
「避けてたのはお前もだろ」
俯いたままの白倉の声はどこか怒っていた。
吾妻は両手を足の上で握りしめて、息を少し詰めて吐く。
「…うん、ごめん」
「なんで」
「…負けた。白倉の期待は、裏切った」
「お前が負けることなんかわかってた」
俯いたままの白倉の顔。綺麗な瞳が前髪に隠れて見えない。
不思議なほど、吾妻の中には怒りが芽生えなかった。
「なら、どうして、キスしてくれた?」
とても静かで柔らかい、慈しんだ声音で問われたことに驚き、白倉が顔を上げる。
驚きと不安に揺れた翡翠の瞳が自分を映す。
「…僕のこと、信じてくれた?
僕は、ただ嬉しかった。
白倉が僕に勝って欲しいって言ってくれた。
負けると思ってたとしても、僕に会いに来てくれた…。
うれしかった」
「………」
白倉は信じられないように瞳を見開き、何度も瞬きした。
その瞳から、静かに涙が零れる。
「……って」
「うん」
「…お前の傍に、…お前に傍に、いてほしくて。
ああしたら、切れそうな糸が切れないかもしれんって、繋ぎたくて。
…手を伸ばせば、届く場所で」
白倉の手が震えながら、伸ばされる。少し距離のある椅子に座った吾妻には届かない。
吾妻は立ち上がって、微笑んで傍に立った。
その腕に、白倉の手が触れる。
「…お前に、笑って、傍に、いて」
欲しかった。そう涙に震えた声で綴る白倉を、そっと抱きしめた。
壊さないように、優しく、優しく抱きしめた。
白倉はすがるように背中に手を回して、しがみついてきた。
「…」
白倉の小さな、嗚咽が響く。
聞けない。
知りたいのは、あの事件。
自分と白倉を離すきっかけ。
岩永と村崎のこと。
でも、白倉になんて聞けって言うんだ。
「ごめんな」
「…なんで?」
謝るんだ、と白倉は吾妻を責めた。謝って欲しくなどないと。
暴いてごめん。お前達が知られたくない過去を、暴こうとしている。
ごめん。
腕をそっと緩める。涙に濡れた瞳が自分を見上げている。
ああ、初めて出会ったあの時、キミは泣きながら微笑んで、こんな風に見上げてきて。
俺の、右目に触れた。
白倉に手を伸ばして、頬を包む。
そっと顔を近づけ、傾けると、白倉はゆっくりと濡れた瞳を伏せた。
重ねた唇。離して、もう一度触れた。
白倉の包帯に巻かれた手を掴んで、自分の右目に当てる。
白倉は不思議そうに自分を見つめて、微笑んだ。
あの日のように。泣きながら、俺に笑った。
図書室の書庫の鍵は、滅多なことでは貸し出し許可が下りないという。
なら村崎はどうやって開けたのだろう。
超能力では、NOAの建物は破壊出来ない。
自分も覚えがあるからわかる。
廊下で流河と対峙した時、自分の業火ですら、壁は全く傷付かなかった。
コンピューター室で、手当たり次第検索する。
引っかからないとは思っていたが、見事に一件もない。
世間でも、一時的に騒がれただけで、データは消去されている?
机の上に散らばった資料はさっぱり意味がわからないが、村崎が持っていたなら、関わりのある資料だ。
明かりを点けずに没頭していたが、不意に照明がつく。目が眩んで、左目を手で庇った。
「…なにしとるんや?」
低い声。吾妻は弾かれたように立ち上がる。
村崎がそこにいた。険しい顔で。
おそらく、吾妻のしていることを察して、ここに来たのだ。
あのあと、己が片付けずに置いていってしまった資料の有無に気づけば、すぐに察しが付くだろう。
希望すれば部屋にパソコンは用意してもらえるが、このタイミングで希望すると疑われる。吾妻の部屋には本人が希望しなかったため、パソコンがまだない。
警戒して自分を睨む吾妻を見て、村崎は近寄ってきた。
傍に積んであった本を一つ手に取り、それから吾妻の肩をきつく掴んだ。
「…っ」
かなり力がある。自分以上に。
容赦なく肩を握られ、痛みに呻いた。
「…これ以上、踏み荒らすな」
村崎の忠告は、低く、重苦しくて、その中に響く感情に吾妻は村崎の顔を見つめた。
ひどく、切ない痛みだ。声の中に隠れた心。
「…これ以上、引っかき回さんでくれ」
悲痛としか言いようがない村崎の表情。
吾妻は驚いて、乾いた感じのする喉から声を絞り出す。
「岩永…のこと?」
問いかけた瞬間、村崎の瞳が泣きそうに揺れた。
思い切り突き飛ばされる。背後のパソコンに背中をぶつけて、吾妻は痛みにしゃがみこみそうになった。どうにか踏ん張る。
「……」
顔を上げて見上げると、村崎は愕然としていた。
なんで知っているんだと、動揺していた。
「…あんたの、パスケース。置き忘れてたよ。
岩永と一緒の」
「言うな」
重く静かで、それでいて叫ぶ寸前のような声が遮った。
「二度と、それを口にするな」
「…どうして? なんで岩永のこと」
「儂と岩永を関係付けるな!」
震えた声は、怒りなのか悲しみなのか、吾妻にはわからない。
今にも、泣きそうに、慟哭の崖っぷちに立って踏ん張っているような、村崎の声と表情。
なにも言えない。
「…二度と。
あれは、儂と、なんの関係もない」
微かに俯き、村崎は静かに言った。まだ声は辛そうに揺れていた。
積んであった資料を持って、村崎は部屋を出ていこうとする。
「…待っ…!」
持って行かれたら困る。
吾妻は足早に追いかけて、村崎の腕を掴んだ。
瞬間、視界が大きく歪んだ。
瞳を開けると、荒れた黒い空が見えた。
台風の日のような、灰色と黒の混ざった空だ。
吾妻はぼんやりとそれを見上げる。
視線を移動させて、驚いた。
原形をとどめずに破壊された建物の屍が地上に散乱している。
地上三階あたりの景色。自分は宙に浮かんでいる。
そこはビルのような建物が縦に六つに、まるでケーキにナイフを入れたように割られ、三つが地面に長く倒れている。
残されたビルの欠片の一つがどうにか地上に斜めに立っている。
割れた建物の中心に渦巻くものがある。
白い閃光だ。時折、闇色の光を纏って輝く。
空まで伸びて、天候を狂わせている。
周囲から飛来するのは超能力だ。数多の力。
閃光に向かって放たれる。
やっと吾妻は理解した。
これは、自分が無意識に読んでしまった村崎の記憶だ。
おそらく、NOA壊滅事件当日の。
暴走の光景だ。
あの巨大な真白い閃光が暴走している力。
周囲を飛ぶ白い飛行機体。そこから放たれる力は暴走を止めようとしている。
だが、効果はない。
白い閃光は全てを飲み込んでいた。
飲み込む?
違う。喰らっている。
食物を自分の中に取り込んで、自分のエネルギーにするように。
あの閃光は、他の超能力を「吸収」して、自らの「力」に変換していっている。
「吸収」の超能力。
どんな力も効果をなさない。
身体はそこにないのに、吾妻は身の毛がよだつ気がした。
怖気が立つ。畏怖では生ぬるい、圧倒的な恐怖。逃げ出したい。背中を向けてはやくここから閃光の見えない場所まで、なにもかも捨てて泣きながら逃げたくなるような衝動を、抱かせる。
なんて、無茶苦茶で、恐ろしい力だ。
これでは、ダメだ。
いくら攻撃しても、それを片っ端から吸収して、また力を蓄える。
普通なら超能力を操るエネルギーが尽きれば、暴走だって収まるはずだ。
だがこれでは、暴走を止めようとする人々の力を喰らって、自分のエネルギーにしてしまう。
底を尽きることがない。
止めようがない。
不意に声が聞こえた。
遠く、下の地上から。
閃光の中心はなにも見えず、暴走の主の姿もわからない。
でも、あそこに岩永がいる。
そうわかったのは、地上でその閃光に向かって、何度も泣きそうに、声を張り上げる人が呼ぶから。今にもそこに駆け出していきそうな身体を、周囲の仲間に押さえられて。
村崎が、彼を呼ぶから。
「嵐!」
一瞬で映像は途切れた。
吾妻は自分の腕を掴んだ手の力に現実に引き戻された。
ハッとして、現実の世界を見渡す。
九生が静かに憤った顔で、自分の手を掴んで村崎から引き離していた。
「…九」
呼ぼうとした。九生に、人殺しを見るような瞳で睨まれ、声を失う。
「悪い村崎。
もう調べんよう、厳重注意しとくけん」
村崎に硬い口調で言うと、九生は吾妻の手を掴んで歩き出した。
コンピューター室から引っ張り出され、連れて行かれる。
なにかを聞ける状況でも、振り解ける状況でもなくて、吾妻はただ後を追った。
九生が不意に足を止める。
「二度と、知ろうとすんな」
自分を振り返らないまま、放たれた低い声は、泣いているのかと思うほどにか細かった。
自分の手首を掴む力が、爪を立てるほどに強くなる。
「二度と、…踏み荒らすな」
それだけ吾妻に告げて、九生は手を離すと足早に歩いていってしまった。
廊下の向こうに見えなくなる背中を見送ってしまう。
吾妻はそこに立ち尽くしたが、それで引き下がれなかった。
ひどいことをしているのだとわかっている。
鬼畜だと、人でなしだとわかっていても。
自分はもう一度、彼の傍で笑いたくて。笑う彼の手を握りたくて。
吾妻は溢れそうになった涙を手の甲で拭うと、顔を上げた。
机の上で鳴っているスマートフォンを取り、流河はフリップを開いた。
メールの内容に目を通し、閉じる。
「岩永クン。俺ちょっと出かけてくる」
「ん? どこ?」
岩永と流河の部屋の、勉強机や本棚のある部屋。
自分の机の椅子から立ち上がり、スマートフォンと財布だけ持った流河は笑う。
「ちょっとコンビニのチキン食べたくなって」
明るく。
「そっか。ほな、いってらっしゃい」
岩永は疑わず、手を振った。
振り返し、流河はのんびりと部屋を出る。
廊下に出て、誰もいないことを確認して、目を閉じて念じる。
一瞬後、そこに流河の姿はない。
薄暗い礼拝堂。
椅子の一つに腰掛けていた吾妻は顔を上げる。
扉が開いたからだ。
一人の影が中に入ってきて、また扉は閉まった。
足音が近づく。
「まさか、キミが本当に、俺を頼るとは思わなかったよ」
驚きと、微かに嘲りの混ざった、普段は明るい声が吾妻の頭上から降った。
「言い出したのは、あんただろ。流河」
ぱっと明かりがつく。
礼拝堂の照明ではない。流河が持ってきた小さな懐中電灯だ。
床に上を向くように置いて、流河は吾妻の向かいに座った。
そうだね、と頷く。
「でも、絶対頼らないと思ったから言ったんだよ」
「だけど、そうしないと駄目になった」
決して退かない口調で答える吾妻に、流河は肩をすくめる。
「代価はもう大体わかっちゃってるんだけどな」
「なら、僕の他の情報でもなんでも、払える物ならなんでも」
「…別に、いいよ」
流河は呆れたように息を吐いて言った。
吾妻に呆れたのではない。なにか、他のことに呆れたような、柔らかい声だった。
「…調べたら絶対、誰かを傷付ける。
でもキミは知らなきゃ、キミが進めない。
俺はキミに足を止めて貰っちゃ困るんだ。
…これから先、絶対に足を止めないこと。それを誓ってくれるなら、教えてあげる」
それは、流河自身への呆れだと気づいた。
甘い自分へか、それとも苦笑か。
吾妻はホッと息を吐き、ありがとうと呟いた。
「誓う」と約束した。
「さて、なにから聞きたい?
どこまで知ったの?」
「…岩永が一年前に暴走事件を起こし、NOAが壊滅したこと。
あいつには二つ超能力があり、もう一つが『吸収』。
そして、白倉も同じことになる可能性があるってこと。
それらが【キャリア】って呼ばれるらしいこと」
「…わかった。
まず、超能力のタイプから話そうか」
流河は腕を組んで、息を吐いて整える。
少し緊張しているのだろう。
「まず、持っている超能力の数としてのタイプは知ってる?」
「それは知ってるよ。
僕は複数型だ」
「俺もそうだ。
まず、大抵は単一型が多い。
超能力を一つしか持たないタイプ。
俺達は超能力が二つあるタイプだ」
それは「複数型」と呼ばれる。
「他の呼称に常態覚醒型っていうのがある。これは?」
「しらない」
「常態覚醒型は最初から二つの力を操れるタイプのこと。
あるいは、片方を高めることで、片方を開花させたり高められるタイプ」
吾妻は唇になんとなく触れ、自分はそれだと呟いた。
「で、問題になってるのが【キャリア型】。
二つ目の力が眠った状態の能力者。強いきっかけを外から与えない限り、覚醒しないタイプ。自力ではどうしようもないタイプだね。
潜伏してるウイルスと似てるからそう呼ばれる」
「…それが、岩永や白倉?」
「違う」
吾妻の掠れた質問を、流河はあっさり否定した。
「キャリアは特に問題はないんだ。二つ目の力が使えないって以外はね。
自分自身気づかない可能性も高いけど、別になにも起こらない。暴走とかは」
流河は腕を組み、右手で自分の胸を指す。
「俺はキャリアで、外から刺激を受けて転移の力を覚醒させたから。
俺が断言する」
吾妻が息を呑んだ。
「岩永クンや白倉クン、…時波クンは【暴走キャリア型】」
静かな夜で、空は星が見える。
白倉は、また泣いていないだろうか。
不意に不安に駆られる。
「ほぼキャリアと同じだけど、未覚醒の二つ目の能力が深層で一つ目の能力や身体に負荷をかけ、能力の喪失・衰え・暴走を促してしまったり、身体の組織の破壊を引き起こすタイプ。
そして、暴走の引き金は、まだ解明されてないけど、…誰かを強く思う気持ちが引き起こす確率が高い…って言われている」
泣きたいくらい、不安になった。
また、泣いていないだろうか。
初めて出会った、あの日のように。
わからない。
傍のテーブルの上には、勝手に持ち出した資料。
そして、岩永と村崎の写真の入ったパスケース。
「生理的に…」
嫌われている、と心底辛そうにしていた岩永。
なら、この写真はなに?
どこからどう見ても、お互いを愛しく思い合った笑顔。
本当は岩永の言葉は嘘だった?
別れたから?
でも、なら村崎はあの時なにを調べていた?
NOA壊滅事件じゃないのか?
あれは、岩永が原因じゃないのか?
そうなら、辻褄があわない。決定的なずれがある。
寝台から勢いよく起きあがった。
そのタイミングで部屋のインターフォンが鳴らされた。
吾妻は慌てて資料を寝台の下に隠すと、玄関に向かう。
扉を開けて、驚いた。
微かに、胸は悦んだ。
白倉がいた。思い詰めたような、顔で。
「…ちょっと、いい?」
控えめに、けれど必死に聞くから、頷いた。
部屋の中に招くと、白倉は俯き加減に入ってくる。
ソファを勧めると、一瞬躊躇うように吾妻を見上げた。
安心させるように肩を優しく叩くと、安心したように息を吐き、座る。
「ええと、なんか」
「いいから」
飲み物を出そうと思ったが、白倉は辞退した。
吾妻を見上げて、軽く笑う。からかうように。
「お前の部屋にそんなもんないだろ」
「…あ」
それもそうだ。カップなどは元々常備されていたが茶葉などはない。
吾妻は苦笑して、向かいの椅子に腰掛けた。
からかうような白倉の顔に確実にかかった陰が、気になってしかたない。
「…なに?」
用件を伺った吾妻に、白倉は俯き、ぽつりと言った。
「用事がなきゃ、来ちゃ駄目か?」
「…そんなことはない」
吾妻の声が掠れる。しまったと思った。
「そんなつもりじじゃない。ごめん。
だけど、ここずっと」
「避けてたのはお前もだろ」
俯いたままの白倉の声はどこか怒っていた。
吾妻は両手を足の上で握りしめて、息を少し詰めて吐く。
「…うん、ごめん」
「なんで」
「…負けた。白倉の期待は、裏切った」
「お前が負けることなんかわかってた」
俯いたままの白倉の顔。綺麗な瞳が前髪に隠れて見えない。
不思議なほど、吾妻の中には怒りが芽生えなかった。
「なら、どうして、キスしてくれた?」
とても静かで柔らかい、慈しんだ声音で問われたことに驚き、白倉が顔を上げる。
驚きと不安に揺れた翡翠の瞳が自分を映す。
「…僕のこと、信じてくれた?
僕は、ただ嬉しかった。
白倉が僕に勝って欲しいって言ってくれた。
負けると思ってたとしても、僕に会いに来てくれた…。
うれしかった」
「………」
白倉は信じられないように瞳を見開き、何度も瞬きした。
その瞳から、静かに涙が零れる。
「……って」
「うん」
「…お前の傍に、…お前に傍に、いてほしくて。
ああしたら、切れそうな糸が切れないかもしれんって、繋ぎたくて。
…手を伸ばせば、届く場所で」
白倉の手が震えながら、伸ばされる。少し距離のある椅子に座った吾妻には届かない。
吾妻は立ち上がって、微笑んで傍に立った。
その腕に、白倉の手が触れる。
「…お前に、笑って、傍に、いて」
欲しかった。そう涙に震えた声で綴る白倉を、そっと抱きしめた。
壊さないように、優しく、優しく抱きしめた。
白倉はすがるように背中に手を回して、しがみついてきた。
「…」
白倉の小さな、嗚咽が響く。
聞けない。
知りたいのは、あの事件。
自分と白倉を離すきっかけ。
岩永と村崎のこと。
でも、白倉になんて聞けって言うんだ。
「ごめんな」
「…なんで?」
謝るんだ、と白倉は吾妻を責めた。謝って欲しくなどないと。
暴いてごめん。お前達が知られたくない過去を、暴こうとしている。
ごめん。
腕をそっと緩める。涙に濡れた瞳が自分を見上げている。
ああ、初めて出会ったあの時、キミは泣きながら微笑んで、こんな風に見上げてきて。
俺の、右目に触れた。
白倉に手を伸ばして、頬を包む。
そっと顔を近づけ、傾けると、白倉はゆっくりと濡れた瞳を伏せた。
重ねた唇。離して、もう一度触れた。
白倉の包帯に巻かれた手を掴んで、自分の右目に当てる。
白倉は不思議そうに自分を見つめて、微笑んだ。
あの日のように。泣きながら、俺に笑った。
図書室の書庫の鍵は、滅多なことでは貸し出し許可が下りないという。
なら村崎はどうやって開けたのだろう。
超能力では、NOAの建物は破壊出来ない。
自分も覚えがあるからわかる。
廊下で流河と対峙した時、自分の業火ですら、壁は全く傷付かなかった。
コンピューター室で、手当たり次第検索する。
引っかからないとは思っていたが、見事に一件もない。
世間でも、一時的に騒がれただけで、データは消去されている?
机の上に散らばった資料はさっぱり意味がわからないが、村崎が持っていたなら、関わりのある資料だ。
明かりを点けずに没頭していたが、不意に照明がつく。目が眩んで、左目を手で庇った。
「…なにしとるんや?」
低い声。吾妻は弾かれたように立ち上がる。
村崎がそこにいた。険しい顔で。
おそらく、吾妻のしていることを察して、ここに来たのだ。
あのあと、己が片付けずに置いていってしまった資料の有無に気づけば、すぐに察しが付くだろう。
希望すれば部屋にパソコンは用意してもらえるが、このタイミングで希望すると疑われる。吾妻の部屋には本人が希望しなかったため、パソコンがまだない。
警戒して自分を睨む吾妻を見て、村崎は近寄ってきた。
傍に積んであった本を一つ手に取り、それから吾妻の肩をきつく掴んだ。
「…っ」
かなり力がある。自分以上に。
容赦なく肩を握られ、痛みに呻いた。
「…これ以上、踏み荒らすな」
村崎の忠告は、低く、重苦しくて、その中に響く感情に吾妻は村崎の顔を見つめた。
ひどく、切ない痛みだ。声の中に隠れた心。
「…これ以上、引っかき回さんでくれ」
悲痛としか言いようがない村崎の表情。
吾妻は驚いて、乾いた感じのする喉から声を絞り出す。
「岩永…のこと?」
問いかけた瞬間、村崎の瞳が泣きそうに揺れた。
思い切り突き飛ばされる。背後のパソコンに背中をぶつけて、吾妻は痛みにしゃがみこみそうになった。どうにか踏ん張る。
「……」
顔を上げて見上げると、村崎は愕然としていた。
なんで知っているんだと、動揺していた。
「…あんたの、パスケース。置き忘れてたよ。
岩永と一緒の」
「言うな」
重く静かで、それでいて叫ぶ寸前のような声が遮った。
「二度と、それを口にするな」
「…どうして? なんで岩永のこと」
「儂と岩永を関係付けるな!」
震えた声は、怒りなのか悲しみなのか、吾妻にはわからない。
今にも、泣きそうに、慟哭の崖っぷちに立って踏ん張っているような、村崎の声と表情。
なにも言えない。
「…二度と。
あれは、儂と、なんの関係もない」
微かに俯き、村崎は静かに言った。まだ声は辛そうに揺れていた。
積んであった資料を持って、村崎は部屋を出ていこうとする。
「…待っ…!」
持って行かれたら困る。
吾妻は足早に追いかけて、村崎の腕を掴んだ。
瞬間、視界が大きく歪んだ。
瞳を開けると、荒れた黒い空が見えた。
台風の日のような、灰色と黒の混ざった空だ。
吾妻はぼんやりとそれを見上げる。
視線を移動させて、驚いた。
原形をとどめずに破壊された建物の屍が地上に散乱している。
地上三階あたりの景色。自分は宙に浮かんでいる。
そこはビルのような建物が縦に六つに、まるでケーキにナイフを入れたように割られ、三つが地面に長く倒れている。
残されたビルの欠片の一つがどうにか地上に斜めに立っている。
割れた建物の中心に渦巻くものがある。
白い閃光だ。時折、闇色の光を纏って輝く。
空まで伸びて、天候を狂わせている。
周囲から飛来するのは超能力だ。数多の力。
閃光に向かって放たれる。
やっと吾妻は理解した。
これは、自分が無意識に読んでしまった村崎の記憶だ。
おそらく、NOA壊滅事件当日の。
暴走の光景だ。
あの巨大な真白い閃光が暴走している力。
周囲を飛ぶ白い飛行機体。そこから放たれる力は暴走を止めようとしている。
だが、効果はない。
白い閃光は全てを飲み込んでいた。
飲み込む?
違う。喰らっている。
食物を自分の中に取り込んで、自分のエネルギーにするように。
あの閃光は、他の超能力を「吸収」して、自らの「力」に変換していっている。
「吸収」の超能力。
どんな力も効果をなさない。
身体はそこにないのに、吾妻は身の毛がよだつ気がした。
怖気が立つ。畏怖では生ぬるい、圧倒的な恐怖。逃げ出したい。背中を向けてはやくここから閃光の見えない場所まで、なにもかも捨てて泣きながら逃げたくなるような衝動を、抱かせる。
なんて、無茶苦茶で、恐ろしい力だ。
これでは、ダメだ。
いくら攻撃しても、それを片っ端から吸収して、また力を蓄える。
普通なら超能力を操るエネルギーが尽きれば、暴走だって収まるはずだ。
だがこれでは、暴走を止めようとする人々の力を喰らって、自分のエネルギーにしてしまう。
底を尽きることがない。
止めようがない。
不意に声が聞こえた。
遠く、下の地上から。
閃光の中心はなにも見えず、暴走の主の姿もわからない。
でも、あそこに岩永がいる。
そうわかったのは、地上でその閃光に向かって、何度も泣きそうに、声を張り上げる人が呼ぶから。今にもそこに駆け出していきそうな身体を、周囲の仲間に押さえられて。
村崎が、彼を呼ぶから。
「嵐!」
一瞬で映像は途切れた。
吾妻は自分の腕を掴んだ手の力に現実に引き戻された。
ハッとして、現実の世界を見渡す。
九生が静かに憤った顔で、自分の手を掴んで村崎から引き離していた。
「…九」
呼ぼうとした。九生に、人殺しを見るような瞳で睨まれ、声を失う。
「悪い村崎。
もう調べんよう、厳重注意しとくけん」
村崎に硬い口調で言うと、九生は吾妻の手を掴んで歩き出した。
コンピューター室から引っ張り出され、連れて行かれる。
なにかを聞ける状況でも、振り解ける状況でもなくて、吾妻はただ後を追った。
九生が不意に足を止める。
「二度と、知ろうとすんな」
自分を振り返らないまま、放たれた低い声は、泣いているのかと思うほどにか細かった。
自分の手首を掴む力が、爪を立てるほどに強くなる。
「二度と、…踏み荒らすな」
それだけ吾妻に告げて、九生は手を離すと足早に歩いていってしまった。
廊下の向こうに見えなくなる背中を見送ってしまう。
吾妻はそこに立ち尽くしたが、それで引き下がれなかった。
ひどいことをしているのだとわかっている。
鬼畜だと、人でなしだとわかっていても。
自分はもう一度、彼の傍で笑いたくて。笑う彼の手を握りたくて。
吾妻は溢れそうになった涙を手の甲で拭うと、顔を上げた。
机の上で鳴っているスマートフォンを取り、流河はフリップを開いた。
メールの内容に目を通し、閉じる。
「岩永クン。俺ちょっと出かけてくる」
「ん? どこ?」
岩永と流河の部屋の、勉強机や本棚のある部屋。
自分の机の椅子から立ち上がり、スマートフォンと財布だけ持った流河は笑う。
「ちょっとコンビニのチキン食べたくなって」
明るく。
「そっか。ほな、いってらっしゃい」
岩永は疑わず、手を振った。
振り返し、流河はのんびりと部屋を出る。
廊下に出て、誰もいないことを確認して、目を閉じて念じる。
一瞬後、そこに流河の姿はない。
薄暗い礼拝堂。
椅子の一つに腰掛けていた吾妻は顔を上げる。
扉が開いたからだ。
一人の影が中に入ってきて、また扉は閉まった。
足音が近づく。
「まさか、キミが本当に、俺を頼るとは思わなかったよ」
驚きと、微かに嘲りの混ざった、普段は明るい声が吾妻の頭上から降った。
「言い出したのは、あんただろ。流河」
ぱっと明かりがつく。
礼拝堂の照明ではない。流河が持ってきた小さな懐中電灯だ。
床に上を向くように置いて、流河は吾妻の向かいに座った。
そうだね、と頷く。
「でも、絶対頼らないと思ったから言ったんだよ」
「だけど、そうしないと駄目になった」
決して退かない口調で答える吾妻に、流河は肩をすくめる。
「代価はもう大体わかっちゃってるんだけどな」
「なら、僕の他の情報でもなんでも、払える物ならなんでも」
「…別に、いいよ」
流河は呆れたように息を吐いて言った。
吾妻に呆れたのではない。なにか、他のことに呆れたような、柔らかい声だった。
「…調べたら絶対、誰かを傷付ける。
でもキミは知らなきゃ、キミが進めない。
俺はキミに足を止めて貰っちゃ困るんだ。
…これから先、絶対に足を止めないこと。それを誓ってくれるなら、教えてあげる」
それは、流河自身への呆れだと気づいた。
甘い自分へか、それとも苦笑か。
吾妻はホッと息を吐き、ありがとうと呟いた。
「誓う」と約束した。
「さて、なにから聞きたい?
どこまで知ったの?」
「…岩永が一年前に暴走事件を起こし、NOAが壊滅したこと。
あいつには二つ超能力があり、もう一つが『吸収』。
そして、白倉も同じことになる可能性があるってこと。
それらが【キャリア】って呼ばれるらしいこと」
「…わかった。
まず、超能力のタイプから話そうか」
流河は腕を組んで、息を吐いて整える。
少し緊張しているのだろう。
「まず、持っている超能力の数としてのタイプは知ってる?」
「それは知ってるよ。
僕は複数型だ」
「俺もそうだ。
まず、大抵は単一型が多い。
超能力を一つしか持たないタイプ。
俺達は超能力が二つあるタイプだ」
それは「複数型」と呼ばれる。
「他の呼称に常態覚醒型っていうのがある。これは?」
「しらない」
「常態覚醒型は最初から二つの力を操れるタイプのこと。
あるいは、片方を高めることで、片方を開花させたり高められるタイプ」
吾妻は唇になんとなく触れ、自分はそれだと呟いた。
「で、問題になってるのが【キャリア型】。
二つ目の力が眠った状態の能力者。強いきっかけを外から与えない限り、覚醒しないタイプ。自力ではどうしようもないタイプだね。
潜伏してるウイルスと似てるからそう呼ばれる」
「…それが、岩永や白倉?」
「違う」
吾妻の掠れた質問を、流河はあっさり否定した。
「キャリアは特に問題はないんだ。二つ目の力が使えないって以外はね。
自分自身気づかない可能性も高いけど、別になにも起こらない。暴走とかは」
流河は腕を組み、右手で自分の胸を指す。
「俺はキャリアで、外から刺激を受けて転移の力を覚醒させたから。
俺が断言する」
吾妻が息を呑んだ。
「岩永クンや白倉クン、…時波クンは【暴走キャリア型】」
静かな夜で、空は星が見える。
白倉は、また泣いていないだろうか。
不意に不安に駆られる。
「ほぼキャリアと同じだけど、未覚醒の二つ目の能力が深層で一つ目の能力や身体に負荷をかけ、能力の喪失・衰え・暴走を促してしまったり、身体の組織の破壊を引き起こすタイプ。
そして、暴走の引き金は、まだ解明されてないけど、…誰かを強く思う気持ちが引き起こす確率が高い…って言われている」
泣きたいくらい、不安になった。
また、泣いていないだろうか。
初めて出会った、あの日のように。
0
あなたにおすすめの小説
多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】
23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも!
そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。
お願いですから、私に構わないで下さい!
※ 他サイトでも投稿中
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【ご報告】
2月28日より、第五章の連載を再開いたします。毎週金・土・日の20時に更新予定です。
また、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。
引き続きよろしくお願いいたします。
魔王城の清掃係ですが、ラスボスに懐かれて世界を磨くことになりました
由香
恋愛
異世界に転移したら、なぜか魔王城の清掃係に就職していました。
巨大な玉座、血のついた回廊、禍々しい装飾品の数々。
今日も黙々と床を磨いていたら――
「お前の磨いた床は、よく眠れる」
恐怖の象徴と名高い魔王様に懐かれました。
見た目は完全にラスボス。
中身はちょっと不器用で、独占欲強めの努力型。
勇者は帰還の道を示し、魔王は隣を選べと願う。
光と闇のはざまで、選ぶのは――ただの清掃係。
戦争よりも、まず床。
征服よりも、まず対話。
これは、世界最強の存在に溺愛されながら
世界平和を“足元から”始める物語。
甘くて、少し熱くて、ちゃんと選ぶ恋。
異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。
猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。
もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。
すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。
主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。
――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました――
風景が目まぐるしく移り変わる。
天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。
移り変わる景色こそは、
第一天 ヴィロン。
第二天 ラキア。
第三天 シャハクィム。
第四天 ゼブル。
第五天 マオン。
第六天 マコン。
それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。
気付けば明星は、玉座に座っていた。
そこは天の最高位。
第七天 アラボト。
そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。
――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。
薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
─── からの~数年後 ────
俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。
ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。
「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」
そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か?
まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。
この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。
多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。
普通は……。
異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話。ここに開幕!
● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。
● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる