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第三章 ~改めてゲームを見守ろうとしてから自分の名前を思い出すまで~
今更だけどゲームの状況と違う
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リッカによれば、昔は似たような話がよくあったらしい。
闇学習って呼ばれてて。要するに。太客じゃないお客を、新人の練習台にするんだ。
困って娼館に行くネコ客には、指名した娼夫と違うって文句を言う余裕なんか無かったから。
「……ちょっと酷いな。」
オレにはそれくらいしか言葉が見付からなかった。
「昔は、ね? ……そういうものだと思ってたわ。」
「……おれのいる店じゃ、今、やってるんだけど。」
溜息交じりにリオが吐き捨てる。
「忙しいタチ娼夫の為、って言われても……やっぱり、おれには合わなかったんだ。」
「リオ…」
「ほら、もおぉ~。今、謝ろうとしただろ。」
丸テーブルの向かい側から手を伸ばして来たリオ。
ちょっと離れてるのに、強引にオレの頭をワシャワシャする。
「わっ、ちょ……リオっ。止めろってぇ~。」
「ほんっとに、アンタの名前が分からないのって不便だね……。」
「それは、ごめ……。あっ……。」
「それに関しては謝れよ。」
「ぇええーーーっ?」
つい反射的に謝り掛けて、あ、しまった。って思ったのに。
そこはオレが謝るとこなのか? ……もう、難しいなぁ。
「ねぇ、リオ? 辞める話をしに、これからお店に行くでしょ。」
タイミングを見て、リッカが切り出した。
リオが、巫山戯るのを止めて頷く。
「良かったら、アタシも一緒に行くわン。……余計な首を突っ込んで御免なさいね? でも乗り掛かった舟だし、ほっとけないのよン。」
「ううぅん、余計だなんて思わないよ。……オネェが居てくれれば、おれも心強い。有難う。」
分かり易くてチョロいツンデレ、って。たぶんHWPの全プレイヤーから言われてるだろうリッカ。
チュートリアルでの出会いから既にチョロそうな雰囲気のツンとか、二回目以降の懐き具合とか、そういうのが廃人ゲーマーだったオレは気に入ってた。
だけど、ツンデレじゃない……大人な感じのリッカも好きだな、オレ。
一息着いてから三人で、リオが働いてたお店に行った。
そのお店は娼館エリアの一番奥にあった。建物が大きくて、装飾や灯りも凄く賑やかで。
聞いてみたら、やっぱり、一番大きいトコなんだって。
こんな大きなお店なのに。……いや、だからこそ、なのか。
客や娼夫の一部をないがしろにしてて、それでも店はとても華やかだ。
まだ夕方になったばかりなのに、充分に賑わってる。
リオとリッカは、リオの退職についてオーナーと話す為、店の中にいる。
オレは一緒に居ても役に立たないんで、店の外で二人を待ってた。
夕方に娼館の前で立ってるの、ちょっと恥ずかしいんだけど。
今のオレは、ちょっと、それを気にしてる場合じゃなかった。
偶然にも店のオーナーが知り合いだって、オレ達にそう言ったリッカが。呟いてたんだ。
「ユーグは……アタシの事、覚えてるかしら。」
驚いて声が出なかった。
もしリッカやリオが、オレの方を見てたら。絶対、怪しまれたと思う。
リッカの口から出た、ユーグって名前。
それを言ったのがリッカじゃなかったら、聞き逃してたかも知れない。
ユーグも、ゲームに出て来るネームドキャラだ。
金持ちの家の息子で。坊ちゃんキャラで。ライバルの家の近くで遭遇出来る。
リッカと同じく、ハーレムに入れられる。
ただし……あんまり人気は無かったような。
遭遇しやすい場所がライバルの家の近所、って設定の所為で、なかなか会えなくて。
特にツンデレでも、扱いが難しいんでも無いけど、手間の割には貰えるポイントも少ないし。
ハーレム入りする妻の中では、一番最後になりがちだ。
キャラ性がお坊ちゃまで世間知らずしか無い、ってのも要因の一つだろな。
あのユーグが、娼館のオーナーやってる……。
プレゼントをあげるから目を瞑って。って主人公が言ったら、「いいけど。瞑ってる間に、居なくなったりしないでよ?」って答えるような、あのユーグが。
リッカも三十歳越えてる……四十歳にはなってないらしい……みたいだし。
なんか、今更だけど。
オレが遊んでたゲームとは、ちょっと状況が違うみたいだ。
闇学習って呼ばれてて。要するに。太客じゃないお客を、新人の練習台にするんだ。
困って娼館に行くネコ客には、指名した娼夫と違うって文句を言う余裕なんか無かったから。
「……ちょっと酷いな。」
オレにはそれくらいしか言葉が見付からなかった。
「昔は、ね? ……そういうものだと思ってたわ。」
「……おれのいる店じゃ、今、やってるんだけど。」
溜息交じりにリオが吐き捨てる。
「忙しいタチ娼夫の為、って言われても……やっぱり、おれには合わなかったんだ。」
「リオ…」
「ほら、もおぉ~。今、謝ろうとしただろ。」
丸テーブルの向かい側から手を伸ばして来たリオ。
ちょっと離れてるのに、強引にオレの頭をワシャワシャする。
「わっ、ちょ……リオっ。止めろってぇ~。」
「ほんっとに、アンタの名前が分からないのって不便だね……。」
「それは、ごめ……。あっ……。」
「それに関しては謝れよ。」
「ぇええーーーっ?」
つい反射的に謝り掛けて、あ、しまった。って思ったのに。
そこはオレが謝るとこなのか? ……もう、難しいなぁ。
「ねぇ、リオ? 辞める話をしに、これからお店に行くでしょ。」
タイミングを見て、リッカが切り出した。
リオが、巫山戯るのを止めて頷く。
「良かったら、アタシも一緒に行くわン。……余計な首を突っ込んで御免なさいね? でも乗り掛かった舟だし、ほっとけないのよン。」
「ううぅん、余計だなんて思わないよ。……オネェが居てくれれば、おれも心強い。有難う。」
分かり易くてチョロいツンデレ、って。たぶんHWPの全プレイヤーから言われてるだろうリッカ。
チュートリアルでの出会いから既にチョロそうな雰囲気のツンとか、二回目以降の懐き具合とか、そういうのが廃人ゲーマーだったオレは気に入ってた。
だけど、ツンデレじゃない……大人な感じのリッカも好きだな、オレ。
一息着いてから三人で、リオが働いてたお店に行った。
そのお店は娼館エリアの一番奥にあった。建物が大きくて、装飾や灯りも凄く賑やかで。
聞いてみたら、やっぱり、一番大きいトコなんだって。
こんな大きなお店なのに。……いや、だからこそ、なのか。
客や娼夫の一部をないがしろにしてて、それでも店はとても華やかだ。
まだ夕方になったばかりなのに、充分に賑わってる。
リオとリッカは、リオの退職についてオーナーと話す為、店の中にいる。
オレは一緒に居ても役に立たないんで、店の外で二人を待ってた。
夕方に娼館の前で立ってるの、ちょっと恥ずかしいんだけど。
今のオレは、ちょっと、それを気にしてる場合じゃなかった。
偶然にも店のオーナーが知り合いだって、オレ達にそう言ったリッカが。呟いてたんだ。
「ユーグは……アタシの事、覚えてるかしら。」
驚いて声が出なかった。
もしリッカやリオが、オレの方を見てたら。絶対、怪しまれたと思う。
リッカの口から出た、ユーグって名前。
それを言ったのがリッカじゃなかったら、聞き逃してたかも知れない。
ユーグも、ゲームに出て来るネームドキャラだ。
金持ちの家の息子で。坊ちゃんキャラで。ライバルの家の近くで遭遇出来る。
リッカと同じく、ハーレムに入れられる。
ただし……あんまり人気は無かったような。
遭遇しやすい場所がライバルの家の近所、って設定の所為で、なかなか会えなくて。
特にツンデレでも、扱いが難しいんでも無いけど、手間の割には貰えるポイントも少ないし。
ハーレム入りする妻の中では、一番最後になりがちだ。
キャラ性がお坊ちゃまで世間知らずしか無い、ってのも要因の一つだろな。
あのユーグが、娼館のオーナーやってる……。
プレゼントをあげるから目を瞑って。って主人公が言ったら、「いいけど。瞑ってる間に、居なくなったりしないでよ?」って答えるような、あのユーグが。
リッカも三十歳越えてる……四十歳にはなってないらしい……みたいだし。
なんか、今更だけど。
オレが遊んでたゲームとは、ちょっと状況が違うみたいだ。
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