せっかくBLゲームに転生したのにモブだったけど前向きに生きる!

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第三章 ~改めてゲームを見守ろうとしてから自分の名前を思い出すまで~

名前も知らない男と●●●9 $リオ$

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次の日の日中。
店が始まる前に、おれは先輩達三人に連れ出されてた。

酒場通りの隅っこ。
周りにある建物は夕方近くから開く店が多いから、この時間帯は人通りが少ない。
しかも路地裏だから、まず誰も来ないだろう。

話がある、なんて言ってたけど。
間違い無く、ただの吊るし上げだ。



「なんで呼ばれたか、分かってンよな?」
「さぁ? ヒマだから?」

文句を言いたいなら、さっさと言えばいいのに。

凄んで来るのは、先輩のタチ娼夫。すぐにカッとなるオラオラ系の男だ。
他の二人はちょっと離れた位置から、ニヤ付いて眺めてるだけ。


「タチの癖して、綺麗とか言われて勘違いしてンなよ。」
「……綺麗なのは事実だから。」
「なっ…ンだとおッ!」

可愛げの無い態度を取ったおれは乱暴に肩を掴まれた。

ちょっとでも気に入らない事があると、すぐこうやって怖がらせようとする。
だからおれは、タチ、って分類の男が好きになれない。
今までの経験で分かった。
おれは、タチっぽいタチが……怖くて。嫌い。


「用事が無いなら、もういい? 仕事の準備しなきゃ。」

おれは先輩娼夫の腕を振り払って歩き出した。



その直後、背中を力一杯に突き飛ばされる。流石に怒らせたみたい。
おれの身体は、空き瓶を入れて積んであった箱にぶつかって、箱を巻き込んで地面に崩れた。

派手な音が響いたけど、きっと誰も来ない。
厄介そうな揉め事に首を突っ込む人なんていないから。

捕まえられて、無理矢理起こされた。
壁に背中を押し付けられる乱暴さが、おれにハーレムでの事を思い出させた。


「お前のそのツラで……タチとか、嗤わせる。」

顔の方に伸びて来る手にゾッとする。全然違う男なのに。
嫌だ。触らないで。


「そのツラに客を取られて、言い掛かり付けてくる方が、よっぽど笑えるな。」
「…ンだと、てめぇ。若いってだけで調子に乗ってンなよ!」

気付いたら先輩娼夫の手を叩き落としてた。
精一杯の強がりを言うおれは、当然の流れだけど、腹部を殴られる。……顔を殴ったら店にバレるからな。
おれは呆気なくよろめいて、また木箱と一緒に倒れた。



吊るし上げの理由。
そんな事だろうなって予想が付いてた。

有難い事にこんなおれでも、何人か指名してくれる客がいる。
その人達は「こんなに丁寧に抱いて貰ったの、初めて」って言ってくれて。おれの方が申し訳なくなるくらい、嬉しそうにしてくれた。

この先輩はオラオラ系で人気もそれなりにあるんだから。
こんな所でおれなんかに絡んでないで、客にちょっとだけ優しくしてやれば、もっと稼げるようになるのに。
おれと違って……セックスに嫌な気持ちなんか無いんだったら。


「お前さぁ~? 新人の『当番』、嫌がってるんだってなぁ~?」

痛くて這い蹲ったままのおれに、離れた所にいた口髭の店員が下らない説教を始める。
ひょっとしたら、こっちの方が目的だったのかも。
奥にいる、纏め役のニイさんも、おれが『当番』をこなさない事にお怒りの様子だ。

言い返したけど、おれ。
自分の居場所、ここでいいのかな……。

……って。そう思った時。




「ちょっと! アンタ達、何してんのっ!」

誰かがやって来た。
まさかこんな状況で声なんか掛けて来る人、いないだろうって思ってたのに。

驚いてそっちを見たら。
おれより年上だろうけど、何歳なのかも分からないような綺麗な……おれなんかより、ずっと綺麗なオネェの人が近付いて来る。
その人を守るように、隣に寄り添ってるのは『彼』だった。


なんで? なんで今、こんな所にいるの? しかもあんな綺麗な人を連れて。
昨夜はルサーって兵士と、娼館の前でイチャ付いてた。今日は別な人と一緒。……年上が好きなのかな。
あぁそっか。タチは複数のネコを侍らせたり、こぞって世話をさせたりするのが好きだって言うもんな。やっぱりタチって、普通はそうなんだ。
……おれは違うけど。おれは劣ってるタチだから。


どうやらオネェも娼館で働いてるようで。柔らかい声で先輩達を諭してる。
娼夫の後輩いびりっぽく見えて、助けに入ってくれたみたい。

彼はおれに目もくれず、先輩とオネェの遣り取りをジッと窺ってる。
厄介事に首を突っ込むオネェが心配だ、って顔に書いてた。



「おいぃ、お前もいつまで座ってんだぁ~!」

そんな場合じゃないのに、呑気に彼を見てたりしたから。
乱暴に服を掴まれて咄嗟に抵抗出来なかった。


「っく、離せ……っ。」
「ちょっと、もぉ、やめなさいよっ。」
「うるセェっ、黙ってろ!」

締め付けられて苦しい。
止めようとしてくれたオネェに向かって、口髭の店員が腕を振り上げた。

オネェが殴られる……!

そう思って、怖くて、身体が強張った。
だけどオネェが殴られる事はなかった。



「はいよっ。」

その前に彼が。あっさりと弾き飛ばしたから。
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