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第三章 ~改めてゲームを見守ろうとしてから自分の名前を思い出すまで~
名前も知らない男と●●●11 $リオ$
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おれは自分が怪我してたのも気付かなかいぐらい、彼の事ばっかり意識してたようだ。
リッカに言われて初めて気付いて、俄かに顔が痛みだす。
つい傷口に触ろうとしてリッカに止められた。
「あー……さっき転んだ時かなぁ。うわ、ダッサぁ。」
顔を怪我したのに、気付かないなんてね。
「笑ってる場合じゃないわよ。傷が残ったら大変だわ。」
「大丈夫。もう……娼夫、辞めるし。」
そう、もういいんだ。
顔に気を遣った生活はもうお終い。
髪も切ろっかな。一番綺麗に見える髪型とか、もう気にしなくていいから。
「ゴメン……。」
絞り出すような声で謝ったのは彼。
仕事を辞めるおれよりずっと、しょんぼりした顔で。申し訳なさそうに唇を噛んで。
ついさっきまで先輩達と対峙してた時の『強い男』振りが、すっかり影を潜めて立ち尽くしてる。
……そんな顔しないでよ。おれの事なんか気にしなくていいから。
そう言おうとして止めた。
そんな殊勝で可愛げのある台詞は、おれっぽくない。
「あ~ぁあ、お店、クビになっちゃったよ?」
おれは腰に両手を当てて、俯き加減になってる彼の顔を正面から覗き込んだ。
さっきまでと違う、不安そうな子供みたいな目をしてた。
でもおれは今もドキドキしてる。
「これから、どうしよっかなぁ。……なぁ~んてね? う・そ。」
彼の頬を指で突っついて無理矢理笑った。わざとガサツに肩を叩いたりして。
そうして自分の気持ちを隠した。
* * * * * *
「こらぁ。触っちゃ駄目よン?」
つい傷口に手をやって、リッカ……改め、オネェに止められた。
目のすぐ上に貼られたガーゼがムズムズする。
おれはオネェの家に招かれて、顔の傷を手当して貰ってた。
まだ店を辞めてないのに他の店に入るのは……って思ったけど。意外とオネェが強引で。
でもオネェの強引さは決して不快な感じじゃなくて、暖かくて有難かった。
手当てが済んでから、お茶とお菓子も出して貰って。
何か話したそうにしてるおれに、オネェが気を利かせてくれたんだ。
丁度良いタイミングだと思って彼に、おれがルサーから頼まれてた事を話した。
おれは彼の事を知らないから、結局彼が自分の名前を思い出せない状況は変わらないんだけど。
「ハニーって呼んであげよっか?」なんて言ったおれの提案は、彼から秒で却下されちゃった。
その後。オネェが凄く優しい雰囲気で。何だか話しやすくて。
おれの店の話をしたり。仕舞いには、話すツモリ無かったグチまで言っちゃったり。
「忙しいタチ娼夫の為、って言われても……やっぱり、おれには合わなかったんだ。」
「リオ…」
「ほら、もおぉ~。今、謝ろうとしただろ。」
また謝る気配を出した彼を止めた。
オネェの家に来る前も、来てからも。友達になっても、彼はすぐ謝ろうとする。
おれが仕事辞めるって話の責任を感じてるみたいだけど、本当に気にしないで欲しい。
……嘘。本当はおれを気にしてくれて嬉しい。
でもそんな顔しないで欲しいんだ。好きな人にそんな辛そうな顔、させたくないんだ。
彼の所為じゃ無いんだから。
全部おれがした事、おれが決めた事だから。
丸テーブルの向かい側にいる彼に、頑張って手を伸ばす。
強引に頭をワシャワシャした。
「わっ、ちょ……リオっ。止めろってぇ~。」
「ほんっとに、アンタの名前が分からないのって不便だね……。」
名前を呼びたい……。
そんな気持ちを、わざと巫山戯た口調で誤魔化した。
おれは自分の気持ちの落し所を見付けた。
最初はおれなんかが好きになっていいのかな、って思ったけど。だからって気持ちが無くならなくて。
……彼の事が好きになってる。だからもう躊躇するのは止める。
だけど彼には言わない。
おれがタチ娼夫なのは彼に知られてるから。同じタチから告白されて嬉しいタチなんかいないだろ。
困らせたくないし、迷惑掛けたくないし、……嫌われたくない、から。
彼に恋をしてる。その気持ちを認めて。だけど黙ってる事にした。
それがおれの落し所だった……。
リッカに言われて初めて気付いて、俄かに顔が痛みだす。
つい傷口に触ろうとしてリッカに止められた。
「あー……さっき転んだ時かなぁ。うわ、ダッサぁ。」
顔を怪我したのに、気付かないなんてね。
「笑ってる場合じゃないわよ。傷が残ったら大変だわ。」
「大丈夫。もう……娼夫、辞めるし。」
そう、もういいんだ。
顔に気を遣った生活はもうお終い。
髪も切ろっかな。一番綺麗に見える髪型とか、もう気にしなくていいから。
「ゴメン……。」
絞り出すような声で謝ったのは彼。
仕事を辞めるおれよりずっと、しょんぼりした顔で。申し訳なさそうに唇を噛んで。
ついさっきまで先輩達と対峙してた時の『強い男』振りが、すっかり影を潜めて立ち尽くしてる。
……そんな顔しないでよ。おれの事なんか気にしなくていいから。
そう言おうとして止めた。
そんな殊勝で可愛げのある台詞は、おれっぽくない。
「あ~ぁあ、お店、クビになっちゃったよ?」
おれは腰に両手を当てて、俯き加減になってる彼の顔を正面から覗き込んだ。
さっきまでと違う、不安そうな子供みたいな目をしてた。
でもおれは今もドキドキしてる。
「これから、どうしよっかなぁ。……なぁ~んてね? う・そ。」
彼の頬を指で突っついて無理矢理笑った。わざとガサツに肩を叩いたりして。
そうして自分の気持ちを隠した。
* * * * * *
「こらぁ。触っちゃ駄目よン?」
つい傷口に手をやって、リッカ……改め、オネェに止められた。
目のすぐ上に貼られたガーゼがムズムズする。
おれはオネェの家に招かれて、顔の傷を手当して貰ってた。
まだ店を辞めてないのに他の店に入るのは……って思ったけど。意外とオネェが強引で。
でもオネェの強引さは決して不快な感じじゃなくて、暖かくて有難かった。
手当てが済んでから、お茶とお菓子も出して貰って。
何か話したそうにしてるおれに、オネェが気を利かせてくれたんだ。
丁度良いタイミングだと思って彼に、おれがルサーから頼まれてた事を話した。
おれは彼の事を知らないから、結局彼が自分の名前を思い出せない状況は変わらないんだけど。
「ハニーって呼んであげよっか?」なんて言ったおれの提案は、彼から秒で却下されちゃった。
その後。オネェが凄く優しい雰囲気で。何だか話しやすくて。
おれの店の話をしたり。仕舞いには、話すツモリ無かったグチまで言っちゃったり。
「忙しいタチ娼夫の為、って言われても……やっぱり、おれには合わなかったんだ。」
「リオ…」
「ほら、もおぉ~。今、謝ろうとしただろ。」
また謝る気配を出した彼を止めた。
オネェの家に来る前も、来てからも。友達になっても、彼はすぐ謝ろうとする。
おれが仕事辞めるって話の責任を感じてるみたいだけど、本当に気にしないで欲しい。
……嘘。本当はおれを気にしてくれて嬉しい。
でもそんな顔しないで欲しいんだ。好きな人にそんな辛そうな顔、させたくないんだ。
彼の所為じゃ無いんだから。
全部おれがした事、おれが決めた事だから。
丸テーブルの向かい側にいる彼に、頑張って手を伸ばす。
強引に頭をワシャワシャした。
「わっ、ちょ……リオっ。止めろってぇ~。」
「ほんっとに、アンタの名前が分からないのって不便だね……。」
名前を呼びたい……。
そんな気持ちを、わざと巫山戯た口調で誤魔化した。
おれは自分の気持ちの落し所を見付けた。
最初はおれなんかが好きになっていいのかな、って思ったけど。だからって気持ちが無くならなくて。
……彼の事が好きになってる。だからもう躊躇するのは止める。
だけど彼には言わない。
おれがタチ娼夫なのは彼に知られてるから。同じタチから告白されて嬉しいタチなんかいないだろ。
困らせたくないし、迷惑掛けたくないし、……嫌われたくない、から。
彼に恋をしてる。その気持ちを認めて。だけど黙ってる事にした。
それがおれの落し所だった……。
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