せっかくBLゲームに転生したのにモブだったけど前向きに生きる!

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第五章 ~ゲームに無かった展開だから遠慮しないで歯向かう~

随分と嵌まってしまった・下 $ユーグ$

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二人きりの昼食が終わってしまい。
イグザがそっと席を立つ。

「それじゃ、ユーグ。決まったら連絡してくれ。」
「勿論だとも。なるべく早く知らせよう。」

ルサーと私とが話す日取りを決めたい、とイグザが言うので。
私がリッカと予定を打ち合わせてから連絡する、という事にさせて貰った。


部屋を出るイグザを案内させる為に部下を呼ぶ。

「なんか、慌ただしくてゴメンな。」
「いいや? 私は充分に可愛がって貰ったぞ? 会いに来てくれただけでも嬉しかったくらいだ。」
「……もぉ~。可愛いか、可愛いだろ、コレ……。」

独り言のように呟く声を聞いて私は気分が良くなる。
年甲斐も無く、また、似合いもしないのに可愛らしい台詞を選んだ甲斐もあったというものだ。
計算高い私が内心で狡く笑う。


良く出来た部下はすぐにやって来た。
イグザが私の耳元に口を寄せる。

「ユーグが休日か、その前日だったら……もっと沢山スルんだけどなぁ。」
「っ、え……。」
「また今度な?」

動きの止まった私の耳朶に口付けを落とし、イグザは部屋を後にした。
残った私はイグザの行動と、言葉と、表情とを思い出し、一人悶絶する。



イグザは基本的に穏やかで紳士的だ。
子供っぽい部分もあるが、それも彼の魅力の一つに他ならないのだが……実年齢の、精力的な若さを。まざまざと見せ付けられてしまった。

私としてはかなり濃厚に絡み合い、充分な行為をして貰ったと思っている。
昼間なのだから、前回よりは淡泊になるかという予想を大きく裏切り。遥かに恥ずかしく、尚且つゾクゾクと興奮もした。

だが先程、呟いた時のイグザの表情は。
まるで現在進行形で、情欲を押さえ付けているような。これから始めるような色気を溢れさせていた。


どれだけ精力があるのだ? まさか無尽蔵ではあるまいな……?


「回数制限を……取り決めを、しよう。」

妻となる前から。あるいは、妻となって早々に。抱き殺されては溜らんからな。
私が妻となるに当たり、それが一番最初に決めておく重要な事柄になるだろう。




   *   *   *




今日は仕事で誰かに会う予定は無い。急ぎの案件も無いはずだ。
リッカの所へ持って行かせる手紙でも書こうか。

私はのんびりとデスクに着いた。



知らぬ間にイクシィズの妻に戻されていた事をリッカが知れば、どれだけ傷付くだろうか。
およそ十年くらい会って話す事は無かったから、その間にリッカにどのような心情の変化があり、どのように落ち着けたのかは分からないが……恐らくは苦しい思いをしたはずだ。
とっくのとうにイクシィズへの気持ちが消え失せていた私と違い、リッカは放置されている間も健気に、何処へも行かず、誰にも寄り掛からず。本人は「ただの惰性」だと言い張りながら、黙ってずっと大人しく、天守を待っていたのだから。
ハーレムが休止状態になっていると聞いて、リッカは昔を思い出すだろうか。

……私にはそんなセンチメンタルな思考は無い。
決して短くはない年月を経て、新しい生活をしている最中に大昔の下らない問題を掘り起こされるのだ。迷惑以外の何物でも無い。
イグザにも伝えたように。ある程度は予測して準備しておいて、本当に良かった。
狼狽えもせず、余計な悲しみを感じる事も無い。
その分……可愛げも無いが。



「ハーレムの現状については……書かない方が良いだろうな。」


イグザがイクシィズと話をするのなら、確かに。
私やリッカがイグザと寝た問題も、また違った解決策があるだろう。

しかし実際の所、ハーレムに関する諍いに於いて、天守同士がどのようにして話を付けるのか。私は知らない。危険があるのではないかと恐れているだけだ。
妻ではあったものの、私はイクシィズが他の天守と争っている場面を見た事が無かった。それどころか他の天守や、天守以外の男がハーレムに絡んで揉めたという話を、聞いた事すら無かったのだ。
イクシィズのハーレムは大きかった。妻の人数も多いのだから、誰かしらが他の男に狙われ、それで諍いになる事はあっただろうにな。
……妻としての私がお飾りにもなっていなかった、という証拠だ。


だが私には分かっている。
私だけでなく、大勢の妻達も恐らく全員が。お飾りにすらならないか、精々お飾りにしかなれなかったのだと。
本来ならば妻がやるべき事柄の全てを、妻でもない男が取り仕切っていたからだ。


イクシィズがハーレムを作る際に尽力したらしい、教会の……名は確か、ティモレイ。シス・ティムと呼ばれていた記憶がある。
ハーレムの公的な手続きをするだけでなく、イクシィズの予定の把握や、行動を決める際の助言もしていた。新たに加わる妻をイクシィズに紹介する役目までも。
全てを一人で賄う様子は、まるで本妻だった。

まだイクシィズの元にいるのだろうか……?


アレには、私は散々に煮え湯を飲まされた。
早々にイクシィズを見限る要因の一つだ。




ハーレム宮殿で暮らしていた頃。私は割と良くイクシィズに誘われて外出していた。
共に出掛けたり、何処かで待ち合わせたり。


だがデートがまともに終わった事など一度も無い。……一度も、だ!


いつだってイクシィズは、私の目の前で他の男を選んだ。
デート先に着いた直後でも。移動中でも。待ち合わせ場所から動かぬ内でも。待ち合わせに来ない事すらあった。
見栄えの良い男を見付けたイクシィズはいつも、「また今度な」の一言で私を置き去りにした。

その半分はアレの所為だ。
アレがイクシィズに「あのテラス席にいる三人は妻に出来まーす」と教えるから。

どれだけアレを憎んだ事か。


だが後で他人から聞いた噂では。
私が行きたかった場所に、イクシィズは他の妻達を連れて行っているらしい。

今日は何処へ誘おうか。何処ならば私と一緒に行ってくれるだろうか。

頑張って考えたというのに。
イクシィズにとって私は、デートコースを教えて来る情報屋だったのだな。


イクシィズやアレが酷かったお陰で、私の哀れな恋慕が跡形も無く消え失せるのは早かった。
まだ天守として宮殿に姿を見せている内から、私の心は冷えていた。
プレゼントをくれるとイクシィズから言われても、私は。

「目を瞑っている間に居なくならないでよ?」

と嫌味で言い返すようになっていた。





「はぁ……。」

詰まらない昔を思い出してしまった。
窓の外を眺めるが、大通りにイグザの姿はもう見えない。

私の耳元で「また今度」と囁く声を思い出す。


本当に『次』を期待出来るとは。
同じ言葉なのに、……違うものだな。
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