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第五章 ~ゲームに無かった展開だから遠慮しないで歯向かう~
二人揃って略称がヤラシイ件について
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冷蔵庫を開けるオレ。
あ、もちろんこれはエステードさんちのと違って、ラッキースケベが無くても開け閉め出来る普通の冷蔵庫だ。
中身を確認してるオレの背後から、エステードさんの呟くような声が。
「イグゥ君、フィロウは……。あの、フィロウの…子供時代の話、聞きました?」
「簡単にだけど聞いたよ。フィロウには子供の頃の記憶が無いって。泣きながら街道を歩いてて、保護された話、とか……。」
まぁオレもさ。自分が記憶の一部が無い状態でヘラヘラしてるから、『記憶』って部分に関しては、あんまり何かを言えたもんじゃないんだけどさ。
余りにもサラッと素早く話が進んでったから、詳しくツッコんで聞けなかったな。
オレよりも記憶の消失部分が大きくてビックリしたのに、慰めるスキも必要性も、全く見出せなかったくらいだぞ。
保護されてからすぐ領主の息子になったんだとしたら、フィロウには養育所での思い出って無いのかもなぁ。
「話したんですね、あの子。……良かった。」
「良かった」って言うエステードさんの声はちょっと苦しそうに震えてる。オレに話し掛けてる風な台詞だけど、視線は誰にも向いてない。
なんとなく独り言っぽくて、何か作業しながら耳を傾ける方がいい気がして。
モッツァレラチーズと太めのハムを取り出すオレ。
「フィロウが……捨てられる…所を、見たんです……。」
予想してたよりずっと重たい独白だった!
いつ頃の話かは分かんないけど、見た方もショックだろうよ!
「町の外……森の方の小さな道で、……それなりに、立派な馬車でした。私は、少し離れた場所に…居て……、馬車は一度も止まらない、まま……子供を……。」
「…………クソ、だな……。」
思い出したのか、エステードさんの声が途切れる。
忌々しそうにルサーが吐き捨てた。
動いてる馬車から放り出される、とか。
成人したオレが自分で飛び降りるのだって、あんなに緊張したんだ。子供ならどれだけ怖いか、想像するのも恐ろしい。
その衝撃でフィロウが記憶を無くすのも仕方ないくらいの悪夢だ。
エステードさんの心配は、その根底はコレだったんだろう。
天守になれば。何人か妻にすれば。少なくとも『捨てられる』可能性はかなり低い。
だけど、妻になったら。天守から捨てられる恐れは常に付きまとうから。
「お願い、です……。……捨てないで…」
「捨てないっ、絶対、捨てないからっ!」
絞り出した懇願の声に、オレは一も二も無く返事した。
気軽過ぎとか、良く考えろとか……そんなの知るか。ここで「不確かな約束は出来ない」って返事するような、そんな誠実さは要らない。
これは『契約』じゃない。オレの『決意表明』だから。
「妻になっても、よ……お前の弟だって事に、変わりはねぇんだぞ? 縁が切れるワケでも、会えなくなるワケでもねぇんだ。イグザは、そんな……ケチくせぇ男じゃねぇ。」
「……はい。」
腕を伸ばしたルサーが優しく、エステードさんの頭をポンポンする。
エステードさんはオレとルサーを交互に見て、ようやく、ちょっと安心出来たように目を細めた。雫がポロリと一滴、頬に伝い落ちた。
* * *
適当に作ったオツマミで。
飲み会を再開して。ややしばらく経って。
「ルぅサーさんは、イグゥ君の事ぉ、」
顔色は殆ど変わってないエステードさん。
舌っ足らずって程じゃなくても酔ってるみたいだ。ちょっとだけ喋り方が間延びしてる。表情も薄っすらと微笑みに近い感じだ。
「イグザ。……って呼ぶぅんですねぇ。」
「ん、あぁ。」
エステードさんはオレを「イグゥ君」って呼ぶ。
それについて。今更、なんだけどさ。
オレさ、エステードさんにさ。自分の名前は伝えたけど、愛称がイグゥだなんて言ってない……気がするんだけど。
たぶん、メリクルだよな。メリクルがオレを「イグゥ」って呼ぶからだよな。
……まぁ今更だから突っ込まないけど。
「そぉですよねぇ。イグゥ、って呼び難いですよねぇ……ふふっ。」
「愛称で呼ぶようなトシでもねぇだろ。」
苦笑いで口端を歪めたルサーが炙りハムを摘む。
何故かエステードさんもニヤリとして、うんうん頷く。
「…ぅふっ。……イクぅ時ぃ、ゴッチャになりそう…ですもん、ねぇ。」
「っ、ぶふ……! げほッ、ゲホゴホっ!」
力一杯むせちゃったルサーの背中をさするオレ。会話の流れにデジャヴ。
オレの愛称。音の響きがヤラシイって、誰もが一度は考えるらしい。
言ったエステードさんはもちろん、ルサーもちょっとは思ってたんだろう。
「よ…っ、酔っ払ってンのか、エステードっ。」
「名前ぇ呼ぶ時も、ちょと…困りますもん、ねぇ……。私も…クルゥ、て……呼ぶ事にな…たら、……困ります、もん…」
「おい? 何の話だ?」
ワケが分かんない酔っ払いに絡まれた感じのルサー。不思議そうな顔だ。
オレは何となく、メリクルの話だな~って分かった。
そうか……。
オレの愛称がイグゥ、で……イク、に似てる。
メリクルの呼び方を……例えばエリザベスをベスって呼ぶ感じに略したら、クル……で。そう言えば日本人時代に、外国人の喘ぎ方は「イク」じゃなくて「クル」だって、何かで聞いたぞ。
オレもメリクルも、略して呼ぶとヤラシイんだなぁ。
あ、もちろんこれはエステードさんちのと違って、ラッキースケベが無くても開け閉め出来る普通の冷蔵庫だ。
中身を確認してるオレの背後から、エステードさんの呟くような声が。
「イグゥ君、フィロウは……。あの、フィロウの…子供時代の話、聞きました?」
「簡単にだけど聞いたよ。フィロウには子供の頃の記憶が無いって。泣きながら街道を歩いてて、保護された話、とか……。」
まぁオレもさ。自分が記憶の一部が無い状態でヘラヘラしてるから、『記憶』って部分に関しては、あんまり何かを言えたもんじゃないんだけどさ。
余りにもサラッと素早く話が進んでったから、詳しくツッコんで聞けなかったな。
オレよりも記憶の消失部分が大きくてビックリしたのに、慰めるスキも必要性も、全く見出せなかったくらいだぞ。
保護されてからすぐ領主の息子になったんだとしたら、フィロウには養育所での思い出って無いのかもなぁ。
「話したんですね、あの子。……良かった。」
「良かった」って言うエステードさんの声はちょっと苦しそうに震えてる。オレに話し掛けてる風な台詞だけど、視線は誰にも向いてない。
なんとなく独り言っぽくて、何か作業しながら耳を傾ける方がいい気がして。
モッツァレラチーズと太めのハムを取り出すオレ。
「フィロウが……捨てられる…所を、見たんです……。」
予想してたよりずっと重たい独白だった!
いつ頃の話かは分かんないけど、見た方もショックだろうよ!
「町の外……森の方の小さな道で、……それなりに、立派な馬車でした。私は、少し離れた場所に…居て……、馬車は一度も止まらない、まま……子供を……。」
「…………クソ、だな……。」
思い出したのか、エステードさんの声が途切れる。
忌々しそうにルサーが吐き捨てた。
動いてる馬車から放り出される、とか。
成人したオレが自分で飛び降りるのだって、あんなに緊張したんだ。子供ならどれだけ怖いか、想像するのも恐ろしい。
その衝撃でフィロウが記憶を無くすのも仕方ないくらいの悪夢だ。
エステードさんの心配は、その根底はコレだったんだろう。
天守になれば。何人か妻にすれば。少なくとも『捨てられる』可能性はかなり低い。
だけど、妻になったら。天守から捨てられる恐れは常に付きまとうから。
「お願い、です……。……捨てないで…」
「捨てないっ、絶対、捨てないからっ!」
絞り出した懇願の声に、オレは一も二も無く返事した。
気軽過ぎとか、良く考えろとか……そんなの知るか。ここで「不確かな約束は出来ない」って返事するような、そんな誠実さは要らない。
これは『契約』じゃない。オレの『決意表明』だから。
「妻になっても、よ……お前の弟だって事に、変わりはねぇんだぞ? 縁が切れるワケでも、会えなくなるワケでもねぇんだ。イグザは、そんな……ケチくせぇ男じゃねぇ。」
「……はい。」
腕を伸ばしたルサーが優しく、エステードさんの頭をポンポンする。
エステードさんはオレとルサーを交互に見て、ようやく、ちょっと安心出来たように目を細めた。雫がポロリと一滴、頬に伝い落ちた。
* * *
適当に作ったオツマミで。
飲み会を再開して。ややしばらく経って。
「ルぅサーさんは、イグゥ君の事ぉ、」
顔色は殆ど変わってないエステードさん。
舌っ足らずって程じゃなくても酔ってるみたいだ。ちょっとだけ喋り方が間延びしてる。表情も薄っすらと微笑みに近い感じだ。
「イグザ。……って呼ぶぅんですねぇ。」
「ん、あぁ。」
エステードさんはオレを「イグゥ君」って呼ぶ。
それについて。今更、なんだけどさ。
オレさ、エステードさんにさ。自分の名前は伝えたけど、愛称がイグゥだなんて言ってない……気がするんだけど。
たぶん、メリクルだよな。メリクルがオレを「イグゥ」って呼ぶからだよな。
……まぁ今更だから突っ込まないけど。
「そぉですよねぇ。イグゥ、って呼び難いですよねぇ……ふふっ。」
「愛称で呼ぶようなトシでもねぇだろ。」
苦笑いで口端を歪めたルサーが炙りハムを摘む。
何故かエステードさんもニヤリとして、うんうん頷く。
「…ぅふっ。……イクぅ時ぃ、ゴッチャになりそう…ですもん、ねぇ。」
「っ、ぶふ……! げほッ、ゲホゴホっ!」
力一杯むせちゃったルサーの背中をさするオレ。会話の流れにデジャヴ。
オレの愛称。音の響きがヤラシイって、誰もが一度は考えるらしい。
言ったエステードさんはもちろん、ルサーもちょっとは思ってたんだろう。
「よ…っ、酔っ払ってンのか、エステードっ。」
「名前ぇ呼ぶ時も、ちょと…困りますもん、ねぇ……。私も…クルゥ、て……呼ぶ事にな…たら、……困ります、もん…」
「おい? 何の話だ?」
ワケが分かんない酔っ払いに絡まれた感じのルサー。不思議そうな顔だ。
オレは何となく、メリクルの話だな~って分かった。
そうか……。
オレの愛称がイグゥ、で……イク、に似てる。
メリクルの呼び方を……例えばエリザベスをベスって呼ぶ感じに略したら、クル……で。そう言えば日本人時代に、外国人の喘ぎ方は「イク」じゃなくて「クル」だって、何かで聞いたぞ。
オレもメリクルも、略して呼ぶとヤラシイんだなぁ。
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~お知らせ~
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※第6話を少し修正しました。
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