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ラットファム家に産まれたからには
「はい……!」
美人母ちゃんだけは感じが良い。
アクセル様はきっと母親似なんだな。
美人母ちゃんが和やかに話をふってくれて、しばらくは楽しく談笑しながら食事が進んでいく。
さすがは伯爵家で、飯がもうとにかく美味い。オレなんかじゃ見たこともないような料理ばっかりで、オレはもう今日が命日なんじゃないかと密かに思った。
ところが、幸せな時間はいつまでも続かないもので、討伐の話が佳境に入ってきたら、それまで憮然とした表情で黙々と飯を食ってたアクセル様の父ちゃんと兄ちゃんが、急にドスの利いた声を出した。
「は?」
「今、なんと?」
オレはもちろん驚いたんだけど、アクセル様は驚いた様子もない。
もしかして、いつもこんな脅すような声出されてんの? ってちょっと不安になる。
「約束どおりBランクの魔物を五体狩った、と言いましたが」
「嘘を吐くな。こんな短期間でBランクの魔物を五体も倒せるはずがない」
「そもそもそんなに出現するわけねぇだろ」
「うわ」
あまりの言いように、思わず呆れた声が出た。
途端にアクセル様の父ちゃんと兄ちゃんがオレをギッ! と鋭い目で見てくる。
「なんだ、何か文句でもあるのか?」
「いやー……アクセル様、お父さんからの課題だって言ってすっごい頑張って討伐してたのに、やれるわけないと思って課題にしたのかー、酷いなーと思ってしまって」
ムカついて、わざと嫌みな言い方をしてしまった。だってこんなの、アクセル様が可哀相だ。
「本当にね。それに嘘かどうかなんて記録を見れば明らかだわ。アクセル、ギルドに寄ったのでしょう? 冒険者カードを見せてご覧なさい」
「はい」
アクセル様がギルドカードを手渡すと、美人母ちゃんは目を丸くして、そのあと嬉しそうに微笑んだ。
「まぁ、すごい。よく頑張ったわね……なんて言葉ではいい表せないほどの成果だわ」
「ありがとうございます」
「な……見せてみろ」
アクセル様の父ちゃんと兄ちゃんが、顔を並べてアクセル様のギルドカードをのぞき込み、驚愕に目を見開く。じょじょに青ざめていくのが面白い。
「どういう事だ……たった二日で、こんな」
「待てよこれ、シーサーペントって、え、これ、Aランク……」
「見ての通り、約束どおりBランクの魔物を五体狩りましたし、Aランクのシーサーペントを倒したこともあって、余裕でAランクになれました。俺は卒業後、約束通り冒険者として生きていきます」
「だ……ダメだ! ラットファム家に産まれたからには、お前は騎士になるんだ……!」
「いい加減になさい。Aランクになれれば冒険者として身をたててもいいと言ったのはあなたでしょう」
「だが!」
「アクセラード、正直に話せ。誰に手伝ってもらった?」
アクセル様の兄ちゃんの鋭い視線が、アクセル様に突き刺さる。
「Bランク五体は俺一人で、シーサーペントはイールと二人で討伐しましたね」
「そんなワケがなかろう。どっちにしてもあり得ない」
「事実です。討伐証明も提出しましたし、魔術学校でもギルドでもちゃんと認められてランクアップしたので、不正はありません」
「しかしこんな短期間でこの数の魔物に遭遇するのはさすがに信憑性が薄いだろう」
なおも言いつのるアクセル様の父ちゃんの言葉に、オレはなんかもう悲しくなってしまった。なんで親なのに、子供がすっごく頑張って得た成果を褒めてあげられないんだろう。
オレは孤児だし親がいたらって思うことたくさんあったけど……絶対ムリだって思ってることやらせて、必死に頑張ってやり遂げても嘘だっていって認めないような親なら、いなくていい。
「すまん、こんな顔をさせるつもりじゃなかった」
「え?」
アクセル様に悲しい顔で覗き込まれてハッとする。
「泣いてる」
「え!? あ、ごめん。なんか、アクセル様が可哀相で、涙が勝手に」
知らないうちに出てた涙に自分でもびっくりで、カアッと顔が紅くなった。アクセル様はそんなオレに呆れるでもなく、優しげに笑ってくれる。
「もういいんだ。約束は守った。最初から、それでもダメなら勝手に家を出るだけだと割り切っていた。約束通り一緒に来てくれるか?」
「そりゃもちろん。卒業試験はぶっちぎりの一位だしな、もうさっさと冒険者になってもいいかもね」
「な、何を勝手なことを!」
「お前は伯爵家の次男だぞ。冒険者など、下賤な者がやることだ。騎士団に入り、伯爵家の名に恥じぬ働きをしろ。お前にはラットファムの誇りはないのか!」
「今日捨てました。名を抹消していただいて構いません」
「な……!」
アクセル様の強い意志を秘めた目に、アクセル様の父ちゃんと兄ちゃんの顔が真っ青になる。でも、ここまで言わせたのはアンタらだろう、と思うとむしろスッキリした。
オレが心の中で「アクセル様、かっこいい!」と声援を送っているのとは反対に、美人母ちゃんは心の底から漏れ出たみたいな、重い重いため息をつく。
「本当にあなたたちってそっくりね。本当は心配してるくせに、何度言い聞かせても言い方すら変えられないの、本当にがっかりするわ。部下の方たちの苦労が偲ばれるわね」
美人母ちゃんだけは感じが良い。
アクセル様はきっと母親似なんだな。
美人母ちゃんが和やかに話をふってくれて、しばらくは楽しく談笑しながら食事が進んでいく。
さすがは伯爵家で、飯がもうとにかく美味い。オレなんかじゃ見たこともないような料理ばっかりで、オレはもう今日が命日なんじゃないかと密かに思った。
ところが、幸せな時間はいつまでも続かないもので、討伐の話が佳境に入ってきたら、それまで憮然とした表情で黙々と飯を食ってたアクセル様の父ちゃんと兄ちゃんが、急にドスの利いた声を出した。
「は?」
「今、なんと?」
オレはもちろん驚いたんだけど、アクセル様は驚いた様子もない。
もしかして、いつもこんな脅すような声出されてんの? ってちょっと不安になる。
「約束どおりBランクの魔物を五体狩った、と言いましたが」
「嘘を吐くな。こんな短期間でBランクの魔物を五体も倒せるはずがない」
「そもそもそんなに出現するわけねぇだろ」
「うわ」
あまりの言いように、思わず呆れた声が出た。
途端にアクセル様の父ちゃんと兄ちゃんがオレをギッ! と鋭い目で見てくる。
「なんだ、何か文句でもあるのか?」
「いやー……アクセル様、お父さんからの課題だって言ってすっごい頑張って討伐してたのに、やれるわけないと思って課題にしたのかー、酷いなーと思ってしまって」
ムカついて、わざと嫌みな言い方をしてしまった。だってこんなの、アクセル様が可哀相だ。
「本当にね。それに嘘かどうかなんて記録を見れば明らかだわ。アクセル、ギルドに寄ったのでしょう? 冒険者カードを見せてご覧なさい」
「はい」
アクセル様がギルドカードを手渡すと、美人母ちゃんは目を丸くして、そのあと嬉しそうに微笑んだ。
「まぁ、すごい。よく頑張ったわね……なんて言葉ではいい表せないほどの成果だわ」
「ありがとうございます」
「な……見せてみろ」
アクセル様の父ちゃんと兄ちゃんが、顔を並べてアクセル様のギルドカードをのぞき込み、驚愕に目を見開く。じょじょに青ざめていくのが面白い。
「どういう事だ……たった二日で、こんな」
「待てよこれ、シーサーペントって、え、これ、Aランク……」
「見ての通り、約束どおりBランクの魔物を五体狩りましたし、Aランクのシーサーペントを倒したこともあって、余裕でAランクになれました。俺は卒業後、約束通り冒険者として生きていきます」
「だ……ダメだ! ラットファム家に産まれたからには、お前は騎士になるんだ……!」
「いい加減になさい。Aランクになれれば冒険者として身をたててもいいと言ったのはあなたでしょう」
「だが!」
「アクセラード、正直に話せ。誰に手伝ってもらった?」
アクセル様の兄ちゃんの鋭い視線が、アクセル様に突き刺さる。
「Bランク五体は俺一人で、シーサーペントはイールと二人で討伐しましたね」
「そんなワケがなかろう。どっちにしてもあり得ない」
「事実です。討伐証明も提出しましたし、魔術学校でもギルドでもちゃんと認められてランクアップしたので、不正はありません」
「しかしこんな短期間でこの数の魔物に遭遇するのはさすがに信憑性が薄いだろう」
なおも言いつのるアクセル様の父ちゃんの言葉に、オレはなんかもう悲しくなってしまった。なんで親なのに、子供がすっごく頑張って得た成果を褒めてあげられないんだろう。
オレは孤児だし親がいたらって思うことたくさんあったけど……絶対ムリだって思ってることやらせて、必死に頑張ってやり遂げても嘘だっていって認めないような親なら、いなくていい。
「すまん、こんな顔をさせるつもりじゃなかった」
「え?」
アクセル様に悲しい顔で覗き込まれてハッとする。
「泣いてる」
「え!? あ、ごめん。なんか、アクセル様が可哀相で、涙が勝手に」
知らないうちに出てた涙に自分でもびっくりで、カアッと顔が紅くなった。アクセル様はそんなオレに呆れるでもなく、優しげに笑ってくれる。
「もういいんだ。約束は守った。最初から、それでもダメなら勝手に家を出るだけだと割り切っていた。約束通り一緒に来てくれるか?」
「そりゃもちろん。卒業試験はぶっちぎりの一位だしな、もうさっさと冒険者になってもいいかもね」
「な、何を勝手なことを!」
「お前は伯爵家の次男だぞ。冒険者など、下賤な者がやることだ。騎士団に入り、伯爵家の名に恥じぬ働きをしろ。お前にはラットファムの誇りはないのか!」
「今日捨てました。名を抹消していただいて構いません」
「な……!」
アクセル様の強い意志を秘めた目に、アクセル様の父ちゃんと兄ちゃんの顔が真っ青になる。でも、ここまで言わせたのはアンタらだろう、と思うとむしろスッキリした。
オレが心の中で「アクセル様、かっこいい!」と声援を送っているのとは反対に、美人母ちゃんは心の底から漏れ出たみたいな、重い重いため息をつく。
「本当にあなたたちってそっくりね。本当は心配してるくせに、何度言い聞かせても言い方すら変えられないの、本当にがっかりするわ。部下の方たちの苦労が偲ばれるわね」
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