5 / 23
訪問者
しおりを挟む
ゆったりした時をすごしているところに、通信機から音が響く。
「聖龍様、今ちょっとよろしいですかぁ」
「おや、珍しいな。なんだ?」
久しぶりに私の塔の門番を務めてくれているコーダとトマスから連絡が入った。
「いや、ライアとカーマインが「遊びに来た」って言ってるんですが、お会いになりますか?」
「ライア……ああ、先だって聖騎士になった子だね。二度も来てくれるとは嬉しいものだな。もちろん会うよ、通してやってくれ」
ライアはとても丁寧に二年もかけて私の塔を探索し、結果的に聖騎士になれるほどの聖力を手にした、人の身にしては気が長くとても探究心に溢れた冒険者だ。私の塔を知り尽くしているゆえに、共に塔を管理してくれぬかと乞うてみたがフラれてしまった。
塔の外でカーマインという名の友……今は番になったらしいが、その男が待っているからだと言っていた、今日も共に来たという事は睦まじく暮らしているのだろう。良きことだ。
通信を切ると、私の髪をいじっていたヨギが、不安そうな顔で聞いてきた。
「聖騎士が来るの? なんで?」
「遊びに来たと言っていただろう? 私が退屈していると思って、遊びに来てくれたのだろうね」
そう返したら、ヨギは途端に寂しそうな顔をした。
「セイリューさま、タイクツなの?」
「そうだね、お前が来るまでは退屈だと感じることも多かったよ。私の命はお前には想像もつかないほどに長いのだから」
「おれがいると、タイクツじゃない?」
「ああ、毎日がとても楽しくなった」
「セイリューさま、大好き!」
ヨギが可愛らしく飛びついてきて、しっぽを思い切りブンブンと振り回す。相変わらず感情表現が素直だ。
そこに、扉をノックする音が聞こえて、私は彼らを招じ入れる。
「入っておいで」
「お邪魔します」
「聖龍様こんにちはー! ……あれ? ちっこいのがいる」
相変わらずライアは丁寧に、その番のカーマインは元気よく入ってきた。そしてすぐにヨギに気がついて笑いかけている。ライアの番のカーマインは真っ赤な髪の冒険者らしく体の大きい男だが、人懐こくフレンドリーだ。私の塔の門番たちとも大層仲がいいらしい。
「よう! お前、名前は?」
「ヨ……ヨギ」
私にしっかりしがみついたまま、おどおどとした様子でヨギは答える。
私と最初に出会った時にはこんなにおどおどした様子はなかったが、勢いよく話しかけられるのが苦手なのかも知れない。それでも興味はあるらしく、ヨギも彼らを一心に見つめていた。
「ヨギかー! オレはカーマイン。よろしくな!」
「カーマイン……聖騎士さま?」
「いいやーそれはあっち」
カーマインに促されて、ライアもヨギに優しく微笑みかけた。
「ライアだ。聖龍様にはこの塔で本当に助けていただいたから、時々こうしてご挨拶に来ているんだよ」
「カッコいい……セイリューさまみたい」
目をキラキラさせて、ヨギがライアを見つめる。ライアは確かに美しく凛々しい男だ。憧れるのも無理はない。納得の反応だというのに、なぜか少しだけ寂しさもあるのが不思議だった。
「あー、配色はちょっと似てるかな。でもオレの恋人だから惚れちゃダメだぞ?」
「なにバカなこと言ってるんだ。あ、そうだ。聖龍様、これ」
ライアがパシっと軽くカーマインの後頭部を叩く。次いで持っていた可愛らしい箱を開けて中身をテーブルの上に広げて見せてくれた。
「うわー! うわー! うわー! なにこれ、なんかすっごい美味そうな匂いする!!!」
いち早くお菓子の匂いを感じ取り、ヨギがキラキラと瞳を輝かせている。そんな子供らしい様がとてつもなく可愛らしい。耳がピーンと立って、しっぽがふさふさ揺れている。興味津々だ。
「ははっ、かわいーなー。お菓子って言うんだぞ。めっちゃ美味いんだ」
カーマインがヨギの可愛らしい様に、思わずと言った様子で頭を撫でている。そうだろう、うちのヨギは可愛いだろう。ちょっと誇らしいような気持ちになった。
「子供がいるならちょうどよかった。今日は下町で流行ってる菓子を詰め合わせで持ってきてみたんです。前回持ってきたケーキ、喜んでくれたみたいだったから」
「おお、それはありがたい。この塔には甘味はないからな。私も嬉しいが、ヨギもきっと気にいるだろう」
「良かった、早速いくつか開けて食ってみます?」
私はもちろん頷いた。こんなにワクワクした顔をしている幼な子にオアズケなんてできないだろう。
「そうだな、ありがとう。ヨギ、どれがいい?」
「えっ、こんなに美味そうなの、食っていいの?」
「もちろんだよ。でも分け合って食べようね。サク達にも分けてあげたいし」
「うん!!!」
煌めく宝石箱のようなお菓子の山にフンフンと鼻を近づけて吟味しているヨギを、微笑ましく思いながら眺めていたら、ニコニコ顔のカーマインからこんな事を言われてしまった。
「なんか聖龍様、前より雰囲気が優しくなった気がする」
私は驚いた。
「そ、そうか? 自分では分からないが」
「ヨギを見てる時の目とか、めっちゃ優しいし。そーだ、この子どうしたんです? 前は居なかったっすよね」
「ああ、実は」
私は事情を話す事にした。ヨギはいつか冒険者となって街へ出るかも知れない。その際は現役冒険者である彼らの知恵が役に立つかも知れないのだから。
「聖龍様、今ちょっとよろしいですかぁ」
「おや、珍しいな。なんだ?」
久しぶりに私の塔の門番を務めてくれているコーダとトマスから連絡が入った。
「いや、ライアとカーマインが「遊びに来た」って言ってるんですが、お会いになりますか?」
「ライア……ああ、先だって聖騎士になった子だね。二度も来てくれるとは嬉しいものだな。もちろん会うよ、通してやってくれ」
ライアはとても丁寧に二年もかけて私の塔を探索し、結果的に聖騎士になれるほどの聖力を手にした、人の身にしては気が長くとても探究心に溢れた冒険者だ。私の塔を知り尽くしているゆえに、共に塔を管理してくれぬかと乞うてみたがフラれてしまった。
塔の外でカーマインという名の友……今は番になったらしいが、その男が待っているからだと言っていた、今日も共に来たという事は睦まじく暮らしているのだろう。良きことだ。
通信を切ると、私の髪をいじっていたヨギが、不安そうな顔で聞いてきた。
「聖騎士が来るの? なんで?」
「遊びに来たと言っていただろう? 私が退屈していると思って、遊びに来てくれたのだろうね」
そう返したら、ヨギは途端に寂しそうな顔をした。
「セイリューさま、タイクツなの?」
「そうだね、お前が来るまでは退屈だと感じることも多かったよ。私の命はお前には想像もつかないほどに長いのだから」
「おれがいると、タイクツじゃない?」
「ああ、毎日がとても楽しくなった」
「セイリューさま、大好き!」
ヨギが可愛らしく飛びついてきて、しっぽを思い切りブンブンと振り回す。相変わらず感情表現が素直だ。
そこに、扉をノックする音が聞こえて、私は彼らを招じ入れる。
「入っておいで」
「お邪魔します」
「聖龍様こんにちはー! ……あれ? ちっこいのがいる」
相変わらずライアは丁寧に、その番のカーマインは元気よく入ってきた。そしてすぐにヨギに気がついて笑いかけている。ライアの番のカーマインは真っ赤な髪の冒険者らしく体の大きい男だが、人懐こくフレンドリーだ。私の塔の門番たちとも大層仲がいいらしい。
「よう! お前、名前は?」
「ヨ……ヨギ」
私にしっかりしがみついたまま、おどおどとした様子でヨギは答える。
私と最初に出会った時にはこんなにおどおどした様子はなかったが、勢いよく話しかけられるのが苦手なのかも知れない。それでも興味はあるらしく、ヨギも彼らを一心に見つめていた。
「ヨギかー! オレはカーマイン。よろしくな!」
「カーマイン……聖騎士さま?」
「いいやーそれはあっち」
カーマインに促されて、ライアもヨギに優しく微笑みかけた。
「ライアだ。聖龍様にはこの塔で本当に助けていただいたから、時々こうしてご挨拶に来ているんだよ」
「カッコいい……セイリューさまみたい」
目をキラキラさせて、ヨギがライアを見つめる。ライアは確かに美しく凛々しい男だ。憧れるのも無理はない。納得の反応だというのに、なぜか少しだけ寂しさもあるのが不思議だった。
「あー、配色はちょっと似てるかな。でもオレの恋人だから惚れちゃダメだぞ?」
「なにバカなこと言ってるんだ。あ、そうだ。聖龍様、これ」
ライアがパシっと軽くカーマインの後頭部を叩く。次いで持っていた可愛らしい箱を開けて中身をテーブルの上に広げて見せてくれた。
「うわー! うわー! うわー! なにこれ、なんかすっごい美味そうな匂いする!!!」
いち早くお菓子の匂いを感じ取り、ヨギがキラキラと瞳を輝かせている。そんな子供らしい様がとてつもなく可愛らしい。耳がピーンと立って、しっぽがふさふさ揺れている。興味津々だ。
「ははっ、かわいーなー。お菓子って言うんだぞ。めっちゃ美味いんだ」
カーマインがヨギの可愛らしい様に、思わずと言った様子で頭を撫でている。そうだろう、うちのヨギは可愛いだろう。ちょっと誇らしいような気持ちになった。
「子供がいるならちょうどよかった。今日は下町で流行ってる菓子を詰め合わせで持ってきてみたんです。前回持ってきたケーキ、喜んでくれたみたいだったから」
「おお、それはありがたい。この塔には甘味はないからな。私も嬉しいが、ヨギもきっと気にいるだろう」
「良かった、早速いくつか開けて食ってみます?」
私はもちろん頷いた。こんなにワクワクした顔をしている幼な子にオアズケなんてできないだろう。
「そうだな、ありがとう。ヨギ、どれがいい?」
「えっ、こんなに美味そうなの、食っていいの?」
「もちろんだよ。でも分け合って食べようね。サク達にも分けてあげたいし」
「うん!!!」
煌めく宝石箱のようなお菓子の山にフンフンと鼻を近づけて吟味しているヨギを、微笑ましく思いながら眺めていたら、ニコニコ顔のカーマインからこんな事を言われてしまった。
「なんか聖龍様、前より雰囲気が優しくなった気がする」
私は驚いた。
「そ、そうか? 自分では分からないが」
「ヨギを見てる時の目とか、めっちゃ優しいし。そーだ、この子どうしたんです? 前は居なかったっすよね」
「ああ、実は」
私は事情を話す事にした。ヨギはいつか冒険者となって街へ出るかも知れない。その際は現役冒険者である彼らの知恵が役に立つかも知れないのだから。
23
あなたにおすすめの小説
【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話
日向汐
BL
「好きです」
「…手離せよ」
「いやだ、」
じっと見つめてくる眼力に気圧される。
ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26)
閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、
一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨
短期でサクッと読める完結作です♡
ぜひぜひ
ゆるりとお楽しみください☻*
・───────────・
🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧
❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21
・───────────・
応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪)
なにとぞ、よしなに♡
・───────────・
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
卵を産んでしまったハーピィ男子の話
志田
BL
ハーピィのヒューイは相棒の天族のディオンに片想いをしていた。ある日、卵を産めるようになったのをきっかけに、こっそりディオンの子どもを作ろうと衝動的に計画するが…。異種族×異種族。おバカ受。
神父様に捧げるセレナーデ
石月煤子
BL
「ところで、そろそろ厳重に閉じられたその足を開いてくれるか」
「足を開くのですか?」
「股開かないと始められないだろうが」
「そ、そうですね、その通りです」
「魔物狩りの報酬はお前自身、そうだろう?」
「…………」
■俺様最強旅人×健気美人♂神父■
【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜
キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。
モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。
このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。
「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」
恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。
甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。
全8話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる