【完結】完璧アルファな推し本人に、推し語りするハメになったオレの顛末

竜也りく

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心配なことがある

あの方、というのはもちろんアルロード様の事だ。

軽々しくお名前を口にして嫌な思いをさせることがないように……という、推しを愛でる者達で作ったルールに準拠している。

「四人がかり? マジかよ。騎士科のくせに卑怯極まりないな」

「だよな!? だからオレもムカついてさ、つい危ない! って叫んじゃったんだけど。ところがそこがさすがあの方なワケよ」

「ほう」

「振り返りざまにヤツらの剣を次々に弾き飛ばしてさ、一瞬で勝負がつくんだよ。もう痺れたよね」

「ハイハイ、良かったねぇ」

 ドルフは鼻で笑うけど、オレにとっては本当に幸せなことだったんだ。だって。

「ほんと最高だった。ありがとう、って微笑んでくれたし」

「お、珍しい。会話が成立したのか」

「会話だなんておこがましい。多分オレの顔も覚えてないと思うよ」

「そんなものか」

「そんなもんだよ。その後は美人さんから呼び止められて告白されてたし、あの方ほどの人になると次々にいろんなことがあるから、オレの顔なんて覚えてられないでしょ」

「へー、美人の告白かぁ。羨ましい」

ドルフにとっちゃアルロード様はどうでもいいみたいで、むしろ貴族女性の方に興味をひかれているらしい。

「多分あの女性、上位貴族じゃないかなぁ。すごく上品で顔は勿論所作まで綺麗な女性だったよ。見てたオレまで見蕩れるくらい」

「ふーん。それでも、いつもどおり断ったんだろ? もったいない」

「そりゃまぁ。でもさぁ、断る時は本当に申し訳なさそうで、ちょっと悲しそうだったんだ。微笑んでるし、丁寧な言葉と態度なのは変わらないんだけど……」

あの時のアルロード様の表情を思い出して、胸がツキンと痛んだ。

僅かに伏せられた瞳に、陰がさした気がしたんだ。憂いのある表情まで魅力的で、オレは自分の数少ない取り柄のひとつ、視力の良さを心からありがたく思った。

「今日だけじゃなくてさ、このところ少しだけ元気ない気がするんだよね。なんだか憂い顔が増えてるっていうか」

そう、些細な変化に気づいたのはもうひと月ほど前だろうか。時々だけれど、確かになんだか思い悩むような表情をするときがあるんだ。

「そっかぁ? いつも通りじゃね?」

「いや、ほんとにほんの一瞬でさ、すぐに穏やかないつもの表情に戻るんだけど……なんか悩みがあるのかなって心配で」

「でもお前が心配したってしょうがねぇだろ。どんだけ好きだろうが、『あのお方』とやらに声ひとつかけられないチキンなんだから。悩むだけムダムダ」
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