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素晴らしい光景
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でも、それを面と向かって言われるのが怖くて、皆を困らせてるのが申し訳なくて、オレはなんでもないような顔で過ごすしかできないんだ。
「オレもまだ自分がオメガだって事にしっくりきてなくて。せっかく剣の腕を磨いたんだし、嫁って名目でも誰かの護衛ができるなら、その方が嬉しいんです。もしかしたら父は、そんなオレの気持ちに気づいて、あんな事を言ってるのかも」
希望的観測を口にして笑って見せる。
「……」
まだ腑に落ちない顔をしているアルロード様は、しばらく考え込んだ後、オレをまっすぐに見つめてきた。
「ルキノ、君は」
「アルロード!」
オレに何かを言おうとした瞬間に、アルロード様を呼ぶ声が響く。
そんなに大きな声でもないのに妙に響く声だなぁと思って声の方へ視線を向けて、オレはちょっとびっくりした。
だって。
アルロード様にそっくりなこのお方は……!
アルロード様に少し年齢を足して、さらに筋肉を余計に付けたらこうなりそうっていう美丈夫。麗しのアルロード様のお兄様、リエルライダ様だ。
渋い色気が加わって、これもこれでめちゃくちゃにカッコイイ……!!!
「兄さん」
「話を遮って悪いね、だがイオスタ殿下がお前をお呼びだ」
「僕を? 珍しいね」
小首を傾げるアルロード様、可愛い……!!!
しかもアルロード様と未来のアルロード様が目の前で語らっているという、素晴らしい光景を前に、オレはもう震えて見蕩れるしかなかった。
最高。
オレは今日、これからの人生における運を使い切ってしまったかも知れない。
この尊い瞬間をなんとか網膜に焼き付けておけないだろうかと必死で見つめる。脈がバンバンに上がって、もしかしたら鼻血くらいでちゃうかも……という不安を覚えていたというのに、某かを話していた二人が、同時にオレの方を見てくるから、オレはもう心臓が止まるかと思った。
「ルキノ、申し訳ないんだけど呼ばれているみたいで……話はまた明日」
「はい!!!」
オレは満面の笑顔でアルロード様を送り出す。アルロード様はなんだか複雑そうな表情でお兄様と共に去って行った。
王族に呼ばれるアルロード様すごい!!!
そっか、公爵家だもんね!
イオスタ殿下って王太子様だよね。これまでも夜会で何度か話しているのは見かけたことがあるけれど、直接呼ばれるくらい親交が深いのか。
アルロード様と会話するようになってから、今までみたいに遠巻きに見ているだけじゃ分からない事をたくさん知ることができた。
オレは本当に幸運だ。
感動に打ち震えているオレに、新たに声がかかる。
「随分アルロード様と親しくなったようですね」
迫力の美人、コーラルブレ公爵家の三女アンリエッタ様だった。
「アンリエッタ様!」
「無事にお役目を果たせているようね。このところアルロード様がとても楽しそうで、わたくし達も嬉しいわ」
「光栄です!」
「けれど、先ほどは何を話していたのかしら。アルロード様があんなに負の感情を表情に乗せることは滅多にないでしょう? 気になってしまって」
「あー……すみません、オレが誤解させちゃったから」
「誤解?」
そうしてオレは、アンリエッタ様たちにさっきのアルロード様との会話をかいつまんで話してみる。
「そう、それではアルロード様は、貴方がお父様から社交も封じられ意にそまぬ相手に売り飛ばすように嫁がされそうになっているように思われたのかも知れないわね」
「実際にオメガにはそういう話も多いのですもの、無理もありませんわ」
オレがオメガ性の話をしたからだろう、いつの間にかユーリア様も前に出てきて、話に加わってくれていた。
「はい。でもアンリエッタ様やユーリア様みたいに美人なら、確かにそういう事もあると思うんですけど、オレはこの通りぱっと見全然普通の男ですし、むしろ父は相手を探すのに苦労してると思うんですよね」
「そんなこと」
「そうよ、自分を卑下するものではないわ」
「事実なんで。それにオレ、まだ自分がオメガだって事にしっくりきてなくて。嫁って名目でもいいから誰かの護衛ができるなら、その方が嬉しいんだって、アルロード様にもお伝えしたんですけど」
「……可哀相に。オメガであることを受け入れ切れないでいるのね」
ユーリア様が痛ましい表情でオレを見る。そんなに優しい顔されると、ちょっと泣きそう。
「わたくしやアンリエッタ様は母もオメガで、子供の時からオメガだろうと言われて育ってきて心構えも教育もうけてきたからそれなりに覚悟ができていたけれど……突然オメガと宣告された方の精神的負担はとても大きいでしょう」
「特に貴方は、騎士という道も絶たれたのですものね。心中は如何ばかりか……」
事情を話したせいでアンリエッタ様やユーリア様にまで心配をかけてしまった。
そんなつもりじゃなかったのに。オレは慌てておふたりに笑って見せる。
「あの! オレが諦め悪くてちょっと受け入れるのに時間がかかってるだけなんで、お気になさらず……! それよりも、さっきのご兄弟が並んだお姿、見ました!? 眼福でしたね!」
「ルキノ様……」
「……そうね、お二人ともとても素敵だったわね」
アンリエッタ様もユーリア様も優しいから、心配そうな顔をしつつもオレの苦しすぎる話題転換に乗ってくれる。
アルロード様の話題で和気藹々と話せば、じょじょに他の人も加わっていつもの楽しい情報交換の時間が始まった。
この時間だけはオメガだとか将来だとか、そんな面倒なことなんて全部忘れて、キラキラ輝くみたいな気持ちになれる。
みんな笑顔で、楽しくて。
こんな気持ちを与えてくれるアルロード様に、オレは深く深く感謝した。
「オレもまだ自分がオメガだって事にしっくりきてなくて。せっかく剣の腕を磨いたんだし、嫁って名目でも誰かの護衛ができるなら、その方が嬉しいんです。もしかしたら父は、そんなオレの気持ちに気づいて、あんな事を言ってるのかも」
希望的観測を口にして笑って見せる。
「……」
まだ腑に落ちない顔をしているアルロード様は、しばらく考え込んだ後、オレをまっすぐに見つめてきた。
「ルキノ、君は」
「アルロード!」
オレに何かを言おうとした瞬間に、アルロード様を呼ぶ声が響く。
そんなに大きな声でもないのに妙に響く声だなぁと思って声の方へ視線を向けて、オレはちょっとびっくりした。
だって。
アルロード様にそっくりなこのお方は……!
アルロード様に少し年齢を足して、さらに筋肉を余計に付けたらこうなりそうっていう美丈夫。麗しのアルロード様のお兄様、リエルライダ様だ。
渋い色気が加わって、これもこれでめちゃくちゃにカッコイイ……!!!
「兄さん」
「話を遮って悪いね、だがイオスタ殿下がお前をお呼びだ」
「僕を? 珍しいね」
小首を傾げるアルロード様、可愛い……!!!
しかもアルロード様と未来のアルロード様が目の前で語らっているという、素晴らしい光景を前に、オレはもう震えて見蕩れるしかなかった。
最高。
オレは今日、これからの人生における運を使い切ってしまったかも知れない。
この尊い瞬間をなんとか網膜に焼き付けておけないだろうかと必死で見つめる。脈がバンバンに上がって、もしかしたら鼻血くらいでちゃうかも……という不安を覚えていたというのに、某かを話していた二人が、同時にオレの方を見てくるから、オレはもう心臓が止まるかと思った。
「ルキノ、申し訳ないんだけど呼ばれているみたいで……話はまた明日」
「はい!!!」
オレは満面の笑顔でアルロード様を送り出す。アルロード様はなんだか複雑そうな表情でお兄様と共に去って行った。
王族に呼ばれるアルロード様すごい!!!
そっか、公爵家だもんね!
イオスタ殿下って王太子様だよね。これまでも夜会で何度か話しているのは見かけたことがあるけれど、直接呼ばれるくらい親交が深いのか。
アルロード様と会話するようになってから、今までみたいに遠巻きに見ているだけじゃ分からない事をたくさん知ることができた。
オレは本当に幸運だ。
感動に打ち震えているオレに、新たに声がかかる。
「随分アルロード様と親しくなったようですね」
迫力の美人、コーラルブレ公爵家の三女アンリエッタ様だった。
「アンリエッタ様!」
「無事にお役目を果たせているようね。このところアルロード様がとても楽しそうで、わたくし達も嬉しいわ」
「光栄です!」
「けれど、先ほどは何を話していたのかしら。アルロード様があんなに負の感情を表情に乗せることは滅多にないでしょう? 気になってしまって」
「あー……すみません、オレが誤解させちゃったから」
「誤解?」
そうしてオレは、アンリエッタ様たちにさっきのアルロード様との会話をかいつまんで話してみる。
「そう、それではアルロード様は、貴方がお父様から社交も封じられ意にそまぬ相手に売り飛ばすように嫁がされそうになっているように思われたのかも知れないわね」
「実際にオメガにはそういう話も多いのですもの、無理もありませんわ」
オレがオメガ性の話をしたからだろう、いつの間にかユーリア様も前に出てきて、話に加わってくれていた。
「はい。でもアンリエッタ様やユーリア様みたいに美人なら、確かにそういう事もあると思うんですけど、オレはこの通りぱっと見全然普通の男ですし、むしろ父は相手を探すのに苦労してると思うんですよね」
「そんなこと」
「そうよ、自分を卑下するものではないわ」
「事実なんで。それにオレ、まだ自分がオメガだって事にしっくりきてなくて。嫁って名目でもいいから誰かの護衛ができるなら、その方が嬉しいんだって、アルロード様にもお伝えしたんですけど」
「……可哀相に。オメガであることを受け入れ切れないでいるのね」
ユーリア様が痛ましい表情でオレを見る。そんなに優しい顔されると、ちょっと泣きそう。
「わたくしやアンリエッタ様は母もオメガで、子供の時からオメガだろうと言われて育ってきて心構えも教育もうけてきたからそれなりに覚悟ができていたけれど……突然オメガと宣告された方の精神的負担はとても大きいでしょう」
「特に貴方は、騎士という道も絶たれたのですものね。心中は如何ばかりか……」
事情を話したせいでアンリエッタ様やユーリア様にまで心配をかけてしまった。
そんなつもりじゃなかったのに。オレは慌てておふたりに笑って見せる。
「あの! オレが諦め悪くてちょっと受け入れるのに時間がかかってるだけなんで、お気になさらず……! それよりも、さっきのご兄弟が並んだお姿、見ました!? 眼福でしたね!」
「ルキノ様……」
「……そうね、お二人ともとても素敵だったわね」
アンリエッタ様もユーリア様も優しいから、心配そうな顔をしつつもオレの苦しすぎる話題転換に乗ってくれる。
アルロード様の話題で和気藹々と話せば、じょじょに他の人も加わっていつもの楽しい情報交換の時間が始まった。
この時間だけはオメガだとか将来だとか、そんな面倒なことなんて全部忘れて、キラキラ輝くみたいな気持ちになれる。
みんな笑顔で、楽しくて。
こんな気持ちを与えてくれるアルロード様に、オレは深く深く感謝した。
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