この先の人生

時雨

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生活

秋原 朔久

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ー窓からの光で目が覚めた。ー

時計を見てみると『土曜日 9:17』と云う文字が眼に入る。
今日は休日。なんにもない日。
今週はバイトがあるからと友達との誘いを断っている。とは云ってもどうせバイトは午後からなので暇だ。

そのまま着替えず部屋を後にした。

リビングに行くと妹の咲希が居る。
「おはよ」
咲希は相変わらず、僕と反対で朝起きるのが得意だ。そんな思いをかき消すように咲希の口から告げられた。
「あっお姉ちゃん…おはよ」
「…何かあったの?母さんのこと?」

僕の母親…僕達の母さんは数年前父親が交通事故で帰らぬ人となったのを気に、心身ともに衰弱していった為病院で入院生活を余儀なくされていた。
そこから僕と妹の2人暮らし生活が始まっている。
でも姉妹仲は良く友達からもよく羨ましいがられる。その辺は妹のことが少し誇らしく感じる。

「母さんの容態が急変したって…」
「そっか…咲希、後でお姉ちゃん様子見に行くから着いてくる?」

何となく想像はしていた。唯、この間見た限りだと容態は良くなっていたと感じていたから少し驚いた。
妹はしっかりしている。僕とも対して年齢は変わらず、中学3年生だ。

「そうしようかな…あっでもお姉ちゃん午後からバイトだよね」
「そうだけど、、其れがどうしたの?別に今から連絡すれば休めるよ?」
「ううん。ご飯持って行こうと思ってるからお姉ちゃんと交代で行こうかなって。」
「別にいいけど、病院食あるし久々に買い物でもしようかと思ってたけど」

咲希がご飯作り出すって云って思い出したのは家になんにも無いこと。
買いに行きたいけど今は10時。バイトは13時からな為作る暇なんてない。
どうせなら咲希と一緒に昼ごはんを食べに行きたい。
次いでに何か買ってあげれば着いてきてくれるだろうなんて安直な考えだった。
そんな中、咲希が月のように煌びやかな眼を僕に向けて
「いいの?!私最近メイク品欲しかったから買ってもいい?あっ勿論安いのだよ!」
「いいよ!お姉ちゃんが買ってあげるからお昼も其処で食べちゃおっか?」
「お昼か~何食べよう…」
咲希が期待に充ちた様に支度しに部屋に行った。

僕もはやく部屋に行き、バイトを含めた支度を始めた。

パジャマを脱いで、夏に合う花柄の白色のワンピースを着る。ショッピングモール内は寒いと予想し、スカーフを羽織りながら咲希が部屋の外から話し掛けてきた。
「お姉ちゃんのイヤリング貸してー」
「ん?あぁいいよ~!勝手に取って」
咲希が遠慮無しに部屋へ入る。
僕は咲希が取らない方を手に持ち耳に付けた。
銀色の雫が耳に揺れるのを確認したら僕は満足し、咲希に話し掛ける

「咲希?私もう準備出来たから何時でも行けるから行けたら教えて」
「はいはーいサンダルどれにするか迷うんだけどお姉ちゃんの履いてもいい?」
「いいけど私が履くやつ取らないでよ」

咲希は多分、僕が履きたいやつを履きたかったに違い無いなとニヤつきながら考えてる己が気味悪く感じた。

先刻、お姉ちゃんって云わずに私って云ったけど中3の対して歳も離れてない妹に使うべきなのか解らずに『お姉ちゃん』と『私』を混ぜて使うのはどうなのか?

兎に角、咲希の準備が終わったらしく僕の事を幾度となく呼んでいる。
はやく行かないとめんどくなりそうだから行くことにしよう。

そうして僕は相変わらず、自分の事を心の中だけは『僕』外では『私』をと一人称を使い分けている。
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