異世界転移したら尖った耳が生えたので、ちびっこライフを頑張ります。

前野羊子

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第四章 ~王子の旅・天空路~

〈193〉東東ちょっと北に進路をとる  

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 「ささ、ミグマーリ様クッションをどうぞ」
 『ありがとうローナ』
 「ミグマーリ様、お茶もありますよ」
 『レオラ本当に揺れないのね』
 「だから、こんなカップでお茶を渡せるんです」
 『すてき、人みたいに飲むのがうれしいわ』
 「ミグマーリ様可愛い」
 『ふふふ、ありがとう』
 「リリュー教授もお茶要りますか?」
 「私は外を観察するのにお茶を飲んでいる場合ではない」
 平和な冒険者スタイルのカリオン族の女性が窓に張り付いている。 
 「じゃあ喉が渇いたら言ってくださいな」
 「うむ」
 ワゴンの中は、真珠の化身と見紛う白い髪の美しい女性を中心に和気あいあいとしていた。
 

 二千年以上昔、元は入国ゲートでもあった満月砦ボールモンドフェスタンが跨いでいるのは、まだ水の来ない河だ。それより西に満月湖ボールモンドそこから海に向かって水の流れが復活した河が伸びる。

 『ここから東に向かって飛ぶのね』
 白龍に戻ったミグマーリと少し下見して、ポートに戻る。

 再建工事の邪魔にならないように、砂の魔物よけに緑化は進めていて、砦の周り半径五十メートルはぐるりと草や木を無理やり生やしている。俺が。そして、魔道具や、湖から水を得て水を撒いたりしているのだ。

 しかしここより東には、集落さえないキャラメル色の砂漠が広がっている。
 時折あるのは岩と、朽ち果てた建物、そして枯れた河の後だ。トカゲや蛇ぐらいの生物はいるかもしれないが、哺乳類さえいない死の世界だとトルネキ王国では言われている。
 俺は帝都のダンジョンを思い出すけどな、あっちは地面がスキップフロアになっていたが、こっちは緩やかな砂山しかない。

 「ここから向こうは、以前の王都付近の河と同じです」
 キリのつぶやきに頷きながら答える。
 「そうだな」
 だがここは河の筋しかない。人どころか動物さえ見当たらない。

 「なあ、ミグマーリ、やっぱり人に戻ってくれない?
 暫く俺にワゴンを運ばせて」
 『構わないけれど』
 「んじゃとりあえず着替えに、こっち」
 そう言って彼女に触れて、アナザーワールドに転移。

 すぐに人に変身したミグマーリに服を着てもらって、今度は俺が服を脱ぐや否や龍に変身する。うん、スキルミグマーリの発動だな。

 『王子、立派になって』
 「え?俺たちと同じ竜なの?」
 『少し違いますよ、ぷうさん』
 「だよねぇ、カッコイイよ」
 アナザーワールドの地竜たちに褒められてまんざらでもない俺。

 『スフィンクス、悪い、服を畳んでくれない?』
 『はいはい』

 テラスで脱ぎ散らかした服を、畳んでもらってアイテムボックスに仕舞う。アイテムボックスとか、アナザーワールドを使ったりとかは、龍の姿でもできる。もちろん他の魔法も使えるよ。

 『んじゃポートに戻るよ俺に触れて』
 『ええ』
 今の俺がでかすぎるので転移で移動。


 ミグマーリポートに出てきたのは緑色の龍。傍らには白い女性。

 「ミグマーリ様、緑色っぽくなってる」
 『私はこっちよウリサ』
 「ということは・・・まさかシュンスケ?」
 「シュバイツ殿下がこのドラゴンなの?」
 『そうだ。今日は俺がみんなを運ぶ』
 「え?ちょっと不安」
 『どうして?』
 「ちゃんと飛べるの?」
 『失礼な!彼女のスキルは同期してるぜ』
 「でもなー」「ちょっとねぇ」
 みんなから不安の声が上がる。

 あれか?免許取りたてのドライバーに同乗するときの不安?
 そういえば俺も、高二の時に卒業したばっかりの先輩が取り立ての免許でドライブに誘われたときは、一緒に誘われた同級生の友人と丁寧にお断りした経験があるけど・・・。
 
 確かに龍として飛ぶのは経験が浅いけど、普段飛んでるでしょ!大丈夫だって。
 それに、俺自身が飛ぶのには少し理由もあるんだから。

 『とにかく乗って乗って!』
 「しょうがない」
 「はらをくくるか」

 『そんなにか!』
 しくしく。

 『だいじょうぶ、僕も補佐するから』
 「ハロルド様お願いね!」
 『私もいざという時には助けるわ』
 「「ミグマーリ様」」

 『・・・さっさと乗る!乗らないなら置いていく!』
 「「「「「はーい」」」」」

 ただ、今まで戸締りしていた俺がドラゴン状態なので出来ず、外にいるシェパード系犬人族のキリにお願いする。

 ガチャリ

 「ロープはこれでいいか?」
 『うん、大丈夫。んじゃ行ってきます』
 「「いってらっしゃい!」」
 「気を付けて!」

 アラビカパーティーに見送られながら空へ。

 “ちじょうじゅうめーとる・・・にじゅうめーとる”
 黄色ちゃんに高度を教えてもらいながら。

 “ごじゅうめーとる”

 日本のヘリじゃあり得ない低さだけど、ここは周りに何もないし、河の跡をたどっていくにはこの高さでいいや。

 『じゃあ進むよ』
 ハロルドの合図に前を見る。

 砦の上を飛び越えて、枯れた河の流れに沿って東へ進路をとる。

 前を見ると地平線しかない。目印になるものが無くて、枯れていると言えどもせめて河があってよかった。

 俺は聖属性魔法を河筋の北側に落としながら飛行を始める。すると、キャラメル色の砂漠に、草と低木の緑色の筋が描かれ始める。
 幅は今回十メートルと決めている。一車線より広め。将来誰かがこの草の道を歩ければいいなと思いながら。

 多少蛇行しているけど、しょうがないよね。

 三十分ほどそうやって飛行していると、
 “王子、砂の魔物よ”

 ワゴンの中から、ミグマーリの念話が。
 “青色ちゃんたのむ!”
 すかさず青色ちゃんにお願いしているウリサの念話もキャッチ。

 “おうじ、さきいく!”
 『おう!水で洗ってやれ!』
 “きゃはは、あらってくるぅ”

 視線の先には生き物のようにグネグネと動く砂がみえる。
 だんだんネズミに形作られていく。

 “しゃわーどうぞ”

 ジャー

 グワァッ

 しかし、一匹でもネズミは虎よりは大きく、それが十匹ほどの群れになっている。

 青色ちゃんが四匹ほどふさいだけれど、まだ半分以上残っている。

 『俺がやるよ』
 “わごんぶらさげてても、できるの?”
 『できる』

 だって俺の魔法は基本杖不要だもん。どんな姿でも出来るぜ。

 ネズミの群れの周りに氷の壁をぐるりと作る。直径二十メートルぐらいか。上空から発動するから大きさが分かんない。
 そこに水を一気に、サードボックスから、海水のままで!

 どぼっ

 グワァッ ごぼごぼごぼ

 シャワーの予定が風呂を飛び越えてプールになった。

 “すごいすごい、さすがおうじ!”
 “さすがだぜ。その姿でも攻撃できるなんて”
 青色ちゃんに次いで、ウリサからも念話が届く。

 だけど、序盤から遊んでる場合じゃないよね。先に進まなきゃ。

 『でもいきなり沢山出て来るなぁ』
 “もしかして、魔力を感じて発生してたりしてと、教授が言ってるよ”

 何も無かったところに、魔力を振りまきながら飛んでるものなぁ。
 『じゃあ、次に出てきたやつに、魔力をかけたらどうなるかやっていいかな。お試しでさ』
 “興味深い!ぜひやってくれと教授が”
 俺とリリュー教授の思考回路が似ているのか・・・いや!好奇心旺盛なのはいい事だよね!

 気を取り直してワゴンを運ぶ。聖属性魔法を振りまきながら。
 そして俺が緑化した帯の後ろに青色ちゃんと緑色ちゃんが追加の魔法を振りまいてくれている。

 “河じゃないけど、新たなグリーンサーペントだなってリリュー教授がつぶやいてる”
 “えー?
 せめてドラゴンにして!後で手足の代わりの森を作るから!”

 “ははは!それはいい!
 じゃあそろそろ昼になるから、森を作って休憩してくれ”
 “了解!”

 あ、北側に小っちゃい三日月湖の跡があるな。そこにちょっと水たまりを造っちゃおうかな。

 こんなに砂漠化されているのに、河の跡が砂で埋まってない不思議。
 ナスカの地上絵みたいなものかな。

 俺は空中にとどまったまま、見つけた三日月湖に真水を流し込んでいく。
 その周りも緑化したいから、三日月湖を含んで丸く聖属性魔法を注ぎながら。
 三日月湖の底は粘土質なのか岩盤なのか?ほんのちょっとしみ込んだだけで、水が溜まっていく。三日月の真ん中を草地に。そして全体を囲うようにぐるりと林というか森を生やす。湖の外側に少し食い込むように大きな木を。もちろんヤシの木もね。

 “オアシスが出来るのにたったの十分かよ”
 “ここ数ヶ月で培ったものがあってね”

 それに三日月湖とはいっても、サイズはちょっとしたため池。

 “着陸するよ!”
 
 まずは俺が後ろ脚で着地してから、手で首に引っかかってるロープを外して、
 ワゴンをそろりと下す。自分で外せるじゃん。手があるんだしね。

 そうして、先にアナザーワールドに転移して、龍化を解いて着替えてそれからみんなを迎えに行く。
 「おまたせ!休憩でーす」
 「ふー面白かったわ」
 「魔物が崩れ落ちるのすごかった」

 『お疲れ様王子!』
 「ミグマーリもお疲れ!」
 『私は何もしてないわ』
 「椅子にじっと座るのも疲れるでしょ」
 『そういえばそうね』
 二人で、小さな三日月湖を見ている。
 「この水を維持するにはどうしたら良いかな」
 『うーん、この間渡した龍玉になにか仕掛けてみない?』
 
 ポン!

 「さすが!」

 俺は、サッカーボールサイズの龍玉をひとつ取り出す。
 それから、ステンレスのインゴットをいくつか出して、トラックのタイヤぐらいの直径に、水の女神さまの魔法陣を描く。錬金術の力業で。

 デッカイ鍋敷き出来たぜ!

 そうして、その真ん中に龍玉をはめ込む。簡単には外れないようにいくつかの爪をつくって、ダイヤモンドの指輪みたいにするんだ。

 水の魔法陣は、こちらの文字で、女神さまの名前と、歌の一節を入れる。そして全体的には六角形の雪の結晶のような模様。だからちょっとお花みたいだ。

 そして俺の魔法を龍玉に少し流すと魔法陣が起動した。

 サワサワサワ・・・・

 「わわわ、もう水が出てきちゃった!」
 『ほんと、これを沈めるの?』
 「うん、ちょっと行ってくる!
 よいしょ・・・重っ」
 魔法を使えよ俺!

 ぼとぼとと水をこぼしながらステンレスで出来た魔道具を抱えてパタパタと三日月湖の一番太い所に行って、静かに沈めていく。
 “青色ちゃん!うまく行ってるか見てきて!”
 “おっけー・・・だいじょうぶ、ちゃんとそこでうえむきになったよ”
 「よし!」

 「溢れないかな」
 『あっちに細い出口があるよ』
 ハロルドに言われて西の端に行くと、
 「ほんとうだ、こっちからは小川だったかも知れないな」
 『ウン』

 おれは作っておいた立て看板を一つ立てる。足が杭みたいになっている。

 〈ここで、ご休憩されたら、ゴミは持ち帰ってください。神様は見ていますよ!〉
 ってね。
 「すげえ内容だが、事実ってところがまた・・・」
 神様の存在を信じているウリサの台詞が聞こえて振り返る。
 「神様たちはいつも見守ってるんだよ」
 「お前だけを見てるかと思ってたが」
 「そんな事は無い!」

 「それより、お前も昼飯を食ってこい」
 「はーい」
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