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第四章 ~王子の旅・天空路~
〈222〉龍たち流の街道造り
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今日は、再びアンシェジャミンのレモンの形、じゃなくて十一夜月形のエマイルモンド湖にせり出している、宿泊施設のテラスにお邪魔している。
ここはまだ露天のダンジョンなんだけど、聖属性のダンジョンなんてもはや健康のためのレジャー施設だよね。
テラスからの端からは温泉が湖に向かって落ちて行ってちょっとした滝になっている。
湖には、暖かい滝のお湯が落ちているっているのに、虹色淡水魚をはじめいろいろな魚が泳いでいる。ただ、ダンジョンの魔素の影響か水温が影響なのか、錦鯉のサイズになっている。
このダンジョンを作ったのはつい先日なんですけど。
このまま、こいつらは恐ろしい魔物になっていくのかしらん。
『美味しければいいにゃ』
パリの意見には賛成するけどね。俺や君よりでっかい魚だよ。輪切りのステーキではもう大皿じゃないと入らないのではないかな……バターソテー食べたくなっちゃった。
湖の近くのヤシの木から大きな鳥が飛んできた。真っ赤だけど、色とりどりのメッシュが入ってて、極楽鳥って感じの姿。くちばしも赤っぽい虹色。朱孔雀《あかくじゃく》と言うらしい。
「あれって魔物?」
『魔力はあるがな、めったなことでは人は襲わんじゃろ』
その鳥のお陰でますますリゾート感増すってものさ。
湖では緑色になっている龍が泳いでいる。
テラスにはハロルドに乗ったウリサ。
んじゃ俺も緑色の龍に変身する。俺は属性の意識をしていないから、土属性になったミグマーリより明るい青っぽい緑色。俺の瞳の色。鬣は髪の毛と同じ緑銀色だ。
「では行くぞ」
『うん』
『ええ』
今回はペルジャー共和国から、この保養施設ヘつなげる街道づくりの下準備をするんだ。
砂漠はやっぱりAランク以上の厄介な魔物が出るから、それを緩和しないと、街道なんて無理だもんね。
こっちができたら、反対向きにトルネキ王国に向かって繋げるよ。
でも、あっちに向かっては、一応緑色の筋と数十キロ沖にオアシスを作っているから急ぎではない。
『今回は僕がルートを作るんだね!』
ハロルドも張り切ってる。
「一応ミルクブールバード河に沿って、でもあんまり蛇行せずにということらしいです」
『わかった、ベルアベルに向かっていくんだね』
『それで頼む』
スタート地点は、テラスのある建物の北側、つまりエマイルモンド湖の北側から始めよう。南側はかつてこの国の王都があった地域。これから街になっていくところだね。そのためにも人が来れる街道を繋げなくちゃ。
とはいえ、ある程度は前回に通った時に一本の筋になっているので、それを整える感じ。
俺とミグマーリの二体の龍が、十メートルの距離を保って緑色の平行線を描きながらに東へ進む。将来馬車で二車線の馬車道になればいいかなと。
目の前には先導するハロルドとウリサ。俺たちのもっと上に白色君。二体の龍の幅が狭まらないように見るのは俺なんだけどね。
『じゃあ行くよ!』
『しゅっぱーつ』
普段の俺なら考えられないんだけどね、龍の前足というか手をつないで行くと丁度十メートル幅になるんだ。それほどに今の俺は大きい。
『龍の姿で手を繋ぐなんて初めて』
『そうなんだ、どう?』
『楽しい!』
二体の龍が手をつないで空を飛ぶ、メルヘンな絵になるか、恐ろしいものになるのか。それは見かけた人次第。
誰もいないけどさ。
二人で魔法と魔力を垂れ流しながら飛ぶ。
地上からの高さも十五メートルぐらい。
今回は林のような並木とその間を草地にする。
二人で行けば一度でできるんだよ。
普通は道をまず作ってから両端に並木を植えるんだろうけどさ、砂漠の魔物が怖いから、順序が逆になったんだ。
真ん中の草地を馬車や馬、人の足などで行き来していけば踏み固められるから、舗装は後回しでいいよね。
蛇行した河と、新しい街道に隙間が空けばいずれそこも集落になるだろう。
何十年何百年かかったっていいよ。俺はそれを見守ることのできる寿命があるらしいしさ。楽しみだ。開発が待ちきれなければ手伝えばいいんだからさ。
“そろそろ五十きろ、ちてん”
白色くんの合図。
『んじゃここでぐるっと回って』
『ええ』
ミグマーリと手を繋いだまま二本の平行線の林の線で円を描く。
円の真ん中は窪みを作って水を流し込んでいくんだけど、その前に内側をを火魔法で固める、即席のシュバイツマーブルを一面に造っちゃう。トルネキの満月湖より手抜きで御免なさい。でもいざという時に割れてしまわないように地中に浸みこむ程度の隙間を開けてね。
大きさは直径約一キロ。水深は十メートルぐらいになるかな。だったら湖と言っても良いよね。
このだだっ広い砂漠のオアシスにはすこし心もとないかもしれないけれど、水の女神の魔法を仕込ませてもらえば良いよね。
龍の姿のままアイテムボックスから。水の女神の魔法陣の形のステンレスの鍋敷きのようなものを取り出す。大きさは大型トラックのタイヤぐらいの直径だ。今回はもう造ってあるからさ。真ん中にはミグマーリの龍玉もセット済み。あとは水属性の魔力を込めていく。
ボトボトボトボト。滴り始める水。
『さ、早いところ真ん中に置こう』
“こっちこっち!”
“もうすこしみなみ”
“そこだ!”
『よし』
俺がでっかい水たまりを仕込んでいる間に、ミグマーリが外周の林を分厚くするように単独でもう一周していた。
『おーい、休憩しようか』
『ええ』
人の姿に戻って、テーブルを出す。
そのあいだ、ミグマーリは彼女の為に開けた大きなゲートのアナザーボックスに一度入って人型になった上に着替えてから小さな扉で出てきた。
『こんど、ユグドラシルに洋服の魔法を教えてもらわなくちゃ』
「俺も教えてほしいんだよね」
『その前に色々な洋服を見なくちゃ分からないんだけどね』
「カタログみたいなものがあったらいいな」
『かたろぐ?』
「こういうのはどう?」
出来立てのオアシスのテーブルを出して隣り合って座り、ウエストポーチに入れられていた母さんのファッション雑誌を取り出す。
数年前のものだけど一年分揃っていたので、砂漠にはこれかな?って初夏の号を出す。
だって、砂漠の暑さと日本の暑さは過ごし方が違うもんね。
他には俺の好きなアラビアンな童話の絵本も。大昔のアラビアンな女性の衣装ってパンツ?スタイルだけど女性らしくていいよねえ。
あとは、大地の女神様がモサ島で着ていた、浴衣のような和服とかさ。
『まあ素敵』
「ね」
『これは、王子のコレクションなの?』
「母さんの本なんだけど、ちょっと古そうだし良いでしょ」
『ええ。ローザ様が読まれた本ね』
夢で見た、何千年も前の父さんたちの服もシンプルで良かったよね。
二十三区外だけど一応東京ボーイだったんだ、多少ファッションに興味はあったさ。高校出てからいろいろ試したかったし、大学に行けば女性の服ももっと目にしただろうに。
「へえ、奇麗な本だな」
「でしょ」
「シュンスケがいつも出す絵のようなものが束ねられているんだな」
「これは印刷って方法でね、大量に同じものを作るんだよ」
「異世界の技術はすげえな」
「男性の雑誌もあるよ」
と、ウリサにメンズの方をだす。俺が買った覚えはないんだけど。母さんのコレクションなの?この雑誌。まさか俺に大学デビューの服を買ってくれるつもりだったのかな。
日本語の雑誌たちだけど、ファッション雑誌なんて文字が読めなくてもいいもんね。
新しいオアシスの木陰で、みんなでファッション雑誌を見る。
“よいしょよいしょ”
“これとか、おんなのこおうじににあいそ”
精霊ちゃんもファッション雑誌が気に入ったようだけど、俺用のレディースを探すのはやめろ。
『ねえ、お昼ご飯食べるんじゃないの?』
「わわっ、ハロルド」
ペガコーンがあきれたように俺の頭を鼻先でかき混ぜながら言う。
「あ」
『僕は王子が生やしてくれたこのクローバーで十分なんだけどさ。冷めちゃうよそれ』
たしかに、雑誌を読む前にウリサがマジックバッグから出してくれた、熱々の焼きそばが三人前ある
「確かに、温かいうちに食べなきゃ」
「そうだな」
「いただきますー」
ミグマーリが頑張ってお箸で食べている。フォークも用意したんだけどな。
「おいし?」
『ええ』
目の前では、新しい湖の水が着実に増えている。
「この湖の名前はどうするんだ?」
『これも真ん丸だから満月?』
「うーん満月二号」
「それは嫌がるんじゃねえか、将来ここに住む奴は」
「だよね。とりあえずサークルワン。これで行こう。次のはサークルツーだよ」
「……わかった、とりあえずってことだな」
地図を出して、スマホで現在位置を確かめつつ、湖の位置を描きこんで〈サークルワン〉と。
その地図には以前つくったボールモンドからアンシェジャミンまでの緑の筋とぽつぽつ作った池や水たまりを描きこんである。
なんかね、蛇行した双六みたいだよ。オアシスで一回休み。なんてね。
「さて、このサークルワンのオアシスに立て看板を」
〈ゴミは持ち帰りましょう〉
〈携帯トイレで用を足して持って帰りましょう〉
〈他の人と仲良くしましょう〉
〈神様は見てますよ〉
当たり前のことだけどさ、世の中には掃除のできない大人も多いからね。特にお貴族様の冒険者とかさ。
もちろん、字が読めない人にイラスト付き!
でも、Aランク以上の冒険者になる条件の一つに読み書きが入ってるからね。砂漠の魔物に立ち向かう人は文字も読めるよね!
立て看板には状態を保つ魔法を付与。
きつい日差しでも日焼けすることなく、文字も鮮明に残る。
地球じゃ、肝心の赤い文字から白っぽくなっていくもんね。それがないのが魔法の良い所だ。
「もう一つは東側に立てるんだな」
「うん」
「じゃあ俺はあっちに立ててきてやるよ」
“てつだうわ!”
土魔法の得意な緑色ちゃんもついていく。
「ありがとう」
『もう出発?』
「ああ」
直径一キロの湖の向こうへハロルドに乗って草地をパカパカと進むウリサを見送って俺たちはまた龍に変身する。
湖の東の端っこにたどり着くと、ハロルドはもう空中でホバリングしていた。
『お待たせ』
『じゃあいくよ!』
『『はーい』』
それからまた五十キロずつ留まってはサークル湖をつくって、アナザーワールドで一泊して、翌日の昼、ベルアベルの手前のシルエラさんとシェドー君を保護したところにたどり着いた。すこし何本か木を生やしていたけど、まだ水場は無い。
前回は早くたどり着いたけど、今回は並木を作りながらだったから、二日かかっちゃった。
また直径一キロの円を描く。
真ん中に前回の木々が残っているのでそこを中島として残して、その周りを土魔法で掘っていこうかな。
ちなみに、湖として掘ったあとの砂は、ミルクブールバード河跡との間に、ぼた山として置いてある。風で飛んでいかないように水を振りかけて、薄っすら草地にしてある。
もちろん立て看板も。
〈砂山なので登らないで!危ないですよ!〉
そのうち、街づくりの建材になればいいな。シュバイツマーブルのブロックとかさ。
「ここは丸型ではあるけどドーナツ型だな」
「確かに」
“わーい、どーなつこ”
“どーなつたべたい!”
「そういえば、この間、母さんがドーナツ入れてくれてた!」
「まじか。お前のウエストポーチってもはや神器だな」
「そりゃあ、神様のポーチだもん」
すごい剣も入ってたしね。
「でも、おやつはベルアベルにたどり着いてからな」
“はーい”
“しょうがない”
“すいーとるーむで、すいーつ”
“ちょこのある?”
赤色くんはチョコレートが好き。
「あるよ」
“やたっ”
ここはまだ露天のダンジョンなんだけど、聖属性のダンジョンなんてもはや健康のためのレジャー施設だよね。
テラスからの端からは温泉が湖に向かって落ちて行ってちょっとした滝になっている。
湖には、暖かい滝のお湯が落ちているっているのに、虹色淡水魚をはじめいろいろな魚が泳いでいる。ただ、ダンジョンの魔素の影響か水温が影響なのか、錦鯉のサイズになっている。
このダンジョンを作ったのはつい先日なんですけど。
このまま、こいつらは恐ろしい魔物になっていくのかしらん。
『美味しければいいにゃ』
パリの意見には賛成するけどね。俺や君よりでっかい魚だよ。輪切りのステーキではもう大皿じゃないと入らないのではないかな……バターソテー食べたくなっちゃった。
湖の近くのヤシの木から大きな鳥が飛んできた。真っ赤だけど、色とりどりのメッシュが入ってて、極楽鳥って感じの姿。くちばしも赤っぽい虹色。朱孔雀《あかくじゃく》と言うらしい。
「あれって魔物?」
『魔力はあるがな、めったなことでは人は襲わんじゃろ』
その鳥のお陰でますますリゾート感増すってものさ。
湖では緑色になっている龍が泳いでいる。
テラスにはハロルドに乗ったウリサ。
んじゃ俺も緑色の龍に変身する。俺は属性の意識をしていないから、土属性になったミグマーリより明るい青っぽい緑色。俺の瞳の色。鬣は髪の毛と同じ緑銀色だ。
「では行くぞ」
『うん』
『ええ』
今回はペルジャー共和国から、この保養施設ヘつなげる街道づくりの下準備をするんだ。
砂漠はやっぱりAランク以上の厄介な魔物が出るから、それを緩和しないと、街道なんて無理だもんね。
こっちができたら、反対向きにトルネキ王国に向かって繋げるよ。
でも、あっちに向かっては、一応緑色の筋と数十キロ沖にオアシスを作っているから急ぎではない。
『今回は僕がルートを作るんだね!』
ハロルドも張り切ってる。
「一応ミルクブールバード河に沿って、でもあんまり蛇行せずにということらしいです」
『わかった、ベルアベルに向かっていくんだね』
『それで頼む』
スタート地点は、テラスのある建物の北側、つまりエマイルモンド湖の北側から始めよう。南側はかつてこの国の王都があった地域。これから街になっていくところだね。そのためにも人が来れる街道を繋げなくちゃ。
とはいえ、ある程度は前回に通った時に一本の筋になっているので、それを整える感じ。
俺とミグマーリの二体の龍が、十メートルの距離を保って緑色の平行線を描きながらに東へ進む。将来馬車で二車線の馬車道になればいいかなと。
目の前には先導するハロルドとウリサ。俺たちのもっと上に白色君。二体の龍の幅が狭まらないように見るのは俺なんだけどね。
『じゃあ行くよ!』
『しゅっぱーつ』
普段の俺なら考えられないんだけどね、龍の前足というか手をつないで行くと丁度十メートル幅になるんだ。それほどに今の俺は大きい。
『龍の姿で手を繋ぐなんて初めて』
『そうなんだ、どう?』
『楽しい!』
二体の龍が手をつないで空を飛ぶ、メルヘンな絵になるか、恐ろしいものになるのか。それは見かけた人次第。
誰もいないけどさ。
二人で魔法と魔力を垂れ流しながら飛ぶ。
地上からの高さも十五メートルぐらい。
今回は林のような並木とその間を草地にする。
二人で行けば一度でできるんだよ。
普通は道をまず作ってから両端に並木を植えるんだろうけどさ、砂漠の魔物が怖いから、順序が逆になったんだ。
真ん中の草地を馬車や馬、人の足などで行き来していけば踏み固められるから、舗装は後回しでいいよね。
蛇行した河と、新しい街道に隙間が空けばいずれそこも集落になるだろう。
何十年何百年かかったっていいよ。俺はそれを見守ることのできる寿命があるらしいしさ。楽しみだ。開発が待ちきれなければ手伝えばいいんだからさ。
“そろそろ五十きろ、ちてん”
白色くんの合図。
『んじゃここでぐるっと回って』
『ええ』
ミグマーリと手を繋いだまま二本の平行線の林の線で円を描く。
円の真ん中は窪みを作って水を流し込んでいくんだけど、その前に内側をを火魔法で固める、即席のシュバイツマーブルを一面に造っちゃう。トルネキの満月湖より手抜きで御免なさい。でもいざという時に割れてしまわないように地中に浸みこむ程度の隙間を開けてね。
大きさは直径約一キロ。水深は十メートルぐらいになるかな。だったら湖と言っても良いよね。
このだだっ広い砂漠のオアシスにはすこし心もとないかもしれないけれど、水の女神の魔法を仕込ませてもらえば良いよね。
龍の姿のままアイテムボックスから。水の女神の魔法陣の形のステンレスの鍋敷きのようなものを取り出す。大きさは大型トラックのタイヤぐらいの直径だ。今回はもう造ってあるからさ。真ん中にはミグマーリの龍玉もセット済み。あとは水属性の魔力を込めていく。
ボトボトボトボト。滴り始める水。
『さ、早いところ真ん中に置こう』
“こっちこっち!”
“もうすこしみなみ”
“そこだ!”
『よし』
俺がでっかい水たまりを仕込んでいる間に、ミグマーリが外周の林を分厚くするように単独でもう一周していた。
『おーい、休憩しようか』
『ええ』
人の姿に戻って、テーブルを出す。
そのあいだ、ミグマーリは彼女の為に開けた大きなゲートのアナザーボックスに一度入って人型になった上に着替えてから小さな扉で出てきた。
『こんど、ユグドラシルに洋服の魔法を教えてもらわなくちゃ』
「俺も教えてほしいんだよね」
『その前に色々な洋服を見なくちゃ分からないんだけどね』
「カタログみたいなものがあったらいいな」
『かたろぐ?』
「こういうのはどう?」
出来立てのオアシスのテーブルを出して隣り合って座り、ウエストポーチに入れられていた母さんのファッション雑誌を取り出す。
数年前のものだけど一年分揃っていたので、砂漠にはこれかな?って初夏の号を出す。
だって、砂漠の暑さと日本の暑さは過ごし方が違うもんね。
他には俺の好きなアラビアンな童話の絵本も。大昔のアラビアンな女性の衣装ってパンツ?スタイルだけど女性らしくていいよねえ。
あとは、大地の女神様がモサ島で着ていた、浴衣のような和服とかさ。
『まあ素敵』
「ね」
『これは、王子のコレクションなの?』
「母さんの本なんだけど、ちょっと古そうだし良いでしょ」
『ええ。ローザ様が読まれた本ね』
夢で見た、何千年も前の父さんたちの服もシンプルで良かったよね。
二十三区外だけど一応東京ボーイだったんだ、多少ファッションに興味はあったさ。高校出てからいろいろ試したかったし、大学に行けば女性の服ももっと目にしただろうに。
「へえ、奇麗な本だな」
「でしょ」
「シュンスケがいつも出す絵のようなものが束ねられているんだな」
「これは印刷って方法でね、大量に同じものを作るんだよ」
「異世界の技術はすげえな」
「男性の雑誌もあるよ」
と、ウリサにメンズの方をだす。俺が買った覚えはないんだけど。母さんのコレクションなの?この雑誌。まさか俺に大学デビューの服を買ってくれるつもりだったのかな。
日本語の雑誌たちだけど、ファッション雑誌なんて文字が読めなくてもいいもんね。
新しいオアシスの木陰で、みんなでファッション雑誌を見る。
“よいしょよいしょ”
“これとか、おんなのこおうじににあいそ”
精霊ちゃんもファッション雑誌が気に入ったようだけど、俺用のレディースを探すのはやめろ。
『ねえ、お昼ご飯食べるんじゃないの?』
「わわっ、ハロルド」
ペガコーンがあきれたように俺の頭を鼻先でかき混ぜながら言う。
「あ」
『僕は王子が生やしてくれたこのクローバーで十分なんだけどさ。冷めちゃうよそれ』
たしかに、雑誌を読む前にウリサがマジックバッグから出してくれた、熱々の焼きそばが三人前ある
「確かに、温かいうちに食べなきゃ」
「そうだな」
「いただきますー」
ミグマーリが頑張ってお箸で食べている。フォークも用意したんだけどな。
「おいし?」
『ええ』
目の前では、新しい湖の水が着実に増えている。
「この湖の名前はどうするんだ?」
『これも真ん丸だから満月?』
「うーん満月二号」
「それは嫌がるんじゃねえか、将来ここに住む奴は」
「だよね。とりあえずサークルワン。これで行こう。次のはサークルツーだよ」
「……わかった、とりあえずってことだな」
地図を出して、スマホで現在位置を確かめつつ、湖の位置を描きこんで〈サークルワン〉と。
その地図には以前つくったボールモンドからアンシェジャミンまでの緑の筋とぽつぽつ作った池や水たまりを描きこんである。
なんかね、蛇行した双六みたいだよ。オアシスで一回休み。なんてね。
「さて、このサークルワンのオアシスに立て看板を」
〈ゴミは持ち帰りましょう〉
〈携帯トイレで用を足して持って帰りましょう〉
〈他の人と仲良くしましょう〉
〈神様は見てますよ〉
当たり前のことだけどさ、世の中には掃除のできない大人も多いからね。特にお貴族様の冒険者とかさ。
もちろん、字が読めない人にイラスト付き!
でも、Aランク以上の冒険者になる条件の一つに読み書きが入ってるからね。砂漠の魔物に立ち向かう人は文字も読めるよね!
立て看板には状態を保つ魔法を付与。
きつい日差しでも日焼けすることなく、文字も鮮明に残る。
地球じゃ、肝心の赤い文字から白っぽくなっていくもんね。それがないのが魔法の良い所だ。
「もう一つは東側に立てるんだな」
「うん」
「じゃあ俺はあっちに立ててきてやるよ」
“てつだうわ!”
土魔法の得意な緑色ちゃんもついていく。
「ありがとう」
『もう出発?』
「ああ」
直径一キロの湖の向こうへハロルドに乗って草地をパカパカと進むウリサを見送って俺たちはまた龍に変身する。
湖の東の端っこにたどり着くと、ハロルドはもう空中でホバリングしていた。
『お待たせ』
『じゃあいくよ!』
『『はーい』』
それからまた五十キロずつ留まってはサークル湖をつくって、アナザーワールドで一泊して、翌日の昼、ベルアベルの手前のシルエラさんとシェドー君を保護したところにたどり着いた。すこし何本か木を生やしていたけど、まだ水場は無い。
前回は早くたどり着いたけど、今回は並木を作りながらだったから、二日かかっちゃった。
また直径一キロの円を描く。
真ん中に前回の木々が残っているのでそこを中島として残して、その周りを土魔法で掘っていこうかな。
ちなみに、湖として掘ったあとの砂は、ミルクブールバード河跡との間に、ぼた山として置いてある。風で飛んでいかないように水を振りかけて、薄っすら草地にしてある。
もちろん立て看板も。
〈砂山なので登らないで!危ないですよ!〉
そのうち、街づくりの建材になればいいな。シュバイツマーブルのブロックとかさ。
「ここは丸型ではあるけどドーナツ型だな」
「確かに」
“わーい、どーなつこ”
“どーなつたべたい!”
「そういえば、この間、母さんがドーナツ入れてくれてた!」
「まじか。お前のウエストポーチってもはや神器だな」
「そりゃあ、神様のポーチだもん」
すごい剣も入ってたしね。
「でも、おやつはベルアベルにたどり着いてからな」
“はーい”
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