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第五章 ~王子のクラフツ留学~
〈306〉食べ物で遊んでも良いですよ!
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メープルは、小麦粉粘土に夢中。この粘土はいわゆるクッキードゥというもので、オーブンで焼いたら食べられるやつだ。俺がネットで探したレシピと普段作っているクッキーのレシピなんかを見ながら用意した。
俺は小さい時に、カラフルな小麦粉粘土で遊んだことがある。どっちかというとそれで遊ばせてみたかったけど、どうせ小麦粉で遊ぶなら、料理体験と兼ねるのもいいよな。
すぐに焼くから、つなぎに卵を入れているよ。
まずは、カボチャを練りこんだ黄色いクッキー生地。砂糖は入れずにかぼちゃのほのかな甘みが、そのまま食っても旨いかも。
そして、プレーンなクッキー生地に、ベリーソースを練りこんだ、ピンク色に近い赤い生地。ほうれん草のペーストを混ぜた緑色の生地。
青色は、ネモフィラに似ているけどもっと濃い鮮やかな色の花から抽出した色素に土属性を混ぜて作った魔石(俺の魔素で作った)を小麦粉のような微粒子に砕いたものを混ぜ込んだ青い生地。
最後に、カボチャをこっちは蒸し焼きにしてようは炭にしたものを練りこんだ黒い生地。
そして白身とパン粉で作った白い生地。これはちょっとテクスチャーがパン粉のせいでざらっとしている。
赤・黄・緑・青・黒・白の六色の小麦粉粘土が出来た。どれにも砂糖は入れていない。後で上からトッピングして焼くつもり。
乳幼児に甘すぎるものは厳禁だからね。
「よし、メープル、これで遊ぶぞ!」
『わーい』
でも、今回はクッキーだし、そう言う道具も並べる。
短い麺棒、プラスチックの抜型、未使用で先があまり尖っていない粘土べら。
そしてトッピングに半分にカットした干しブドウ。ナッツはまだ少し硬いからスライスしてさらに砕いたもの、スフィンクスが用意してくれたチョコチップ。それと冒険者ギルドで買った金平糖。金平糖は冒険者の携帯食の一つとして常備するようになっている。
飲むものがないのに、ビスケットのようなものを食べる時に必要なんだ。
……そんなことは言わずに、
「金平糖は焼いたら形が変わるかも」
と彼女に言いながら並べる。
正直、日本で中学生のころに職場体験の保育園に行った時に、給食で出す食材で卵とか小麦粉とかが難しい園児がいるって話を聞いた記憶はある。
まあ、メープルは人じゃないし!緑色ちゃんに聞いたら、卵もOKが女神様から出たので!ここは気にせず楽しんでもらおう。
お昼過ぎ、午前中に作って焼きあがったクッキーが沢山出来ていた。
『しゅばいちゅ、あーん』
紅葉の手が一つのいびつなクッキーを俺に差し出す。
「これはなあに?」
『これはあ。くいんび!』
「だから複雑な感じなんだね」
二つ乗せられた干しブドウはお目目かな?
「あーん」
もぐもぐもぐ。
「あれ?美味しいねぇ」
『めーぷるがつくったから!』
「うん、それはそうなんだけど、予定していない風味が?」
『ふーみ?』
「メープルもう一つくれない?」
『じゃあーこれ!』
「これは?」
『まんげちゅ』
真っ白の真ん丸の何もないクッキー。ちょっとパン粉入り。
「あーん」
……これ、トッピングしていないよな。ほんのり甘さと香りが追加されている。
「なあ、メープル、このクッキーをもう一つスフィンクスにやって」
『いーよ。はい、すひんくす、あーん』
『おや、いただきます』
「……どう?」
『ほのかにメープルシロップの風味がしますね』
「やっぱり?
メープルがつくったからってそんな事ある?」
『ふふふ、まだどういう高位精霊になられるか分からないですけどね。優しい存在にはなりそうですね』
「そっか、スフィンクスがそう言ってくれるならうれしいよ」
『メープル。クッキー美味しいですよ。ごちそうさまです』
「おいし?」
『はい、お礼にホットミルクをどうぞ。もう冷めているから飲めますよ』
「ありあと」
自分が作ったクッキーを褒めてもらって、いい笑顔でミルクを飲む。
可愛すぎるだろう!
「白髭がついたよ」
『ん・・・しゅばいちゅ・・・』
口の周りを拭ってやっていると、目がとろんとしてきた。
昼ご飯を食べてクッキーとミルクを食べたメープルはお昼寝モードに。
そして俺は、別で作ったチョコチップクッキーと、ラムレーズンクッキーをもって、学園の大型試作室に出かけた。
「こんちはー」
「「「おー」」」
「「「シュンスケ!」」」
「「待ってたぜぇ」」
そこには、一通りの大人が揃っていた。
この設備の責任者であるラージドワーフのランガディア設計製図教授殿下、ショートドワーフのナバーブ金属加工講師、ドワーフ入り人間族のアルディーロ陶芸家、臨時講師に来られているドワーフ入り黒ライオン族のアラベラ師。
そして学園外からはドワーフとエルフのハーフのフォルドライン技工所所長ヴェルノとドワーフのガゼット鉄工鋳造所の親方が一堂にいたのだ。
もちろんウリサとクリス。ガゼットの息子のベゼット、パステル、ラヴィもいる。
三人は親の許可をえて、夏休み明けからこの大型試作室の宿泊施設で合宿をしているそうだ。楽しそうだよね。
「だって、宿題を持って帰って家で課題の残りをするとか、効率悪いし」
「ここで、課題の続きをやるなら、先生たちに助けてもらいやすいからな」
そして、なんとアラベラ師もここに滞在されている。
大型試作室には現在大人組六人、子供組六人の十二人。
そこに完成したローナ姫の輿入れに使う馬車の車台のパーツが置いてあった。
「シュンスケ、馬車のデザインはどうするんだ?」
ランガディア教授に言われて、俺は数日前から描いていたスケッチを取り出す。
「こんな感じにできないでしょうか」
「ふうむ、なかなか斬新じゃないのか?」
「オープンで良いんですよね」
「ああ、で、素材も何か考えているのか?」
「丁度良かった、ナバーブ先生とアルディーロ先生にも相談したかったんです。
琺瑯ってできますか?」
「ほーろ?」
「何じゃ?それは?どういうものですか?」
「七宝焼に似た手法で、鉄の表面に釉薬を付けて焼き付けるのですけど」
「ふーむクロイゾネみたいな小さなものならわかるのじゃが」
七宝焼は地球でもエジプト時代からある装飾の技法で、ツタンカーメンのマスクにも使われたぐらいの一般的な技法だ。それはこの世界にもあって、魔石の種類が多い割に魔力のない普通の宝石の種類が少ない世界での装飾を担っている。
魔素を纏っている魔石は、自分の属性や愛称の良い属性の魔石を一つ身に着けるぐらいならお守りとして有効だが、ドレスなどに使うとなると、体の方に負担がかかるらしい。
だから七宝焼きの宝飾品が発達している。
もちろん、この学園にもその学習の機会があるけれど、このメンバーの中にその教科の指導者はいない。でも、知識はあるよもちろん。
「例えばこれを」
大学生になったらキャンプに行こうと、ちょこちょこ買っていた道具の中から真っ白なミルクパンと、行平ほどの蓋の付いたオレンジ色のホーローの鍋を出す。どっちも使用跡があるよ。
「これらは!」
「これはホーローの鍋です」
「これが鉄に釉薬を付けて焼いたものじゃと?」
「なんと素晴らしい風合いですな」
「この手触りは何ともつるつるしていていいですな」
「こっちはマットな感じで、冷たいはずなのだが温かみがあるのぅ」
六人のおっさんたちが二つの鍋を撫でまわしている。
「でしょ?」
「ねえねえ、こっちの白い片手鍋はもしかしてミルク用?」
「良く分かったなパステル」
「このクチバシみたいなのは、ポットみたいですね」
「そうそう、これがあるとダレずに注げるんだ。温めたミルクが変な所に垂れたら困るだろう?」
「昨日シュンスケがメープル様に使っていたじゃないか」
「そう言えば」
「で、こっちの鍋は?」
「これはほら、前に野営に使ったやつ」
「ああ、蓋の上にも焼けた石とか乗せていたな」
「そうそう」
「へえ」
講師陣から回ってきた鍋を掲げたりしているラビィ。
「シュンスケは前にこれでパンを焼いていたぜ」
「パン!すごい!」
「焼く前の種を持って行ったんだよね」
発酵中のパン種はアイテムボックスに入れられないんだよ。酵母が生き者扱いされててさ。だから持って行ったんじゃなくて、アナザーワールドの冷蔵の魔道具の中に置いておいたんだよね。
「ホーローは、ステンレスに比べれば表面がガラス質だから、衝撃には弱くて傷がつきますけど、中が鉄なので陶磁器とは違って割れないです。
そして、もちろん傷がつかなければ錆に強くて、土や砂がついても洗えば取れるし、熱伝導が良くて保温効果も高いです。
俺が育った国では、浴槽に使われていたぐらいで」
「なるほど」
「鉄と相性の良い釉薬があれば、ステンレスと違って、こんな華やかな仕上がりになるんですね」
「しかも他の色も使えるのじゃな?」
「そうなんです!」
「ホーローはもちろん煮沸が出来るし、鉄よりはつるんとしますから、木で出来たものより、清潔を維持できます。たとえば医療用の容器とかね。ステンレスより、白いものが必要なこともありますしね」
「ほうほう」
「ラヴィ。なによりこんなカラフルなお鍋がキッチンにあったら楽しいよ!」
「そうよね!パステル」
女子の発想はいつも華やかである。
お鍋二つで盛り上がり。
それぞれ盛り上がる内容は違うけどね。
「シュンスケ君!このお鍋で焼いたパンが食べたい!」
「うーん、さすがにネタを用意しないとね」
「そっか」
「だけど今日はクッキーを持ってきたよ!」
「わー!」
「じゃあホットミルクを入れようよ!」
「わかったわかった」
使ってみたいんだね。
先生たちが撫でまわしていたから洗うね。
「確かにこれは、やってみる価値はあるそうじゃな」
「そうですな」
「じゃが、馬車のような大きなものを鉄板で打ち出す事は出来ても、焼くとなるとな」
「登り窯では問題がありますじゃ」
「問題ですか?」
「壺を焼くにも、大きくても人一人が入る程度の大きさが限界じゃ」
「しかも、我らラージドワーフ用ではない」
「人が入るような壺があるのですか?」
「あ、クリスそれはあれだよきっと!」
日本でも歴史の教科書にあったんだよ!
「今は使ってないがな」
「死者の埋葬に使うんじゃ」
やっぱり。
俺は小さい時に、カラフルな小麦粉粘土で遊んだことがある。どっちかというとそれで遊ばせてみたかったけど、どうせ小麦粉で遊ぶなら、料理体験と兼ねるのもいいよな。
すぐに焼くから、つなぎに卵を入れているよ。
まずは、カボチャを練りこんだ黄色いクッキー生地。砂糖は入れずにかぼちゃのほのかな甘みが、そのまま食っても旨いかも。
そして、プレーンなクッキー生地に、ベリーソースを練りこんだ、ピンク色に近い赤い生地。ほうれん草のペーストを混ぜた緑色の生地。
青色は、ネモフィラに似ているけどもっと濃い鮮やかな色の花から抽出した色素に土属性を混ぜて作った魔石(俺の魔素で作った)を小麦粉のような微粒子に砕いたものを混ぜ込んだ青い生地。
最後に、カボチャをこっちは蒸し焼きにしてようは炭にしたものを練りこんだ黒い生地。
そして白身とパン粉で作った白い生地。これはちょっとテクスチャーがパン粉のせいでざらっとしている。
赤・黄・緑・青・黒・白の六色の小麦粉粘土が出来た。どれにも砂糖は入れていない。後で上からトッピングして焼くつもり。
乳幼児に甘すぎるものは厳禁だからね。
「よし、メープル、これで遊ぶぞ!」
『わーい』
でも、今回はクッキーだし、そう言う道具も並べる。
短い麺棒、プラスチックの抜型、未使用で先があまり尖っていない粘土べら。
そしてトッピングに半分にカットした干しブドウ。ナッツはまだ少し硬いからスライスしてさらに砕いたもの、スフィンクスが用意してくれたチョコチップ。それと冒険者ギルドで買った金平糖。金平糖は冒険者の携帯食の一つとして常備するようになっている。
飲むものがないのに、ビスケットのようなものを食べる時に必要なんだ。
……そんなことは言わずに、
「金平糖は焼いたら形が変わるかも」
と彼女に言いながら並べる。
正直、日本で中学生のころに職場体験の保育園に行った時に、給食で出す食材で卵とか小麦粉とかが難しい園児がいるって話を聞いた記憶はある。
まあ、メープルは人じゃないし!緑色ちゃんに聞いたら、卵もOKが女神様から出たので!ここは気にせず楽しんでもらおう。
お昼過ぎ、午前中に作って焼きあがったクッキーが沢山出来ていた。
『しゅばいちゅ、あーん』
紅葉の手が一つのいびつなクッキーを俺に差し出す。
「これはなあに?」
『これはあ。くいんび!』
「だから複雑な感じなんだね」
二つ乗せられた干しブドウはお目目かな?
「あーん」
もぐもぐもぐ。
「あれ?美味しいねぇ」
『めーぷるがつくったから!』
「うん、それはそうなんだけど、予定していない風味が?」
『ふーみ?』
「メープルもう一つくれない?」
『じゃあーこれ!』
「これは?」
『まんげちゅ』
真っ白の真ん丸の何もないクッキー。ちょっとパン粉入り。
「あーん」
……これ、トッピングしていないよな。ほんのり甘さと香りが追加されている。
「なあ、メープル、このクッキーをもう一つスフィンクスにやって」
『いーよ。はい、すひんくす、あーん』
『おや、いただきます』
「……どう?」
『ほのかにメープルシロップの風味がしますね』
「やっぱり?
メープルがつくったからってそんな事ある?」
『ふふふ、まだどういう高位精霊になられるか分からないですけどね。優しい存在にはなりそうですね』
「そっか、スフィンクスがそう言ってくれるならうれしいよ」
『メープル。クッキー美味しいですよ。ごちそうさまです』
「おいし?」
『はい、お礼にホットミルクをどうぞ。もう冷めているから飲めますよ』
「ありあと」
自分が作ったクッキーを褒めてもらって、いい笑顔でミルクを飲む。
可愛すぎるだろう!
「白髭がついたよ」
『ん・・・しゅばいちゅ・・・』
口の周りを拭ってやっていると、目がとろんとしてきた。
昼ご飯を食べてクッキーとミルクを食べたメープルはお昼寝モードに。
そして俺は、別で作ったチョコチップクッキーと、ラムレーズンクッキーをもって、学園の大型試作室に出かけた。
「こんちはー」
「「「おー」」」
「「「シュンスケ!」」」
「「待ってたぜぇ」」
そこには、一通りの大人が揃っていた。
この設備の責任者であるラージドワーフのランガディア設計製図教授殿下、ショートドワーフのナバーブ金属加工講師、ドワーフ入り人間族のアルディーロ陶芸家、臨時講師に来られているドワーフ入り黒ライオン族のアラベラ師。
そして学園外からはドワーフとエルフのハーフのフォルドライン技工所所長ヴェルノとドワーフのガゼット鉄工鋳造所の親方が一堂にいたのだ。
もちろんウリサとクリス。ガゼットの息子のベゼット、パステル、ラヴィもいる。
三人は親の許可をえて、夏休み明けからこの大型試作室の宿泊施設で合宿をしているそうだ。楽しそうだよね。
「だって、宿題を持って帰って家で課題の残りをするとか、効率悪いし」
「ここで、課題の続きをやるなら、先生たちに助けてもらいやすいからな」
そして、なんとアラベラ師もここに滞在されている。
大型試作室には現在大人組六人、子供組六人の十二人。
そこに完成したローナ姫の輿入れに使う馬車の車台のパーツが置いてあった。
「シュンスケ、馬車のデザインはどうするんだ?」
ランガディア教授に言われて、俺は数日前から描いていたスケッチを取り出す。
「こんな感じにできないでしょうか」
「ふうむ、なかなか斬新じゃないのか?」
「オープンで良いんですよね」
「ああ、で、素材も何か考えているのか?」
「丁度良かった、ナバーブ先生とアルディーロ先生にも相談したかったんです。
琺瑯ってできますか?」
「ほーろ?」
「何じゃ?それは?どういうものですか?」
「七宝焼に似た手法で、鉄の表面に釉薬を付けて焼き付けるのですけど」
「ふーむクロイゾネみたいな小さなものならわかるのじゃが」
七宝焼は地球でもエジプト時代からある装飾の技法で、ツタンカーメンのマスクにも使われたぐらいの一般的な技法だ。それはこの世界にもあって、魔石の種類が多い割に魔力のない普通の宝石の種類が少ない世界での装飾を担っている。
魔素を纏っている魔石は、自分の属性や愛称の良い属性の魔石を一つ身に着けるぐらいならお守りとして有効だが、ドレスなどに使うとなると、体の方に負担がかかるらしい。
だから七宝焼きの宝飾品が発達している。
もちろん、この学園にもその学習の機会があるけれど、このメンバーの中にその教科の指導者はいない。でも、知識はあるよもちろん。
「例えばこれを」
大学生になったらキャンプに行こうと、ちょこちょこ買っていた道具の中から真っ白なミルクパンと、行平ほどの蓋の付いたオレンジ色のホーローの鍋を出す。どっちも使用跡があるよ。
「これらは!」
「これはホーローの鍋です」
「これが鉄に釉薬を付けて焼いたものじゃと?」
「なんと素晴らしい風合いですな」
「この手触りは何ともつるつるしていていいですな」
「こっちはマットな感じで、冷たいはずなのだが温かみがあるのぅ」
六人のおっさんたちが二つの鍋を撫でまわしている。
「でしょ?」
「ねえねえ、こっちの白い片手鍋はもしかしてミルク用?」
「良く分かったなパステル」
「このクチバシみたいなのは、ポットみたいですね」
「そうそう、これがあるとダレずに注げるんだ。温めたミルクが変な所に垂れたら困るだろう?」
「昨日シュンスケがメープル様に使っていたじゃないか」
「そう言えば」
「で、こっちの鍋は?」
「これはほら、前に野営に使ったやつ」
「ああ、蓋の上にも焼けた石とか乗せていたな」
「そうそう」
「へえ」
講師陣から回ってきた鍋を掲げたりしているラビィ。
「シュンスケは前にこれでパンを焼いていたぜ」
「パン!すごい!」
「焼く前の種を持って行ったんだよね」
発酵中のパン種はアイテムボックスに入れられないんだよ。酵母が生き者扱いされててさ。だから持って行ったんじゃなくて、アナザーワールドの冷蔵の魔道具の中に置いておいたんだよね。
「ホーローは、ステンレスに比べれば表面がガラス質だから、衝撃には弱くて傷がつきますけど、中が鉄なので陶磁器とは違って割れないです。
そして、もちろん傷がつかなければ錆に強くて、土や砂がついても洗えば取れるし、熱伝導が良くて保温効果も高いです。
俺が育った国では、浴槽に使われていたぐらいで」
「なるほど」
「鉄と相性の良い釉薬があれば、ステンレスと違って、こんな華やかな仕上がりになるんですね」
「しかも他の色も使えるのじゃな?」
「そうなんです!」
「ホーローはもちろん煮沸が出来るし、鉄よりはつるんとしますから、木で出来たものより、清潔を維持できます。たとえば医療用の容器とかね。ステンレスより、白いものが必要なこともありますしね」
「ほうほう」
「ラヴィ。なによりこんなカラフルなお鍋がキッチンにあったら楽しいよ!」
「そうよね!パステル」
女子の発想はいつも華やかである。
お鍋二つで盛り上がり。
それぞれ盛り上がる内容は違うけどね。
「シュンスケ君!このお鍋で焼いたパンが食べたい!」
「うーん、さすがにネタを用意しないとね」
「そっか」
「だけど今日はクッキーを持ってきたよ!」
「わー!」
「じゃあホットミルクを入れようよ!」
「わかったわかった」
使ってみたいんだね。
先生たちが撫でまわしていたから洗うね。
「確かにこれは、やってみる価値はあるそうじゃな」
「そうですな」
「じゃが、馬車のような大きなものを鉄板で打ち出す事は出来ても、焼くとなるとな」
「登り窯では問題がありますじゃ」
「問題ですか?」
「壺を焼くにも、大きくても人一人が入る程度の大きさが限界じゃ」
「しかも、我らラージドワーフ用ではない」
「人が入るような壺があるのですか?」
「あ、クリスそれはあれだよきっと!」
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やっぱり。
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