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第一章 ~始まりの章~
〈9〉リサイタルは突然に
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ギルドから外を回って教会の正面に行く。裏手というか、この教会のほうが表側では?
教会の正面から大きな道がずうっと伸びていて、森や平地の向こうに集落や街のような風景がひろがり、そのさらに向こうの彼方に海が広がっているのが見えた。海までは何十キロもあるだろう。
教会と言われても俺にしたら神殿にみえる。さっきアリサと見に来た時もそう感じた。全体に真っ白で、二十段ぐらいの建物の幅の階段の上に、大理石のようなつるつるした石造りで、エンタシスの柱が並び、その奥に大きなカーブを描く壁が見える。
この壁も真っ白だけど石っぽくはないな。正面に立派な彫刻が施された扉が二枚見える。平屋のように見えて、四階建てのギルドと同じぐらいの高さに屋根がある。
世界史の教科書で見た、ギリシャの遺跡にちょっと似ている。
柱の端っこに白い長い裾の服を着たおじいさんが立っていた。
「セレや、その子かい?」
階段を登り切ってからセレが返事をする。
「はい。おはようございます司祭様」
「お、おはようございます」
セレに続いてあいさつしようとして、噛みかけた。緊張するな。
このおじいさん只者じゃない感が、めっちゃする。ギルドマスターも威厳あったけど、ちょっと違う。この人には近寄らない方がいいのかもしれない。ただの直感だけど。
子供になったから?大人が怖いのか?まさかな。とりあえず、自己紹介を。
九十度にお辞儀をしながら、
「初めまして。私の名前はシュンスケと言います。お世話になります」
ふぉふぉふぉ と笑いながら司祭が口を開く。
「おお、なかなかちゃんとしつけされた子供じゃ。どれどれ。おまえさん、かなり遠くから来たんじゃろ」
挨拶しただけだけど、どこまで分かっているのか。
「儂はジラッテ。この教会の司祭をしているよ。
じゃ、この先は儂に任せなさい。セレ、忙しいんじゃろ?」
「はい。お願いします」
セレはぺこりとしてすぐに、ギルドのほうに駆け出した。
「では、行こうかの」
司祭が歩き出す。その後ろをついていく。
久しぶりに手をつながずに歩いたぜ。
白い建物の真っ青な二枚扉。観音開きになっているけれど、その片方をちょっと開けると、もう二人が通れる隙間ができる。それほどにこの扉は大きい。そして、ち密な彫刻が。文字もあるみたいだけど、やっぱり意識して鑑定を起動しないと読めない。
「この教会は、あまたの神様のなかの、海の神 ウォーデン神を祀っている。
この大陸の海岸に沿っていくつかウォーデン神を祀っている教会があるが、ここもその一つじゃな」
なるほど。神様がたくさんいらっしゃると。
入ってきた扉を背にしてまっすぐ歩くと正面に祭壇がある。祭壇にはごつい男神が二メートルの高さの台座の上で半跏思惟ポーズ。長崎の平和公園の方みたいだ。顔はもっと彫が深いけど。
その両側にいくつかの台座だけのような四角いものが並んでいて、絵や文字が彫刻されている。多分鑑定したら読めるんだろうけど、勉強しないと書けるようにならないだろうし。ここは好奇心を抑える。
ウォーデン神の台座にも文字がある。あれがウォーデンと読むんだな。
それぞれの台座の前にお供えが並ぶテーブルがあって、そのさらに前にぼろぼろの座布団のようなものがある。
一つの台座の前で座布団に両ひざをついて熱心にお祈りしている人がいる。
「ウォーデン神以外の神様にもああやってお祈りできるのだ」
「あれは、どの神様を祀っているんですか?」
「あそこはウンディーナ神。水の女神だ」
海の神様と水の神様は別 と。
面白いなぁ。まるで物語の中にいるようだ。あ、異世界の中だ。
「さて、孤児院のほうに行こうかの」
横にあるいくつかの扉の一つをくぐると、だんだん賑やかな声がしてきた。
職場体験で行った保育園のような、子供がはしゃいでいる声だ。
「ここは保育エリア。孤児院の七才までの子が昼に過ごすのと、働きに出ている親の子供を昼だけ預かっているよ」
見れば陽の当たる窓際に十台ぐらいのベビーベッドがあり、二人の女性が世話をしているようだ。
その他は、ただの広い空間で、質素な玩具で座り込んで遊んでいる赤ん坊や、プロレスのような取っ組み合いをしている俺と同じぐらいの背の子供たちがいる。喧嘩ではなさそう。レスリング?
柔道とかもかじってたから、うん、大丈夫だよな。絡まれても。
幼児だけで、ざっと五〇人以上はいるんじゃないか?学校でいえば、二クラスぐらい?一度に面倒見るには多くない?それに、
「男の子が多いんですね」
「本人たちの自主性に任せているんだが。大きめの子は女の子の方がしっかりしているんじゃよ。積極的にお手伝いをしてくれている。冒険者ギルドの手伝いをしたりして、小遣いをためているんじゃよ。
男の子は、大人になってから学習の必要を感じてギルドでしぶしぶ大人の読み書きを学ぶって感じじゃな」
面倒見ているだけで、学習はなしと。
「私にも出来ることはないでしょうか。体が小さいので、何ができるか分かっていないですけど」
手が小さくなってるからなー。
「そうじゃな。大人の勉強会は夜じゃから、昼間はすることはない。この孤児院やギルドの掃除や洗濯、料理の下ごしらえとか、かの」
お、そういうのはバイトでもやってたし、母子家庭だったから家事全般はやってるぞ。
「次はこっちじゃ」
大きな部屋を出る。隣にも大きな部屋があって、食堂みたいだ。背の低いテーブルと椅子が並んでいる。ここなら自分で座れる。うん。
奥にはキッチンとかほかの水回りもありそう。
階段を上がって二階に案内される。音楽が聞こえる。あ、間違えた?同じフレーズがまた聞こえる。
ドアの隙間を見ると大人が練習しているようだ。
「ここは音楽室。祭壇の横にも同じ楽器があったじゃろ」
まじか。気が付かなかったっす。
「教会の祭事には音楽を必要とするものがあって、こちらで練習することができるんじゃ。職員が使わないときで、職員の目があるときは子供が弾いてもええ」
どんな楽器だろう。
「触ってみるか?」
抑えきれない興味を感じ取られてしまった。
「はい」
司祭がノックをして扉をあける。
「練習中にすまんの」
「司祭様。いえ、大丈夫ですよ」
男性が立ち上がる。司祭と同じ白い長い服を着ている。
「ちょっと触らせてやってくれんか」
「はい。いいですよ。その子は?」
「今日からここに来る子じゃ。シュンスケ、この人は助祭のライじゃ。ライ先生と呼びなさい」
「はい。ライ先生。シュンスケと言います。よろしくお願いします」
「ライです。よろしく。
弾いてみる?押せば音が鳴るから簡単だよ?」
そこにあるのはオルガンみたいな楽器だった。背伸びをして見る。
鍵盤がすらっと並んでいて、幅は小学校の教室にあった足踏みオルガンみたい。ピアノより幅が短いけれど、電子オルガンみたいに二段になっているから音域はまあまあ広いんだろう。鍵盤の並び方も馴染みのある。白と黒が逆だけど。
「ライ、後は頼めるかね」
「お任せください」
司祭はライに俺をバトンタッチして、部屋を出て行った。
「じゃあ、座ってみよう」
この椅子は足元に横棒があってよじ登れそうだ。
よじ登って座る。
足元でライがごそごそする。あ、足を載せる台を置いてくれたんだ。ペダルもついてる。やった。
「触っていいですか?」
うなづきを確認して、上の段の左端のドの鍵盤を押す。
「おっ、ドっぽい」
下の段の右側のドの鍵盤を押す。
「同じ音だ」
また上の段に戻って先のドから順番に右へひとつづつ押していく。
そのあと白いけど黒鍵も押さえる。
ああ、馴染みのある音程だ。でも、音はピアノやオルガンと違って、アンプをつなげてないエレキっぽい?
あ、チェンバロってやつかな?で、ピアノみたいに音を響かせたりするペダルがある。
まあ、異世界だし、たまたま似たような楽器ということだろ。
自宅にあった母さんの電子ピアノに、ほかの楽器に音色を変えるボタンがあった。そのボタンに〈チェンバロ〉もあって、ちょっと似てる。
「シュンスケはチェンバロを弾いたことがあるんですか?」
やっぱりチェンバロなんだ。地球のは音楽の教科書の写真とかテレビでしか見たことがないから、細かい仕様が同じか違うか分からないけど。
「いえ、これは初めて見ます」
鍵盤の向こうの機械の中を見る。弦が複雑に並んでいた。
そうして、改めて楽譜を見る。
「うわ」五線だ。初めて理解できるものに出会った!文字はわからなかったけど、これなら分かる。
一応、小学生の時はピアノ教室に行ってたのだ。楽器を弾けると理数系になれるという謎の言葉に踊らされた母さんに通わされた。ま、楽しかったけどね。やめても時々弾いてたし。というか、やめてからのほうがめっちゃ弾いた。やめても、母さんがピアノを残してくれていたからなんだけどね。
で、目の前の楽譜を見る。これなら初見で弾けるかな。今のちっこい手が問題だけど。
「ライ先生。もしかして、これがこの音?」
鍵盤を一つならして、音符を指さす。
「はい」
「そしてこれがこの音?」
「そうですよ」
よっしゃ!ピアノの真ん中らへんの一オクターブが上の段の左と下の段の右にかぶっているだけで、というのは理解できた。
俺は目の前の楽譜の曲をゆっくり弾き始める。オクターブが届かねえ。それに電子ピアノより音が出しにくい。少し力を入れて鍵盤を押す。
右のペダルが音を響かせるってことも分かったので、オクターブの和音をペダルを抑えながらタカっタカっと弾いていく。
神様のための曲は、音数は少ないけれど、荘厳な旋律だが弾きやすくて夢中になってしまった。
そして、見開きで完結する曲を弾き終えてしまった。
「ふう」久しぶりで楽しかった。
「「「わっ」」」
「「「すごーい」」」
気が付くとドアが開いていて三人の女の子がこっちを見て騒ぎ出した。拍手もしてくれる。
ライも拍手中だ。
「上手でした。私よりも。私なんて何度も練習しているのに」
そういえばさっき躓いていたな。
「いえ、初めて見る楽譜なのですごくゆっくりでしたし」
「この曲はゆっくり弾くので合っているんです。
本当に初めてですか?」
「似たような楽器は触ったことがありますけど」
「なるほど」
「ねえねえ、ほかの曲も弾ける?」
女の子の一人がリクエストをくれる。
うーん。両手を広げて自分の小さい手を見る。
この手で弾ける曲。あ、バイエルとかどうだろう。
「じゃあ、一曲だけ」
八〇番なら覚えている。あ、でもこの曲にするんじゃなかった。弾きながら後悔。
二段の鍵盤じゃ右手のクロスが!左手も上なのに。仕方なく左手の下を少しくぐって下の段の鍵盤を弾く。
確かにピアノ曲を二段の電子オルガンで弾くのは無理があったよな。前に楽器屋で遊んだ時に思ったことを忘れていた。
最後の音を弾き終えて、椅子から降りてペコリ。
うん、発表会だな。拍手ありがとう!
「シュンスケっていうの?よろしくね。わたしは、よね」
ヨネ?
ヨネちゃんは白っぽい肌で、黄色の髪だ。金髪?で青い目。
「わたしは ちよ」
チヨ?
チヨちゃんはアジア風の肌質で、黒目黒髪。
チヨとヨネは今の俺ぐらい。
「あたちは まちゅ」
「マツよ」ヨネちゃんが言い直す。
マツは三歳ぐらいかな?まだちょっと舌足らずでかわいい。
マツには黄色からブラウンの髪の毛と猫耳がある。めっちゃ可愛い!あ、縞のしっぽ!
見た目は色々だけど古風な名前の子たち。高校の同級生の曾祖母みたいな響きだな。かえって覚えやすそう。
「よろしく」
「これから、シュンスケを案内するんですよ」
「じゃあいっしょにいこ。つぎはこっちのへやね」
女の子たちもぞろぞろついてきた。ま、暇なんだろう。
「ここは ほんのへや」
確かに本が散らばっている。
でも、散らばってるのは、文字のない絵本ばかりだ。
部屋の違う一角では人形で遊んでいる女の子たちもいた。
男の子もいるけど、一階と違って、この部屋は圧倒的に女の子が多い。
「君たち、ここそのままで音楽室に来たのか?片づけなさい」
「ごめんなさい。すごくきれいなきょくがきこえて」
「確かに、シュンスケは私より上手に弾けてましたからね」
なんかすみません。鍵盤見てテンション上がっちゃって。
そう思いながら、おれも一緒になって本を片付ける。
「これはどこ?」
「これはこっちよ」
本棚ではなくラックかな。表紙を見えるように並べて立てかける。
冊数が少ないな。どの本も結構ボロボロだ。
壁に文字の表が貼ってあって、その前に幾つかの石板セットがある。
「これは、文字の表ですか?」
「そうです。沢山ある文字の中の一番基本になる文字です」
なんか、並び方に見覚えがある。横書きなんだけど。全体的な字数というか・・・。
「このだんが ぼいんなんだよ。これが、あ」
「そしてこれが、い」
おお。続けて。「そして、う、え、お」
一番年上のヨネが得意げに指をさす。
あいうえお もしかして
〈あ〉の下は。
「これは?」
「か」
そのあとも聞くと、衝撃の事実が。
五〇音じゃん。日本語の言葉が通じてるし、文字だけわからない状態?考えてみたら、話し言葉も分からないより全然いけるよね。転移先がこの国で助かったわー。
「じゃあ俺の名前は、〈しゅんすけ〉だな」
石板に書いてみる。
「まあ、そうよ!はじめてかいたの?にしてはすごいきれいなじ」
チヨがほめてくれる。
ひらがな程度の難易度だ。どの文字も二画以内ぐらいで書けるから簡単だ。
「ほんとですね。始めは、線や曲線を描く練習をしないと、文字は書けないですから」
ライが言う。
「違う国の文字は書けますから」
「シュンスケは異国の人だったのですね」
「ええ、すごく遠いんです」
「それは寂しいですね」
そう言ってライが俺の頭を撫でる。この国の大人は頭を撫でるのが好きなのか。
「しゅんすけも、とおくからきたの? あたしもそうなんだよ」
「まちゅ も、まちゅ も」
「まつは となりのむらからきたんでしょ? がいこくじゃないよ」
「でも、とおいもん」
思わずマツの猫耳の頭をモフる。
「ふふ、マツちゃんの足じゃ隣村も遠いな」
「えへへ」
「あら、シュンスケって やさしいおとこのこなのね。めずらしい」
「そうかな。ギルドの男の人は優しかったよ」
「ここの おとこのこは シュンスケ いがい きらい」
「らんぼうだもんね。すぐにたたくし!」
女の子はどの世界もおしゃべりが好きなんだな。
「女の子を叩いちゃだめだね」
うんうん。こんなかわいい子たちを叩くなんて。
「わあ、しゅんすけ。なかよくしてね」
「もちろん。改めて、宜しくね」
そうして握手を試みる。
「よろしく!」ヨネちゃん
「よろしく!」チヨちゃん
「あたちも!」
「なかよくしようね」マツちゃん。言いにくいので、まっちゃん だな。
そうしてひとしきり握手会が終わり、改めてライを見る。
「すみません。ライ先生。続きの案内をお願いします」
ライ先生はくすくす笑いながら、
「はい、行きましょう」
と再び歩き出した。
教会の正面から大きな道がずうっと伸びていて、森や平地の向こうに集落や街のような風景がひろがり、そのさらに向こうの彼方に海が広がっているのが見えた。海までは何十キロもあるだろう。
教会と言われても俺にしたら神殿にみえる。さっきアリサと見に来た時もそう感じた。全体に真っ白で、二十段ぐらいの建物の幅の階段の上に、大理石のようなつるつるした石造りで、エンタシスの柱が並び、その奥に大きなカーブを描く壁が見える。
この壁も真っ白だけど石っぽくはないな。正面に立派な彫刻が施された扉が二枚見える。平屋のように見えて、四階建てのギルドと同じぐらいの高さに屋根がある。
世界史の教科書で見た、ギリシャの遺跡にちょっと似ている。
柱の端っこに白い長い裾の服を着たおじいさんが立っていた。
「セレや、その子かい?」
階段を登り切ってからセレが返事をする。
「はい。おはようございます司祭様」
「お、おはようございます」
セレに続いてあいさつしようとして、噛みかけた。緊張するな。
このおじいさん只者じゃない感が、めっちゃする。ギルドマスターも威厳あったけど、ちょっと違う。この人には近寄らない方がいいのかもしれない。ただの直感だけど。
子供になったから?大人が怖いのか?まさかな。とりあえず、自己紹介を。
九十度にお辞儀をしながら、
「初めまして。私の名前はシュンスケと言います。お世話になります」
ふぉふぉふぉ と笑いながら司祭が口を開く。
「おお、なかなかちゃんとしつけされた子供じゃ。どれどれ。おまえさん、かなり遠くから来たんじゃろ」
挨拶しただけだけど、どこまで分かっているのか。
「儂はジラッテ。この教会の司祭をしているよ。
じゃ、この先は儂に任せなさい。セレ、忙しいんじゃろ?」
「はい。お願いします」
セレはぺこりとしてすぐに、ギルドのほうに駆け出した。
「では、行こうかの」
司祭が歩き出す。その後ろをついていく。
久しぶりに手をつながずに歩いたぜ。
白い建物の真っ青な二枚扉。観音開きになっているけれど、その片方をちょっと開けると、もう二人が通れる隙間ができる。それほどにこの扉は大きい。そして、ち密な彫刻が。文字もあるみたいだけど、やっぱり意識して鑑定を起動しないと読めない。
「この教会は、あまたの神様のなかの、海の神 ウォーデン神を祀っている。
この大陸の海岸に沿っていくつかウォーデン神を祀っている教会があるが、ここもその一つじゃな」
なるほど。神様がたくさんいらっしゃると。
入ってきた扉を背にしてまっすぐ歩くと正面に祭壇がある。祭壇にはごつい男神が二メートルの高さの台座の上で半跏思惟ポーズ。長崎の平和公園の方みたいだ。顔はもっと彫が深いけど。
その両側にいくつかの台座だけのような四角いものが並んでいて、絵や文字が彫刻されている。多分鑑定したら読めるんだろうけど、勉強しないと書けるようにならないだろうし。ここは好奇心を抑える。
ウォーデン神の台座にも文字がある。あれがウォーデンと読むんだな。
それぞれの台座の前にお供えが並ぶテーブルがあって、そのさらに前にぼろぼろの座布団のようなものがある。
一つの台座の前で座布団に両ひざをついて熱心にお祈りしている人がいる。
「ウォーデン神以外の神様にもああやってお祈りできるのだ」
「あれは、どの神様を祀っているんですか?」
「あそこはウンディーナ神。水の女神だ」
海の神様と水の神様は別 と。
面白いなぁ。まるで物語の中にいるようだ。あ、異世界の中だ。
「さて、孤児院のほうに行こうかの」
横にあるいくつかの扉の一つをくぐると、だんだん賑やかな声がしてきた。
職場体験で行った保育園のような、子供がはしゃいでいる声だ。
「ここは保育エリア。孤児院の七才までの子が昼に過ごすのと、働きに出ている親の子供を昼だけ預かっているよ」
見れば陽の当たる窓際に十台ぐらいのベビーベッドがあり、二人の女性が世話をしているようだ。
その他は、ただの広い空間で、質素な玩具で座り込んで遊んでいる赤ん坊や、プロレスのような取っ組み合いをしている俺と同じぐらいの背の子供たちがいる。喧嘩ではなさそう。レスリング?
柔道とかもかじってたから、うん、大丈夫だよな。絡まれても。
幼児だけで、ざっと五〇人以上はいるんじゃないか?学校でいえば、二クラスぐらい?一度に面倒見るには多くない?それに、
「男の子が多いんですね」
「本人たちの自主性に任せているんだが。大きめの子は女の子の方がしっかりしているんじゃよ。積極的にお手伝いをしてくれている。冒険者ギルドの手伝いをしたりして、小遣いをためているんじゃよ。
男の子は、大人になってから学習の必要を感じてギルドでしぶしぶ大人の読み書きを学ぶって感じじゃな」
面倒見ているだけで、学習はなしと。
「私にも出来ることはないでしょうか。体が小さいので、何ができるか分かっていないですけど」
手が小さくなってるからなー。
「そうじゃな。大人の勉強会は夜じゃから、昼間はすることはない。この孤児院やギルドの掃除や洗濯、料理の下ごしらえとか、かの」
お、そういうのはバイトでもやってたし、母子家庭だったから家事全般はやってるぞ。
「次はこっちじゃ」
大きな部屋を出る。隣にも大きな部屋があって、食堂みたいだ。背の低いテーブルと椅子が並んでいる。ここなら自分で座れる。うん。
奥にはキッチンとかほかの水回りもありそう。
階段を上がって二階に案内される。音楽が聞こえる。あ、間違えた?同じフレーズがまた聞こえる。
ドアの隙間を見ると大人が練習しているようだ。
「ここは音楽室。祭壇の横にも同じ楽器があったじゃろ」
まじか。気が付かなかったっす。
「教会の祭事には音楽を必要とするものがあって、こちらで練習することができるんじゃ。職員が使わないときで、職員の目があるときは子供が弾いてもええ」
どんな楽器だろう。
「触ってみるか?」
抑えきれない興味を感じ取られてしまった。
「はい」
司祭がノックをして扉をあける。
「練習中にすまんの」
「司祭様。いえ、大丈夫ですよ」
男性が立ち上がる。司祭と同じ白い長い服を着ている。
「ちょっと触らせてやってくれんか」
「はい。いいですよ。その子は?」
「今日からここに来る子じゃ。シュンスケ、この人は助祭のライじゃ。ライ先生と呼びなさい」
「はい。ライ先生。シュンスケと言います。よろしくお願いします」
「ライです。よろしく。
弾いてみる?押せば音が鳴るから簡単だよ?」
そこにあるのはオルガンみたいな楽器だった。背伸びをして見る。
鍵盤がすらっと並んでいて、幅は小学校の教室にあった足踏みオルガンみたい。ピアノより幅が短いけれど、電子オルガンみたいに二段になっているから音域はまあまあ広いんだろう。鍵盤の並び方も馴染みのある。白と黒が逆だけど。
「ライ、後は頼めるかね」
「お任せください」
司祭はライに俺をバトンタッチして、部屋を出て行った。
「じゃあ、座ってみよう」
この椅子は足元に横棒があってよじ登れそうだ。
よじ登って座る。
足元でライがごそごそする。あ、足を載せる台を置いてくれたんだ。ペダルもついてる。やった。
「触っていいですか?」
うなづきを確認して、上の段の左端のドの鍵盤を押す。
「おっ、ドっぽい」
下の段の右側のドの鍵盤を押す。
「同じ音だ」
また上の段に戻って先のドから順番に右へひとつづつ押していく。
そのあと白いけど黒鍵も押さえる。
ああ、馴染みのある音程だ。でも、音はピアノやオルガンと違って、アンプをつなげてないエレキっぽい?
あ、チェンバロってやつかな?で、ピアノみたいに音を響かせたりするペダルがある。
まあ、異世界だし、たまたま似たような楽器ということだろ。
自宅にあった母さんの電子ピアノに、ほかの楽器に音色を変えるボタンがあった。そのボタンに〈チェンバロ〉もあって、ちょっと似てる。
「シュンスケはチェンバロを弾いたことがあるんですか?」
やっぱりチェンバロなんだ。地球のは音楽の教科書の写真とかテレビでしか見たことがないから、細かい仕様が同じか違うか分からないけど。
「いえ、これは初めて見ます」
鍵盤の向こうの機械の中を見る。弦が複雑に並んでいた。
そうして、改めて楽譜を見る。
「うわ」五線だ。初めて理解できるものに出会った!文字はわからなかったけど、これなら分かる。
一応、小学生の時はピアノ教室に行ってたのだ。楽器を弾けると理数系になれるという謎の言葉に踊らされた母さんに通わされた。ま、楽しかったけどね。やめても時々弾いてたし。というか、やめてからのほうがめっちゃ弾いた。やめても、母さんがピアノを残してくれていたからなんだけどね。
で、目の前の楽譜を見る。これなら初見で弾けるかな。今のちっこい手が問題だけど。
「ライ先生。もしかして、これがこの音?」
鍵盤を一つならして、音符を指さす。
「はい」
「そしてこれがこの音?」
「そうですよ」
よっしゃ!ピアノの真ん中らへんの一オクターブが上の段の左と下の段の右にかぶっているだけで、というのは理解できた。
俺は目の前の楽譜の曲をゆっくり弾き始める。オクターブが届かねえ。それに電子ピアノより音が出しにくい。少し力を入れて鍵盤を押す。
右のペダルが音を響かせるってことも分かったので、オクターブの和音をペダルを抑えながらタカっタカっと弾いていく。
神様のための曲は、音数は少ないけれど、荘厳な旋律だが弾きやすくて夢中になってしまった。
そして、見開きで完結する曲を弾き終えてしまった。
「ふう」久しぶりで楽しかった。
「「「わっ」」」
「「「すごーい」」」
気が付くとドアが開いていて三人の女の子がこっちを見て騒ぎ出した。拍手もしてくれる。
ライも拍手中だ。
「上手でした。私よりも。私なんて何度も練習しているのに」
そういえばさっき躓いていたな。
「いえ、初めて見る楽譜なのですごくゆっくりでしたし」
「この曲はゆっくり弾くので合っているんです。
本当に初めてですか?」
「似たような楽器は触ったことがありますけど」
「なるほど」
「ねえねえ、ほかの曲も弾ける?」
女の子の一人がリクエストをくれる。
うーん。両手を広げて自分の小さい手を見る。
この手で弾ける曲。あ、バイエルとかどうだろう。
「じゃあ、一曲だけ」
八〇番なら覚えている。あ、でもこの曲にするんじゃなかった。弾きながら後悔。
二段の鍵盤じゃ右手のクロスが!左手も上なのに。仕方なく左手の下を少しくぐって下の段の鍵盤を弾く。
確かにピアノ曲を二段の電子オルガンで弾くのは無理があったよな。前に楽器屋で遊んだ時に思ったことを忘れていた。
最後の音を弾き終えて、椅子から降りてペコリ。
うん、発表会だな。拍手ありがとう!
「シュンスケっていうの?よろしくね。わたしは、よね」
ヨネ?
ヨネちゃんは白っぽい肌で、黄色の髪だ。金髪?で青い目。
「わたしは ちよ」
チヨ?
チヨちゃんはアジア風の肌質で、黒目黒髪。
チヨとヨネは今の俺ぐらい。
「あたちは まちゅ」
「マツよ」ヨネちゃんが言い直す。
マツは三歳ぐらいかな?まだちょっと舌足らずでかわいい。
マツには黄色からブラウンの髪の毛と猫耳がある。めっちゃ可愛い!あ、縞のしっぽ!
見た目は色々だけど古風な名前の子たち。高校の同級生の曾祖母みたいな響きだな。かえって覚えやすそう。
「よろしく」
「これから、シュンスケを案内するんですよ」
「じゃあいっしょにいこ。つぎはこっちのへやね」
女の子たちもぞろぞろついてきた。ま、暇なんだろう。
「ここは ほんのへや」
確かに本が散らばっている。
でも、散らばってるのは、文字のない絵本ばかりだ。
部屋の違う一角では人形で遊んでいる女の子たちもいた。
男の子もいるけど、一階と違って、この部屋は圧倒的に女の子が多い。
「君たち、ここそのままで音楽室に来たのか?片づけなさい」
「ごめんなさい。すごくきれいなきょくがきこえて」
「確かに、シュンスケは私より上手に弾けてましたからね」
なんかすみません。鍵盤見てテンション上がっちゃって。
そう思いながら、おれも一緒になって本を片付ける。
「これはどこ?」
「これはこっちよ」
本棚ではなくラックかな。表紙を見えるように並べて立てかける。
冊数が少ないな。どの本も結構ボロボロだ。
壁に文字の表が貼ってあって、その前に幾つかの石板セットがある。
「これは、文字の表ですか?」
「そうです。沢山ある文字の中の一番基本になる文字です」
なんか、並び方に見覚えがある。横書きなんだけど。全体的な字数というか・・・。
「このだんが ぼいんなんだよ。これが、あ」
「そしてこれが、い」
おお。続けて。「そして、う、え、お」
一番年上のヨネが得意げに指をさす。
あいうえお もしかして
〈あ〉の下は。
「これは?」
「か」
そのあとも聞くと、衝撃の事実が。
五〇音じゃん。日本語の言葉が通じてるし、文字だけわからない状態?考えてみたら、話し言葉も分からないより全然いけるよね。転移先がこの国で助かったわー。
「じゃあ俺の名前は、〈しゅんすけ〉だな」
石板に書いてみる。
「まあ、そうよ!はじめてかいたの?にしてはすごいきれいなじ」
チヨがほめてくれる。
ひらがな程度の難易度だ。どの文字も二画以内ぐらいで書けるから簡単だ。
「ほんとですね。始めは、線や曲線を描く練習をしないと、文字は書けないですから」
ライが言う。
「違う国の文字は書けますから」
「シュンスケは異国の人だったのですね」
「ええ、すごく遠いんです」
「それは寂しいですね」
そう言ってライが俺の頭を撫でる。この国の大人は頭を撫でるのが好きなのか。
「しゅんすけも、とおくからきたの? あたしもそうなんだよ」
「まちゅ も、まちゅ も」
「まつは となりのむらからきたんでしょ? がいこくじゃないよ」
「でも、とおいもん」
思わずマツの猫耳の頭をモフる。
「ふふ、マツちゃんの足じゃ隣村も遠いな」
「えへへ」
「あら、シュンスケって やさしいおとこのこなのね。めずらしい」
「そうかな。ギルドの男の人は優しかったよ」
「ここの おとこのこは シュンスケ いがい きらい」
「らんぼうだもんね。すぐにたたくし!」
女の子はどの世界もおしゃべりが好きなんだな。
「女の子を叩いちゃだめだね」
うんうん。こんなかわいい子たちを叩くなんて。
「わあ、しゅんすけ。なかよくしてね」
「もちろん。改めて、宜しくね」
そうして握手を試みる。
「よろしく!」ヨネちゃん
「よろしく!」チヨちゃん
「あたちも!」
「なかよくしようね」マツちゃん。言いにくいので、まっちゃん だな。
そうしてひとしきり握手会が終わり、改めてライを見る。
「すみません。ライ先生。続きの案内をお願いします」
ライ先生はくすくす笑いながら、
「はい、行きましょう」
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しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
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『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
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