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第三章 ~王子の旅・セントラル記~
〈118〉サバンナへの入り口
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我ながら反則も含まれている気もするけど、何とか、学園二年生の前期の単位をもぎ取れた俺は、安心して旅に戻る。
「寒くない?まつ」
「うん、だんだん、あたたかくなってきた、というよりあちゅい」
『ちょっと南になったからねえ』
俺たちは、とっくに冬の装いを脱いで、というか、初夏の服装だ。
もしもの虫刺されや草によるかぶれに備えて、脚はガッチリ長ズボンを履いているが、トップスは半袖のシャツだ。冬物は浄化魔法をかけてアイテムボックスに収納済み。
トルネキ王国に入国した俺たちは、意気揚々と街道をゆく。
パカリパカリと、ハロルドでの乗馬を楽しんでる。
空気が気温も上がってきたが、空気が乾いているのか、からりとしている。
周りは岩場で、圧倒的に背の高い草が多くなってきて、葉っぱの少ない木がぽつりぽつり生えている。
だんだん、周りを行く人の種類が変わってくる。人間族が減ってきた。
だから、マツもずっと猫耳と尻尾を出したままだ。
でも、エルフもいないんだよな。まあいいか。俺は黒い日本人状態にエルフの耳だけの形だ。クリスみたいなハーフエルフっぽいかな。周りの人たちにも大きな耳があるから、こっちの方が目立たない。
一応マツにお願いしているのは、俺が黒髪の時は「お兄ちゃん」と呼んでもらうことにしている。
「そこに、つのがながい人がいるよ。ほそながい」
「ほんとだ、顔立ちはエルフっぽいなあ」
『あれは、インパラ族だね』
「へえ、言われてみれば鹿と言うか細い牛?」
『そうそう。王様はインパラ族に変身するのが得意なんだよ』
「なんですと!」
どうやって、そんな全然違う姿になれるんだよ。
さすが、年の功というか・・・そのやり方を教えてほしいぜ。
ゾクリ
なんだ?
「あ、もんがみえてきた」
『ついたね~』
「ほんとだ」
トルネキ王国で初めに滞在する街、〈カウバンド〉に着いた。
門に入るときにいつものように人差し指に口を当てながら、身分証を見せる。
「はい、大丈夫です。ようこそカウバンドへ」
トルネキ王国の門番達はゴージャスな灰色の混じった金色の狼人族、具体的には金狼族系の兵士だ。マツみたいなケモ耳の人と顔立ちや髪がウルフっぽい人がいるけど、お揃いの兵士の服を着て腰に剣を下げている。ガスマニアは冒険者交じりの緩い門番だけど、全然違う。
ここに来るまでの町も、おまわりさんのように統率の取れた兵士が警らをしていた。
すこし、ピリピリしてるぐらいだ。
その門番が俺に話しかけてきた。
「少し良いですか?こちらに、その・・・ハロルド様ですよねはそちらでお待ちください」
『はーい』
と言って、マツと共に小部屋に連れていかれた。
「シュバイツ殿下、今この街から王都までの、比較的大きな街で、子供が行方不明になる事件が起こっております。きょう冒険者ギルドへ宿泊されるのでしたら、このまま私がお連れして、子供だけでギルドの外へ出ることが無いようにお願いしたいのです」
それで、街中の兵士がピリピリしていたのか。
話を聞きながら、俺は精霊ちゃん達に指示を出す。
“みんなも情報を集めてきて~”
“はーい”
“わかったぜ”
「もう少し詳しく聞いてもいいですか?」
「はい。行方が分からなくなっている子供は、乳幼児から十歳ぐらいまでです。種族・性別を問わず、身なりなども関係ないのです」
携帯を出すまでもなく、冒険者用のタグの時計では十五時となっている。
チェックインには丁度良い時間でもある。
「わかりました。よろしくお願いします」
「おねがいしましゅ」
マツもお辞儀。
門の内側で他の兵士がハロルドと話し中だった。
『あ、おうじ。なんだか大変なんだってね』
「らしいな」
俺とマツはハロルドに乗り、一緒に出て来た金狼の兵士がハロルドの手綱を持って歩きだす。
「まあ、殿下はハロルド様もいらっしゃるし、殿下自身のスキルもありますから、心配はないとはわかるんですけど、他からの目もありますし、子供だけで歩いていただきたくないのです。ご不便をおかけしますけど」
「いえ、大丈夫ですよ。丁寧に対応していただいて、こちらも助かります。ね?マツ」
「うん、おにいちゃん」
「もともと、ガスマニアでもそうかもしれないですけど、子供は攫われやすいのです」
たしかに、それがもとでクリスと出会った記憶はある。しかし、あの時は吸血鬼の餌集めと言うか・・・・。あの、エゴンって奴を吸血鬼に変えた元の吸血鬼がどこかにいるのだろうか、また、別の問題かな。
地球でも、日本は比較的安全だったけど、それ以外は子供が一人で歩くことが出来なかったしな。どの世界でもそうだ。
「おうじ、ぎるどがみえてきた。人がいっぱいいる」
「なんだろう」
見れば葉書ぐらいの紙を道行く人や冒険者にそれぞれ渡そうとしている。
「あれは、我が子の似顔絵とその子が、見つかったら連絡してくれと書いているのです」
ああ、幼い子供を見失った親はそうせずにはいられないよね。
「しかし、以前はその行為も危険をはらんでいて、偽情報を持ち込んで、弱っている親に付け込んで金品を要求したり」
「うわ、でもそれは誘拐した人とは別なんでしょう?」
「はい、ですから今は、似顔絵らしい子が見つかったらギルドをはさんで情報提供することになっております」
「なら、直接のトラブルは減ったということですね」
「はい、ですが消えた子供は一向に見つからないのです」
冒険者ギルドに着いた俺は、金狼の兵士にガードされたままチェックインをする。
「では、私はこれで」
「「ありがとうございました」」
冒険者ギルドの受付カウンターは、冒険者活動用と、ホテルや短期間の宿舎の受付は別になっている。だから、依頼達成から戻ってきた冒険者とは別に扱ってもらえる。
「シュバイツ様、鍵はこちらです。食事はお部屋にお持ちしますので、ここで注文していってください」
受付のお姉さんが申し訳ない顔でメニュー表を差し出す。
「え?今、晩御飯を決めておくのですか?」
「はい」
「じゃあ、どれにしようか、ねえマツ。
うん?まっちゃん?どうした?」
手が繋げないときは服の裾を持ってくれている猫むすめを見る。
「ねえ、あそこのかべ、ぜんぶ・・・」
「そうだな、子供の似顔絵ばっかりだ」
普通、似顔絵と言えば、犯罪者の指名手配と決まっているが、ここはさっき外で配っていたビラと同じものなのだろうか、子供の顔ばかりだ。
「お姉さん、ホテルじゃなくて宿舎の方を一泊借りれますか?」
そっちだとキッチンがあるから食事は不要だしね。
「わかりました、えっとではこちらの方のカギを」
「ありがとう。あの、子供が居なくなっているのはこの街だけですか?」
「他の街でも普通に子供はいなくなりますけど、この街ほどひどいのはないでしょう」
子どもがいなくなるのが普通って・・・怖いぜ。
カウンターから宿舎へ続く通路までは少し距離がある。俺は緊張しているマツと手を繋ぎながら、子供の顔が貼られている掲示板を見る。
種族はばらばらだが・・・!
「マツ、ここに・・・」
「あたし?でもちょっとおねえちゃん?」
「ちょっと似てるかも」
マツにそっくりな猫人族の掲示板が貼ってあった。
俺はスマホでその紙を記録しておく。
白黒の似顔絵で特徴は文字で書き出してあった。
黄色と茶のトラ縞であること、猫人族ミックスであること
その特徴はマツと一緒。
そして、年齢が八歳の女の子だった。
もしかして、これはマツの身内を探す手がかりになるのかもしれない。
冒険者ギルドの宿舎の方に行く。
ここは、俺が初めてポリゴンで暮らした、ウリアゴが借りていたテラスハウスに似ている。
あれは2DKだったが、ここは1DKだけどね。
まあ、ちょうどいいや。
「あら、可愛いお隣さんね」
「こんにちは」
「こんちわ」
いかにも魔女というか、占い師?って感じの妖艶なお姉さんが俺たちの後ろを通って隣に鍵を差し込んでいる。
学園のリフモル先生を思い出しちゃった。
「お父さんかお母さんと一緒?にしてはその部屋は狭いけど?」
「まあ、そうですね。節約ですよ」
あえて、大人がいないとは言わない。こんな時だからね。
バタン、部屋に入るとマツが窓を開けに動く。
「このへや、おっちゃんくさーい」
「ははは」
俺は寝具も含めて浄化魔法を一気にかけていく。
「先にシャワーどうぞ」
“お、てつだうぜ”
“あたしも”
「おうじも、みんなもありがと」
“まかせろ♪”
うん、二人旅って感じがないんだよね。
マツがシャワーを使っている間に俺はアイテムボックスから、塩おにぎり三つと、ケチャップ、卵、刻んであるオークのハムとミックスベジタブルを出す。
おにぎりを崩して作るオムライス。美味いんだよこれが。
実は俺達、お昼がお菓子だったから、これから晩御飯を兼ねた昼飯だ。
「シャワーでたよ。つづきはまちゅがするから、こうたい」
「じゃあお皿だけ出しとく」
「はーい」
備え付けられているテーブルセットの真ん中に小さなコップを置いて魔法で出した水を満たし、そこへアイテムボックスから黄色と白のバラを飾る。
マツ用にコンロの前に台を置いて、エプロンの後ろを結んでやる。
「いいか、誰が来てもドアを開けちゃだめだよ」
「うん」
「みんなも頼んだよ」
“まつはあたしがまもる”
黄色ちゃんカッコいい!
“もちろんわたしも まもるわよ”
紫色ちゃんはもともとカッコいい系だ。
狭いダイニングでマツとご飯。ふふ、リアルおままごとだな。
“おうじ、このまちには、こどもは、ほかのまちにくらべたら、めちゃくちゃすくない”
“あかちゃんはいる”
“こじいんにはたくさんいる”
“おおきなこどもはいる”
精霊ちゃん達から情報が入ってきた。
“大きな街に連れていかれたのかな”
“その、かのうせいはあるわね”
「どうしたの?おうじ」
「悩み中」
「さっきの、こどもの?」
「うん」
「くりすお兄ちゃんや、あいらたちのときみたいにできそ?」
「それがなあ、ここいらにはいないみたい」
“ここのきょうかいには、ちかがあるわ”
またか
“そこには、なにかある?”
“あなしか、ないわ”
“そのさきには・・・いけないわね”
“なあに?ほんと、いけない!”
“とおれなーい”
精霊たちが通れないって何だろう。
「寒くない?まつ」
「うん、だんだん、あたたかくなってきた、というよりあちゅい」
『ちょっと南になったからねえ』
俺たちは、とっくに冬の装いを脱いで、というか、初夏の服装だ。
もしもの虫刺されや草によるかぶれに備えて、脚はガッチリ長ズボンを履いているが、トップスは半袖のシャツだ。冬物は浄化魔法をかけてアイテムボックスに収納済み。
トルネキ王国に入国した俺たちは、意気揚々と街道をゆく。
パカリパカリと、ハロルドでの乗馬を楽しんでる。
空気が気温も上がってきたが、空気が乾いているのか、からりとしている。
周りは岩場で、圧倒的に背の高い草が多くなってきて、葉っぱの少ない木がぽつりぽつり生えている。
だんだん、周りを行く人の種類が変わってくる。人間族が減ってきた。
だから、マツもずっと猫耳と尻尾を出したままだ。
でも、エルフもいないんだよな。まあいいか。俺は黒い日本人状態にエルフの耳だけの形だ。クリスみたいなハーフエルフっぽいかな。周りの人たちにも大きな耳があるから、こっちの方が目立たない。
一応マツにお願いしているのは、俺が黒髪の時は「お兄ちゃん」と呼んでもらうことにしている。
「そこに、つのがながい人がいるよ。ほそながい」
「ほんとだ、顔立ちはエルフっぽいなあ」
『あれは、インパラ族だね』
「へえ、言われてみれば鹿と言うか細い牛?」
『そうそう。王様はインパラ族に変身するのが得意なんだよ』
「なんですと!」
どうやって、そんな全然違う姿になれるんだよ。
さすが、年の功というか・・・そのやり方を教えてほしいぜ。
ゾクリ
なんだ?
「あ、もんがみえてきた」
『ついたね~』
「ほんとだ」
トルネキ王国で初めに滞在する街、〈カウバンド〉に着いた。
門に入るときにいつものように人差し指に口を当てながら、身分証を見せる。
「はい、大丈夫です。ようこそカウバンドへ」
トルネキ王国の門番達はゴージャスな灰色の混じった金色の狼人族、具体的には金狼族系の兵士だ。マツみたいなケモ耳の人と顔立ちや髪がウルフっぽい人がいるけど、お揃いの兵士の服を着て腰に剣を下げている。ガスマニアは冒険者交じりの緩い門番だけど、全然違う。
ここに来るまでの町も、おまわりさんのように統率の取れた兵士が警らをしていた。
すこし、ピリピリしてるぐらいだ。
その門番が俺に話しかけてきた。
「少し良いですか?こちらに、その・・・ハロルド様ですよねはそちらでお待ちください」
『はーい』
と言って、マツと共に小部屋に連れていかれた。
「シュバイツ殿下、今この街から王都までの、比較的大きな街で、子供が行方不明になる事件が起こっております。きょう冒険者ギルドへ宿泊されるのでしたら、このまま私がお連れして、子供だけでギルドの外へ出ることが無いようにお願いしたいのです」
それで、街中の兵士がピリピリしていたのか。
話を聞きながら、俺は精霊ちゃん達に指示を出す。
“みんなも情報を集めてきて~”
“はーい”
“わかったぜ”
「もう少し詳しく聞いてもいいですか?」
「はい。行方が分からなくなっている子供は、乳幼児から十歳ぐらいまでです。種族・性別を問わず、身なりなども関係ないのです」
携帯を出すまでもなく、冒険者用のタグの時計では十五時となっている。
チェックインには丁度良い時間でもある。
「わかりました。よろしくお願いします」
「おねがいしましゅ」
マツもお辞儀。
門の内側で他の兵士がハロルドと話し中だった。
『あ、おうじ。なんだか大変なんだってね』
「らしいな」
俺とマツはハロルドに乗り、一緒に出て来た金狼の兵士がハロルドの手綱を持って歩きだす。
「まあ、殿下はハロルド様もいらっしゃるし、殿下自身のスキルもありますから、心配はないとはわかるんですけど、他からの目もありますし、子供だけで歩いていただきたくないのです。ご不便をおかけしますけど」
「いえ、大丈夫ですよ。丁寧に対応していただいて、こちらも助かります。ね?マツ」
「うん、おにいちゃん」
「もともと、ガスマニアでもそうかもしれないですけど、子供は攫われやすいのです」
たしかに、それがもとでクリスと出会った記憶はある。しかし、あの時は吸血鬼の餌集めと言うか・・・・。あの、エゴンって奴を吸血鬼に変えた元の吸血鬼がどこかにいるのだろうか、また、別の問題かな。
地球でも、日本は比較的安全だったけど、それ以外は子供が一人で歩くことが出来なかったしな。どの世界でもそうだ。
「おうじ、ぎるどがみえてきた。人がいっぱいいる」
「なんだろう」
見れば葉書ぐらいの紙を道行く人や冒険者にそれぞれ渡そうとしている。
「あれは、我が子の似顔絵とその子が、見つかったら連絡してくれと書いているのです」
ああ、幼い子供を見失った親はそうせずにはいられないよね。
「しかし、以前はその行為も危険をはらんでいて、偽情報を持ち込んで、弱っている親に付け込んで金品を要求したり」
「うわ、でもそれは誘拐した人とは別なんでしょう?」
「はい、ですから今は、似顔絵らしい子が見つかったらギルドをはさんで情報提供することになっております」
「なら、直接のトラブルは減ったということですね」
「はい、ですが消えた子供は一向に見つからないのです」
冒険者ギルドに着いた俺は、金狼の兵士にガードされたままチェックインをする。
「では、私はこれで」
「「ありがとうございました」」
冒険者ギルドの受付カウンターは、冒険者活動用と、ホテルや短期間の宿舎の受付は別になっている。だから、依頼達成から戻ってきた冒険者とは別に扱ってもらえる。
「シュバイツ様、鍵はこちらです。食事はお部屋にお持ちしますので、ここで注文していってください」
受付のお姉さんが申し訳ない顔でメニュー表を差し出す。
「え?今、晩御飯を決めておくのですか?」
「はい」
「じゃあ、どれにしようか、ねえマツ。
うん?まっちゃん?どうした?」
手が繋げないときは服の裾を持ってくれている猫むすめを見る。
「ねえ、あそこのかべ、ぜんぶ・・・」
「そうだな、子供の似顔絵ばっかりだ」
普通、似顔絵と言えば、犯罪者の指名手配と決まっているが、ここはさっき外で配っていたビラと同じものなのだろうか、子供の顔ばかりだ。
「お姉さん、ホテルじゃなくて宿舎の方を一泊借りれますか?」
そっちだとキッチンがあるから食事は不要だしね。
「わかりました、えっとではこちらの方のカギを」
「ありがとう。あの、子供が居なくなっているのはこの街だけですか?」
「他の街でも普通に子供はいなくなりますけど、この街ほどひどいのはないでしょう」
子どもがいなくなるのが普通って・・・怖いぜ。
カウンターから宿舎へ続く通路までは少し距離がある。俺は緊張しているマツと手を繋ぎながら、子供の顔が貼られている掲示板を見る。
種族はばらばらだが・・・!
「マツ、ここに・・・」
「あたし?でもちょっとおねえちゃん?」
「ちょっと似てるかも」
マツにそっくりな猫人族の掲示板が貼ってあった。
俺はスマホでその紙を記録しておく。
白黒の似顔絵で特徴は文字で書き出してあった。
黄色と茶のトラ縞であること、猫人族ミックスであること
その特徴はマツと一緒。
そして、年齢が八歳の女の子だった。
もしかして、これはマツの身内を探す手がかりになるのかもしれない。
冒険者ギルドの宿舎の方に行く。
ここは、俺が初めてポリゴンで暮らした、ウリアゴが借りていたテラスハウスに似ている。
あれは2DKだったが、ここは1DKだけどね。
まあ、ちょうどいいや。
「あら、可愛いお隣さんね」
「こんにちは」
「こんちわ」
いかにも魔女というか、占い師?って感じの妖艶なお姉さんが俺たちの後ろを通って隣に鍵を差し込んでいる。
学園のリフモル先生を思い出しちゃった。
「お父さんかお母さんと一緒?にしてはその部屋は狭いけど?」
「まあ、そうですね。節約ですよ」
あえて、大人がいないとは言わない。こんな時だからね。
バタン、部屋に入るとマツが窓を開けに動く。
「このへや、おっちゃんくさーい」
「ははは」
俺は寝具も含めて浄化魔法を一気にかけていく。
「先にシャワーどうぞ」
“お、てつだうぜ”
“あたしも”
「おうじも、みんなもありがと」
“まかせろ♪”
うん、二人旅って感じがないんだよね。
マツがシャワーを使っている間に俺はアイテムボックスから、塩おにぎり三つと、ケチャップ、卵、刻んであるオークのハムとミックスベジタブルを出す。
おにぎりを崩して作るオムライス。美味いんだよこれが。
実は俺達、お昼がお菓子だったから、これから晩御飯を兼ねた昼飯だ。
「シャワーでたよ。つづきはまちゅがするから、こうたい」
「じゃあお皿だけ出しとく」
「はーい」
備え付けられているテーブルセットの真ん中に小さなコップを置いて魔法で出した水を満たし、そこへアイテムボックスから黄色と白のバラを飾る。
マツ用にコンロの前に台を置いて、エプロンの後ろを結んでやる。
「いいか、誰が来てもドアを開けちゃだめだよ」
「うん」
「みんなも頼んだよ」
“まつはあたしがまもる”
黄色ちゃんカッコいい!
“もちろんわたしも まもるわよ”
紫色ちゃんはもともとカッコいい系だ。
狭いダイニングでマツとご飯。ふふ、リアルおままごとだな。
“おうじ、このまちには、こどもは、ほかのまちにくらべたら、めちゃくちゃすくない”
“あかちゃんはいる”
“こじいんにはたくさんいる”
“おおきなこどもはいる”
精霊ちゃん達から情報が入ってきた。
“大きな街に連れていかれたのかな”
“その、かのうせいはあるわね”
「どうしたの?おうじ」
「悩み中」
「さっきの、こどもの?」
「うん」
「くりすお兄ちゃんや、あいらたちのときみたいにできそ?」
「それがなあ、ここいらにはいないみたい」
“ここのきょうかいには、ちかがあるわ”
またか
“そこには、なにかある?”
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