父親に売られた兄は夕闇に翻弄される

miian

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プロローグ

狂った日常※

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「父さん、もうやめようよ……。お願いだから……もうこんなことやめようよ……」


 ずっと住み慣れた家。ボロボロだけど楽しい思い出が詰まっていたはずのこの場所にその面影はもう残っていなかった。目の前には自分よりも少し年上で黒髪の真面目そうな男の人が立っている。でも、その人の視線はこちらを上から下までジロジロと品定めするように見て、最後は満足そうにニヤリと笑い、舌なめずりをした。


(もう嫌だ……誰か……誰か助けて……)


 心で叫ぶのに声に出すことは出来ない。もう何度目の行為だろうか?いつからか数えることはやめた。目をつぶり、心を殺せばはすぐに終わる。そう言い聞かせて耐え忍んできた。


(今日も早く終わらせよう……)


 汚された部屋でぎゅっと拳を握ると、目の前の男が一歩近づいた。傍にいる父がいつものように「始めろ」と言った。先ほどの俺の言葉など何もなかったかのような振る舞いだ。諦めて服を一枚ずつ取り去り、床へと捨てた。

 父は黙って見ている。

 男がこちらへと近づき、露わになった腕を掴んだ。その触れられた場所が泡立つような不快感に包まれた。反射的に振りほどこうとするのをぐっと我慢する。先ほどは真面目そうと表現したが、こうやってこの場所にいる時点で真面目ではないのは確かだ。

 男はそのまま床に敷かれた薄い布団へと俺を押し倒すと、自身も脱ぎ始めた。綺麗に割れた腹筋に微かに香る香水。今日は当たりで良かったと肩を撫でおろした。

 男は俺に口づけをし、乳首へと舌を這わせる。ふと男の耳を見ると先ほどは気付かなかったが、いくつものピアス穴が開いていた。どこが真面目そうだ。自分の見る目のなさに嫌気がさした。

 男の興奮したペニスがお腹にあたる。さっさと挿れてくれれば早く終わることができるのに、今日の男は挿れずに乳首を弄ぶばかりだ。さんざん色々な人に躾けられた乳首はすぐに芯を持ち硬くなった。そしてそれと同じように自身のペニスも。

 男が耳元で「下品な身体だね」とあざ笑った。


「い、た……」


 俺がキッと睨むと、男は乳首をガチっと強く噛んだ。もう一度、男は深く噛み、呻き声をあげた。

 
「自慰して勃たせて」


 痛みで俺のペニスが萎えると、男はそう命令した。チラッと父を見るも助けてくれる気配はない。誰も手を差し伸べてくれないこの状況から逃げ出したいが、逃げ場なんてない。諦めて自身のペニスに手を伸ばした。


「おい、早くしろ」


 父に、男に、見られながらペニスを握って上下に動かす。抵抗すれば父に殴られる。だから、早くしないと……。でも、急げば急ぐほど自身のモノは兆す気配はなく、焦りだけが先立つ。


「んっ、あっ……」


 焦ってしごいていると、男が「しょうがない子だね」と言って、股に頭をうずめてペニスを口に含んだ。ぬめりとした感覚。反応したくないのに、いとも簡単にペニスは反応し、硬くなる。

 俺のペニスが硬くなったことに満足した男は、穴へと手を伸ばした。いつも事前に準備はしているものの、男は指に唾液を垂らして丁寧に解した。何度も何度も中をなぞられ、ぞわぞわした感覚に腰を揺らすと、男は笑った。


「あっ、あっ……」


 男のペニスが中へと入り、穴を塞ぐ。男のモノは大きくて圧迫感があり、口でゆっくりと呼吸する。この行為に痛みはもうほとんど感じなくなっていた。それでも、慣れたくなくて、早く終わるようにぎゅっと目をつぶった。

「ダメだよ、目を閉じちゃ。こっちを見て」

 男はそう言うと俺の首に手を置いた。まるで首を絞めるような仕草。そこに力を込められることはないが、脅しとしては有効で目を開いた。男は満足そうに微笑むと腰を動かし始めた。


「んんっ、あっ……あっ……」


 男が激しく腰を振る度に視界が揺れる。その時、父と目が合った。何も言わずにじっと傍で見ている。


(なんて異様な光景なんだろう……)


 父と目が合い、ふと我に返る。見知らぬ男に抱かれる俺と、それを見ている父。時には煙草を吸い、時には酒を飲み、ただじっと傍にいる。俺には無関心で、やめてと懇願しても、痛いと泣き叫んでも、父は黙って見ていた。

(……父にとって俺はどんな存在なのだろう?)

 ただ確かなのは実の父に俺は売られたことだ。

 父と目があった瞬間、男の中のモノが硬くなった。揺さぶられ、何度も濃厚なキスをし、舌が口の中をなぞる。


「ああっ、あっ……」


 自身が射精した時、男も中で勢いよく果てた。

 男はそのまま続けて、2回した。


「じゃぁ、またな」


 行為が終わると男は父にお金を渡し、さっさと部屋を出て行った。こちらはくたくたなのに、男は疲れた感じもなく金さえあればもう何度かする雰囲気だった。ある意味、男にお金がなくて良かったのかもしれない。

 疲れきった身体はすぐには動けず、布団の上で横たわっていると、視線を感じた。見上げると父がじっとこちらを見ていた。父は何も言わず、数枚の金を投げつけると部屋を去って行った。


「…………っ」


 立ち上がろうとお腹に力を込めると、ドロドロと股から男の精液が流れ出た。

 薄暗い部屋に1人取り残され、悲しくなった。

 でも、涙が出ることはなかった。


(……どうしてこんなことになってしまったのだろう)


 今いる部屋だって、昔は家族みんなで笑い合っていたはずの部屋なのに……。


ーー家族みんなで笑いあっていたーー


 それはほんの少し前の話だ。なのにはるか遠い昔のように感じる。

 そう、俺たち家族は、仲が良かった。


ーー優しく笑う母


ーー少し年の離れた弟


ーー見た目に反して子煩悩な父


 家はボロ長屋で夏は暑いし、冬は寒かった。


 それでも4人で楽しく過ごせて幸せだった。


 それなのに、

 ある日それは一瞬で消え失せた。
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