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第一章 壊れた日常の始まり
弟の一線
しおりを挟む「智、ここにいちゃダメだ」
「でも、兄ちゃん……」
智の存在がバレてから、智にはよりいっそう家に近寄らないように言った。俺を心配してくれる智に、自分の家ではない叔母の家に行かせることに後ろ髪を引かれながらも、どうしようもできない俺は智に強く言うしかなかった。
智はそれ以上、何も言わず肩を落として家を出て行った。その入れ違いに何度か俺を買ったことのある客が家へとやって来た。智とすれ違う。
「さっきのは弟?お兄ちゃんは色気があるけど男っぽさがある。どうせならさっきの子が良かったな……。あの子は売りをしてないの?」
家に入るなり、その男は父に言った。いつの日かのことを思い出す。
「父さん、いやだ、やめて……」
父が何と答えるのかなんて分からない。
思い出されるのはあの時の地獄。
弟を買いたいと言った客。やめてと懇願し、客に反抗すると、客の命令で父は乱暴に俺を犯した。
(またあの時のような地獄を見るかもしれない……)
それでも、俺は智に売りをさせたくなかった。
「君には聞いてない。で、いくら?」
「…………」
客がバシンと大きな音を立てて、頬を殴った。恐怖でそれ以上言うことはできなかった。
父は答えないが、答えないということは売りを考えてもいいと言うことだと客は認識し、話しを進める。客も父も俺などいないように話を続ける。
「見た目はさっきの子が好みだけど、身体は淫乱な方が好きなんだよ。このお兄ちゃんみたいに。だからさ……」
男は父の耳元で何かを囁くと、父は口角を少し上げて嫌な笑みを浮かべた。
「あいつを連れ戻してこい」
「とうさん……?」
男は大枚を父に握りしめさせた。
「これは前金。あとは楽しみにとっておくから」
「お前が行かないなら俺が連れ戻す」
「待って……」
「じゃぁ、えーっと、お父さん?よろしくね」
父と俺のやり取りを男は楽しそうに見た後、男は出て行った。この男は、今日智をどうこうしようということではないらしい。
もう一度父が智を連れ戻すと言わないうちに、智を追いかけた。さほど時間は経っておらず、智はすぐに見つかった。
「ともっ!どうしてここに?」
智は家の近所の公園のベンチに座っていた。まだ夕方とは言え、もう少しで暗闇が辺りを包み込む時間。どうして叔母の所に行っていないのだろう?
「あ、いや、綺麗な夕焼けだったから……それよりも兄ちゃんはどうして?」
「あ、いや……」
来たものの何て言えばいいのか分からなかった。見つからなかったフリをして叔母さんの家に行かせた方が良いのかもしれない。でも、それで父が叔母の家に行ってしまってはもっとことをこじらせるだろう。
「兄ちゃん、あの人に呼ばれてるの……?」
答えられない。何が正解なのだろうか?智がじっとこちらを見る。
「兄ちゃん、僕ができることはするから。だから、それ以上追い詰めないで……」
智が優しく俺の手を取る。智は俺のしていることなんて知らないし、知られたくない。あの客は帰った。父が智を何故連れてこいと言ったのか分からない。
(……逃げようか……?でも、一体どうやって?)
逃げ方が分からない。お金があればどこへでも行けるだなんて言った自分が馬鹿らしい。逃げる前に恐怖に怯えてる。
「兄ちゃん……」
智は俺の背後を見ている。はっと後ろを見ると父が立っていた。
「遅い」
自分が悩んでいる内に父が来てしまった。パシンと俺の頬を叩くと、「ついてこい」と言った。すごすごと智とついていく。
ついたのは自分の家。父は智と俺を引き連れると、部屋へと押し込んだ。
「ヤルまで出て来るな」
「父さん……何を言ってるの……?」
(この人は何を言っているのだろう……?)
あまりにも惨い要求。実の息子、ましてや兄弟でヤる?と言う。この男が心底憎い。消えてしまえればいいのに。罵りたいのに、涙がポロポロと落ちた。
うっうっと泣く俺をよそに、父は「お前が教えておけ」と言った。弟はこの状況に戸惑い緊張している。
「脱げ」
父は俺を見て命令する。父は俺の裸を見慣れている。でも、智の前で脱ぐのは嫌で、手を動かさなかった。父がまた頬を叩く。
「ヤルまで出て来るな」
しぶしぶと脱いで智の方へと向く。
(俺には無理だ……俺が智に挿れることなんてできない……)
裸の俺を智は見ている。軽蔑よりも驚きの方が勝っているようだ。
「ヤッたらこの部屋から出てきていい」
そう言うと父は部屋から出て行った。
「にいちゃん……?」
恐怖を交えて小さな声で俺に呼びかける。
(俺には無理だ……)
俺は、智に挿れることができない。何度考えても無理なものは無理だった。でも、父はヤるまでこの部屋から出て来るなと言った。
嘘をつこうか?いや、智とヤッてもヤラなくても、ここまで来たら智は客を取らされる。もし本当にこの前の奴が智を買い、まだ未経験と知れば暴力を振るうかもしれない。
(……腹をくくるしかない)
「智、俺はお前とヤルなんてできない……。寝てていい。俺が勝手にヤルから……」
智の肩を押して薄っぺらい布団に押し沈めた。でも、肝心の智のあれが勃っていない。
それはそうだよな。智が俺なんかで勃つはずがないし、弟はこういうのには疎いから何をしているのかも分からないかもしれない。智に跨っていたが、一度下りて、弟の股間に顔をうずめた。
「に、兄ちゃん?!」
「お前は黙ってろ……」
少し舐めただけで智はすぐに勃起した。同じ兄弟だというのに、智のものは俺のよりもデカかった。今度こそまたがり俺の中へとぐぐっと挿れる。弟はすぐに俺の中で果てた。でも、今この場をしのいだところで、父は弟を売るはずだ。
「身体を綺麗にしてこの部屋から後で出てきて」
「兄ちゃん……」
丁度先ほど男に殴られて口の中が切れた。その血が、智のアレを咥えている時に布団に垂れ落ちた。
「あの人に、俺として切れたからとても痛くて治るまで待って欲しいって言うんだ」
もうここまで来て弟は俺が何をしているのか、そして父が何をさせようとしているのか分かったはずだ。弟は俺を軽蔑するだろうか?弟の視線をーー軽蔑の視線を見たくなくて先にその部屋を出た。
智を買おうとした男は処女は嫌いだと言った。だから、切れたのを無理やりやったところで痛がるだろうから恐らく少しの間は時間を延ばせるはずだ。
お風呂場ですすり泣きながら、智が出したものを掻き出した。
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