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村づくりを本格化しよう
16日目. お家に帰るまでが遠足です
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「家にも温泉があったらなぁ……」
葉月は湯船に浸かりながら空を眺めた。
温泉の良さに触れてしまうと、どうしても欲が出てきてしまう。
温泉とまではいかないにしても、温かいお風呂に入りたいと思ってしまうのは仕方がないことだと思うのだ。
ソラが水面にぷかりぷかりと浮かんでいる。
どうやらソラも温泉を満喫しているようだ。
「ふぅ……」
「葉月さん?」
その声を聞くまで葉月は温泉に完全に身も心も奪われ、アンネリーゼのことをすっかり忘れていた。
タオルを体に巻いたアンネリーゼが湯船のなかを近づいて来る。
恥ずかしそうに近づく肢体は鍛えられ、無駄な肉はひとつもない。けれど、女性らしい膨らみはしっかりとあって、美しい。
「うーん、神様って不公平だよね」
「くま~?」
近づくアンネリーゼの豊かな曲線を目にした葉月の口から不平がこぼれた。
「どうかしましたか?」
アンネリーゼは兎のように長い耳をぴくぴくと動かしている。
服を着ていて気づかなかったが、アンネリーゼの胸はかなり大きい。鍛えられた筋肉が豊かな胸を支えていて、女である葉月から見てもかなり形が美しくうらやましい。
「……なんでもない」
葉月は思わず自分の胸を見下ろした。
「さすがに成長期は終わってるよね……」
「葉月さんはなん歳ですか?」
「わたし? えっと……」
葉月は自分の年齢がよくわかっていなかった。
この世界に来るまで三十近い年齢だったのは確かだが、明らかに若返っていた。
ステータス画面を確認すると、十八歳と表示されていた。
葉月はステータス画面を信じて答える。
「十八歳……だね」
「もっと幼いのかと思っていました」
「それ以上は言わないで」
「……」
微妙な沈黙が流れた。
「それにしても温泉とは素敵なものですね」
沈黙に耐えきれなくなったアンネリーゼがわかりやすい話題転換を図った。
「うん。毎日は入れたらいいんだけど、流石にドラゴニアを足として使うのは無理だよね」
「フリードリヒ様なら快く引き受けてくださいそうですが……」
「さすがにそれはないよ。この温泉ってどこから湧いてるんだろう?」
源泉かけ流しなので、どこかに源泉があるはずだ。
葉月はふと気になってザバリと立ち上がる。
「こっちの方があったかい?」
「くまくま」
葉月はコハクと一緒になってざぶざぶとお湯をかき分けて進む。
岩場の奥にお湯が湧き上がっている場所を見つけて、葉月は岩の間を覗き込んだ。
「ん? なんかある」
よく見ると水の底が仄明るいような気がした。
葉月は手を伸ばし、源泉に手を突っ込む。
手探りで温泉の底を探ると、なにか硬いものが手に当たった。
葉月は迷わずつかんで引き上げる。
わずかに光を放つ以外はただの石のように見える。温泉よりも少し熱めの四十五、六度くらいだろうか。熱めだが持てないほどではない。
「それは魔石では?」
背後から葉月の奇行をうかがっていたアンネリーゼが葉月の手元をのぞき込んでいた。
「あ、そうだ。マナグラス!」
葉月はインベントリに仕舞ってあったマナグラスを取り出して鑑定してみる。
『名称:マナストーン。説明:マナが蓄積された石。含まれる根源によって効果が異なる。根源:火』
「おお!」
「くっくま!」
葉月は新たな素材の入手にテンションが上がって来た。
葉月の歓喜につられて、コハクも興奮している。
「ねえ、アンネリーゼさん。この石持って帰っちゃダメかな?」
「大丈夫なのではないでしょうか。もしも大事な物であれば簡単には取れないように設置してあるはずです」
葉月の予想が正しければこのマナストーンがあれば家でも温泉というかお風呂に入れるはずだ。
「よし、フリードリヒさんに聞いてみよう!」
「くまっ!」
「葉月さん! 前をちゃんと隠してください!」
慌てるアンネリーゼをよそに、葉月はマナストーンを手に風呂を飛び出す。
葉月のあとにコハクも続く。
置いて行かれた格好となったソラは慌てて湯船を飛び出した。
◇◇◇◇
「別に構わぬが……、ハジュキがそこまで喜ぶほどのものなのか?」
髪を乾かすのもそこそこに詰め寄った葉月の剣幕に、フリードリヒはかなり驚いている。
「うん。お家でもお風呂に入れるかもしれないの! 成功したら天国だよ!」
「その辺にごろごろしているようなものだ。ハジュキが欲しいのであれば好きなだけ持っていくがいい」
「わぁ! フリードリヒさんありがとう!」
「くまま!」
葉月はコハクと手を取りあって喜んだ。
フリードリヒの許可も得たことなので、葉月は遠慮なく温泉に戻り、いくつかマナストーンを頂いていく。
「ということで、そろそろお家に帰りたいな」
「もう帰るのか!?」
フリードリヒはしょんぼりと肩を落とす。
「うん。フリードリヒさんが送ってくれるっていっても、帰りの時間も考えたらそろそろお暇したほうがいいかなって。あ、そうだ! 手土産を渡すの、忘れてた」
葉月はフリードリヒに渡しそびれていた手土産をインベントリから取り出す。
「うちのチャッピーとコハクが作った蜂蜜だよ。こっちは蜂蜜から作った蜂蜜酒ね」
琥珀色に輝く瓶をフリードリヒに手渡した。
落ち込んでいたフリードリヒの目の輝きが変わる。
「なんと蜂蜜に蜂蜜酒か! これはありがたい!」
「あと野菜も一応持ってきたんだけど、いる?」
「くれるというのならば、欲しい」
「じゃあ……」
葉月がインベントリから取り出した厳選野菜と果物を、家令のテオが恭しく受け取った。
「我からも渡そうと思っていたものがある。テオ、あれを」
「承知いたしました」
テオが素早く野菜をもって部屋から下がり、なにかをもって現れた。
フリードリヒはテオから小さな袋を受け取った。
「これだ」
「えっと、温泉に連れてきてくれただけで十分だったんだけど」
「よいから受け取れ」
葉月は袋をフリードリヒから受け取った。
動物の皮で作られた革袋で、感触からすると中に液体が入っているようだ。
「これがあればチーズを作れるらしい。我は作ったことがないのでよくわからぬが、ハジュキの村にいるモウの乳があれば作れるであろう」
「もしかして、レンネット?」
葉月の目が輝く。
子牛の胃からとれるというレンネットが入手できず、どうにかして手に入れたいと思っていたものだ。
「これって貴重な物なんじゃないの? 本当にもらっていいの?」
「うむ。渡そうと思って用意していたものだ。遠慮なく受け取るがいい」
「それじゃあ……遠慮なく。えへへへ」
葉月は食生活の充実にまた一歩近づいた喜びに、変な笑い声をもらした。
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異世界移住16日目
経験:Lv.27→28
従魔:ソラ(スライム:Lv.24→25)+子分スライム×16(トイレ用)、コハク(ハニーベア:Lv.8→9)、チャッピー(ハニービー:Lv.8→9)、クラウド(ケイブスパイダー:Lv.8→9)
家畜:ニワトリ×4、ヒヨコ×2、はなこ(乳牛:雌)、太郎(乳牛:雄)、すみれ(乳牛:雌)、アルパカ
称号:開拓者、臆病剣士、ソラの飼い主、二級建築士、節約家、武士みならい
スキル:土木:Lv.5、建築:Lv.9、農業:Lv.11→12、伐採:Lv.8、木工:Lv.17→18、採掘:Lv.10、調教:Lv.10、石工:Lv.5、料理:Lv.12→ 13、鍛冶:Lv.4、畜産:Lv.7→8、マナ:Lv.6、鑑定:Lv.8、居合:Lv.3
葉月は湯船に浸かりながら空を眺めた。
温泉の良さに触れてしまうと、どうしても欲が出てきてしまう。
温泉とまではいかないにしても、温かいお風呂に入りたいと思ってしまうのは仕方がないことだと思うのだ。
ソラが水面にぷかりぷかりと浮かんでいる。
どうやらソラも温泉を満喫しているようだ。
「ふぅ……」
「葉月さん?」
その声を聞くまで葉月は温泉に完全に身も心も奪われ、アンネリーゼのことをすっかり忘れていた。
タオルを体に巻いたアンネリーゼが湯船のなかを近づいて来る。
恥ずかしそうに近づく肢体は鍛えられ、無駄な肉はひとつもない。けれど、女性らしい膨らみはしっかりとあって、美しい。
「うーん、神様って不公平だよね」
「くま~?」
近づくアンネリーゼの豊かな曲線を目にした葉月の口から不平がこぼれた。
「どうかしましたか?」
アンネリーゼは兎のように長い耳をぴくぴくと動かしている。
服を着ていて気づかなかったが、アンネリーゼの胸はかなり大きい。鍛えられた筋肉が豊かな胸を支えていて、女である葉月から見てもかなり形が美しくうらやましい。
「……なんでもない」
葉月は思わず自分の胸を見下ろした。
「さすがに成長期は終わってるよね……」
「葉月さんはなん歳ですか?」
「わたし? えっと……」
葉月は自分の年齢がよくわかっていなかった。
この世界に来るまで三十近い年齢だったのは確かだが、明らかに若返っていた。
ステータス画面を確認すると、十八歳と表示されていた。
葉月はステータス画面を信じて答える。
「十八歳……だね」
「もっと幼いのかと思っていました」
「それ以上は言わないで」
「……」
微妙な沈黙が流れた。
「それにしても温泉とは素敵なものですね」
沈黙に耐えきれなくなったアンネリーゼがわかりやすい話題転換を図った。
「うん。毎日は入れたらいいんだけど、流石にドラゴニアを足として使うのは無理だよね」
「フリードリヒ様なら快く引き受けてくださいそうですが……」
「さすがにそれはないよ。この温泉ってどこから湧いてるんだろう?」
源泉かけ流しなので、どこかに源泉があるはずだ。
葉月はふと気になってザバリと立ち上がる。
「こっちの方があったかい?」
「くまくま」
葉月はコハクと一緒になってざぶざぶとお湯をかき分けて進む。
岩場の奥にお湯が湧き上がっている場所を見つけて、葉月は岩の間を覗き込んだ。
「ん? なんかある」
よく見ると水の底が仄明るいような気がした。
葉月は手を伸ばし、源泉に手を突っ込む。
手探りで温泉の底を探ると、なにか硬いものが手に当たった。
葉月は迷わずつかんで引き上げる。
わずかに光を放つ以外はただの石のように見える。温泉よりも少し熱めの四十五、六度くらいだろうか。熱めだが持てないほどではない。
「それは魔石では?」
背後から葉月の奇行をうかがっていたアンネリーゼが葉月の手元をのぞき込んでいた。
「あ、そうだ。マナグラス!」
葉月はインベントリに仕舞ってあったマナグラスを取り出して鑑定してみる。
『名称:マナストーン。説明:マナが蓄積された石。含まれる根源によって効果が異なる。根源:火』
「おお!」
「くっくま!」
葉月は新たな素材の入手にテンションが上がって来た。
葉月の歓喜につられて、コハクも興奮している。
「ねえ、アンネリーゼさん。この石持って帰っちゃダメかな?」
「大丈夫なのではないでしょうか。もしも大事な物であれば簡単には取れないように設置してあるはずです」
葉月の予想が正しければこのマナストーンがあれば家でも温泉というかお風呂に入れるはずだ。
「よし、フリードリヒさんに聞いてみよう!」
「くまっ!」
「葉月さん! 前をちゃんと隠してください!」
慌てるアンネリーゼをよそに、葉月はマナストーンを手に風呂を飛び出す。
葉月のあとにコハクも続く。
置いて行かれた格好となったソラは慌てて湯船を飛び出した。
◇◇◇◇
「別に構わぬが……、ハジュキがそこまで喜ぶほどのものなのか?」
髪を乾かすのもそこそこに詰め寄った葉月の剣幕に、フリードリヒはかなり驚いている。
「うん。お家でもお風呂に入れるかもしれないの! 成功したら天国だよ!」
「その辺にごろごろしているようなものだ。ハジュキが欲しいのであれば好きなだけ持っていくがいい」
「わぁ! フリードリヒさんありがとう!」
「くまま!」
葉月はコハクと手を取りあって喜んだ。
フリードリヒの許可も得たことなので、葉月は遠慮なく温泉に戻り、いくつかマナストーンを頂いていく。
「ということで、そろそろお家に帰りたいな」
「もう帰るのか!?」
フリードリヒはしょんぼりと肩を落とす。
「うん。フリードリヒさんが送ってくれるっていっても、帰りの時間も考えたらそろそろお暇したほうがいいかなって。あ、そうだ! 手土産を渡すの、忘れてた」
葉月はフリードリヒに渡しそびれていた手土産をインベントリから取り出す。
「うちのチャッピーとコハクが作った蜂蜜だよ。こっちは蜂蜜から作った蜂蜜酒ね」
琥珀色に輝く瓶をフリードリヒに手渡した。
落ち込んでいたフリードリヒの目の輝きが変わる。
「なんと蜂蜜に蜂蜜酒か! これはありがたい!」
「あと野菜も一応持ってきたんだけど、いる?」
「くれるというのならば、欲しい」
「じゃあ……」
葉月がインベントリから取り出した厳選野菜と果物を、家令のテオが恭しく受け取った。
「我からも渡そうと思っていたものがある。テオ、あれを」
「承知いたしました」
テオが素早く野菜をもって部屋から下がり、なにかをもって現れた。
フリードリヒはテオから小さな袋を受け取った。
「これだ」
「えっと、温泉に連れてきてくれただけで十分だったんだけど」
「よいから受け取れ」
葉月は袋をフリードリヒから受け取った。
動物の皮で作られた革袋で、感触からすると中に液体が入っているようだ。
「これがあればチーズを作れるらしい。我は作ったことがないのでよくわからぬが、ハジュキの村にいるモウの乳があれば作れるであろう」
「もしかして、レンネット?」
葉月の目が輝く。
子牛の胃からとれるというレンネットが入手できず、どうにかして手に入れたいと思っていたものだ。
「これって貴重な物なんじゃないの? 本当にもらっていいの?」
「うむ。渡そうと思って用意していたものだ。遠慮なく受け取るがいい」
「それじゃあ……遠慮なく。えへへへ」
葉月は食生活の充実にまた一歩近づいた喜びに、変な笑い声をもらした。
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異世界移住16日目
経験:Lv.27→28
従魔:ソラ(スライム:Lv.24→25)+子分スライム×16(トイレ用)、コハク(ハニーベア:Lv.8→9)、チャッピー(ハニービー:Lv.8→9)、クラウド(ケイブスパイダー:Lv.8→9)
家畜:ニワトリ×4、ヒヨコ×2、はなこ(乳牛:雌)、太郎(乳牛:雄)、すみれ(乳牛:雌)、アルパカ
称号:開拓者、臆病剣士、ソラの飼い主、二級建築士、節約家、武士みならい
スキル:土木:Lv.5、建築:Lv.9、農業:Lv.11→12、伐採:Lv.8、木工:Lv.17→18、採掘:Lv.10、調教:Lv.10、石工:Lv.5、料理:Lv.12→ 13、鍛冶:Lv.4、畜産:Lv.7→8、マナ:Lv.6、鑑定:Lv.8、居合:Lv.3
応援ありがとうございます!
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