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 何事も無く昼休みを迎えて、晶と夕は机を合わせて弁当を食べていると、クラスの仲良し3人組に声を掛けられる。
 3人組は今風のギャルであり、よくお菓子をもらう間柄であると言っても、夕が小腹を空かせている事が多い。

「晶ちゃん。夕ちゃん。少し良い?」
「どうしたの?」
 
 弁当を食べる手を止める。

「今日の放課後暇?」

 晶と夕は目でアイコンタクトをとる。

「今日は時間あるけど……」
「それなら今日帰りにファミレスに行かない? もちろん私達が奢ってあげるから!」
 小腹を空かせた夕はお菓子をもらいに行く事は多いけど、放課後に遊ぶだけで奢ってもらう事に違和感を覚える。

「何か隠している? お菓子はもらう事が多いけど、ファミレスを奢ってもらうのは申し訳ないのだけど」

 3人組は後ろに体を回して何かを相談し始める。

「わかった。本当の事を言うよ。嘘をついてまで誘うのは私も気が引けるしね! 放課後にファミレス行くのは他校の男子と遊ぶのだけど、晶ちゃんと夕ちゃんを連れて来てほしいとお願いされたのよ。二人ともこの辺りの学校じゃ有名人でしょ? お願い! 来てくれない?」
 必死に頼み込む林(はやし) 楓(かえで)。通称かえでっちーである。
「その中にかえでっちーの好きな人でも居るの?」
「好きな人は居ないけど、幼馴染が一人いるぐらいかな」
 
 残りのみっちーとはるっちにも視線を送る。

「私もかえでっちーの幼馴染しか知らないよ。はるっちもそうだね。多分残りは他校生が来ると思うけど」
 3人は元々の性格は悪くない。むしろ困っていた人が居ればノリで手伝う程の優しさを持っている。
「まぁ晶が良いなら私は構わないよ。毎回お菓子をもらっているわけだしな」

放課後遊ぶ事になると、3人組はホッした表情を浮かべる。
 別に他校の男子から連れて来てほしいという願いがかなった事に安堵しているのではなく、純粋に晶と夕と遊びたかったからである。
 
 同じ学校で過ごすこと4か月ほど経つが、晶は比較的に話しやすいのだが、夕は少し話しかけづらい人物であった。
 比較的に気さくな人柄だという事はわかるが、普通の女性からすると身長が高く、目つきが少し鋭い事で、威嚇をされているかと勘違いをしてしまう。 
 特にショッピングモールの出来事は動画で公開されているので、夕の学友は大半動画を見ている。
 夕が怒った時の動画越しと言え見てしまった事で少し距離をおかれていたのであった。
 
 放課後、3人組は学校を出る前に化粧をしたのか、日中と雰囲気が少し変わり、少し大人びた容姿になっていた。
 家から3駅ほど離れたファミレスにやって来ると、携帯を取りだして、楓が連絡を取り始める。

「もう中で待って居るみたいだよ~」
 
 楓の順から中に入って行くと、意外と学生が多く集まっている。 
 そんな場所であっても二人の注目度は高く、男子は声を掛けるべきか悩む連中もいる事だろう。
 だが、今回は既に他のメンバーが集まっていて、そのテーブルの席に奥から3人組と夕、晶の順で座る。
 その光景を見た思春期の男性はその席に座っている男性陣を妬ましい視線を送るのであった。
 その視線に気がついた男子達は少し優越感に浸るのであった。
 
 それぞれのメニューを決め終えると、男性陣の方から自己紹介が始まる。
 全員が運動部であって、サッカー、野球、柔道をしているという事である。男子達はスポーツ推薦で入った高校であり、その世界では少しばかり有名らしい。
 女性陣達も軽く挨拶を終えるタイミングで食事が運ばれ始める。
 男性陣は日ごろから体を動かすので、お腹が減っていたのかハンバーグなどのお腹に残る物を頼んで、女性陣は男 子が目の前に居る事でデザートか軽い一品物を注文していけど、夕に関しては男性と同じ量ほどの食べ物を注文していた。

「赤城さんも以外に食べる人なんだね」

 男性陣の中でも一番体格か大きい男子が聞いて来る。

「そうか? 俺は普通だけど、他の女子が食べなさすぎるだけじゃないか?」

 夕は3人組を見ると全員が首を横に振る。

「いやいや、夕ちゃんは女性でもかなり食べる部類に入ると思うよ」
「そうだよ」
「お腹が空いていてもその量は流石に食べられないよ」

 一口サイズに切った肉を美味しそうに頬張る夕を見ながら呆れるのであった。

「この後、帰っても晩御飯を食べるつもりだったんだけどな」

 それだけの量を食べても体型をベストに維持している夕の体格を羨ましく思う3人であった。

「浅井さんはドリンクだけみたいだけど大丈夫ですか?」
 
一番顔が整っている男子が晶に興味があるのか、話を振る。

「ん~ 私は夕の様に食べる人種ではないかな。小食だからここで食べると夜が食べられなくなるな」

 思春期の間で絶対に出る恋愛の会話は進んでいき、薄暗くなり始める頃にある問題が起こる。
 夕食近くになる時間に近くなる頃には店の出入りは多くなり、とある一組が会計に向かう途中に晶達の前を通り過ぎようとした時に問題が起こった。

「めちゃマブイ子が二人もいるじゃん! ねね! 君達暇でしょ? 俺らと遊びに行こうぜ?」
 
晶達のテーブルの前に止まる男性。
 
声を掛けて来た男性の髪はシルバーに染め一部を赤色にしている男性と、もう一人は金髪に染め、右側は三つ編みの様に編み、左側が少し長めに伸ばしている男性であり、二人ともファッションのセンスは良い感じである。 

「すいません。今僕達と遊んでいるので、今日は辞めてください」
 
晶と一番話していた通路側の男子が話しかける。

「゛アァ? お前には聞いてねぇよ!!」

 銀髪の男性は先ほどの優しげな表情と一転して、眉間に皺を寄せて睨みを利かす。
 まるで蛇に睨まれたカエルの様に動かなくなった男子は視線を背ける事すら出来ない程に恐怖を感じている。

「やめてやれよ。高校生に睨むなよ。動かなくなっちまっただろ」

 止める様に金髪の男性は言うが、表情は何処となく楽しんでいる表情であって、日ごろからこういった事を繰り返しているのだろうとうかがえる。

「うっせ! そもそも、俺らもまだ高校生だろ? 行っていたらだけどな! で、今夜どう? 俺の家で行って飲むか? んん?」

 しつこく晶に絡む視線は晶の容姿とたわわな胸をいやらしく品物を見るかのように見ている。

「この後、帰ったらご飯を作らないといけないので、今日は無理です」
「うっは! 声もめちゃ可愛いじゃん! ご飯ぐらい俺が奢ってやるよ!」

 強引に晶と夕を連れ出そうする。
 まぁ二人の容姿なら仕方ない出来事なのかもしれない。
 男のやり取りに苛立ちを覚えた楓は席から立ち上がる。

 
 
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