8 / 54
8 工房見学
しおりを挟む
「お嬢さん、良かったら見学していきなさいな」
声を掛けてくれたのは30路の女性だった。
沢山の洗濯物を籠に入れて抱えている。
「良いのですか?」
「ほら入ってちょうだい、遠慮しなくていいけど作業の邪魔はしないでね」
「はい、ありがとうございます。お邪魔致します」
中に入ると3人の男性がガラスを吹いていた。
ガラス窯は4つある。1か所だけ空いていた。
私が興味深く眺めていると、さっきの女性に声を掛けられる。
洗濯物を干して戻って来たのだろう。
「やってみたい?」
「はい」
「じゃあ、こっちで私と一緒にやってみましょうね」
空いていた窯の前に一緒に着いた。
女性は長い鉄の棒を突っ込むと、しばらくして引き出して、回しながら息を吹き込む。
真っ赤なガラスがプクーと膨らんでいき透明に成っていく。
ハサミで形を整えてから冷まし始めた。
「どう、出来そう? やってみる?」
「はい、お願いいたします」
引っ込み思案な千代だが、ガラス細工の誘惑に勝てなかった。
教えて貰いながら一連の作業をさせて貰う。
少しバランスは悪いが、花瓶の様な物ができた。
「ふ~っ……」
「あら、上手じゃない。それじゃあ、今日から見習いとして修業しましょうね」
「はい。えっ?!」
「好きな事、興味のある事をするのが一番いいのよ。若いうちにチャレンジ、チャレンジよ」
「でもぅ、私なんかが良いのでしょうか?」
「貴方センスあるわよ! ちょうど1人辞めた若者がいたから、こっちもちょうど良いしね。それとも、もうどっかで働いてるの? 就職しそうな年頃だものね」
「え? 30歳なのですけど……」
「また~、どう見ても成人したばかりの15歳か16歳ぐらいでしょう? お肌だってツルピカじゃないの」
千代は自分の手の肌を眺めて見た、確かにみずみずしいが……。
「ほら」
女性に手鏡を渡された、ここの製品かもしれない。
そこに映っていたのは、高校生ぐらいの千代の顔だった。
「若っ! ノーメイクなのに目が大きい!?」
「「「あははははっ」」」
工房の職人全員に笑われてしまった。
「姉さん、面白い見習いを連れて来なすったね」
「ジンが辞めちまったから、ちょうど良かったじゃないですか」
「そだなぁ」
「紹介するわ、手前からアラン、クロード、ビクトル。え~と貴方の名前は?」
「チヨと申します」
「オッケー、チヨ。私は工房主のローリー・ウエルトンよ。今日から貴方は私の手元で見習いね」
「はい、お願いいたします」
「じゃあ私の横で、私の言う通りにしてね」
「はい、分かりました」
しばらくお手伝いをしていると、休憩時間に成ったらしい。
皆一斉に手を止めた。
「一緒に隣の陶磁器工房に行きましょうね」
「はい」
「隣も私が工房主なのよ」
「そうなんですか!」
「父が早くに亡くなったので、1人娘の私が後を継いだの」
「ご結婚は?」
「してないわ。それどころじゃなかったの。でも後継ぎがいないと困るから、いずれ養子でも貰おうかと思ってるのよ」
「良い御縁がキットあります」
「もう、年だから諦めたわ」
「そんな事無いです、若いです。魅力的な女性に見えます」
「あはは、ありがとう。まぁ、こればかりは成り行きに任すしかないわね」
陶磁器工房に入り、職人4人を紹介して貰った。
「ライナ、ケイン、ステラ、マリーナよ」
「チヨと申します。宜しくお願い致します」
「「「「よろしく~」」」」
ライナとケインが男性で、ステラとマリーナが女性だ。
年齢は、まちまちで。ライナがちょっと年長で、女性2人は20歳過ぎだと思う。
年齢の近い女性の存在に少し安心した。
4人共、轆轤の前で作業を止めて休憩していた。
「ベテランの職人達には、独立して一人立ちして貰ったのよ。年下が工房主じゃ、やり難いでしょうしね」
「そうなんですね」
千代は目を輝かせて、作りかけの製品を熱心に見ている。
「あら、陶磁器にも興味がありそうね?」
「はい」
「ふん、そのうちにやらせて上げましょうね。でも今はガラス細工に集中しましょうね」
「はい」
「二兎を追うものは一頭も得ず。と、言うからね」
「はい」
千代は日本の諺と同じなんだ。と、思った。
夕方になった。
工房は暗く成る前に終わるらしい。
職人達は、みんな町から通って来てると言う。
「チヨは何処に住んでるの?」
「さすらって来て、ここに辿り着いたばかりで、まだ住む所が無いのです」
「へぇ、若いのに苦労してるんだぁ。……じゃあ、工房の隣の家で私と一緒に住みましょうか?」
「はい、……一緒にですか?」
「1人暮らしだから部屋が余ってるのよ。流石に男だったらお断りするけど、チヨなら問題ないわ」
「はぁ、それではお言葉に甘えさせて頂きます。行く当ても在りませんので、よろしくお願いします」
「その代わりに、家事は半分手伝って貰うわよ」
「はい、分かりました。頑張りますので教えてください」
「りょうか~い」
湯あみをしてから、2人でパンとスープの夕食を取る。
「朝は早いわよ。毎朝5時起だからね」
「大丈夫です、私も早起きですから」
それぞれ別の部屋で就寝する。
「おやすみ~」
「おやすみなさい」
思いがけずに、仕事とベッドを手に入れた1日だった。
声を掛けてくれたのは30路の女性だった。
沢山の洗濯物を籠に入れて抱えている。
「良いのですか?」
「ほら入ってちょうだい、遠慮しなくていいけど作業の邪魔はしないでね」
「はい、ありがとうございます。お邪魔致します」
中に入ると3人の男性がガラスを吹いていた。
ガラス窯は4つある。1か所だけ空いていた。
私が興味深く眺めていると、さっきの女性に声を掛けられる。
洗濯物を干して戻って来たのだろう。
「やってみたい?」
「はい」
「じゃあ、こっちで私と一緒にやってみましょうね」
空いていた窯の前に一緒に着いた。
女性は長い鉄の棒を突っ込むと、しばらくして引き出して、回しながら息を吹き込む。
真っ赤なガラスがプクーと膨らんでいき透明に成っていく。
ハサミで形を整えてから冷まし始めた。
「どう、出来そう? やってみる?」
「はい、お願いいたします」
引っ込み思案な千代だが、ガラス細工の誘惑に勝てなかった。
教えて貰いながら一連の作業をさせて貰う。
少しバランスは悪いが、花瓶の様な物ができた。
「ふ~っ……」
「あら、上手じゃない。それじゃあ、今日から見習いとして修業しましょうね」
「はい。えっ?!」
「好きな事、興味のある事をするのが一番いいのよ。若いうちにチャレンジ、チャレンジよ」
「でもぅ、私なんかが良いのでしょうか?」
「貴方センスあるわよ! ちょうど1人辞めた若者がいたから、こっちもちょうど良いしね。それとも、もうどっかで働いてるの? 就職しそうな年頃だものね」
「え? 30歳なのですけど……」
「また~、どう見ても成人したばかりの15歳か16歳ぐらいでしょう? お肌だってツルピカじゃないの」
千代は自分の手の肌を眺めて見た、確かにみずみずしいが……。
「ほら」
女性に手鏡を渡された、ここの製品かもしれない。
そこに映っていたのは、高校生ぐらいの千代の顔だった。
「若っ! ノーメイクなのに目が大きい!?」
「「「あははははっ」」」
工房の職人全員に笑われてしまった。
「姉さん、面白い見習いを連れて来なすったね」
「ジンが辞めちまったから、ちょうど良かったじゃないですか」
「そだなぁ」
「紹介するわ、手前からアラン、クロード、ビクトル。え~と貴方の名前は?」
「チヨと申します」
「オッケー、チヨ。私は工房主のローリー・ウエルトンよ。今日から貴方は私の手元で見習いね」
「はい、お願いいたします」
「じゃあ私の横で、私の言う通りにしてね」
「はい、分かりました」
しばらくお手伝いをしていると、休憩時間に成ったらしい。
皆一斉に手を止めた。
「一緒に隣の陶磁器工房に行きましょうね」
「はい」
「隣も私が工房主なのよ」
「そうなんですか!」
「父が早くに亡くなったので、1人娘の私が後を継いだの」
「ご結婚は?」
「してないわ。それどころじゃなかったの。でも後継ぎがいないと困るから、いずれ養子でも貰おうかと思ってるのよ」
「良い御縁がキットあります」
「もう、年だから諦めたわ」
「そんな事無いです、若いです。魅力的な女性に見えます」
「あはは、ありがとう。まぁ、こればかりは成り行きに任すしかないわね」
陶磁器工房に入り、職人4人を紹介して貰った。
「ライナ、ケイン、ステラ、マリーナよ」
「チヨと申します。宜しくお願い致します」
「「「「よろしく~」」」」
ライナとケインが男性で、ステラとマリーナが女性だ。
年齢は、まちまちで。ライナがちょっと年長で、女性2人は20歳過ぎだと思う。
年齢の近い女性の存在に少し安心した。
4人共、轆轤の前で作業を止めて休憩していた。
「ベテランの職人達には、独立して一人立ちして貰ったのよ。年下が工房主じゃ、やり難いでしょうしね」
「そうなんですね」
千代は目を輝かせて、作りかけの製品を熱心に見ている。
「あら、陶磁器にも興味がありそうね?」
「はい」
「ふん、そのうちにやらせて上げましょうね。でも今はガラス細工に集中しましょうね」
「はい」
「二兎を追うものは一頭も得ず。と、言うからね」
「はい」
千代は日本の諺と同じなんだ。と、思った。
夕方になった。
工房は暗く成る前に終わるらしい。
職人達は、みんな町から通って来てると言う。
「チヨは何処に住んでるの?」
「さすらって来て、ここに辿り着いたばかりで、まだ住む所が無いのです」
「へぇ、若いのに苦労してるんだぁ。……じゃあ、工房の隣の家で私と一緒に住みましょうか?」
「はい、……一緒にですか?」
「1人暮らしだから部屋が余ってるのよ。流石に男だったらお断りするけど、チヨなら問題ないわ」
「はぁ、それではお言葉に甘えさせて頂きます。行く当ても在りませんので、よろしくお願いします」
「その代わりに、家事は半分手伝って貰うわよ」
「はい、分かりました。頑張りますので教えてください」
「りょうか~い」
湯あみをしてから、2人でパンとスープの夕食を取る。
「朝は早いわよ。毎朝5時起だからね」
「大丈夫です、私も早起きですから」
それぞれ別の部屋で就寝する。
「おやすみ~」
「おやすみなさい」
思いがけずに、仕事とベッドを手に入れた1日だった。
0
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる