勇者召喚されたのは「キグルミの中の人」でした!~人見知り腐女子なので魔法少女になんて成れませんし魔王討伐もできません~

まきノ助

文字の大きさ
17 / 54

17 採取場所で魔物出現

しおりを挟む
 千代とクラインは、翌日も採取場所でカイエンと従者に出会った。
 偶々たまたまではなく、彼らが待ち構えていたようだ。


「「おはようございます」」

 千代とクラインからカイエンに挨拶する。


「おい小娘、ローリーの珪砂は何故高品質で高く売れるんだ?」

「はい……不純物が少ないからだと思います」


「ふん、採取してる物は同じなのだな?」

「はい、そうです」


「誰が珪砂を精製してるのだ?」

「「……」」

 千代とクラインは、お互いに顔を見合わせて黙り込んだ。


「言え、言わんか!」


 千代が躊躇いながら口を開く。

「あの……皆さん見習いの時に採取と精製を経験します。誰がという事では無く、皆さん出来ます」

「そうか……という事は、ここ最近はお前が精製していたのだな?」

「……」


「最近、急にローリー工房の製品が注目されるようになったのは、お前が工房に来てからだ。お前が精製しているからだろう?」

「……」


「よし、わしが可愛がってやろう。綺麗な服を着せてやる、美味うまい物も食べさせてやろう。俺の妾に成れるのだぞ」

 千代の体にブルブルと悪寒が走った。
 クラインが千代を庇うように前に出る。


「失礼な事を言うな!」

「黙れ小僧、お前には用は無い。おい、痛い目にあわせてやれ」

「へい、旦那」


「あ痛ててっ!」

 掴みかかろうとした従者の腕を、逆にクラインがねじ上げた。


「は、離しやがれっ!」

「おチヨちゃんに手を出さないと約束するなら放しましょう」


 それを見ていたカイエンが「チッ…」と舌打ちすると、魔石の嵌め込まれた杖をこちらに向けて、何かの呪文詠唱を始める。

「生意気な小僧め、懲らしめてやる。ブツブツブツブツ……」
「遅いっ!」

 ドスンッ!

 クラインは従者の手を離すと同時に大きく踏み込んで、カイエンの鳩尾みぞおちこぶしを打ち込んだ。そのせいで詠唱はキャンセルされてしまった。


「ウウウ……、こんな事して只で住むと思うなよ!」

「あはは、正当防衛ですよ。先に暴力を揮ってきたのは貴方達あなたたちですからね」


「くそっ、引き上げるぞ!」
「へい」

「覚えてやげれ!」

 そう言って、カイエン達は小走りで逃げて行ったが……。


「ウギャアアアッ!」

 逃げた2人の前を大きな3匹の魔物がさえぎる。
 それは恐ろしい、まさしく鬼の形相のオーガだった。
 身の丈みのたけ3メートルはあるだろうか? 手にはなたや鎌を握っている。
 1匹のオーガは、片手に人の生首をぶら下げていた。髪の毛を鷲掴わしづかみにして、首からドクドクと血がしたたり落ちている。


「ヒィイイイッ! 助けてくれぇぇぇ」

 カイエンは腰が抜けて失禁し、口から泡を吹いて気を失った。


 従者が1人で逃げようとした瞬間、1匹のオーガの鎌がその脳天に深く突き刺さる。

 ズガッ!
「ウギャアアアッ!」

 従者は前のめりに倒れて、そのまま動かなくなってしまった。


「おチヨちゃん、僕が時間を稼ぐから早く逃げて!」

「いいえ大丈夫です、一緒に戦います。 【火弾】ファイヤーボール!」

 ドドドオオオンッ!
「「「アギャァアアアッ!」」」

 千代は連続して3発の【火弾】を放って、3匹のオーガに命中させる。
 しかし、大きなダメージを与えたが致命傷には成らなかった。


「インベントリ内の岩を全てオーガの上に取り出し!」

 ガラガラガラッ、ドカドカドカッ!
「「「ウガガガガアアアッ……」」」

 オーガ達は岩の下敷きに成り、動けず苦しみうめいている。


「僕がとどめを刺そう!」

 グサッ、ズガッ、ズッシャッ!

 クラインが倒れてるオーガ達の首を剣で斬り、息の根を止めた。


「それにしても、おチヨちゃんの魔法攻撃は……何と言うか……ハンパないね」

「え、怖かったから。夢中になってしまって……」


「そうだよねぇ、怖かったよね」

「……はい」


「しかし、あんなに威力のあるファイヤーボールの三連弾って初めて見たよ」

「そうですか……」


「普通は詠唱するし、クールタイムもあるから、続けて魔法を撃てないよね?」

「まぁ、そうだったんですね」


「こういう魔法は他の人に見せない方がいいよ、勇者としてお城に連れて行かれちゃうかもね」

「それは、絶対に嫌です」


 クラインは失神しているカイエンと従者の遺体をロッティの曳く荷車に乗せて、オーガの遺体をマジックバッグに収納した。

「オーガの出現を工房と町に報告しないとね、何かが山で起きてるのだと思うよ」

「はい……」





 オーガの遺体を確認したカタランヌ町の長老は、この地域で1番大きな街エルレイダに行き、冒険者ギルドに調査依頼を出した。

 早くも翌日、調査依頼を受けた冒険者グループがカタランヌ町にやって来た。
 男ばかり4人の冒険者グループ『荒鷲あらわしつめ』というパーティだ。


 彼らは真っ直ぐに長老の家を訪れた。

「オーガ発生原因を調査に来ました。今回の事はギルドの重要案件と成っています。目撃者に会って詳しい情報を聞かせて頂きたいのじゃが?」

「分かりました。目撃者のいる場所に御案内致しましょう」



 長老は彼らをローリー工房に案内して、クラインと千代に引き合わせた。

「オーガに遭遇した場所を詳しく教えてほしい。我々は土地勘が無いので、出来たら案内をお願いしたいんじゃが?」

 クラインと千代は顔を見合わせて、

「それでは僕とおチヨちゃんが御案内いたします」
 と、言った。


「ん~、危険だから男の子だけでいいじゃろう?」

「いいえ、僕はここに来てまだ日が浅いので、あまり土地に詳しくありません。おチヨちゃんが行った方が良いと思います」

「う~む」

 あごの長いリーダーらしき男が、他のメンバーの顔色をうかがっている。


「あの、私は大丈夫です。御案内致します」

「そうじゃのぅ……それじゃあ御嬢さんを最優先でお守りするという事で、お願いしようかのぅ。今回は討伐では無く調査だけという事で徹底するとしよう」

「はい」


 翌日の早朝、クラインと千代は、冒険者4人と採取場所に向かう事になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...