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第2章
優希の過去との決着
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それから何日か経った、ある放課後。
俺が教室から出ようとすると、後ろから声をかけられた。
「さ、坂口」
俺は振り返らなくてもそれが誰か分かったため、前を向いたまま答える。
「なんだ?まだ俺に用か?」
前に坂口優希を虐めていたリーダー。確か、篠宮とかいったか。
「あ、いや。その……」
待っていても中々続きを言わなかったから、俺は帰ろうとした。
「許してくれとは言わない!」
するとそいつが大きな声で言った。教室に残っていた生徒が一斉に俺たちを見る。
シン……と静まり返る教室。
俺はゆっくりとそいつの方を見ると、俺は目を見開いた。
篠宮は土下座していた。こんなに、沢山の生徒の前で。
「ごめん。俺、すげぇカッコ悪いことしてた。取り返しのつかないこと、したと思ってる。だから、ごめん!!」
そして、ゆっくり頭をあげると、俺の事を正面から睨みながら言った。
「これは、お前が怖いから言ってるんじゃないからな!」
目を見たら分かる。
コイツは、本気で悔いている。
「いい顔になったな」
俺はそれだけ言って、その場を立ち去った。
篠宮自身は気づいていないが、本当は坂口優希はもう死んでいる。そういう意味では、もうとっくに取り返しはつかない。
坂口優希の魂は、おそらく虐められた苦い記憶を一生引きずりながら別世界で生きていくだろう。
けれど、魂が入れ替わった後の魔王の俺には篠宮は何もしていない。だから俺にはヤツを許す理由も特にないが、許さない理由もないのだ。
ーーけど、優希。お前の魂は別として、この身体の仇はきっと討てたよな。
俺が教室を出ると、すぐ傍の壁に寄りかかって真生がこっちを見ていた。
「ニヤニヤしてんじゃねえよ」
「してないしてない!いやあ、良いものが見れたな~」
階段を降りて、靴箱で靴を履き変えて外に出る間も、真生は俺の後をくっついてくる。
「てめえ、なんの用があっていつも俺についてくる!?」
「だって暇だもん。帰る方向も一緒だもん」
ーーだもん、だと!?だもんってなんだよ、だもん。って!
「優希がいつも、どんなことしてんのか興味あるしな。観察しようと思って」
「そんなこと、しなくていい!」
あははっと笑う真生に蹴りを入れようとしたその時。
「優希!!」
そいつが久しぶりに呼ぶ優希の名を聞いて、俺はなぜか反射的に身体が固まった。
俺と真生が見る先にいたのは、優珠だった。
ーー今日は色んなやつに声をかけられる日だな……。
「おや、同じクラスのかわい子ちゃん」
「坂口優希の幼なじみだ」
そう言って俺は面倒くさそうな顔をした。
真生は、俺と優珠を交互に見ると、全て察したようで、立ち止まる俺を残してスタスタと校門の方へ歩いていく。
「じゃ、俺、先に帰るなー」
そう言って真生は振り返らないまま、手だけ振って去っていった。
正直、今こそここに真生がいてくれたらと思った。……これは1番の俺の苦手分野だ。
「ちょっと話したい」
優珠がそう言った。
「あー、……ああ」
学校の門を出て、ゆっくり歩き出す優珠に俺は後ろからついて行く。
ーーもともと女って生き物は苦手なんだよ……。
そして辿り着いた場所は、学校の近くの小さな公園。優珠が座ったベンチの隣に、ちょっと間をあけて俺も腰掛けた。
「ねえ、あの、本郷くん…って、優希の知り合いだったんだね!」
ーー本郷?……あぁ、真生のことか。
「あ、あー。まあ……」
「私、優希にあんな友達いるなんて知らなかったよ」
「友達じゃねえ!」
間髪入れずにそう言うと、優珠は不思議そうに俺を見た。
「あ、あいつは……ライバルっていうか、戦友だ」
シーン……と静まる。やっ、やっぱり無理があるのか?
すると優珠は、プッと吹き出して笑った。
「あはは、何それ!」
俺は少しホッとした。
「なんか……悪かったな」
俺がそう言うと、優珠は「え!」っと言って俺の顔を見た。
「色々心配かけて」
「だ、っ、大丈夫だよ!」
一瞬沈黙が流れた後、俺は口を開いた。
「本当は、俺、あの事件で記憶とか色々変になっちまって」
「うん」
「だから、なんか人格も……」
俺は俯く優珠の方を見て言った。
「前の自分をよく覚えてないんだ。だから……」
そこまで言うと優珠はニコッと笑った。
「いいよ!」
俺はポカンと優珠を見た。
「優希が生きていた。それだけで、いいよ!」
こいつ、優希の母親と同じことを言った。
「だから、仲直り! ね?」
そう言って笑った彼女。
ーーそもそも、別に喧嘩などしていなかったと思うが……。
「っていうか、魔王って呼んだ方がいい?」
ーーそれ本気で聞いているのか?
「いや……優希でいい」
俺が教室から出ようとすると、後ろから声をかけられた。
「さ、坂口」
俺は振り返らなくてもそれが誰か分かったため、前を向いたまま答える。
「なんだ?まだ俺に用か?」
前に坂口優希を虐めていたリーダー。確か、篠宮とかいったか。
「あ、いや。その……」
待っていても中々続きを言わなかったから、俺は帰ろうとした。
「許してくれとは言わない!」
するとそいつが大きな声で言った。教室に残っていた生徒が一斉に俺たちを見る。
シン……と静まり返る教室。
俺はゆっくりとそいつの方を見ると、俺は目を見開いた。
篠宮は土下座していた。こんなに、沢山の生徒の前で。
「ごめん。俺、すげぇカッコ悪いことしてた。取り返しのつかないこと、したと思ってる。だから、ごめん!!」
そして、ゆっくり頭をあげると、俺の事を正面から睨みながら言った。
「これは、お前が怖いから言ってるんじゃないからな!」
目を見たら分かる。
コイツは、本気で悔いている。
「いい顔になったな」
俺はそれだけ言って、その場を立ち去った。
篠宮自身は気づいていないが、本当は坂口優希はもう死んでいる。そういう意味では、もうとっくに取り返しはつかない。
坂口優希の魂は、おそらく虐められた苦い記憶を一生引きずりながら別世界で生きていくだろう。
けれど、魂が入れ替わった後の魔王の俺には篠宮は何もしていない。だから俺にはヤツを許す理由も特にないが、許さない理由もないのだ。
ーーけど、優希。お前の魂は別として、この身体の仇はきっと討てたよな。
俺が教室を出ると、すぐ傍の壁に寄りかかって真生がこっちを見ていた。
「ニヤニヤしてんじゃねえよ」
「してないしてない!いやあ、良いものが見れたな~」
階段を降りて、靴箱で靴を履き変えて外に出る間も、真生は俺の後をくっついてくる。
「てめえ、なんの用があっていつも俺についてくる!?」
「だって暇だもん。帰る方向も一緒だもん」
ーーだもん、だと!?だもんってなんだよ、だもん。って!
「優希がいつも、どんなことしてんのか興味あるしな。観察しようと思って」
「そんなこと、しなくていい!」
あははっと笑う真生に蹴りを入れようとしたその時。
「優希!!」
そいつが久しぶりに呼ぶ優希の名を聞いて、俺はなぜか反射的に身体が固まった。
俺と真生が見る先にいたのは、優珠だった。
ーー今日は色んなやつに声をかけられる日だな……。
「おや、同じクラスのかわい子ちゃん」
「坂口優希の幼なじみだ」
そう言って俺は面倒くさそうな顔をした。
真生は、俺と優珠を交互に見ると、全て察したようで、立ち止まる俺を残してスタスタと校門の方へ歩いていく。
「じゃ、俺、先に帰るなー」
そう言って真生は振り返らないまま、手だけ振って去っていった。
正直、今こそここに真生がいてくれたらと思った。……これは1番の俺の苦手分野だ。
「ちょっと話したい」
優珠がそう言った。
「あー、……ああ」
学校の門を出て、ゆっくり歩き出す優珠に俺は後ろからついて行く。
ーーもともと女って生き物は苦手なんだよ……。
そして辿り着いた場所は、学校の近くの小さな公園。優珠が座ったベンチの隣に、ちょっと間をあけて俺も腰掛けた。
「ねえ、あの、本郷くん…って、優希の知り合いだったんだね!」
ーー本郷?……あぁ、真生のことか。
「あ、あー。まあ……」
「私、優希にあんな友達いるなんて知らなかったよ」
「友達じゃねえ!」
間髪入れずにそう言うと、優珠は不思議そうに俺を見た。
「あ、あいつは……ライバルっていうか、戦友だ」
シーン……と静まる。やっ、やっぱり無理があるのか?
すると優珠は、プッと吹き出して笑った。
「あはは、何それ!」
俺は少しホッとした。
「なんか……悪かったな」
俺がそう言うと、優珠は「え!」っと言って俺の顔を見た。
「色々心配かけて」
「だ、っ、大丈夫だよ!」
一瞬沈黙が流れた後、俺は口を開いた。
「本当は、俺、あの事件で記憶とか色々変になっちまって」
「うん」
「だから、なんか人格も……」
俺は俯く優珠の方を見て言った。
「前の自分をよく覚えてないんだ。だから……」
そこまで言うと優珠はニコッと笑った。
「いいよ!」
俺はポカンと優珠を見た。
「優希が生きていた。それだけで、いいよ!」
こいつ、優希の母親と同じことを言った。
「だから、仲直り! ね?」
そう言って笑った彼女。
ーーそもそも、別に喧嘩などしていなかったと思うが……。
「っていうか、魔王って呼んだ方がいい?」
ーーそれ本気で聞いているのか?
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