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第4章
体育祭(いちについて〜)
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今日は待ちに待った体育祭当日。
天気は曇り。気温もこの日は暑すぎず、まさに体育祭日和だった。
俺たち生徒が教室から校庭に椅子を運び出す頃には、もう保護者が続々と集まってきていた。
真生の母親と話をしていた俺の母さんも、俺に気づき手を振っていた。
「あ、優希と真生のお母さんだ!」
俺の隣で、優珠が手を振る。
そして、始まった体育祭。
最初の開会式が終わったあと、俺と真生がストレッチをしていると、知らない3人組から声をかけられた。ジャージのラインの色からして俺らよりも上級生。3年か。
「な、伊藤優珠ってお前らと仲良いんだろ?」
「俺らに紹介してくれ~頼む!」
無視してストレッチを続けた俺に、その上級生は「聞いてるのかよ!?」と言ってきた。
すると、真生が俺の前に立って奴らを睨んだ。
「な、なんだよ!?」
3年が一瞬怯む。すると、真生がニコッと笑って言った。
「俺と優希にリレーでもほかの競技ででも勝てたらなんでも教えてやりますよ」
先輩たちは「ちっ。なんだよ」と言いながらその場を去っていった。
ーー優珠は人気があるな。
そう思った時、なんかチクリと心に何かが刺さった気がした。
「ん?」
俺はその場で胸に手を当てて自問自答してみたが、その痛みの理由はよく分からなかった。
「おーい、優希、真生! 次2年の100メートル走だぞ」
恵に呼ばれて俺達は入場口に走る順で並んだ。順番は男女別に五十音順だったが、クラスで1番と2番は抜けて最後2組に別れて走る。
つまり、赤組の俺と真生、白組のB組2人がまず走り、その後で赤組のC組と白組のD組の4人が走ることになっていた。
「おい、優希。ついにこの時が来たな!」
「分かっているが……なるべく抑えて走れよ」
そう真生と話していたその時、視界の先に見えたのは優珠が走って1番で笑顔でゴールドする姿だった。
「おい……、おい!!」
真生に呼ばれてハッとする。
「いま、お前優珠のこと見てたろ?」
俺が真生の顔を見ると、奴はニヤニヤしていた。
「別に」
そして、レースは俺達の番になる。他のやつは敵じゃない。敵は、勇者のみだ。女神に怒られないように軽く走るといっても、こいつには負けたくない。
「位置について……よーい……」
パーン!!!
ピストルの音と同時に俺らは走り出す。
観客席、全校生徒、皆が走る俺達に声援を送る。
俺ら2人は、少し本気になるとB組の2人と物凄い差を付けて走り抜け、そして同着でゴールした。
シーン……と静まり返った校庭。
そこで俺と真生はやりすぎたか!?とあせったが、その後の物凄い歓声と拍手を聞いてホッと胸をなでおろした。
だが、残念なことに俺らは同着だった。同じ赤組だから体育祭の点数には響かないため、引き分けのまま俺達のバトルは終了。
次の俺達の種目の二人三脚、そしてクラス対抗リレーもかなり力をセーブして、なんとか何事もなく無事に終えることが出来た。
ここまでの成績は
赤組150点。
白組158点。
午前の種目を終えた学生は、昼食の時間になり、俺と真生と佳奈は一緒に弁当を食べた。
しばらくすると誠と優珠も集まってきて、皆で休憩時間を過ごす。
「優希があんなに足が早かったなんてしらなかったなあ」
優珠の言葉に、母さんがニコニコしながら答える。
「この子、2年生になる少し前からずっと、毎日欠かさず朝と夜走ってるのよ!」
「毎日!? すごい!」
優珠が目をキラキラさせて俺を見ている。俺はなんとなく恥ずかしくなって話を変えた。
「真生、今度ちゃんと勝負しような」
「だなー! 最初の100メートル走で、どっちが勝ちかちゃんと判定してくれねーんだもんなあ」
真生が悔しそうに言うと、女神がジトッとした目で俺と真生にテレパシーを飛ばした。
『あんなに言ったのに、おまえらは……』
『いや、かなり力抑えたし。大丈夫だろ』
俺がそう答えると、真生も凄い勢いで何度も首を縦に振った。その真生の姿を誠が「?」と頭にハテナを浮かべて見ていた。
「午後はいよいよダンスだね!」
優珠が気合い入れてそう言うと、皆優珠を見て微笑む。
「あ、優希と真生のお母さんは正面で見た方がいいっす」
誠がそう言うと、俺と真生の母親は嬉しそうに笑って「じゃあ、移動しようかな!」と言っていた。
「そーいや恵は?」
恵だけがいないことに気づいて俺が聞くと、優珠と佳奈が顔を見合わせてフフッと微笑みあった。
「彼氏と一緒だよねー」
「恵も隅に置けないなあ~」
それを聞いた誠が「なに!?」と食いつき、悔しそうに握った拳を見つめた後叫んだ。
「くそ~! リア充羨ましいーー!!」
その場にいた皆は笑う。
楽しい昼休憩も終わり、いよいよ体育祭は後半戦。アナウンスが流れて俺達は気合い入れて立ち上がった。
「みんな、頑張ってね!」
「赤組ファイトー! 応援してるからね!」
俺と真生の母親がそう言って手を振った。みんなも手を振り返す。
「「行ってきます!」」
天気は曇り。気温もこの日は暑すぎず、まさに体育祭日和だった。
俺たち生徒が教室から校庭に椅子を運び出す頃には、もう保護者が続々と集まってきていた。
真生の母親と話をしていた俺の母さんも、俺に気づき手を振っていた。
「あ、優希と真生のお母さんだ!」
俺の隣で、優珠が手を振る。
そして、始まった体育祭。
最初の開会式が終わったあと、俺と真生がストレッチをしていると、知らない3人組から声をかけられた。ジャージのラインの色からして俺らよりも上級生。3年か。
「な、伊藤優珠ってお前らと仲良いんだろ?」
「俺らに紹介してくれ~頼む!」
無視してストレッチを続けた俺に、その上級生は「聞いてるのかよ!?」と言ってきた。
すると、真生が俺の前に立って奴らを睨んだ。
「な、なんだよ!?」
3年が一瞬怯む。すると、真生がニコッと笑って言った。
「俺と優希にリレーでもほかの競技ででも勝てたらなんでも教えてやりますよ」
先輩たちは「ちっ。なんだよ」と言いながらその場を去っていった。
ーー優珠は人気があるな。
そう思った時、なんかチクリと心に何かが刺さった気がした。
「ん?」
俺はその場で胸に手を当てて自問自答してみたが、その痛みの理由はよく分からなかった。
「おーい、優希、真生! 次2年の100メートル走だぞ」
恵に呼ばれて俺達は入場口に走る順で並んだ。順番は男女別に五十音順だったが、クラスで1番と2番は抜けて最後2組に別れて走る。
つまり、赤組の俺と真生、白組のB組2人がまず走り、その後で赤組のC組と白組のD組の4人が走ることになっていた。
「おい、優希。ついにこの時が来たな!」
「分かっているが……なるべく抑えて走れよ」
そう真生と話していたその時、視界の先に見えたのは優珠が走って1番で笑顔でゴールドする姿だった。
「おい……、おい!!」
真生に呼ばれてハッとする。
「いま、お前優珠のこと見てたろ?」
俺が真生の顔を見ると、奴はニヤニヤしていた。
「別に」
そして、レースは俺達の番になる。他のやつは敵じゃない。敵は、勇者のみだ。女神に怒られないように軽く走るといっても、こいつには負けたくない。
「位置について……よーい……」
パーン!!!
ピストルの音と同時に俺らは走り出す。
観客席、全校生徒、皆が走る俺達に声援を送る。
俺ら2人は、少し本気になるとB組の2人と物凄い差を付けて走り抜け、そして同着でゴールした。
シーン……と静まり返った校庭。
そこで俺と真生はやりすぎたか!?とあせったが、その後の物凄い歓声と拍手を聞いてホッと胸をなでおろした。
だが、残念なことに俺らは同着だった。同じ赤組だから体育祭の点数には響かないため、引き分けのまま俺達のバトルは終了。
次の俺達の種目の二人三脚、そしてクラス対抗リレーもかなり力をセーブして、なんとか何事もなく無事に終えることが出来た。
ここまでの成績は
赤組150点。
白組158点。
午前の種目を終えた学生は、昼食の時間になり、俺と真生と佳奈は一緒に弁当を食べた。
しばらくすると誠と優珠も集まってきて、皆で休憩時間を過ごす。
「優希があんなに足が早かったなんてしらなかったなあ」
優珠の言葉に、母さんがニコニコしながら答える。
「この子、2年生になる少し前からずっと、毎日欠かさず朝と夜走ってるのよ!」
「毎日!? すごい!」
優珠が目をキラキラさせて俺を見ている。俺はなんとなく恥ずかしくなって話を変えた。
「真生、今度ちゃんと勝負しような」
「だなー! 最初の100メートル走で、どっちが勝ちかちゃんと判定してくれねーんだもんなあ」
真生が悔しそうに言うと、女神がジトッとした目で俺と真生にテレパシーを飛ばした。
『あんなに言ったのに、おまえらは……』
『いや、かなり力抑えたし。大丈夫だろ』
俺がそう答えると、真生も凄い勢いで何度も首を縦に振った。その真生の姿を誠が「?」と頭にハテナを浮かべて見ていた。
「午後はいよいよダンスだね!」
優珠が気合い入れてそう言うと、皆優珠を見て微笑む。
「あ、優希と真生のお母さんは正面で見た方がいいっす」
誠がそう言うと、俺と真生の母親は嬉しそうに笑って「じゃあ、移動しようかな!」と言っていた。
「そーいや恵は?」
恵だけがいないことに気づいて俺が聞くと、優珠と佳奈が顔を見合わせてフフッと微笑みあった。
「彼氏と一緒だよねー」
「恵も隅に置けないなあ~」
それを聞いた誠が「なに!?」と食いつき、悔しそうに握った拳を見つめた後叫んだ。
「くそ~! リア充羨ましいーー!!」
その場にいた皆は笑う。
楽しい昼休憩も終わり、いよいよ体育祭は後半戦。アナウンスが流れて俺達は気合い入れて立ち上がった。
「みんな、頑張ってね!」
「赤組ファイトー! 応援してるからね!」
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