魂×魂 〜魔王が中学生になったら?そりゃやばいでしょ〜

日芽乃

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第5章

女神の願い

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「じゃあ今真生は、アチャンの中にある心臓と合わせて2つ心臓を持ってるってことか?」
「そういうことになるわね」

 勇者の心臓は勇者の飼っていた鳥の中にある、と女神に言われた俺と真生は、すぐそばにいたアチャンを見た。
 
「勇者の心臓には私の力も多少入っているから……その鳥と一緒にいれば力が今の何倍にもなる。それは、誠を助けた時に貴方たちも実感したんじゃない?」

 俺たちは、顔を見合わせた。
 確かにあの力は、今まで見た勇者の力の何倍もあった。
 俺はてっきり、友達を傷つけられた怒りから出た底力だと思っていたが。

「利用してごめんなさい。けれど、勇者の力を最大限に引き出すためには、この方法が1番だった」

 真生はうつむいて黙った。何かを考えているようだった。

「そして、魔王。貴方の魔力の封印も解く。本当は……私が人間の姿になった時に半分くらい、あなたに魔力は戻していたのだけど」
「それは、気づいていた」

 女神は改めて俺と真生に頭を下げた。

「お願い、地球の皆を守ってください」
「答える前に、疑問に思っていたことがある」

 俺がそう言うと、女神は顔を上げて俺を見て頷いた。

「お前は何の女神だ? 何故地球にそこまでこだわり、俺達に守ってほしい?」
「私が、地球の女神だからです」

「そうか……。で、もし地球の女神のお前が規定を犯して破壊神を何とかしようとしたら、どうなる?」
「その時点で、私と地球は消される」

 俺はもう1つ気になったことを聞いた。

「今日の地震も、何か関係してるんだよな?」
「ええ。……それは」

 一旦女神は言葉を詰まらせたが、直ぐに続きを話し出した。

「私が地球のこの場所にいることに気づいた破壊神が起こしたこと」
「なんだと……?」

 それを聞いて俺たち2人は目を見開いた。

「多分、決して手出しをするなという私への警告だったよ」

 俺は不愉快った。
 まず、今まで何も聞かされないまま女神の都合で勝手に地球に飛ばされ、手のひらの上で転がされていたのかと思うと無性に腹が立った。
 それ以上に気に食わないのが、破壊神とかいう神の考え方だ。

「俺らが防いだから良かったものの、下手したら大勢の人が今回の地震で死んでたんだぞ。それなのに……理由が女神への警告だと?」

 俺は震えながら言った後、目の前の机をドンッと思い切りぶっ叩いて壊した。

「それが神のすることかよ!!!」

 そう叫んだ後、俺は女神を睨んで静かに言った。

「女神、悪いがお前に協力はできない」
「ーー!!!」

 そう言って、俺は立ち上がって部屋のドアをあけた。
 真生は、何も言わず俯いていた。

「女神の協力はしないが、破壊神の考えにも多少異議がある。俺の経験上、地球の人間はそこまで腐り切ってはいない。だから……俺は、俺の意思で地球を守る」

 俺がそう言うと、女神は俯いたまま目を見開き、真生は顔を上げて俺を見た。

「優希がそう言うなら、俺も一緒に守らせてもらうよ」

 俺は真生を見ると頷いて、その場から立ち去った。真生も俺の後に続いて部屋を出た。

 女神は、1人残されたその部屋で「ごめんなさい……ありがとう」と涙を流していた。
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