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第6章
大事なこと
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俺の名前は本郷真生。
学校に行く支度を済ませた俺は、母さんに「行ってきます!」と言うと、家を飛び出した。
「おーい、真生!」
学校に着くと、突然後ろから声をかけられて俺は振り返る。
「なんだよ、誠かよ」
「誰だと思ったんだよ」
「……誰かな?」
誠は「なんだよそれ!」と言って笑う。
確かあれは11月15日の夕方頃。俺はなぜか気を失っていて、目を覚ますと俺と誠と優珠の3人は、どーいうわけか学校の屋上で寝ていた。
なんで学校にいたのか、なんで屋上にいたのか、それ以外にも色々と謎が多いのだが……なんにも思い出せなかった。
ーーま、考えても仕方ないか。
「それよりお前、もーすぐ期末試験だけど大丈夫なのか?」
「おいおい、俺を誰だと思ってんだよ」
俺はフッと笑って誠を見た。
「あー、はいはい。この学校に転校してきてから、ずっと学年トップの真生様でした、すみません」
「ったく、もうちょい頑張って勉強してくれよ~! 勝負しよーぜ、誠」
「バカ、お前に勝てるやつなんているか……よ」
俺は、無意識に足を止めていた。
「またかよ……。お前さ~、前から思ってたんだけど、俺が“バカ”って言ったあと、そーいう寂しそうな顔すんのやめようぜ……」
誠は「本気で言ってるわけじゃねーんだから」と言うと俺の頭をクシャッと撫でて教室に入っていった。
「何でかな、なんかバカって言葉を聞くと……胸が苦しいんだよな」
***
それから時は経ち、俺達はそのまま何事もなく2年生を終えて、3年生に進級した。
クラス発表の張り紙を見て、俺はため息をついた。
ーー最近、なんか学校もだけど色々つまらねえんだよな……。
「おい、真生~! 3年A組で、また俺ら同じクラス!!」
そう言って誠が俺に抱きついてきたから「うっとーしーんだよ」と無理矢理引き剥がした。
「優珠も、恵も同じクラスだぜ! やっぱり俺ら6人は強い絆で結ばれてるよな!」
俺はピタッと足を止めて誠を見た。
「6人?」
俺がそう言うと、誠は「ん?」と俺を見る。
「俺、誠、優珠、恵……あと誰?」
「あれ? ……俺、今6人って言った?」
「言った」
「……やべー、心霊現象!? やべーー!!」
そう言って騒ぐ誠の頭をコツンと軽く叩いて「朝からうるせー」と言った。そして、2人で新しいクラスに向かって歩いた。
「おはよー」
俺が教室の扉を開くと、皆が集まって何かを見ている。
「何見てんの?」
俺はそれを見て固まった。
「あ、真生! 見てこれ!!」
恵がそう言って俺に見せたのは、見覚えのある1冊の台本だった。
「これさ、2年の時にやった劇の台本なんだけど不思議なんだよね……」
「魔王役と女神役をやった子の名前だけ消されててさ。しかも魔王と女神を誰がやったのか、誰も覚えてないんだよ」
「そいや、本郷は主役の勇者だったじゃん! 覚えてる?」
「けどさ、同じ劇に出たウチらが覚えてないって変じゃない?」
「幽霊だったりしてー!!」
クラスの女子がキャーッと言って楽しそうに怖がる。
けれど、そんなのも俺の耳には届かなかった。
俺が小さく「魔王……」とつぶやくと、恵が目を見開いて俺を見た。
「って、え……ま、真生!?」
「え……」
「なんで泣いてんの?」
「え、あ、目にゴミ入った」
俺は慌てて涙を拭いた。
「真生、なんか最近変だよ?」
「そうか?」
「何かあった?」
「別に、なんもねーよ!」
俺はそう言うと、自分の机にズカズカと歩いて行き、そして腰を下ろした。
そうだ。あの11月15日から、何かがおかしい……。何かが変だ。
俺は、何か大事なことを忘れているような気がした。
学校に行く支度を済ませた俺は、母さんに「行ってきます!」と言うと、家を飛び出した。
「おーい、真生!」
学校に着くと、突然後ろから声をかけられて俺は振り返る。
「なんだよ、誠かよ」
「誰だと思ったんだよ」
「……誰かな?」
誠は「なんだよそれ!」と言って笑う。
確かあれは11月15日の夕方頃。俺はなぜか気を失っていて、目を覚ますと俺と誠と優珠の3人は、どーいうわけか学校の屋上で寝ていた。
なんで学校にいたのか、なんで屋上にいたのか、それ以外にも色々と謎が多いのだが……なんにも思い出せなかった。
ーーま、考えても仕方ないか。
「それよりお前、もーすぐ期末試験だけど大丈夫なのか?」
「おいおい、俺を誰だと思ってんだよ」
俺はフッと笑って誠を見た。
「あー、はいはい。この学校に転校してきてから、ずっと学年トップの真生様でした、すみません」
「ったく、もうちょい頑張って勉強してくれよ~! 勝負しよーぜ、誠」
「バカ、お前に勝てるやつなんているか……よ」
俺は、無意識に足を止めていた。
「またかよ……。お前さ~、前から思ってたんだけど、俺が“バカ”って言ったあと、そーいう寂しそうな顔すんのやめようぜ……」
誠は「本気で言ってるわけじゃねーんだから」と言うと俺の頭をクシャッと撫でて教室に入っていった。
「何でかな、なんかバカって言葉を聞くと……胸が苦しいんだよな」
***
それから時は経ち、俺達はそのまま何事もなく2年生を終えて、3年生に進級した。
クラス発表の張り紙を見て、俺はため息をついた。
ーー最近、なんか学校もだけど色々つまらねえんだよな……。
「おい、真生~! 3年A組で、また俺ら同じクラス!!」
そう言って誠が俺に抱きついてきたから「うっとーしーんだよ」と無理矢理引き剥がした。
「優珠も、恵も同じクラスだぜ! やっぱり俺ら6人は強い絆で結ばれてるよな!」
俺はピタッと足を止めて誠を見た。
「6人?」
俺がそう言うと、誠は「ん?」と俺を見る。
「俺、誠、優珠、恵……あと誰?」
「あれ? ……俺、今6人って言った?」
「言った」
「……やべー、心霊現象!? やべーー!!」
そう言って騒ぐ誠の頭をコツンと軽く叩いて「朝からうるせー」と言った。そして、2人で新しいクラスに向かって歩いた。
「おはよー」
俺が教室の扉を開くと、皆が集まって何かを見ている。
「何見てんの?」
俺はそれを見て固まった。
「あ、真生! 見てこれ!!」
恵がそう言って俺に見せたのは、見覚えのある1冊の台本だった。
「これさ、2年の時にやった劇の台本なんだけど不思議なんだよね……」
「魔王役と女神役をやった子の名前だけ消されててさ。しかも魔王と女神を誰がやったのか、誰も覚えてないんだよ」
「そいや、本郷は主役の勇者だったじゃん! 覚えてる?」
「けどさ、同じ劇に出たウチらが覚えてないって変じゃない?」
「幽霊だったりしてー!!」
クラスの女子がキャーッと言って楽しそうに怖がる。
けれど、そんなのも俺の耳には届かなかった。
俺が小さく「魔王……」とつぶやくと、恵が目を見開いて俺を見た。
「って、え……ま、真生!?」
「え……」
「なんで泣いてんの?」
「え、あ、目にゴミ入った」
俺は慌てて涙を拭いた。
「真生、なんか最近変だよ?」
「そうか?」
「何かあった?」
「別に、なんもねーよ!」
俺はそう言うと、自分の机にズカズカと歩いて行き、そして腰を下ろした。
そうだ。あの11月15日から、何かがおかしい……。何かが変だ。
俺は、何か大事なことを忘れているような気がした。
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