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第一章 大いなる海竜種
24 狂った時空
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北へ歩き始めてから少しすると、明るい光が見えてくる。
やった。
歩調が少しずつ速まり、だんだんと駆け足になった。
そして、森が途切れ_____
「っしゃあ‼」
「抜けたー‼」
明るい太陽、白い砂浜、そして多くの人。
「眩しー」
ランが手を額に当て、日除けを作って笑う。アカバ君も眩しそうに目を細めた。
数時間ぶりの日の光に気分も晴れやかになった感じだ。
さあアオバちゃんの元へ、と歩き出した時、ザッという砂浜を踏んだ音と共に声が聞こえた。
「あれ、お前らこんなトコで何してんだ?」
「んあ、ベネディクトか。さっき森からこの子、アカバ君を連れて出てきたところなんだ。
これから友達とご両親のところまで行こうと思って」
声の主はベネディクトで、その問に答えると彼は不思議そうな顔で首を傾げる。
「森から出てきたところって……。森の出入口はあっちだぞ? 出てからこっちまで歩いてきたのか?」
「え?」
たしかに彼が指さした先には森がある。でも、俺たちはたった今森から出てきた訳であって。
「いや、本当に出てきたところだ」
そう言うとベネディクトはその形の良い眉を顰めて、何言ってんだお前、という顔をする。
「ならお前たちは、崖から出てきたのか?」
「「崖?」」
崖から出てきたとはこれ如何に、と振り向いた俺たちは揃って目を丸くした。
「う、そでしょ」
「ア、アタシたち、森から出てきたよな⁉ なあ、アカバ君‼」
「は、はいっ。暗くて恐い森から、出てきたところですっ」
目の前には地層が剥き出しで、とても登れそうもない高い崖がそびえていた。森どころか、草一本も生えていない。見事なまでの岩肌だ。
ほれみろ、と言わんばかりのベネディクトにいや本当だって、と訴える。
「本当に森から出てきたんだよ。アカバ君もそう言ってるだろ?」
するとその時、遠くからあーっ、という声が聞こえて、いくつかの人影が駆けてきた。
「もう見つけてくれたの⁉ お兄ちゃんたち凄い‼」
「アカバっ‼ 大丈夫⁉」
それはアオバちゃんと、アカバ君のご両親だった。ご両親はアオバ君を抱き締めて怪我はないかなどを確かめている。
アオバちゃんは凄い凄いと繰り返して、興奮しているのか頬が赤くなっていた。
そんな彼女にランが膝を折って話す。
「ご両親に伝えてくれたんだね、ありがとう」
「うんっ‼
でも本当に凄いねっ、私がおじさんとおばさんを呼んで戻ってきたらもういるんだもん‼」
「呼んで戻ってきたら?」
「そうよ、こんなほんの少しで見つけてくれるなんて‼ 本当にお兄ちゃんたちは凄いね‼」
「んん?」
彼女の言っている意味が分からない。少なくとも数時間は森にいたはずだ、と首を傾げるラン。
だが、喜ぶ彼女とアカバ君のご両親を見て、今はそういうことにしておこう、と小さく言った。
アカバ君たちと別れて、ベネディクトと共に船の近くまで戻る。
「そういやベネディクト、ワーナーさんは?」
ふと彼の側に常にあった姿が見えないのを不思議に思って聞いてみると、彼はああレニーなら、とある一点を指した。
「お兄ちゃーん、もういちど高い高いしてー‼」
「ちょっと、次はぼく‼」
「はいはい分かったから順番ですよォ……って、王子‼ 勝手に目の届かないところに行かないでくださいって言ってるでしょう‼」
「すぐそこだろー?」
「そういう問題じゃないんですよ……っちょ、痛い痛い痛い痛い髪引っ張るな‼」
「お兄ちゃん早くー」
「早くー」
「わかった分かりましたからまずその手を離してくださいもげる‼」
島の子供たちの遊び相手になっているその様子を見て、彼がベネディクトの側にいなかった理由を悟った。
ワーナーさん、やっぱアンタ子供に好かれる質《タチ》だわ。
ベネディクトに連れられてビーチの端の方に寄せられて置かれていた机とベンチのセットに座る。
彼が頬杖をついて口を開いた。
「で? 森から出てきたっていうのはどういうことだ?」
その言葉に代表してランがこれまでにあったことをありのままに話す。ベネディクトはポケットから出した紙にペンで話の内容をまとめていった。想像よりも整った文字が紙に行儀よく並んでいく。……そういやこいつ王子だからそりゃ字も綺麗に教育されてるよな。失礼だけど忘れてた。
話が一段落して、彼は書いたメモを見てため息をつく。
「話のリアリティとスズメの服が破れて血がついてるところから本当のことなんだろうけどなぁ……」
合わないんだよ、時間が。
そう言った彼の手にある懐中時計は、午後二時、俺たちが森に入って少しした頃の時刻を示していた。
「ふむ、何やら興味深い話をしているな」
ずしりと背中に重みを感じて、低いバリトンボイスが聞こえた。何事と見るとハルイチさんが俺の背中に乗りかかってベネディクトのメモを読んでいる。
「ほうほう、こういう手のやつが好きな者なら喜んで飛びつくような現象だな」
くつくつと笑う彼の言葉の真意が読めない。いやいつもこの人の言うこととか考えてる事は俺には何一つ分からないんだけども。
「これはいくつか説が唱えられるぞ。一つはその森とこちらでは時間の流れが違う、もう一つはタイムスリップだな」
「タイムスリップ?」
「ああ」
彼は頷いて続けようとするが、正直もう俺の頭はパンク寸前です勘弁してください。
他の三人を見るとランとベネディクトは真剣な表情で聞き入っていることからしっかりと理解していることがうかがえる。が、スズメさんは……あーっと穏やかな笑みっ‼ これ以上ないくらいの穏やかな微笑みだっ‼ これは理解していないっ‼ 理解することを放棄しているっ‼
ハルイチさんはそれに気付いて哀れんだような目でため息をつくと、出来る限り噛み砕いて説明してくれた。
「お前たちはその森を彷徨っている間か、出てきた時に数時間前にタイムスリップしたということだ」
まあおそらく出てきた時だろうな、と仮設を立てる彼に質問、と手を挙げる。
「どうして出てきた時だと思うんだ?」
ハルイチさんはこんな質問にも丁寧に答えてくれた。優しい。
「出てきた直後、お前たちの背後には森ではなく、崖があった。ならば何かしらの事象に巻き込まれたのはこの瞬間であろうことが予測される。……もしかしたら、お前たちがいたという森に入った瞬間にも巻き込まれていたのかもしれんな」
「入った、瞬間……」
「どこからか出ることがあるということはまず入ることから始まるという訳だ」
「……なる、ほど……?」
なんとなく分かった。スズメさんもなんとなくだが少しは理解できたようだった。……微笑みは崩れていなかったが、できたと信じよう、うん。
なら、とベネディクトが口を開く。
「仮にそうだとして、今から調べに行く、というのはできないのか」
「この三人は運良くこちらに帰ってこれたのだ。次もまた帰ってこれるとは限らんが、それでもいいのなら好きに行けばいい」
すばやく返したハルイチさんの言葉に彼はぐぅ、と唸った。流石に彼とてこんな時に危ない賭けはしたくないらしい。
「なら、あまり森に入らないように注意を呼びかけるのが懸命だね」
ランが言ったのに頷いたハルイチさんはこれは憶測だが、と話す。
「この辺りは普段なら竜玉の加護が及んでいる。それさえもとに戻れば、このような訳のわからんことも起こらんだろう」
「あ~、結局そこになるか~」
ベネディクトがため息をついた。俺も密かにつく。
何が起ころうとまず竜玉をなんとかしなれば話が始まらないということだ。
「取り敢えずこの件はサマウィングの方に伝えておこう。……このメモ、もらうぞ」
「おう」
ハルイチさんがベネディクトからメモを受け取り、船の方に歩いていく。
彼が去った後、ずっと黙っていたスズメさんがはあっと大きく息を吐いた。
「やっぱり難しい話はわからねぇな」
「そんなに難しい話だった?」
「学のある人間からしたら簡単だろうけどよぉ……。アタシ学校出てねぇし……」
「まあ今から勉強していけばいいじゃん」
「うぅ……」
優しく言うランにスズメさんは唸って小さく頼む、と呟く。
それを見ていたベネディクトはとにかく、と手を打って立ち上がった。
「今は竜玉が何よりも先決‼
アカリの舞刀術《ぶとうじゅつ》はかなりの攻撃力がある。殺すのは最終手段だが竜達の足止め、頼んだぞ」
次にラン、と彼はランを見る。
「一級医療魔術師は護衛隊にも募集した冒険者にも少ない。仕事は多くなるだろうから覚悟しとけよ」
最後にスズメ、と続ける。
「お前の実力は冒険者協会からも聞き及んでいる。S級のその力、見せてくれよ」
思わず胸がじんと熱くなった。彼は本当に士気を上げるのが上手い。
応と俺たちが答えたのを聞いてからワーナーさんの元へと行く彼の背中を眺めて、これがカリスマなんだろうなぁ、と思った。
やった。
歩調が少しずつ速まり、だんだんと駆け足になった。
そして、森が途切れ_____
「っしゃあ‼」
「抜けたー‼」
明るい太陽、白い砂浜、そして多くの人。
「眩しー」
ランが手を額に当て、日除けを作って笑う。アカバ君も眩しそうに目を細めた。
数時間ぶりの日の光に気分も晴れやかになった感じだ。
さあアオバちゃんの元へ、と歩き出した時、ザッという砂浜を踏んだ音と共に声が聞こえた。
「あれ、お前らこんなトコで何してんだ?」
「んあ、ベネディクトか。さっき森からこの子、アカバ君を連れて出てきたところなんだ。
これから友達とご両親のところまで行こうと思って」
声の主はベネディクトで、その問に答えると彼は不思議そうな顔で首を傾げる。
「森から出てきたところって……。森の出入口はあっちだぞ? 出てからこっちまで歩いてきたのか?」
「え?」
たしかに彼が指さした先には森がある。でも、俺たちはたった今森から出てきた訳であって。
「いや、本当に出てきたところだ」
そう言うとベネディクトはその形の良い眉を顰めて、何言ってんだお前、という顔をする。
「ならお前たちは、崖から出てきたのか?」
「「崖?」」
崖から出てきたとはこれ如何に、と振り向いた俺たちは揃って目を丸くした。
「う、そでしょ」
「ア、アタシたち、森から出てきたよな⁉ なあ、アカバ君‼」
「は、はいっ。暗くて恐い森から、出てきたところですっ」
目の前には地層が剥き出しで、とても登れそうもない高い崖がそびえていた。森どころか、草一本も生えていない。見事なまでの岩肌だ。
ほれみろ、と言わんばかりのベネディクトにいや本当だって、と訴える。
「本当に森から出てきたんだよ。アカバ君もそう言ってるだろ?」
するとその時、遠くからあーっ、という声が聞こえて、いくつかの人影が駆けてきた。
「もう見つけてくれたの⁉ お兄ちゃんたち凄い‼」
「アカバっ‼ 大丈夫⁉」
それはアオバちゃんと、アカバ君のご両親だった。ご両親はアオバ君を抱き締めて怪我はないかなどを確かめている。
アオバちゃんは凄い凄いと繰り返して、興奮しているのか頬が赤くなっていた。
そんな彼女にランが膝を折って話す。
「ご両親に伝えてくれたんだね、ありがとう」
「うんっ‼
でも本当に凄いねっ、私がおじさんとおばさんを呼んで戻ってきたらもういるんだもん‼」
「呼んで戻ってきたら?」
「そうよ、こんなほんの少しで見つけてくれるなんて‼ 本当にお兄ちゃんたちは凄いね‼」
「んん?」
彼女の言っている意味が分からない。少なくとも数時間は森にいたはずだ、と首を傾げるラン。
だが、喜ぶ彼女とアカバ君のご両親を見て、今はそういうことにしておこう、と小さく言った。
アカバ君たちと別れて、ベネディクトと共に船の近くまで戻る。
「そういやベネディクト、ワーナーさんは?」
ふと彼の側に常にあった姿が見えないのを不思議に思って聞いてみると、彼はああレニーなら、とある一点を指した。
「お兄ちゃーん、もういちど高い高いしてー‼」
「ちょっと、次はぼく‼」
「はいはい分かったから順番ですよォ……って、王子‼ 勝手に目の届かないところに行かないでくださいって言ってるでしょう‼」
「すぐそこだろー?」
「そういう問題じゃないんですよ……っちょ、痛い痛い痛い痛い髪引っ張るな‼」
「お兄ちゃん早くー」
「早くー」
「わかった分かりましたからまずその手を離してくださいもげる‼」
島の子供たちの遊び相手になっているその様子を見て、彼がベネディクトの側にいなかった理由を悟った。
ワーナーさん、やっぱアンタ子供に好かれる質《タチ》だわ。
ベネディクトに連れられてビーチの端の方に寄せられて置かれていた机とベンチのセットに座る。
彼が頬杖をついて口を開いた。
「で? 森から出てきたっていうのはどういうことだ?」
その言葉に代表してランがこれまでにあったことをありのままに話す。ベネディクトはポケットから出した紙にペンで話の内容をまとめていった。想像よりも整った文字が紙に行儀よく並んでいく。……そういやこいつ王子だからそりゃ字も綺麗に教育されてるよな。失礼だけど忘れてた。
話が一段落して、彼は書いたメモを見てため息をつく。
「話のリアリティとスズメの服が破れて血がついてるところから本当のことなんだろうけどなぁ……」
合わないんだよ、時間が。
そう言った彼の手にある懐中時計は、午後二時、俺たちが森に入って少しした頃の時刻を示していた。
「ふむ、何やら興味深い話をしているな」
ずしりと背中に重みを感じて、低いバリトンボイスが聞こえた。何事と見るとハルイチさんが俺の背中に乗りかかってベネディクトのメモを読んでいる。
「ほうほう、こういう手のやつが好きな者なら喜んで飛びつくような現象だな」
くつくつと笑う彼の言葉の真意が読めない。いやいつもこの人の言うこととか考えてる事は俺には何一つ分からないんだけども。
「これはいくつか説が唱えられるぞ。一つはその森とこちらでは時間の流れが違う、もう一つはタイムスリップだな」
「タイムスリップ?」
「ああ」
彼は頷いて続けようとするが、正直もう俺の頭はパンク寸前です勘弁してください。
他の三人を見るとランとベネディクトは真剣な表情で聞き入っていることからしっかりと理解していることがうかがえる。が、スズメさんは……あーっと穏やかな笑みっ‼ これ以上ないくらいの穏やかな微笑みだっ‼ これは理解していないっ‼ 理解することを放棄しているっ‼
ハルイチさんはそれに気付いて哀れんだような目でため息をつくと、出来る限り噛み砕いて説明してくれた。
「お前たちはその森を彷徨っている間か、出てきた時に数時間前にタイムスリップしたということだ」
まあおそらく出てきた時だろうな、と仮設を立てる彼に質問、と手を挙げる。
「どうして出てきた時だと思うんだ?」
ハルイチさんはこんな質問にも丁寧に答えてくれた。優しい。
「出てきた直後、お前たちの背後には森ではなく、崖があった。ならば何かしらの事象に巻き込まれたのはこの瞬間であろうことが予測される。……もしかしたら、お前たちがいたという森に入った瞬間にも巻き込まれていたのかもしれんな」
「入った、瞬間……」
「どこからか出ることがあるということはまず入ることから始まるという訳だ」
「……なる、ほど……?」
なんとなく分かった。スズメさんもなんとなくだが少しは理解できたようだった。……微笑みは崩れていなかったが、できたと信じよう、うん。
なら、とベネディクトが口を開く。
「仮にそうだとして、今から調べに行く、というのはできないのか」
「この三人は運良くこちらに帰ってこれたのだ。次もまた帰ってこれるとは限らんが、それでもいいのなら好きに行けばいい」
すばやく返したハルイチさんの言葉に彼はぐぅ、と唸った。流石に彼とてこんな時に危ない賭けはしたくないらしい。
「なら、あまり森に入らないように注意を呼びかけるのが懸命だね」
ランが言ったのに頷いたハルイチさんはこれは憶測だが、と話す。
「この辺りは普段なら竜玉の加護が及んでいる。それさえもとに戻れば、このような訳のわからんことも起こらんだろう」
「あ~、結局そこになるか~」
ベネディクトがため息をついた。俺も密かにつく。
何が起ころうとまず竜玉をなんとかしなれば話が始まらないということだ。
「取り敢えずこの件はサマウィングの方に伝えておこう。……このメモ、もらうぞ」
「おう」
ハルイチさんがベネディクトからメモを受け取り、船の方に歩いていく。
彼が去った後、ずっと黙っていたスズメさんがはあっと大きく息を吐いた。
「やっぱり難しい話はわからねぇな」
「そんなに難しい話だった?」
「学のある人間からしたら簡単だろうけどよぉ……。アタシ学校出てねぇし……」
「まあ今から勉強していけばいいじゃん」
「うぅ……」
優しく言うランにスズメさんは唸って小さく頼む、と呟く。
それを見ていたベネディクトはとにかく、と手を打って立ち上がった。
「今は竜玉が何よりも先決‼
アカリの舞刀術《ぶとうじゅつ》はかなりの攻撃力がある。殺すのは最終手段だが竜達の足止め、頼んだぞ」
次にラン、と彼はランを見る。
「一級医療魔術師は護衛隊にも募集した冒険者にも少ない。仕事は多くなるだろうから覚悟しとけよ」
最後にスズメ、と続ける。
「お前の実力は冒険者協会からも聞き及んでいる。S級のその力、見せてくれよ」
思わず胸がじんと熱くなった。彼は本当に士気を上げるのが上手い。
応と俺たちが答えたのを聞いてからワーナーさんの元へと行く彼の背中を眺めて、これがカリスマなんだろうなぁ、と思った。
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