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37.すれ違い
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塾に行き始めると、生活のリズムが変わった。
佳奈と登校し、授業を受けて、放課後図書室に居て、サッカー部の様子を見て、家に帰り尚とラインをすると言う生活が、放課後は直ぐ家に帰り、違う私に変身し、塾に向かうと言う様になった。
ある日、尚からラインが来た。
”最近、デートに行けて無いから、土曜日遊園地行かない?”
私は、連日の塾通いで疲れ、土曜はゆっくりしたいと思っていた。それに、休みつつも、一日のノルマを決めて勉強に取り組むつもりでいた。
”遊園地も良いけど、塾の宿題あるんだ”
と、深く考えずに送ってしまった。
”最近、勉強ばかりだよね。たまには息抜きどうかな?一緒に行きたい。”
尚は、悪気があった訳では無いだろうし、純粋に心配してくれていたのだと思うのだが、
”勉強しないと。来年受験だし”
こんな返事を送ってしまった。冷静になってから大いに不安になる。
その日、既読になって、返事が無かった事も不安を助長するのであった。
翌日、尚の反応が怖くて、動揺もあり、学校に行っても、尚の方を見られない私が居た。不意に目が合うのを避けていた。
尚が視線を送っている様な気配もしたので、とにかく本を読んで誤魔化していた。
昼休み一人になった瞬間、ついに、尚は私の肩をたたく。
「ちょっといいかな。」
尚に促され、人けのないプールの更衣室裏について行く。
枯れた雑草があった。寒い場所だ。ブルブル震えながら、尚の瞳を見つめていると、
「オレ何か怒らせた?」
「違う、私が悪い」
「えっ?何が悪いの」
「デート行けないって言ったり、放課後も直ぐ帰るし…」
「いや、悪くないし、俺が何か嫌われたのかなって、心配だよ」
「違うの、受験があるし、塾通いが忙しくてさ。私だってデート行きたいよ。」
「そっか、俺も今年は、サッカーで結果出して、サッカーの強豪校に入りたいんだ。だから、練習も頑張るし、デートは貴重な練習休みに一緒に合わせられないかな?」
「うん…そうだね。」
私は力なく頷いた。何か違うと感じた。尚の休みがより貴重だと言う風に聞こえる。私だって同じ様に必死なのだ。部活をしていないから暇だと思われているのだろうか。
「2人とも受かったら良いよね…お互いがんばろう。」
私はそう言うと教室に歩き出すのであった。
尚は、あたりを見渡して
「先に行って」と言った。
歩きながら考える。貴重な休みだから2人でいたいと言う事なのだろうか。私が意地悪に考えすぎなのだろうか。
一体どうしたら恋愛も勉強もサッカーも両立出来るのだろう。この時はそんな器用な事が出来るとは到底思えなかった。
そんな事を思うと涙が滲んでくる。
しかし少量の涙はコンタクトに吸収された。
垂れる事も無かった。
私は、この日の学校からは早く帰りたくて仕方が無かった。午後の授業が終わり終礼の後、大急ぎで家に帰り、塾へ行く準備をするつもりで、コンタクトを外す。
ピントのボヤけた目でボーと天井を眺めベットに横になっていた。気が抜けたら
目から涙が溢れて止まらなくなった。
手で涙を拭いながら、鼻をかむ為、枕もとのティシュを取り起き上がる。
机の引き出しの私の最新眼鏡を装着すると、周囲にピントが合った。すると、涙が止まって勉強モードに切り替えることができた。
部屋の姿見に映った泣き腫れた目を優しくさする。そして、眼鏡のブリッジを人差し指で持ち上げ、位置を直す。レンズ部の輪郭の凹みが誇らしく、私の本来の姿がこれなのだと主張をしているかの様に映っていた。
私は、何事も無かったかのように塾に行き、その日も勉学に励むのであった。
佳奈と登校し、授業を受けて、放課後図書室に居て、サッカー部の様子を見て、家に帰り尚とラインをすると言う生活が、放課後は直ぐ家に帰り、違う私に変身し、塾に向かうと言う様になった。
ある日、尚からラインが来た。
”最近、デートに行けて無いから、土曜日遊園地行かない?”
私は、連日の塾通いで疲れ、土曜はゆっくりしたいと思っていた。それに、休みつつも、一日のノルマを決めて勉強に取り組むつもりでいた。
”遊園地も良いけど、塾の宿題あるんだ”
と、深く考えずに送ってしまった。
”最近、勉強ばかりだよね。たまには息抜きどうかな?一緒に行きたい。”
尚は、悪気があった訳では無いだろうし、純粋に心配してくれていたのだと思うのだが、
”勉強しないと。来年受験だし”
こんな返事を送ってしまった。冷静になってから大いに不安になる。
その日、既読になって、返事が無かった事も不安を助長するのであった。
翌日、尚の反応が怖くて、動揺もあり、学校に行っても、尚の方を見られない私が居た。不意に目が合うのを避けていた。
尚が視線を送っている様な気配もしたので、とにかく本を読んで誤魔化していた。
昼休み一人になった瞬間、ついに、尚は私の肩をたたく。
「ちょっといいかな。」
尚に促され、人けのないプールの更衣室裏について行く。
枯れた雑草があった。寒い場所だ。ブルブル震えながら、尚の瞳を見つめていると、
「オレ何か怒らせた?」
「違う、私が悪い」
「えっ?何が悪いの」
「デート行けないって言ったり、放課後も直ぐ帰るし…」
「いや、悪くないし、俺が何か嫌われたのかなって、心配だよ」
「違うの、受験があるし、塾通いが忙しくてさ。私だってデート行きたいよ。」
「そっか、俺も今年は、サッカーで結果出して、サッカーの強豪校に入りたいんだ。だから、練習も頑張るし、デートは貴重な練習休みに一緒に合わせられないかな?」
「うん…そうだね。」
私は力なく頷いた。何か違うと感じた。尚の休みがより貴重だと言う風に聞こえる。私だって同じ様に必死なのだ。部活をしていないから暇だと思われているのだろうか。
「2人とも受かったら良いよね…お互いがんばろう。」
私はそう言うと教室に歩き出すのであった。
尚は、あたりを見渡して
「先に行って」と言った。
歩きながら考える。貴重な休みだから2人でいたいと言う事なのだろうか。私が意地悪に考えすぎなのだろうか。
一体どうしたら恋愛も勉強もサッカーも両立出来るのだろう。この時はそんな器用な事が出来るとは到底思えなかった。
そんな事を思うと涙が滲んでくる。
しかし少量の涙はコンタクトに吸収された。
垂れる事も無かった。
私は、この日の学校からは早く帰りたくて仕方が無かった。午後の授業が終わり終礼の後、大急ぎで家に帰り、塾へ行く準備をするつもりで、コンタクトを外す。
ピントのボヤけた目でボーと天井を眺めベットに横になっていた。気が抜けたら
目から涙が溢れて止まらなくなった。
手で涙を拭いながら、鼻をかむ為、枕もとのティシュを取り起き上がる。
机の引き出しの私の最新眼鏡を装着すると、周囲にピントが合った。すると、涙が止まって勉強モードに切り替えることができた。
部屋の姿見に映った泣き腫れた目を優しくさする。そして、眼鏡のブリッジを人差し指で持ち上げ、位置を直す。レンズ部の輪郭の凹みが誇らしく、私の本来の姿がこれなのだと主張をしているかの様に映っていた。
私は、何事も無かったかのように塾に行き、その日も勉学に励むのであった。
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