19 / 37
第2章 死系主人公
逃げ出すのは主人公じゃない
しおりを挟む
背筋が凍り付く。笑ってなどいられない。混乱する頭の中どうしようかと思考を巡らす間もなく、心臓に激痛が走る。
「うぐっ…?」
慌てて刑務官を押し返すとそこには刑務官はおらず、空を切る両手。俺が刑務官はしゃがんだのだと理解したときには、彼は既に腕を大きく振りぬいていた。そう、俺が見るころには行動は終わっていたのだ。振りぬいた軌道上と重なったのは俺の両手…。刑務官の一振りにより、俺の右手はちぎれ左腕はへし折られていた。
「ソーン!?…おまえ!!」
レイが怒りに声を荒げる。俺が痛みに膝をつくと、刑務官が倒れる俺をよけるように後ろに下がる。直後、刑務官のいた場所に火柱がたつ。もちろん俺からも遠くない、熱さに悲鳴を上げるほど至近距離である。続いて背中を突き飛ばされ火柱の中に転がる。しばしの浮遊感の後地面に激突した。
「この体だと持続的な運動は無理だから許して。それより早くこっちに!」
突き飛ばしたのはどうやらレイのようだ。俺はゆっくりと左胸を見ると、服に拳ほどの長さの黒い線の痕がついている。左腕に意識を向けて治るよう念じると、同じ痛みの後ぐしゃぐしゃと音が鳴り元通りになる。段々慣れてきているが、痛いものは痛い。
服をめくると服の痕と重なるように体にも赤い痕がついていた。過度の瞬間的な魔力放出による炎症か。貫通力があるが殺傷性は低い。しかし、場所によっては致死だ。例えば心臓のような重要な臓器など。
確かめに来たのか。とりあえず向き合わなければ…。刑務官を探すが、どこにもいない。代わりに見つかった俺の右手を拾い上げる。
「床に穴をあけてあんたを落としたの!早く逃げる、さあ!」
レイの言葉に我に返り扉に向かって走る。部屋を出るときに一瞬振り返った。天井に穴が開いているのは確認できたが、刑務官は追ってきてなかった。どんな魔法式を練ったら床に穴をあけられるんだ?前を飛ぶレイに視線を戻すと、飛び方の角度的にパンツが丸見えになっていた。思わず立ち止まるとレイもそれに合わせて止まる。
「何してんの?」
俺は見えたパンツに動揺したとも言えず、先ほど思い浮かべた疑問を素直に聞いてみた。床に穴をあけたことではなく、怒ったことについてだ。
「俺は死なない。しかも死ぬほどの威力でもなかったのに、そんなに怒ることではない。」
俺の言葉でレイの表情から怒りが消えた。とても冷たい目で俺を見るが、それ以上のことは何もしてこない。どうせ回復する。そう思ったとき再び心臓とくっつけていた右手に先ほど同様の痛みを感じ、服をめくってみると痕はなくなって右手はつながっていた。来るとわかっている痛みについてはだいぶ慣れてきて、表情に出さないよう我慢できるようになってきた。
「…ここはよくない。出よう。…これ以上は穴はあけられないから。」
レイは俺の胸の傷がなくなっているのを見て、独り言のようにつぶやいた。
俺は正直にパンツが見えてるといった方が、レイの機嫌を損ねなかったのかもしれないと思った。
ゆっくりと地面に降りてきた半透明な彼女がステップを踏むと足が少し濃くなり、流れるようなしなやかな動きで壁に回し蹴りをすると爆発とともに穴が開いた。幽霊だからか?でも文献では無詠唱、無法式で魔法が使えるものもいると聞いたことがある。いや、これは単純な魔力放出か?
何にしても今は関係ないことか。レイは危険だとわかっただけで十分。パンツの件は言わなくて正解。
開いた穴からレイに視線を戻したが、レイはもうその場にはいなかった。レイは…俺を変な気分にさせる。あ、いやらしい意味とかではなく、だ。パンツは関係ない。調子が狂うのに近い。彼女は俺にどうしてほしいのだろう?
「手筈と違うようだけどその手首、あなたが実行したようね。」
あけた穴からのそのそと頼りがいのある男が出てきた。偶然にも立ち止まった場所のすぐ横はブライと俺のいた牢屋であった。
「うぐっ…?」
慌てて刑務官を押し返すとそこには刑務官はおらず、空を切る両手。俺が刑務官はしゃがんだのだと理解したときには、彼は既に腕を大きく振りぬいていた。そう、俺が見るころには行動は終わっていたのだ。振りぬいた軌道上と重なったのは俺の両手…。刑務官の一振りにより、俺の右手はちぎれ左腕はへし折られていた。
「ソーン!?…おまえ!!」
レイが怒りに声を荒げる。俺が痛みに膝をつくと、刑務官が倒れる俺をよけるように後ろに下がる。直後、刑務官のいた場所に火柱がたつ。もちろん俺からも遠くない、熱さに悲鳴を上げるほど至近距離である。続いて背中を突き飛ばされ火柱の中に転がる。しばしの浮遊感の後地面に激突した。
「この体だと持続的な運動は無理だから許して。それより早くこっちに!」
突き飛ばしたのはどうやらレイのようだ。俺はゆっくりと左胸を見ると、服に拳ほどの長さの黒い線の痕がついている。左腕に意識を向けて治るよう念じると、同じ痛みの後ぐしゃぐしゃと音が鳴り元通りになる。段々慣れてきているが、痛いものは痛い。
服をめくると服の痕と重なるように体にも赤い痕がついていた。過度の瞬間的な魔力放出による炎症か。貫通力があるが殺傷性は低い。しかし、場所によっては致死だ。例えば心臓のような重要な臓器など。
確かめに来たのか。とりあえず向き合わなければ…。刑務官を探すが、どこにもいない。代わりに見つかった俺の右手を拾い上げる。
「床に穴をあけてあんたを落としたの!早く逃げる、さあ!」
レイの言葉に我に返り扉に向かって走る。部屋を出るときに一瞬振り返った。天井に穴が開いているのは確認できたが、刑務官は追ってきてなかった。どんな魔法式を練ったら床に穴をあけられるんだ?前を飛ぶレイに視線を戻すと、飛び方の角度的にパンツが丸見えになっていた。思わず立ち止まるとレイもそれに合わせて止まる。
「何してんの?」
俺は見えたパンツに動揺したとも言えず、先ほど思い浮かべた疑問を素直に聞いてみた。床に穴をあけたことではなく、怒ったことについてだ。
「俺は死なない。しかも死ぬほどの威力でもなかったのに、そんなに怒ることではない。」
俺の言葉でレイの表情から怒りが消えた。とても冷たい目で俺を見るが、それ以上のことは何もしてこない。どうせ回復する。そう思ったとき再び心臓とくっつけていた右手に先ほど同様の痛みを感じ、服をめくってみると痕はなくなって右手はつながっていた。来るとわかっている痛みについてはだいぶ慣れてきて、表情に出さないよう我慢できるようになってきた。
「…ここはよくない。出よう。…これ以上は穴はあけられないから。」
レイは俺の胸の傷がなくなっているのを見て、独り言のようにつぶやいた。
俺は正直にパンツが見えてるといった方が、レイの機嫌を損ねなかったのかもしれないと思った。
ゆっくりと地面に降りてきた半透明な彼女がステップを踏むと足が少し濃くなり、流れるようなしなやかな動きで壁に回し蹴りをすると爆発とともに穴が開いた。幽霊だからか?でも文献では無詠唱、無法式で魔法が使えるものもいると聞いたことがある。いや、これは単純な魔力放出か?
何にしても今は関係ないことか。レイは危険だとわかっただけで十分。パンツの件は言わなくて正解。
開いた穴からレイに視線を戻したが、レイはもうその場にはいなかった。レイは…俺を変な気分にさせる。あ、いやらしい意味とかではなく、だ。パンツは関係ない。調子が狂うのに近い。彼女は俺にどうしてほしいのだろう?
「手筈と違うようだけどその手首、あなたが実行したようね。」
あけた穴からのそのそと頼りがいのある男が出てきた。偶然にも立ち止まった場所のすぐ横はブライと俺のいた牢屋であった。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる