死にたい私はいまを生きてる

深月 操

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死後1ヵ月のお母さんの死体。お母さんは可哀そうな人です。

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中学校3年生の冬。
お母さんが死んだ。


小学校の頃から度々酔っぱらって電話をかけてきて長時間愚痴をきかせるお母さん。
中学校に上がっても、テスト前でも、お母さんにそんなことは関係ない。

私を心配する言葉を聞いた記憶はない。
自分の不幸話、自分が可哀そう。そんな話を泣きながらずっと。
お母さん本当に可哀そうだね。


お母さんは離婚してから実家に帰っていた。
仕事もせずに昼夜問わず酒を飲んで暮らしていたみたい。

小学校の頃。
一度だけお母さんがどうしても私に会いたいって言ってお母さんの実家に泊まりに行ったことがある。
父親も渋々だったがしつこさに負けたようだった。

久しぶりに会うお母さん。
私が着いた昼間はお酒も飲んでおらず、いつも電話で話す人とは別人みたいだった。
ちゃんと私の心配もしてくれた。
ちょっとだけ嬉しかった。

でも、夜になって。
いつの間にかお母さんの姿は消えていた。

ゴミ箱にあった鬼殺しというお酒のパックをおばあちゃんが見つけて、泣いて私に謝っていた。
おじいちゃんも泣いていた。
私は泣かなかった。

この人はもうだめだと心から思った。

結局次の日になってもお母さんは帰ってこなかった。
私は泣いて謝る母方の祖父母に大丈夫と言って、そのまま家に帰った。

鬼殺しってそんなに美味しいのかな?帰り道にそんなことを考えてちょっとだけ可笑しくなった。


話を中学校3年生の冬に戻す。

この時期、朝学校に行こうとすると家の玄関の前に丸まっている野良猫が居ることがよくあった。
私が近くを通るとたまにニャーンと鳴いた。

私はオカルト的なものにあまり関心がない。
けれどなぜかその猫を見て母のことを思い出した。

猫は1週間ぐらい良く見たというか家の玄関に居ついていたけれど、また見なくなった。


それから少しして母の実家から父にお母さんが亡くなった知らせが届いた。


父はさすがに言葉を選んで私に説明したけれど、だいたいこんな感じ。
母は実家を出て男の人と住むようになったらしい。
それでも実家には週1回くらいは連絡をしていた。
けれど1か月以上連絡が途絶えていた。

心配になったおじいちゃんがその男の人の家に行って鍵を開けてもらうと、
死んでしばらく経った母とその男の人が居たみたい。

父は死因を私に話さなかった。
私もそこまで興味は無かった。なんとなく自殺かなと思っていた。
今でも聞いていないから分からないけれど。


一応お葬式には行った。
おじいちゃんとおばあちゃんは顔は見ない方がいいって言った。

私は大丈夫って言ってお母さんの死に顔を見た。

読んでくれる人の気分を害すると思うので詳しい描写は書かない。
感想だけ言うとシンプルに気持ち悪いと思った。


私のお母さんは可哀そう。
自分が可哀そうだと思いながらダラダラ生きてお酒を飲んで生きてた。
それも飽きて死んでしまった。

1人娘に気持ち悪いと思われて最後見送られたんだね。
本当に可哀そう。

可哀そうで気持ち悪い人。
生きてた時から気持ち悪いと思ってたよ、お母さん。


私はこんな女には絶対になりたくない。
お母さん、これからも絶対にお墓参りには行かないからね。
さようなら。
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