魔王様に恋する料理人

カエデネコ

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使い魔のオムライス

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「僕に買い出しさせるとかひどいよ!僕は偉大なる使い魔中の使い魔の一族の超強力な力の持ち主なんたぞっ!使いっぱしりさせるなよ」

 犬の耳のついた可愛らしい男の子。黒髪に碧色の目をしている。名前はルドルフ。魔王様の使い魔らしいけど、今は私の周辺の護衛兼世話役。

「オムライス食べたいって言ってたじゃないの。だって卵がないんだもの。お昼ご飯に作ってあげるから……お疲れ様」

 ハイッと手作りクッキーを口に入れると黙り込む。

「サクサクしてて美味しい……」

 魔王様の使い魔も食いしん坊だ。飼い主さんに似るのね……。

 買ってきてもらった材料を片付ける。

「さて、お昼ご飯にオムライス作ってあげるわ」

 お茶とクッキーを食べながら、もちろんだよっ!と椅子に座って待つ。

「魔王様の分はお昼はいらないかな?」

「いるぞーーっ!」

 バーーァンと扉を開けて入ってきた。ノックぐらいしなさいよ……長い黒髪をたなびかせて堂々としている。

「あれ!?アナベル様と会っていたんじゃ!?」

 もう帰った。と魔王様はちゃっかりルドルフの横に座った。いや……ここ調理場だし。

「自室でお待ちください」

 あたしが部屋へ行くよう指差すとイラッとする。

「ここで食べる!なんで使い魔のルドルフがよくてオレがだめなんだ!?」

「魔王様、僕と張り合わないでくださいよ。ここは下働きの場所だからじゃないですか?」

 ルドルフが正論を言う。

「オレは魔王だ。つまり、王!好きなようにできる。オレが良いと言えば良いんだ」

「お好きなように……」

 あたしは苦笑し、ルドルフは呆れている。

 とりあえずお昼になるので作る。
 小さく鶏肉を切る。玉ねぎもみじん切りにし、バターで炒めていく。調理場はバターの香りが広がっていき、お腹が空いてくる。

 ジュージュー音をたてているところへご飯、ケチャップ。
 違うフライパンで次は甘めの卵液を入れる。半熟……ここ!いま!!ご飯投入!素早く、くるりと巻く。ポンッとお皿へ移した。

「うわぁ!」

「はい。ルドルフからどうぞ」

 目をキラキラさせてルドルフがお皿の中身を見る。ケチャップでスマイルマークを書いてあげる。
 スプーンでパクっと半熟たまごの黄色い生地と赤いケチャップライスを一緒に食べて、オイシーとホッペを抑えるルドルフ。

「ちょ、ちょっと待て!?なんで使い魔の後にオレなんだ?普通、主人からじゃ……?」

「ルドルフは材料の買い出しに行ってくれたのよ?順番です」

 くっ……と悔しげな魔王様。

「今度、オレが行ってくるから、なんでも頼め!」

 そうだった。彼は負けず嫌いだった。

 スーパーマーケットにイケメン魔王様が買い物に??想像すると変な気がしたが、買い出しはめんどくさいのでありがたい。にっこり微笑んで私は言った。

「じゃあ、魔王様にもお願いすることあるかもしれません」

 あちらの世界で死んだことになってる私が行くのはさすがにまずいので、今までルドルフに頼んでいた。人の世界へ行くことができる魔族は力が強くなければ無理だ。だから頼める人も限られる。

 買い物かご、意外と似合うかもねと私は思いつつ、2つ目のオムライスを作り上げたのだった。

「はー、ウマイ。お昼の時間に間に合わせて正解だったな」

「まさか……お昼ご飯に来るために切り上げて来たの!?」

 悪いか?とまったく悪く無さそうにいいながらモグモグ美味しそうに食べていく。スプーンをピッと私に向けて言う。

「オレのこと好き好き言う割に本心じゃ、思ってないよな?」

「え!?そんなことは……イケメンすぎて眩しいだけです。あまりに美形だと逆に緊張するのよね」

「そういうことにしてやってやるよ」

 魔王様はカランッと空っぽの皿にスプーンを置いたのだった。ごちそーさまと背中を見せて出ていってしまう。

 ルドルフがレモン水を飲みつつ言った。

「魔王様、意外とマナのこと好きなんじゃない?」

 ……と。
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