魔王様に恋する料理人

カエデネコ

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本日の生姜焼き定食

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 白いテーブルクロスを机にかける。セルフサービス用のカウンターは広がり、お盆を置きやすくなった。奥に厨房が見え、対面で対応可能となった。

 床も窓もピカピカに磨いて清潔感がでた。上の鎖についていたホコリがかぶったぼんやりとしたランプは撤去し、明るくて丸くて可愛い照明をいくつもつけて、夜も見えやすくした。

「いい感じだわ!」

 腰に手をやり自己満足であるが、完成した食堂に嬉しくなる。

「いいね!このボード、何に使うのさ?」

 入り口に置かれたボードが気になり、ルドルフが言う。

 チョークを持ち、メニューと呼べるほど、作る余裕はないので、今日の献立と書く。

「へええ!いいね。わかりやすいね」

 本日の献立は生姜焼き、ポテトサラダに味噌汁。そしてご飯はおかわりできますっと、絵付きで書く。

「ふふっ。良いでしょ?食べたくならない?」

「なるなる!はーやーく食べたい!!」

 さっそく、新しい食堂をオープンさせた。一番乗りは魔王様とサシャと………ザカリアス。

「なんでおまえがいるんだよ!?」

「アル、つめたいなー!いいじゃないか!マナのご飯美味しいって評判だから食べたいんだよ」

「魔王城で働く者限定だ!おまえは何もしてなきだろっ!?」

 私はハイハイと生姜焼き定食を4つ並べる。

「やさしーなー!マナはー!」

「喧嘩しないで食べてください」

 あたしがそう言うと、魔王様がチッと舌打ちした。

「ほら、冷めてしまいますよ」 

 サシャもそう言ってなだめる。ルドルフに至っては無視してオイシー!とすでに食べている。

「うまいな……白ご飯と合うな」

 あたしはそうでしょとニコニコして魔王様を見る。

「いいなぁ。アルはマナに好かれていて……」

 ザカリアスが羨ましそうに言う。思わず熱い味噌汁を飲み込んでしまったらしく、魔王はゲホゲホッとむせる。

「な、なななにをいきなり言ってる!?」

「生姜焼き美味しいね!マナのご飯を無条件で食べれるなんて……マナをゴーシュ家に連れさりたいよ。アルはいるの?」

 ニヤニヤと笑うザカリアスに魔王様はジロッと見て言う。

「いるに決まってるだろう。まあ、マナのやりたいようにやればいいが………グハッ!?」

 あたしは思わず首に抱きついていた。魔王様が苦しそうな声をあげたが、無視。

「魔王様!ありがとうっ!」

 必要と言ってくれて、嬉しすぎて!帰れ!と言っていたのに一歩前進してる気がした。

「あのー……マナ、魔王様が苦しそうです」

 サシャが冷静に言う。

「あっ、ごめんなさーい!」

 ヘヘッと笑った私にルドルフは……『災厄だね』と呟いたのだった。魔王様が殺す気かよ!と引いている。いや……つい…。あたし、なんか力が怪力になってない?

 そう思ったとき、サシャが生姜焼き定食やばいかもしれませんと言う。

「力とか魔力とか……複数の付加効力ありませんか!?」

 魔王様があるなぁと言う。

「気をつけて作るようにしろよ」

「食堂の完成の嬉しさで、力が入っちゃったみたい」

 はりきりすぎてしまった!と言うあたしに困ったように苦笑する魔王様。

「ごちそうさまー。そろそろ帰るよ。ラブラブを見せつけられて嫌になるよ」

「ラブ!?どこにそんなものがあった!?」

 ザカリアスがつまらなさそうに言い、魔王様が動揺している。

「そのへんにして、食堂から出ないと、他の者たちが入れないよ」

 ルドルフがドアのところから、まだかなーと覗く魔王城勤務の仲間たちを指差す。魔王様たちと同席は怖いらしい……。

 魔王様やサシャも仕事へ戻っていった。

 食堂はにぎやかになった。ワイワイと言いながら食べに来てくれる皆でいっぱいだ。

「生姜焼きっていうんですか!?」

「力が湧いてくる!これで仕事頑張れる!」

「24時間いけるぞ!」

「おまえも残業なのか!?」

「定時で帰ったことはない」

 魔王城勤務、意外とブラックそうである。

 生姜と砂糖醤油の甘辛い匂いが食堂に広がり、なんとなく幸せな気持ちにさせてくれるのだった。
 

 
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