15 / 304
騒がしい後宮
しおりを挟む
「誰かーー!来てください!」
廊下に響く声に私は跳ね起きた。バサッと顔の横に積み上げて置いてあった本が落ちてきたが、かき分ける。
「お嬢様!?」
アナベルの声を無視して、私は走っていた。泣き顔のメイドが広いホールで泣き崩れていた。
「どうしたの!?」
「シエラお嬢様が!お倒れになったのです」
バッと私は身を翻し、駆けていく。ドアを開けると床に倒れ、蒼白なシエラ様。カップがひっくり返り、こぼれているお茶……これは。
「毒?」
私は素早く彼女の体に手を当てて、解毒の術を施していく。簡単な毒で致死性は無いものだ。顔色が戻ってきた。
私は抱きかかえたまま意識を確認する。こんな時は無理に動かさないほうがいい。
「大丈夫ですか?シエラ様?」
「……ううっ………」
うん。大丈夫そう。私がほっとした時に王宮医師がやってきた。来るのが、遅い。老齢のようだから仕方ないだろうけど……。王宮魔道士くらい近くに配置しといてもいいんじゃないの?と、なんとなく後宮の存在が雑に扱われてる気がした。
このことからも陛下は後宮を望んでいないことがわかる。私は好都合だけど、本気の彼女たちにとってどうだろう?
「これは!?魔法を使えるのかの?この一瞬で、完璧に解毒をしてあるとは……何者なんじゃ!?」
王宮医師のお爺さんは驚いている。確かに、治癒の魔法は難しい。触れて解析し、その状態に合う術の構成を作らなければならない。
「私のことはお気になさらず。名も無い通りすがりの者です!」
後々、めんどくさいことになりたくないから、サラリと通りすがりの者です宣言してみた。お爺さんは困惑し、えっ?と呟いた。
毒は簡単なものだから、すぐ解毒できたけど……毒を用いるなんて悪質だ。私はそう思いつつ、自室へさっさと帰った。思わず来てしまったが、怠惰な自分に戻ろう。
それから後宮は大騒ぎになった。とりあえず部屋から出ることは禁止され、全員が自室にいるようにと言い渡された。
私は名も無い通りすがりの者というわけにはいかず、しつこく聞かれることになった。相手は騎士の証である鷲の紋章のある制服を着ている。
「一番に駆けつけて毒の成分を見抜くなんて何者なんだ!?」
「私はリアン=クラーク男爵令嬢よ。ちょっと調べれば街のみんなの期待を背負った天才とわかるはずよ!ゆくゆくは王宮魔道士や官吏になっていたはすのリアンだとね!」
「なんでそんな自己紹介なんだ?おかしいだろ?」
取り調べをする騎士にそんなことを言われてしまう。おかしいとか……失礼な人ね。
「私を犯人扱いするから身元を明らかにしただけよ。私には動機がないわ。もうっ!こんなことなら、助けなければよかったわ……めんどくさすぎる。怠惰タイムがすり減ってるじゃないの」
ブツブツ言う私にさらに不審な顔になる騎士。
「ま、まぁ……助けたのは確かのようだから、今のところ投獄されずに済むが、やましいことがあるなら、自白したほうが罪は軽くなるぞ」
「投獄!?自白!?とはいったいなんですか!さっきから聞いていれば、失礼な方ですね!お嬢様はゴロゴロ寝ていて、叫び声を聞いて助けに行ったのですよ!?感謝されるならまだしも……王妃になるために、まーったく努力しないお嬢様になぜ容疑がかかるんですか!?」
「アナベル……ちょっと気になるところがあった気がしたけど、まぁ……いいわ……代弁をありがとう」
騎士はアナベルの勢いに押される。そのくらい怒っている。騎士は渋々、今日のところはもう休めと上から目線で言い捨てて、去っていった。
「お嬢様、でも確かに早すぎる行動をとられましたね。まるでなにか起こることがわかっていたようでしたが?」
私はアナベルの疑問にニヤリと笑って答えたのだった。
「後宮を舞台にしたミステリー小説なんかでは、こういった事件はつきものでしょう!?そろそろ事件が起こるころねと思ってたのよ!」
そんなドヤ顔で言われても……後、髪の毛、寝癖ついてますよ?とアナベルは呆れたように言って笑った。
寝癖ーーーっ!?すでに皆の前に出た後で、時すでに遅しだった。
廊下に響く声に私は跳ね起きた。バサッと顔の横に積み上げて置いてあった本が落ちてきたが、かき分ける。
「お嬢様!?」
アナベルの声を無視して、私は走っていた。泣き顔のメイドが広いホールで泣き崩れていた。
「どうしたの!?」
「シエラお嬢様が!お倒れになったのです」
バッと私は身を翻し、駆けていく。ドアを開けると床に倒れ、蒼白なシエラ様。カップがひっくり返り、こぼれているお茶……これは。
「毒?」
私は素早く彼女の体に手を当てて、解毒の術を施していく。簡単な毒で致死性は無いものだ。顔色が戻ってきた。
私は抱きかかえたまま意識を確認する。こんな時は無理に動かさないほうがいい。
「大丈夫ですか?シエラ様?」
「……ううっ………」
うん。大丈夫そう。私がほっとした時に王宮医師がやってきた。来るのが、遅い。老齢のようだから仕方ないだろうけど……。王宮魔道士くらい近くに配置しといてもいいんじゃないの?と、なんとなく後宮の存在が雑に扱われてる気がした。
このことからも陛下は後宮を望んでいないことがわかる。私は好都合だけど、本気の彼女たちにとってどうだろう?
「これは!?魔法を使えるのかの?この一瞬で、完璧に解毒をしてあるとは……何者なんじゃ!?」
王宮医師のお爺さんは驚いている。確かに、治癒の魔法は難しい。触れて解析し、その状態に合う術の構成を作らなければならない。
「私のことはお気になさらず。名も無い通りすがりの者です!」
後々、めんどくさいことになりたくないから、サラリと通りすがりの者です宣言してみた。お爺さんは困惑し、えっ?と呟いた。
毒は簡単なものだから、すぐ解毒できたけど……毒を用いるなんて悪質だ。私はそう思いつつ、自室へさっさと帰った。思わず来てしまったが、怠惰な自分に戻ろう。
それから後宮は大騒ぎになった。とりあえず部屋から出ることは禁止され、全員が自室にいるようにと言い渡された。
私は名も無い通りすがりの者というわけにはいかず、しつこく聞かれることになった。相手は騎士の証である鷲の紋章のある制服を着ている。
「一番に駆けつけて毒の成分を見抜くなんて何者なんだ!?」
「私はリアン=クラーク男爵令嬢よ。ちょっと調べれば街のみんなの期待を背負った天才とわかるはずよ!ゆくゆくは王宮魔道士や官吏になっていたはすのリアンだとね!」
「なんでそんな自己紹介なんだ?おかしいだろ?」
取り調べをする騎士にそんなことを言われてしまう。おかしいとか……失礼な人ね。
「私を犯人扱いするから身元を明らかにしただけよ。私には動機がないわ。もうっ!こんなことなら、助けなければよかったわ……めんどくさすぎる。怠惰タイムがすり減ってるじゃないの」
ブツブツ言う私にさらに不審な顔になる騎士。
「ま、まぁ……助けたのは確かのようだから、今のところ投獄されずに済むが、やましいことがあるなら、自白したほうが罪は軽くなるぞ」
「投獄!?自白!?とはいったいなんですか!さっきから聞いていれば、失礼な方ですね!お嬢様はゴロゴロ寝ていて、叫び声を聞いて助けに行ったのですよ!?感謝されるならまだしも……王妃になるために、まーったく努力しないお嬢様になぜ容疑がかかるんですか!?」
「アナベル……ちょっと気になるところがあった気がしたけど、まぁ……いいわ……代弁をありがとう」
騎士はアナベルの勢いに押される。そのくらい怒っている。騎士は渋々、今日のところはもう休めと上から目線で言い捨てて、去っていった。
「お嬢様、でも確かに早すぎる行動をとられましたね。まるでなにか起こることがわかっていたようでしたが?」
私はアナベルの疑問にニヤリと笑って答えたのだった。
「後宮を舞台にしたミステリー小説なんかでは、こういった事件はつきものでしょう!?そろそろ事件が起こるころねと思ってたのよ!」
そんなドヤ顔で言われても……後、髪の毛、寝癖ついてますよ?とアナベルは呆れたように言って笑った。
寝癖ーーーっ!?すでに皆の前に出た後で、時すでに遅しだった。
6
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
夫が愛人を離れに囲っているようなので、私も念願の猫様をお迎えいたします
葉柚
恋愛
ユフィリア・マーマレード伯爵令嬢は、婚約者であるルードヴィッヒ・コンフィチュール辺境伯と無事に結婚式を挙げ、コンフィチュール伯爵夫人となったはずであった。
しかし、ユフィリアの夫となったルードヴィッヒはユフィリアと結婚する前から離れの屋敷に愛人を住まわせていたことが使用人たちの口から知らされた。
ルードヴィッヒはユフィリアには目もくれず、離れの屋敷で毎日過ごすばかり。結婚したというのにユフィリアはルードヴィッヒと簡単な挨拶は交わしてもちゃんとした言葉を交わすことはなかった。
ユフィリアは決意するのであった。
ルードヴィッヒが愛人を離れに囲うなら、自分は前々からお迎えしたかった猫様を自室に迎えて愛でると。
だが、ユフィリアの決意をルードヴィッヒに伝えると思いもよらぬ事態に……。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる