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それぞれの思いは絡み合う

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 はぁ……と朝から、重いため息を吐いてしまった。今日も憂鬱だ。ガルシア将軍が帰ってきてから、ストレスが増えた気がする。リアンとオレのまったりとした怠惰な時間に乱入してくるから、苛立ちしかない!
 
 朝食のテーブルについているが、食欲が沸いてこず、果実ジュースを手にしている。

 リアンを見ると綺麗な緑色の目と視線が合う。なに?と首を傾げる彼女。黄色のオムレツをパクッと食べて、幸せそうに頬に手をやり、ニッコリとした。

 癒やされる!なんて可愛いんだろう。

「うーん。そろそろよね。私も気がすんだし、スッキリした……じゃなくて!っと、ウィルバート、ガルシア将軍を夕食に呼んでくれる?話したいことがあるわ」

  いくらリアンの頼みと言えど、めちゃくちゃお断りしたい案件なんだが?即答できず、ごくりと果実ジュースを飲みこんだ。

「あなたのその悩みを解決する時がきたのよ」

「え!?悩みってオレ、何かリアンに相談していたかな……」

 お見通しなのよっ!と笑われた。なんだか彼女には一生敵わない気がした。

 公務が終わり、夕食に招かれたガルシア将軍はキッチリと正装して現れた。リアンを見ると、少し緊張した面持ちになる。先日の勝負から食えない女だと言っていて、かなり警戒している。

 逆にリアンは余裕の笑みである。

「よくきてくれたわ。ガルシア将軍。ゆっくりお食事を楽しみましょう」

「……何か企んでないだろうな?」

「嫌だったら、帰ってくれてかまわないぞ」
 
 オレは追い払いたい気持ちでガルシア将軍に言うと、帰るか!と逆に意固地な様子で椅子にドスッと座った。食事は滞りなく進み、時折、ガルシア将軍がリアンに『先日の勝負は詐欺師の手口』だとか『王妃のくせに、政治の勉強なんてするな!』など嚙みついていたが、彼女はどれも軽くかわし、笑みを絶やさない。

 ………そう。まるでこれからくるメインディッシュが残っているかのように楽しそうだ。

 夕食のコースがデザートだけになった時にそれは始まった。

「さてと、そろそろガルシア将軍、ウィルバートへの想いを明かしてもいいでしょう?」

「は!?なんのことだ!?」
 
 将軍が食後のコーヒーを一口飲んだところで、リアンが話を切り出した。

「将軍の本当の姿をこれからお話しようかしら?まず、セオドアが図書室で私に近づく将軍から必死に守ろうとしなかったことや兵からも人気があることを考えると、そんなに危険な人ではないのかな?とか、ウィルバートの様子を見に来ているのも、私のことをお金や地位のために王妃になって、陛下に近づいたと探ってるのかなぁ?とか勝負を持ちかけてきたのも、陛下が王妃に骨抜きにされた噂があったから、私のことを悪い王妃だと思わせず、なかなかやる女だぞ!と皆にしらしめるためにしてくれたのよね?」

 ガルシア将軍の顔が、みるみるうちに赤くなっていく。巨漢の男が、困ったような顔をするのはどこか可愛らしいものだった。リアンの推理は続いていく。

「さらによ?ウィルバートの幼い頃から厳しく訓練を重ねてきたのも、彼の身に何かあっても一人でくぐり抜ける力をつけさせるためよね」

「や、やめろ!そこまでにしてくれ!!」
 
 将軍は顔を太い腕で隠しだす。オレはもう呆気にとられてしまい、言葉が出なかった。

「私から礼を言うわ。ウィルバートのことを一番に考えて動いてくれていてありがとう」

 そのリアンの一言が致命傷であるかのように、ぐわあああと悲鳴をあげるガルシア将軍。

「そ、そうだったのか……」

 オレは声を絞りだした。確かにそうかもしれないと思えてきたから不思議だ。リアンの言葉はまるで魔法のように、一瞬でガルシア将軍とオレの関係を変えた。

「ガルシア将軍、今まで、気付かなくて悪かったな」

 そうオレに言われるとなぜか涙目になっている。

「い、いえ……気のせいだったということにしていただけるとありがたいっ!こ、これで失礼する!!」

 逃げるように去っていくガルシア将軍をオレとリアンは静かに見送ったのだった。
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